琉球犬に魅せられる
目の前に広がる塩屋湾、背後には緑あふれる山々。
風光明美(び)な山原の地で第2の人生はスタートした。
畑仕事に魚釣り。
ただ、のんびりというわけにはいかない。傍らで犬がほえる。
1匹、2匹、3匹…。成犬が5匹、子犬が5匹の大所帯。
しかも普段見られる犬とは何か違う。独特のしま模様に野生的な眼光.。
琉球犬(いぬ)、トゥラーだ。
かねてから計画していた実家のある大宜味村で農業を始めるため準備に入った。
退職の4年前から飼い始めたトゥラーを連れ、畑の整地作業から始まった。
宮城さんは大の犬好き。少年のころ、家で商売用のウサギを飼育。
そのえさ取りでよく近くの山に草刈りに行かされた。
一人ぼっちの山道、心細くなる宮城少年の頼もしい相棒が愛犬「トム」だった。
その思い出から仕事に就いてもシェパードや土佐犬、柴犬などを飼ってきた。
トゥラーとの出会いは7年前、県内に琉球犬保存会が発足されたことを聞き、
さっそく会長宅に電話を入れ、分けてもらったことから始まる。
トゥラーはアイヌ犬とともに日本では最も古い犬とされ、県の天然記念物の指定を受けている。
普段はおとなしいが、自分のテリトリーに侵入するものは強く威嚇(かく)する。
嗅覚が鋭く、猟犬、主にイノシシ狩りに活躍している。
そんな野生味あふれるトゥラーに魅せられたのだ。
一方、約400坪という畑は開墾が終わったばかり。「以前はあんな状態でした」と
宮城さんが指差した場所はタイワンハンノキが一面を覆う雑木林。
パワーショベルでなぎ倒し、根を掘り起こし、土を耕す。
現在は肥料と苗を埋め込むための1メートル大の穴を掘っているところで、
パワーショベル以外は一人でその作業を進めている。
シークワーサーで周囲を囲み、タンカンを中心に木々の間には野菜や花木を植える予定だ。
「定年してからが忙しくなった感じ」と満足げな顔がほころぶ。
(「幸せですか」取材班)
写真:トゥラーの世話や訓練も日課。第2の人生として始めた農業もいよいよ本格化。
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