はやし浩司
別冊PHP 掲載記事より
あなたの子育て、チェックしてみませんか?
親子関係
Q あなたが家に帰ったとき、あなたの子どもが、居間のソファに座って体を休めていました。 しかしあなたの姿を見ると、あなたの子どもは…… @ 視線をあわせることもなく、黙ってその場を離れ、自分の部屋にひっこんでしまう。 A そのまま居間にいるものの、話しかけると、うるさそうな顔をする。 B あなたがいてもいなくても、平気で体や心を休めている。あなたを気にしない。 A 最初は、それは小さな亀裂で始まる。しかしそれに気づく親は少ない。「まだうちの子は小さ いから……」と思っているうちに、互いの間の不協和音はやがて大きくなる……。 今、「親に反抗するのは、子どもの自由でよい」と考えている日本の高校生は、八五%(アメ リカ、一六%)、「親に反抗してはいけない」と考えている高校生は、たったの一五%(アメリカ、 八二%・財団法日本青少年研究所・九八年調査)。が、この程度ならまだ救われる。親子とい いながら会話もない。廊下ですれちがっても、目と目をそむけあう。まさに一触即発。親が何か を話しかけただけで、「ウッセー!」と、子どもはやり返す。そこで親は親で、「親に向かって、何 だ!」となる。あとはいつもの大げんか! あなたの子どもが、学校から帰ってきたら、どこで体を休めているか、それを観察してみてほ しい。そのときあなたの子どもが、Bのようにあなたのいるところで、あなたのことを気にしない で、体を休めているようであれば、それでよし。あなたと子どもの関係は良好とみてよい。しか し好んであなたの姿の見えないところで体を休めたり、あなたの姿を見ると、どこかへ逃げて 行くようであれば、かなり危険な状態とみる。ちなみに中学生の多くが、心が休まる場所として あげたのが、一、風呂の中、二、トイレの中、それに三、ふとんの中だそうだ(学外研・九八年 報告)。(正解B) +++++++++++++++++++++++++++++++++++はやし浩 司 母性(父性)本能 Q 子どものそばに、やわらかい素材でできたぬいぐるみをそっと、置いてみてください。あな たの子どもは、そのぬいぐるみを見ると…… @ 見てもほとんど反応がない。関心も示さない。無視したり、モノとしてあつかう。 A おもしろそうにキックしたり、投げつけたり、ほうり投げたりして遊びだす。 B 「かわいい」と言って、頬ずりしたり、抱っこしたりする。 A 「娘を抱いていても、どの程度抱けばいいのか、不安でならない」と訴えた父親がいた。「子 どもがそこにいても、どうやってかわいがればいいのか、それがわからない」と訴えた父親もい た。あるいは子どもにまったく無関心な母親や、子どもを育てようという気力そのものがない母 親すらいた。また二歳の孫に、ものを投げつけた祖父もいた。このタイプの人は、不幸にして 不幸な家庭で育ち、「子育て」というものがどういうものかわかっていない、つまりいわゆる「親 像」のない人とみる。 子どもに父性や母性が育っているかどうかは、ぬいぐるみの人形を抱かせてみればわかる。 しかもそれが、三〜五歳のときにわかる。父性や母性が育っている子どもは、ぬいぐるみを見 せると、Bのように、うれしそうな顔をする。さもいとおしいといった表情で、ぬいぐるみを見る。 抱き方もうまい。そうでない子どもは、反応や関心が弱い。抱き方もぎこちない。中にはぬいぐ るみを見せたとたん、足でキックしてくる子どももいる。ちなみに小三児の約八〇%の子ども が、ぬいぐるみを持っている。そのうちの約半数が、「大好き」と答えている(筆者、二〇〇〇 年、浜松市内で調査)。(正解B) +++++++++++++++++++++++++++++++++++はやし浩 司 学習机 Q 子どもの好きなおやつを、そっと子どもの学習机の上に置いてみてください。あるいは何 か、子どもの興味をひくようなものでもよいです。するとあなたの子どもは…… @ そのものを、ほかの場所へ移して、食べたり遊んだりする。 A 机の上は物置きになることが多く、いつも雑然としている。 B そのまま自分の机の前に座り、それを食べたり、それで遊んだりする。 A よく誤解されるが、子どもの学習机は、勉強するためにあるのではない。休むためにある。 どんな勉強でも、一〇〜三〇分もすれば疲れてくる。問題はその疲れたとき。子どもがそのま ま机に向かって休むことができればよし。そうでないと子どもは机から離れ、そこで勉強が中断 する。勉強というのは、一度中断すると、なかなかもとに戻らない。だから机は休むためにあ る。 以前、小学一年生について調べたところ、前に棚のある棚式机のばあい、購入後三か月で、 約八〇%の子どもが机を、物置にしていることがわかった。いろいろな附属品がついた机は、 一時的に子どもの関心を引くことはできるが、あくまでも一時的。棚式の机は長く使っている と、圧迫感が生まれる。その圧迫感が子どもを勉強から遠ざける。あなたも一度、カベに机を 向けて置き、その机でしばらく作業をしてみるとよい。圧迫感がどういうものか、わかるはず。 そんなわけで机は買うとしても、長い目で見て、平机が好ましい。あるいは小学校の低学年児 には、机はまだいらない。 @やAのようであれば、机との相性はよくないとみる。