はやし浩司

おまけ
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ふしぎな いとまき

とおい むかし、あるところに、
ひとりの おとこのこが すんでいました。
なまえは ひろしと いいました。
ひろしは とても なまけもので、
おとうさんの しごとを すこしも しませんでした。


ひろし(10さい)

あるひの こと。 おとうさんが
ひろしに、 いいました。
「ひろし、 この にもつを となりの いえまで
とどけてくれないか」と。
でも、ひろしは そのしごとを するのが
いやで、 にげていきました。
にげて、 ちかくの もりの なかへ
いきました。

ひろしが もりの きのなかに
かくれていると、 とおくから おとうさんが、
「ひろし、 どこにいる? しごとを
てつだってくれ!」と、いっているのが、
きこえました。
しかし ひろしは、 なにも こたえませんでした。

しばらく かくれていると、
ひとりの きれいな おんなのひとが
あらわれました。そして ひろしを みると
こう いいました。
「ひろし、 ひろし、 いいものを あげようか?」と。


きれいな おんなのひと

みると そのおんなの ひとは てに
ちいさな いとまきを もっていました。
おんなの ひとは こう いいました。
「ひろし、 この いとまきは
ふしぎな いとまきだよ。
いやなことが あったら、 この いとまきの いとを
ひくといいよ。 そうすると、 いとを
ひいたぶんだけ、 じかんが すぎるよ」と。

それからというもの、 ひろしは
いやなことが あるたびに、
その いとまきの いとを ひきました。
がっこうの しゅくだいが あったとき、
おかあさんから しごとを たのまれたとき、
せんせいに しかられたとき。
そういうとき ひろしは いとまきの 
いとを ひきました。
すると、 いとを ひいたぶんだけ、
どんどんと じかんが すぎて いきました。

その ひろしには ひとりの すきな
おんなのこが いました。
なまえは あきこといいました。
とっても、 すてきな おんなのこ でした。


あきこ(8さい)

ひろしは はやくおとなになって あきこと
けっこんしたいと かんがえて いました。
そこで ひろしは いとまきの いとを
どんどんと ひくことに しました。

ひろしは どんどんと いとを ひきました。
どんどんと どんどんと いとを ひきました。

きがつくと、 ひろしと あきこは
けっこんしていました。


これが けっこんしきの しゃしんです。
しんろうは どこか はままつしちょうの
きたわきし に とっても よく にていますね。

ひろしは あきこと けっこんできたことを
とても よろこびました。
が、 しばらくすると、ひろしと あきこの あいだに
ひとりの こどもが うまれました。


ひろしの こども

しばらくは たのしい ひびが つづきましたが、
ひろしは こどもを そだてるのが
めんどうで いやでした。
そこで こう おもいました。
この こどもを はやく おおきくして、
わたしの しごとを てつだわせよう、 と。
そこで ひろしは また いとまきの いとを
ひくことに しました。

ひろしは どんどんと いとを ひきました。
どんどんと、 どんどんと いとを ひきました。

きがつくと、
ひろしの こどもは すっかりと
おとなに なっていました。

ひろしは それを たいへん よろこびましたが、
ひろしも いつのまにか おじいさんに
なってしまって、 いました。


おじいさんに なった ひろし

が、 ひろしは じぶんに なにも おもいでが
ないことに きがつきました。
「あああ、 わたしは あっという まに
おじいさんに なってしまった。
いやなことが あるたびに いとまきの
いとを ひいていたら こんな おじいさんに
なってしまった」と。

そこで ひろしは また、あのもりへ
やってきました。
すると、 そこに あのきれいな おんなのひとが
たっていました。 おんなの ひとは
ひろしに こう いいました。
「どうしたの?」と。

ひろしは なにも おもいでが ないことを
その おんなのひとに はなしました。
「わたしは あっという まに
おじいさんに なってしまった。
おもいでが、なにも ない……」と。

すると おんなのひとは こう いいました。
「では、 ひろし、 もう いちどだけ
あなたを こどもに もどして あげよう」と。
ひろしは それを きいて
たいへん よろこびました。

……

きがつくと、 ひろしは
もとの こどもに もどっていました。
そのときのことです。
とおくから おとうさんが ひろしを
よんでいる こえが きこえました。
「ひろし、この にもつを となりの いえまで
とどけてくれないか」と。


もとの こどもに もどった ひろし

ひろしは あかるい こえで
こう いいました。
「おとうさん! いま、いくからね。
まっていてね。 にもつは ぼくが はこんで
あげるからね」と。

……このはなしは、 ここで おしまい!

そうそう、その ひろし、ね。
それから どうなったか、
しっている?

ひろしは、ね。
みんなの せんせいに なって、
まじめな まじめな 
いいひとに なったんだって、さ。
しってた?

これで ほんとに おしまい。
じゃあ、ね。


いまの ひろし。
53さい。
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