はやし浩司

時事評論01-5-19
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時事評論
はやし浩司

アメリカの小学校/写真など 
アメリカの小学校
アメリカの小学校


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 2001年、9月11日。衝撃的な事件が、世界中を震撼させた。ニューヨークの世界貿易セン
タービルに、旅客機がつっこむという事件である。ために、この原稿を書いているときにはわか
っていないが、数千人以上もの犠牲者が出たという。この事件を受けて、アメリカは、テロ集団
と、テロを支援する(?)国家に対して、宣戦布告をした(同9月15日)。

 この事件で象徴的なだったのは、多くのアメリカのメディアが、「第二のパールハーバー」と位
置づけた点である。第二次大戦のきっかけとなった、日本軍による真珠湾攻撃をいう。で、私
たち日本人は、ここでハタと考え込んでしまう。アメリカ人の目から見ると、今回の貿易センター
ビルの破壊事件も、パールハーバーも同じように映るというのだ。ということは、私たち日本人
も、彼らアメリカ人に対して、同じようなことをしたのか……ということになる。ということは、さら
に、今、私たち日本人は、声高にテロを非難するが、そう偉そうなことも言えないということにな
る。もっとも日本軍が攻撃したのは、軍事施設であり、軍艦なのだ。民間人は襲っていない。…
…と、書きたいが、中国大陸では日本軍は、結構、民間人を犠牲にしている。つまりこの点で
も、日本人はあまり偉そうなことは言えないということになる。

 私は今回の事件をみて、第一に、こうしたジレンマに陥ってしまった。ここで声高にアラブのテ
ロリストを非難すればするほど、じゃあ、この日本はどうだったのかというジレンマである。そこ
であの真珠湾攻撃を擁護する人たちは、「日本はアメリカの圧力の中で、やむにやまれず攻
撃した」とか、「攻撃するように仕向けられた」と言う。あくまでも日本はアメリカの策略に乗った
だけだと。事実、アメリカの大統領は、日本軍の攻撃を事前に知っていたという。となると、で
は、今のアラブのテロリストたちもそうではないかということになってしまう。彼らもまた、追いつ
められ、やむにやまれずそうしたテロ行為に駆り出されていった、と。今の日本は、あまりにも
安易にアメリカの視点で、世界を見すぎているのではないのかということにもなる。もしあの真
珠湾攻撃が正しかったというのなら、日本人は、今回のテロを、そう声高には非難できないと
いうことになってしまう。言い換えると、日本人は、今回のテロを非難する前に、「自分たちも同
じようなことしたが、あれはまちがっていた」と、自己批判しなければならない。それもしないで
おいて、一方的に今回の貿易センタービルへのテロを避難するということは、どこかおかしい
し、そのおかしさは、恐らく世界の人も感じているのではないだろうか。

 その宣戦布告を受けて……というより、それより先から、日本政府は、アメリカの指示と、アメ
リカへの支援を明確に打ち出している。しかしここ数日の動きでわかってきたことだが、アメリ
カはテロ集団と、アフガニスタンという国のみならず、戦線をイラク、イランにまで拡大しようとし
ている。日本政府は恐らく小さな戦争を考えていたのだろうが、それがどっこい。まさにアラブ
世界全体を巻き込んでの世界戦争になる気配すら出てきた。そうなれば、石油の90%弱を中
東に依存している日本への影響は必至である。へたをすれば、日本への原油がすべてストッ
プしてしまう可能性すらある。日本政府は、早々とアメリカへの支援を口にしたが、そこまでの
覚悟はできていたのか。あるいはアメリカのそういう意図を確認していたのか。

 少し話はそれるが、アメリカへ行ってみるとわかるが、アメリカでは日本など、まったく相手に
されていない。経済的にはともかくも、政治的には、日本の存在感はまったくない。ないものは
ないのであって、どうしようもない。つまり日本政府は、早々と、アメリカ支援を打ち出したが、
そういう「誠意?」など、アメリカ人には痛くもかゆくも、何ともない。日本政府としては、シッポを
振って、忠誠心をことさら強調したかったのだろうが、そういう行為そのものが、ムダだというこ
と。アメリカにしてみれば、日本がシッポを振るのは当然のことであって、またそれ以外の行為
というのは、アメリカ政府は予定していない。そういう状態で、日本はシッポを振った。振った以
上、これから先、どんな戦争になっても、日本は責任をとらねばならない。日本政府に、それだ
けの覚悟があったのか。あるのか。

 問題は、これから先、アメリカがアフガニスタンから、戦線をイランやイラクに拡大した場合で
ある。しかしここで注意しなければならないのは、それはアメリカという国対、アフガニスタン、イ
ラン、イラクという国の戦争ではないということだ。アメリカの意図はともかくも、ほかの国はそう
思っていない。彼らは、対アラブ、もっと言えば、対イスラムへの戦争ととらえている。となると、
今度の戦争は、今までの戦争とは、まったく異質な戦争となる。つまり宗教戦争の様相をおび
てくる。

 宗教戦争……もしそういうことになれば、これはたいへんな戦争になる。宗教がからむと、人
は、最後の最後まで戦う。命をかける……といった状態になる。そのためその戦争も、悲惨か
つ陰湿なものになる。当然、長期化する。いくらアメリカが強大な国とはいえ、宗教戦争をする
力などないし、またあるはずもない。宗教戦争で勝つためには、江戸幕府が島原の乱に対して
したように、その信者を根絶する以外にしかないのである。そしてひとたび宗教戦争に火をつ
ければ、報復が報復を呼び、その戦争は終わらなくなる。(2001−9−25)
 


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