長く使っていると、それが勉強嫌いの 遠因になることもある。ものごとには相性というものがある。その相性があえばことはうまくい く。そうでなければ失敗する。(正解B) +++++++++++++++++++++++++++++++++++はやし浩 司 友人関係 Q このところあなたの子どもが、あなたから見て、あまり好ましくない友人と遊ぶようになりま した。よくない遊びも覚えてきたようです。そこであなたは…… @ 「あの子とは遊んではダメ」と、できるだけその友人を、子どもから遠ざける。 A 遊びのどこがどう悪いかを説明し、あとは子どもの判断に任せる。 B できるだけそういう悪い芽は、早く摘むようにしている。叱ってやめさせる。 A あなたの子どもが、あなたから見て好ましくない友人とつきあい始めたら、あなたはどうする だろうか。しかもその友人から、どうもよくない遊びを覚え始めたとしたら……。こういうときの 鉄則はただ一つ。『友を責めるな、行為を責めよ』、である。これはイギリスの格言だが、こうい うことだ。 「A君は悪い子だから、つきあってはダメ」と、頭ごなしに言うのは、子どもに、「友を取るか、 親を取るか」の二者択一を迫るようなもの。あなたの子どもがあなたを取ればよし。しかしそう でなければ、あなたと子どもの間に大きな亀裂を入れることになる。友だちというのは、その子 どもにとっては、人格そのもの。友を捨てろと迫るのは、子どもの人格を否定することに等し い。あなたが友だちを責めれば責めるほど、あなたの子どもは窮地に立たされる。そういう状 態に子どもを追い込むことは、たいへんまずい。ではどうするか。 こういうケースでは、行為を責める。またその範囲でおさめる。「タバコは体に悪い」「夜ふか しすれば、健康によくない」「バイクで騒音をたてると、迷惑する人がいる」とか、など。コツは、 決して友だちの名前を出さないこと。子ども自身に判断させるようにしむける。そしてあとは時 を待つ。(正解A) +++++++++++++++++++++++++++++++++++はやし浩 司 すなおさ Q 「すなおな子ども」という言葉を聞いたとき、あなたはどんな子どもを頭の中にイメージする でしょうか。あなたにとって、すなおな子どもとは…… @ いやだったら、「いや」と、はっきりと口に出して言う子ども。 A 親や先生の言いつけをよく守り、「はい、はい」と、従順に従う子ども。 B いじけたり、すねたり、ひがんだりしない子ども。心のゆがみのない子ども。 A 幼児教育の世界で、「すなおな子ども」というときには、二つの意味がある。ひとつは、心の 状態と表情が一致している子ども。悲しいときには悲しそうな顔をする。うれしいときにはうれし そうな顔をする。が、それが一致しなくなると、いわゆる心と表情がちぐはぐになる。ブランコを 横取りされても、ニヤニヤ笑っているなど。これを心理学の世界では、「遊離」と呼んでいる。心 の状態と表情が一致していない状態と考えるとわかりやすい。こうした遊離は、たいへん危険 なものである。親からすれば、「何を考えているか、わけのわからない子ども」ということになる が、それではすまない。子どもはその表情の裏で、心をゆがめる。 そこで「すなおな子ども」というときは、もうひとつ、「心のゆがみ」がない子どもをいう。いじけ る、ひがむ、がんこ、つっぱる、ひねくれるなど、心のゆがみがない子どもを、すなおな子どもと いう。ゆがみのない子どもは、心がいつもオープンになっていて、やさしくしてあげたり、親切に してあげると、それがそのままスーッと子どもの心の中にしみこんでいくのがわかる。が、心が ゆがんでくると、それがどこかでねじまげられてしまう。母「このお菓子、いっしょに食べる?」、 子「どうせ宿題をさせたいのでしょう」、母「おいしいよ」、子「この前のおかしは、まずかった」 と。(正解@B) +++++++++++++++++++++++++++++++++++はやし浩 司 忍耐 Q あなたの子どもの前で、重い荷物をもって、苦しそうに歩いてみてください。そのときあなた の子どもは…… @ さっと走りよってきて、「ママ、手伝ってあげる」と荷物をいっしょに運んでくれる。 A 見て見ぬフリをしたり、知らぬフリをして、ゲームなどに夢中になっている。 B 「手伝ってちょうだい」と言うまで、重い腰をあげようとしない。 A Aのようであれば、あなたの子どもはかなりのドラ息子、ドラ娘とみてよい。今は体も小さ く、あなたの前でおとなしくしているかもしれないが、やがてあなたの手に負えなくなる……。 以前、幼稚園で、母親たちの何かの集会があったときのこと。やってくる母親たちにスリッパ を出していた子ども(年長男児)がいた。だれかに頼まれて、そうしていたわけではない。で、そ の子どもは集会が始まると、今度は、炊事室へ行き、炊事室のおばさんに、お茶を出すからお 茶をつくってほしいとまで言った。たまたま彼の母親がその場にいたが、その母親は笑いなが ら、こう言った。「うちの子はよく気がつくのですよ。先日は何かのセールスの人にまで、お茶を 出していました」と。 このタイプの子どもは、学習面でも伸びる。もともと「勉強」には、ある種の苦痛がともなう。そ の苦痛を乗り越える力が、ここでいう「忍耐力」だからである。たとえば子どもにこう言ってみて ほしい。