物理部顧問 水野善雄
物理部では、従来から研究活動もなかなか盛んで、今までに何度か対外的にその成果を発表したり、又研究報文もいくつか印刷発行したりしているが、今回からこの報文集に「真理」という誌名を冠することになった。
真理という一語は平凡なようであるが、これ程魅力的な言葉は少ないと思う。真理を求めるのは人間の本性であって、古来無数の人々がこの為に情熱を燃やし、生涯を投入して来た。それによって自然科学が生まれ、そして育ち、今日の文明をかくあらしめているのである。
寺田寅彦は“科学はいのち知らずの者共が流した血の川のほとりの咲いた花園である”といっている。
真理探究の為にはおびただしい生涯が惜しげもなくかけられて来た。それは時には輝かしい成果をあげたが、多くは人知れず燃え尽きた。
遠く、2千数百年昔にギリシャに発したこの伝統は、今なお脈々と生きつづけ、その流れの末の一筋は、ここ富士高に到って、光芒を発しているのである。
その証査としてこの報文集に「真理」という誌名を冠する次第である。この光芒は時には明るく、また時には暗くなることもあろうが、然し、決して消えることはないであろう。
1974.6.26 富士高校務室にて