メルボルンにいる、Kさんへ
いろいろつらいことがあったのだね。
無理をすることはないよ。
ぼくも、いつも食事はひとりでとることにしている。
うるさいからね。「ふつうでなくてはいけない」
なんて、思うことはないよ。
だいたい「ふつう」なんてものは
ないのだからね。
幸福になる道は、一つではないよ。
回り道も、わき道も、寄り道もあるよ。
だいたいね、まっすぐな道なんてものは
ないよ。
しかしね、どの道も、みんな幸福につながっているよ。
だから安心して、したいことしたらいい。
そのうち、君のことを本当に理解してくれる
やさしい人が現れるよ。それを信じて前に
進んだらいい。「今」できることを、
今、一生懸命にすればいい。
必ず、明日はやってくる。そしてね、
明日になったら、明日は明日で、
また、そのときできることを、
一生懸命すればいい。
だから、明日のことは、悩まない。
クヨクヨしない。
君は、とてもすてきな人だからね。
ぼくは、それを知っているよ。
覚えているかな。
ぼくが教室で、「さあ、来い!」と手を広げたら、
君は、うれしそうに、ぼくの腕の中に飛び込んできたね。
あれは、君が、小学三年生のときではなかったかな。
ぼくは、君の明るい笑顔がとても好きだった。
ぼくはね、正直に告白しますが、
女の子を抱いたのは、生涯で、
あのときが最初で、最後です。
男の子は平気で、抱いたりしますが、
女の子は、したことがありません。
幼稚園で教えているときも、そうです。
背中をたたいたり、頭をなでたりすることはありますが、
手でさえ、さわったことはありません。
その君が、こんなに苦しむなんて……!
それをつらがっているのは、君だけではないよ。
きっとどこかで歯車が、狂ったのだろうね。
しかしね、心の風邪なんてものは、だれでもなるもの。
しかもね、まじめな人ほど、なるもの。
だけどね、この苦しみを乗り越えたとき、
あなたは、まちがいなく、すばらしい人になっているよ。
つまり、今は、トンネルの中にいるということ。
あるいは、もうトンネルから出たのかな。
出るところかな。
前を見てごらん。きっと、大きな光が見えるはずだよ。
ではね。
無理をしないこと。
ふつうになろうと思わないこと。
君は、君。君でいいの!
わかった?
あとは野菜をたくさん食べて、偏食をしないこと。
コンビニ食ばかり食べては、だめだよ。
オーストラリア人は陽気だから、
心を開いてぶつかっていきなさい。
そうそう、アイルランドの民謡を聞くときが
あったら、よく聞いておいてくださいね。
そういう機会があちこちにあるはずだから……。
きっと君も、好きになるよ。
(03−1−7)
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