「台所の生ゴミを始末して!」と。あるいは風呂場の排水口にたまった毛玉でもよい。 そのとき「ハーイ」と言って、手で始末できれば、あなたの子どもはかなり忍耐力のある子ども とみる。その忍耐力のある子どもにするには、子どもは使う。『子どもは使えば使うほどいい子 になる』と覚えておくとよい。(正解@) +++++++++++++++++++++++++++++++++++はやし浩 司 情緒 Q 「情緒不安」という言葉があります。その言葉を聞いたとき、あなたは次のどのタイプの子ど もを想像しますか。 @ ちょっとしたことで、すぐカッとなったり、反対にぐずったりする子ども。 A いつも周囲に気をつかい、心が緊張状態にあって、その緊張感が抜けない子ども。 B 心の状態がつかみにくく、何を考えているかわからない子ども。 A 外部の刺激に左右され、そのたびに精神的に動揺することを情緒不安という。二〜四歳の 第一反抗期、思春期の第二反抗期に、とくに子どもは動揺しやすくなる。 その情緒が不安定な子どもは、神経がたえず緊張状態にあることが知られている。気を許さ ない、気を抜かない、周囲に気をつかう、他人の目を気にする、よい子ぶるなど。その緊張状 態の中に、不安が入り込むと、その不安を解消しようと、一挙に緊張感が高まり、情緒が不安 定になる。 症状が進むと、周囲に溶け込めず、引きこもったり、怠学、不登校を起こしたり(マイナス 型)、反対に攻撃的、暴力的になり、突発的に興奮して暴れたりする(プラス型)。表情にだまさ れてはいけない。柔和な表情をしていても、不安定な子どもはいくらでもいる。このタイプの子 どもは、ささいなことがきっかけで、激変する。母親が、「ピアノのレッスンをしようね」と言った だけで、激怒し、母親に包丁を投げつけた子ども(年長女児)がいた。さらに症状が進むと、集 団的な非行行動をとったり、慢性的な下痢、腹痛、体の不調を訴えることもある。子どもの情 緒が不安定になったら、心の緊張感をほぐすことだけを考える。静かで穏やかな家庭環境を 大切にし、子どもの側からみて、のんびりとくつろげるようにする。(正解@AB) +++++++++++++++++++++++++++++++++++はやし浩 司 言葉 Q 子どもが園、もしくは学校へでかけるとき、あなたはいつも、どのような話し方をしています か。 @ 「ハンカチをもっていますか。ティッシュペーパーは、もっていますか」と言う。 A 「ほら、ハンカチ、ハンカチ! ほら、ティシュ、ティシュ!」と言う。 B 「ハンカチ、もってるの? ティッシュペーパーは?」と言う。 A 子どもの国語能力は、家庭環境で決まる。なかんずく母親の言葉能力によって決まる。 毎日、「帽子、帽子、ハンカチ、ハンカチ! バス、バス、ほらバス!」というような話し方をして いて、どうして子どもに国語能力が身につくというのだろうか。こういうケースでは、たとえめん どうでも、「あなたはハンカチを持っていますか。ティッシュペーパーは、もっていますか」と言っ てあげねばならない。 以前私は、国語力が基本的に劣っていると思われる小中学生たちに集まってもらい、その子 どもたちがほかの子どもたちと、どこがどう違うかを調べたことがある。結果、つぎの三つの特 徴があるのがわかった。 @使う言葉がだらしない(「ぼく、アイス、食べる」というような言い方をする)、A使う言葉の数 が少ない(使う語い数そのものが少ない)、B正しい言葉で話せない(話させようとすると、照れ てしまう)。原因はすぐわかった。たまたま子どもを迎えにきていた母親がいたので、そのことを 告げると、その母親はこう言った。「ダメネー、うちの子ったら、ダメネー。ホントにモウ、ダメネ ー、ダメネー」と。原因は母親だった! たいていの親は、国語力は、学校の国語の勉強で身につくものだと思っている。しかしこれ は誤解。子どもの国語力の基本は、幼児期にでき、それで決まる。(正解@) +++++++++++++++++++++++++++++++++++はやし浩 司 心 Q あなたが座ってテレビを見ているとき、あなたの子どもが近くにやってきました。そのときあ なたが子どもに手をさしだすと…… @ ごく自然な感じで、あなたに抱かれ、あなたに身をすりよせてくる。 A 抱かれようとせず、あなたのしぐさに無関心で、それを無視する。 B 子どもを引き寄せ、抱こうとしても、それをいやがる。抱いても体をこわばらせる。 A 一般論として、濃密な親子関係の中で、親の愛情をたっぷりと受けた子どもほど、甘え方が 自然である。「自然」という言い方も変だが、要するに、子どもらしい柔和な表情で、人に甘え る。甘えることができる。心を開いているから、やさしくしてあげると、そのやさしさがそのまま子 どもの心の中に染みこんでいくのがわかる。 これに対して幼いときから親の手を離れ、施設で育てられたような子ども(施設児)や、育児 拒否、家庭崩壊、暴力や虐待を経験した子どもは、他人に心を許さない。許さない分だけ、人 に甘えない。一見、自立心が旺盛に見えるが、心は冷たい。他人が悲しんだり、苦しんでいる のを見ても、反応が鈍い。感受性そのものが乏しくなる。ものの考え方が、全体にひねくれるこ ともある。ところでこんなショッキングな報告もある。抱こうとしても抱かれない子どもが、四分 の一もいるというのだ(二〇〇〇年)。「全国各地の保育士が、預かった〇歳児を抱っこする 際、以前はほとんど感じなかった『拒否、抵抗する』などの違和感のある赤ちゃんが、四分の 一に及ぶことが、『臨床育児・保育研究会』(代表・汐見稔幸氏)の実態調査で判明した」(中日 新聞)と。 何でもないことのようだが、親に抱かれるというだけでも、あなたの子どもの心は、まっすぐに 育っているということになる。(正解@) +++++++++++++++++++++++++++++++++++はやし浩 司 信頼 Q 久しぶりに高校時代の友人と会いました。その友人が、あなたの子どもをジロリと見つめた あと、「(年齢は)いくつ?」と聞いたとします。そのときあなたは…… @ いやなことを聞く人だと思う。子どもの年齢など、聞くものではないと思う。 A 何も考えないで、すなおな気持ちで、「○歳よ」と答えることができる。 B よいことを聞いてくれたと思う。「まだ○歳よ」と誇らしげに答えることができる。 A 子どもの心はカガミのようなもの。あなたが「うちの子はすばらしい」と思っていると、子ども は、そのすばらしい子になる。表情も明るく、ハツラツとしている。そうでなければそうでない。 もしあなたがここでいう@のようであれば、まずあなたの心を作り変える。たとえばひとつの 方法として、「あなたはよい子」「あなたはどんどんよくなる」「あなたはすばらしい人になる」を口 グセにするというのがある。子どもが幼児であればあるほど、そう言う。あなたが「うちの子は、 だめな子」と思っているなら、なおさらそうする。最初はウソでもよい。そうしてまず親自身の心 を作りかえる。子どもというのは、自分を信じてくれる人の前では、よい面を見せようとする。そ ういう性質を利用して、子どもを伸ばす。あなたが自然にそれを言えるようになったとき、あな たの子どもは、そのよい子になっている。それだけではない。 英語の格言に、『相手は、あなたが相手を思うように、あなたのことを思う』というのがある。 あなたがあなたの子どもを、よい子どもと思っていると、あなたの子どももあなたのことを、よい 親と思うようになる。そういう相乗効果が、あなたの親子関係をより濃密にする。(正解B) +++++++++++++++++++++++++++++++++++はやし浩 司 友情 Q あなたの子どもがまだ、ヨチヨチ歩きをしていたころのことを、思い出してみてください。あな たはあなたの子どもと、どのように歩いていましたか。 @ いつも子どもの前を、ぐいぐいと手を引きながら歩いていたように思う。 A いつも子どものうしろを歩いていたように思う。 B いつも子どもの横を、子どもの歩調にあわせて歩いていたように思う。 A 昔、オーストラリアの友人がこう言った。「親には三つの役目がある。親は、ガイドとして子 どもの前を歩く。保護者として子どものうしろを歩く。そして友として子どもの横を歩く」と。日本 人は、子どもの前やうしろを歩くのは得意だが、友として横を歩くのがヘタ。「私は親だ」という 親意識が強い人ほど、子どもの前をぐいぐいと手を引きながら歩く。おけいこごとでも、勉強の し方でも、何でも親が先に決め、子どもに従わせる。また保護意識が悪いわけではないが、そ の意識が強すぎると、過保護になり、子どもをひ弱で自立できない子どもにしてしまう。 大切なことは、子どもの友として、子どもといっしょに歩くこと。英語国では、親子でも、「パパ はぼくに何をしてほしい?」「お前は、パパに何をしてほしい?」と聞きあっている。そういう謙虚 さが、親子の絆を太くする。 ついでながらイギリスには、こんな格言がある。『子どもには釣竿を買ってあげるより、いっし ょに釣りに行け』と。子どもの心をつかみたかったら、子どもの友になる。モノやお金ではない。 日本人は、より高価なものを子どもに買い与えることで、子どもの心をつかんだハズと考えや すい。が、これはまったくの誤解。あるいは逆効果。モノやお金で、子どもの心をつかむことは できない。(正解B) +++++++++++++++++++++++++++++++++++はやし浩 司 親意識 Q 子どもと言い争いになったとき、あなたの子どもが、あなたに向かって、やや本気で、「バカ ヤロー!」と言ったとします。そのとき、あなたは…… @ 日常的に口が悪いことはわかっているので、まったく気にしない。 A 一応たしなめながらも、気にせず、子どもと冷静に言い争うことができる。 B 親に向かって暴言を吐くというのは、自分の子どもでも許せない。 A 「私は親だ」という意識を親意識という。この親意識には、善玉と悪玉がある。たとえば「親 だから、しっかりしなければ」と考えるのが、善玉。親風を吹かすのが悪玉。その悪玉親意識。 子どもに対して、「産んでやった」「育ててやった」と考える人は多い。さらに子どもをモノのよう に考えている人さえいる。ある女性(六〇歳)は、私に会うとこう言った。「親なんてさみしいもの ですね。息子は横浜の嫁に取られてしまいました」と。息子が結婚して横浜に住んでいること を、その女性は「取られた」というのだ。日本人はこの親意識が、欧米の人とくらべても、きわ めて強い。 この親意識が強ければ強いほど、子どもにとっては居心地の悪い世界になる。が、それだけ ではすまない。子どもは親の前では仮面をかぶるようになり、そのかぶった分だけ、心を隠 す。親は親で子どもの心をつかめなくなる。そしてそれが互いの間に大きなキレツを入れる。 昔は「控えおろう!」と、三つ葉葵の紋章か何かを見せれば、人はひれ伏したが、今はそうい う時代ではない。親が親風を吹かせば吹かすほど、子どもの心は親から離れる。このテストで Bを選んだ人は、あなたというより、あなたが育った環境に原因があるとみてよい。あなた自身 も、その権威主義的な家庭環境で育てられているはずである。(正解A) +++++++++++++++++++++++++++++++++++はやし浩 司 過干渉 Q あなたとあなたの子どもがいるところで、園か学校の先生が、あなたの子どもに、「夏休み はどこかへ行きましたか?」と声をかけてきました。そのときあなたは……。 @ 子どもがちゃんと答えられるか、心配でならない。子どもの様子を見守る。 A 先生と子どもの会話に割って入ることが多い。「おじいちゃんのところへ……」と。 B 先生と子どもの会話を、安心して子どもに任すことができる。親は聞き役に回る。 A うるさいことを過干渉と誤解している人がいるが、口うるさい程度なら、それほど子どもに影 響はない。過干渉が過干渉として問題になるのは、@親側に、情緒的な未熟性があるとき。親 の気分で、子どもに甘くなったり、反対に極端にきびしくなったりするなど。とらえどころのない 親の気分は、子どもの心を不安にする。ばあいによっては、子どもの心を内閉させ、さらにひ どいばあいには、萎縮させる。年中児(満五歳児)でも、大声で笑えない子どもは、一〇人のう ち、一〜二人はいる。親が子どもを過干渉にする背景には、子育て全体にわたる不安や不満 がある。そしてその背景には、何らかの「わだかまり」がある。望まない結婚であったとか、望 まない出産であったとかなど。妊娠時の心配や不安、さらには生活苦や夫への不満がわだか まりになることがある。このわだかまりが姿を変えて、子どもへの過干渉になる。 言いかえると、子どもに過干渉を繰り返すようであれば、そのわだかまりが何であるかを知 る。問題はわだかまりがあることではなく、そのわだかまりに気がつかないまま、わだかまりに 振りまわされること。同じパターンで同じ失敗を繰り返すこと。わだかまりは、あなたの心を裏 からあやつる。これがこわい。しかしわだかまりは、それに気がつけば、そのあと多少時間は かかるが、やがて消える。(正解B) +++++++++++++++++++++++++++++++++++はやし浩 司 気負い Q 不幸にして不幸な家庭、恵まれない家庭環境に育った人ほど、「いい家庭をつくらなければ ならない」「いい家族をつくろう」という気負いが強くなります。あなたは…… @ いつも強い気負いを感じ、その重圧感につぶれそうになることがある。 A 親としての責任感はあるが、ごく自然な形で、子育てができる。 B いい親であろうという意識が強く、子どもの前では、自分を飾ったりすることがある。 A 子育ては本能ではなく、学習によってできるようになる。たとえば一般論として、人工飼育さ れた動物は、自分では子育てができない。「子育てのプログラム」、つまり「親像」が脳にインプ ットされていないからである。人間とて例外ではない。親に育てられたという経験があってはじ めて、自分も親になったとき、自然な形で子育てができる。 ある日一人の子ども(中二男子)が、頬に、大きなアザをつくってきた。「どうしたの?」と聞く と、「親父に殴られた」と。そこで父親に会って話を聞くと、父親はこう言った。「学校の先生から 電話があって、何でもうちのセガレが、借りたCDを返さなかったというじゃないですか。オレは そういうまちがったことが大嫌いでね。だから殴った」と。 親としてある程度の気負いをもつのは、当然のことである。しかしその気負いが強過ぎると、 親も疲れるが、子どもも疲れる。そしてその疲れが、やがて親子の間に、キレツを入れる。… …というより、愛情豊かで、恵まれた環境の中で育てられた人のほうが少ない。みな、何らか のキズを負っている。しかし問題はそういうキズがあるということではなく、そういうキズに気が つかないまま、それに振りまわされること。よい例が「虐待」。子どもに虐待を繰り返す親は、自 分も子ども時代に虐待を受けた経験をもっていることが多い。これを世代連鎖とか、世代伝播 とかいう。それがこわい。(正解A) +++++++++++++++++++++++++++++++++++はやし浩 司 学歴信仰 Q このところあなたの子どもの学力が伸び悩んできました。今のままでは,学校の授業につい ていけないかもしれません。そういうときあなたは……。 @ それが子どもの能力とあきらめる。子どもを責めても意味がないと思う。 A 毎日の学習を義務づけ、塾へ入れたり、家庭教師をつけたりすることを考える。 B 子どもが自信をなくさないように、励ましながら、子どもの心を大切にする。 A 「学歴信仰はもうない」という人もいる。しかしこの日本、公的な保護を受ける人は徹底的に 受け、そうでない人は受けない。そういう不公平を親たちは毎日肌で感じている。だから親はこ う言う。「何だかんだといっても、結局は学歴ですよ」と。信仰とはよくいったもので、価値観の 衝突は、えてしてたがいの間に大きなキレツを入れる。 一方アメリカでは、入学後の学部変更は自由。大学の転籍すら自由。勉強したい学生は、よ り高度な勉強を求めて、大学間を自由に転籍している。しかもそれが今、国際間でもなされて いる。日本でもそういう時代が、すぐそこまでやってきている。少なくともこれからは学歴や、地 位、それに肩書きをぶらさげて生きるような時代ではない。 それはさておき、ここでAを選んだ人は、あなたの学歴信仰が今、あなたと子どもの間に大 きなキレツを入れ始めていないかを疑ってみる。価値観の衝突というのはそういうもので、キレ ツ程度ならまだしも、それがやがて断絶ということにもなりかねない。実のところ今、中高校生 でも、親子が尊敬しあい、楽しく会話をしあっている子どもなど、さがさなければならないほど、 少ない。友だち親子が悪いわけではない。八〇%近い子どもも、それを望んでいる(玩具メー カー・バンダイ・〇二年調査)。勉強がムダとは言わないが、その勉強で、「友」としての人間関 係を破壊してはいけない。(正解@B) +++++++++++++++++++++++++++++++++++はやし浩 司 溺愛 Q あなたは、将来、あなたの子どもとどういう関係になることを望んでいますか。あなたの子ど もが結婚をして、子ども(孫)をもったときのことを考えてみてください。 @ 私の子どもは生涯、私の力を必要とするだろうから、いつまでも力になるつもり。 A 子育ての目標は、子どもの自立。それがすんだら老後は私の人生を思う存分、生きる。 B 私は人一倍、愛情が深い親だと思う。私の愛と人生を、死ぬまで子どもに注ぎたい。 A 親が子どもに感ずる愛には、三種類ある。本能的な愛、代償的な愛、それに真の愛であ る。ここでいう代償的な愛というのは、自分の心のすき間を埋めるために子どもを愛することを いう。一方的な思い込みで、相手を追いかけまわすような、ストーカー的な愛を思い浮かべれ ばよい。相手のことは考えない、もともとは身勝手な愛。 真の愛はさておき、このうち本能的な愛や代償的な愛に溺れた状態を、溺愛という。たいて いは親側に情緒的な未熟性や精神的な問題があり、それに加えて、夫への満たされない愛、 家庭不和、騒動、家庭への不満、あるいは子どもの事故や病気などが引き金となって、親は 子どもを溺愛するようになる。 溺愛児は親の愛だけはたっぷりと受けているため、過保護児に似た症状を示す。@幼児性 の持続(年齢に比して幼い感じがする)、A人格形成の遅れ(「この子はこういう子だ」というつ かみどころがはっきりしない)、B服従的になりやすい(依存心が強いわりに、わがままで自分 勝手)、C退行的な生活態度(約束や目標が守れず、生活習慣がだらしなくなる)など。全体に ちょうどひざに抱かれておとなしくしているペットのような感じがするので、私は「ペット児」(失 礼!)と呼んでいる。柔和で、やさしい表情をしているものの、生活力やたくましさに欠ける子ど もということになる。(正解B) +++++++++++++++++++++++++++++++++++はやし浩 司 神経質 Q 毎日外出から帰ってきたら、手洗いと、うがいをすることになっています。しかしこのところ、 あなたの子どもは、それを守らなくなりました。 @ 一応、いろいろなハウスルールはあるものの、それほどしっかりと守らせていない。 A とくに健康に関するルールは、例外なく、きびしく守らせるようにしている。 B そのつど臨機応変にすればよい。家庭の役割は、心と体を休めることと考えている。 A 子育ては『まじめ七割、いいかげんさ三割』と覚えておく。これはハンドルの「遊び」のような もの。この遊びがあるから、車も運転できる。子育ても同じ。子育ての基本は、子どもを自立さ せること。そのためにも子どもは「自由」にする。自由とはもともと、「自らに由る」という意味。 つまり子どもには、@自分で考えさせ、A自分で行動させ、B自分で責任を取らせる。過干渉 や過関心は、子どもから考えるという習慣を奪う。過保護は自分で行動するという力を奪う。ま た溺愛は、親の目を曇らせる。たとえば自分の子ども(中三男子)が万引きをして補導されたと きのこと。夜中の間にあちこちを回り、事件そのものをもみ消してしまった母親がいた。「内申 書に書かれると、進学にさしさわりがある」というのが、その理由だった。 とくに子どもが学校に入り、大きくなったら、家庭の役割も、「しつけの場」から、「いやしの場」 へと変化しなければならない。子どもは家庭という場で、疲れた心をいやす。そのためにも、あ まりこまごまとしたことは言わないこと。アメリカの劇作家のソローも、『ビロードのクッションの 上に座るよりも、気がねせず、カボチャの頭に座るほうがよい』と書いている。ここでAを選ん だ人は、このソローの言葉の意味を考えてみてほしい。(正解@B) +++++++++++++++++++++++++++++++++++はやし浩 司 自己中心性 Q あなたは今まで、子どもにおけいこごとをさせるようなとき、どのようにして決めてきました か。 @ そのつど子どもの心を最大限尊重し、子どもに相談しながら決めてきた。 A 子どものことは私が一番よく知っているので、私が親として決めてきた。 B 子どもにはそれだけの知識も経験もないので、やはり判断するのは親だと思う。 A 自己中心性の強い親は、「私が正しい」と信ずるあまり、何でも子どものことを決めてしま う。もともとはわがままな性格のもち主で、自分の思いどおりにならないと気がすまない。このタ イプの親は、思い込みであるにせよ何であるにせよ、自分の考えを一方的に子どもに押しつけ ようとする。本屋へ行っても、子どもに「好きな本を買ってあげる」と言っておきながら、子ども が何か本をもってくると、「それはダメ、こちらの本にしなさい」と、勝手に変えたりする。子ども の意見はもちろんのこと、他人の話にも耳を傾けない。 そこでここでABを選んだ人は、子育てそのものが、どこか常識とかけはなれていないかを 疑ってみる。子育てというのは、理屈どおりにはいかない。子どもは設計図どおりにはいかな い。あるいはあなたの思いどおりにはいかない。そういう前提で、子育てのあり方全体を考えな おす。 親にも、大きく分けて二種類ある。ひとつは、子育てをしながらも、外の世界に向かってどん どんと積極的に伸びていく親。もうひとつは自分の世界の中だけで、さらにものの考え方を先 鋭化する親。自分の世界に閉じこもればこもるほど、風通しが悪くなり、自分の姿を見失う。そ してその見失った分だけ、子どもの心を見失い、それがやがて親子を断絶させる。(正解@) +++++++++++++++++++++++++++++++++++はやし浩 司 バランンス感覚 Q 「ブランコを横取りされました。あなたはどうしますか」と子どもに聞いたとき。あなたの子ど もは…… @ 「けんかする」とか、「ぶん殴ってやる」とか、ものごとを短絡的に考える傾向が強い。 A 深く考える様子を見せ、「それは悪いことだ」というような意見を自分で考える。 B ものごとをまじめに考えようとせず、茶化したり、ふざけたりする。 A 強圧的な過干渉(親がガミガミと命令したり、自分の考えを押しつける)が日常化すると、子 どもからバランス感覚が消える。「バランス感覚」というのは、善悪の判断を冷静に考えて、そ の考えに従って自分の意見を述べたり、行動する力のことをいう。そのため言動がどこか常識 ハズレになりやすい。たとえばコンセントに粘土を詰めて遊んでいた子ども(年長男児)や、友 だちの誕生日のプレゼントに、虫の死骸を箱に入れて送った子ども(小三男児)がいた。さらに 「核兵器か何かで世界の人口が半分になればいい」と言った男子高校生や、「私は結婚して、 早く未亡人になって黒いドレスを着てみたい」と言った女子高校生がいた。 よく誤解されるが、情報量が多いからといって、頭のよい子どもということにはならない。たと えば掛け算の九九をペラペラと言ったからといって、算数のよくできる子どもということにはなら ない。頭のよさは、思考力の深さとハバによって決まる。パスカルもパンセの中で、『思考が人 間の偉大さをなす』と書いている。 その考える子どもにするには、子ども自身に考える場所と時間をたっぷりと与え、考えたこと を積極的に高く評価する。「それはいい考えだ」とほめて伸ばす。(正解A) +++++++++++++++++++++++++++++++++++はやし浩 司 世間体 Q あなたは日ごろから、どの程度、世間の目を気にしていますか。あるいは世間とのかかわ りを、どの程度、大切にしていますか。 @ 人はひとりでは生きることができない。社会的な動物であると考えることが多い。 A 世間的にみて、恥ずかしくない人生を送ることは、人に課せられた義務である。 B 「私は私」という考え方が強く、他人の目を気にすることはほとんどない。 A 見栄、メンツ、世間体。どれも同じようなものだが、この三つから解放されたら、子育てにま つわるほとんどの問題は解決する。言いかえると、多かれ少なかれ、ほとんどの親はこの三つ のしがらみの中で、悩み、苦しむ。 が、日本人ほど、世間体を気にする民族は少ない。長く続いた封建時代の結果、そうなった と考えられる。「皆と同じことをしていれば安心だが、そうでなければそうでない」と。世間体を 気にすればするほど、親もそして子どもも、他人の目の中で生きるようになる。子どもの見方も 相対的なものになり、「うちの子は、A高校だから優秀だ」「隣の子はB高校だから、うちの子よ り劣っている」と。が、それだけではすまない。ある母親は息子(中三)の進学高校別の懇談会 には、一度も出席しなかった。「(そんな高校では)恥ずかしい」というのがその理由だったが、 こうしたものの考え方は、親子の絆を決定的なほどまでに破壊する。 生きる美しさは、いかにその人らしく生きるかで決まる。また生きる実感もそこから生まれる。 言いかえると、他人の目の中で生きれば生きるほど、結局は自分の人生をムダにすることに なる。(正解B) +++++++++++++++++++++++++++++++++++はやし浩 司 過関心 Q あなたにとって子育てとは何ですか。あなたは日ごろ、子育てにどの程度、かかわっていま すか。 @ 私の生活は私の生活。子育ては子育てと割り切って考えることができる。 A 明けても暮れても考えるのは、子どものことばかり。休日の過ごし方も子ども中心。 B 子どもの将来を考えると、何かと心配になり、いても立ってもおられなくなる。 A 子どもの教育に関心をもつことは大切なことだが、しかしそれが度を超すと過関心になる。 こんなことがあった。ある日一人の母親が私のところへやってきて、こう言った。「学校の先生 が、席決めのとき、『好きな子どうし、並んでいい』と言ったが、うちの子(小一男児)のように友 だちがいない子どもはどうすればいいのか。そういう子どもに対する配慮に欠ける発言だ。こ れから学校へ抗議に行くので、あなたもいっしょに来てほしい」と。 しかし過関心は子どもの心をつぶす。が、それだけではすまない。母親の心をも狂わす。過 関心が高じて、育児ノイローゼになる母親は珍しくない。 子育ては人生の「大事」だが、しかし目標ではない。そこでこう考える。『子育ては子離れ』と。 子育てを考えたら、一方で手を抜くことを考える。手を抜くことを恐れてはいけない。子どもとい うのは不思議なもので、手を抜けば抜くほど、たくましく自立する。要するに「程度を超えない」 ということだが、それがまた親子の絆を深める。あのバートランド・ラッセル(イギリスの哲学者・ ノーベル文学賞受賞者)もこう言っている。『子どもに尊敬されると同時に子どもを尊敬し、必要 な訓練はほどこすけれども、決して程度を超えない親のみが、家族の真の喜びを与えられる』 と。(正解@) +++++++++++++++++++++++++++++++++++はやし浩 司 帰宅拒否 Q あなたの子どもが、園や学校から帰ってきたときの様子を、観察してみてください。そのと きあなたの子どもは…… @ ときどき、不自然に帰宅時刻が遅くなることがある。よく寄り道をしてくるようだ。 A 明るい声で、「ただいま!」と言い、うれしそうな表情で、意気揚々と帰ってくる。 B 休みの日などは、ほとんど家にいない。家にいても、すぐどこかへでかけてしまう。 A 不登校ばかりが問題になり、また目立つが、ほぼそれと同じ割合で、帰宅拒否の子どもが ふえている。S君(年中児)の母親がこんな相談をしてきた。「幼稚園で帰る時刻になると、うち の子は、どこかへ行ってしまうのです。それで先生から電話がかかってきて、これからは迎え にきてほしいと。どうしたらいいでしょうか」と。 そこで先生に会って話を聞くと、「バスで帰ることになっているが、その時刻になると、園舎の 裏や炊事室の中など、そのつど、どこかへ隠れてしまうのです。そこで皆でさがすのですが、お かげでバスの発車時刻が、毎日のように遅れてしまうのです」と。私はその話を聞いて、「帰宅 拒否」と判断した。原因はいろいろあるが、わかりやすく言えば、家庭が、家庭としての機能を 果たしていない。まずそれを疑ってみる。 子どもは大きくなるにつれて、外の世界で疲れた心や、キズついた心を、家庭の中でいやす ようになる。つまり家庭が、「やすらぎの場」になる。が、母親にはそれがわからない。S君の母 親も、いつもこう言っていた。「子どもが外の世界で恥をかかないように、私は家庭でのしつけ を大切にしています」と。子どもは無意識のうちにも、いやなことを避けるための行動をする。 帰宅拒否もその一つだが、「家がいやだ」「おもしろくない」という思いが、回りまわって、帰宅拒 否につながる。(正解A) +++++++++++++++++++++++++++++++++++はやし浩 司 一芸 Q あなたの子どもには、「これは!」という得意ワザがありますか。「これだけは人に負けな い」という得意ワザです。 @ これといって目立ったワザはない。何をするにも消極的で、自信がなさそうだ。 A よくする遊びは決まっているが、趣味や方向性が限られていて、それ以外はしない。 B そのことになると目を輝かせて夢中になるものがある。好奇心も全体に旺盛。 A これからは一芸の時代。その一芸が子どもを伸ばす。中には勉強一本という子どももいる が、このタイプの子どもは、その勉強でつまずくと、坂をころげ落ちるかのように、そのまま勉 強からも遠ざかってしまう。そのためにも、一芸を大切にする。 ただし子どもの一芸は、つくるものではなく、見つけるもの。無理につくろうとすると、たいてい 失敗する。子どもの方向性を見きわめながら、伸ばすときは、思い切って伸ばす。時間とお金 をたっぷりとかける。その思いきりのよさが、一芸を伸ばす。こんな例がある。 T子さんは、まだ歩けないうちから、風呂の中で平気でお湯にもぐって遊んでいた。そこで少し 大きくなってから母親が水泳教室に入れてみたところ、案の定、水を得た魚のように泳ぎ始め た。またS君(年長児)は、父親が新車を買ってきたときのこと。スイッチに異常なほどまでに興 味を示した。そこで相談があったので、私はパソコンを買ってあげることをすすめた。このS君 も、そのあと中学へ入るころには、C言語(高級プログラム言語)をマスターするまでになった。 要するに子育てで押しつけは禁物。イギリスの格言にも、『楽しく学ぶ子どもはよく学ぶ』とい うのがある。子どもに何かをさせたかったら、まず楽しいということを教える。あとは子どもに任 せればよい。子どもは自分で伸びる。(正解B) +++++++++++++++++++++++++++++++++++はやし浩 司 逃げ場 Q あなたの子どもは、あなたにしかられたりすると、どこへ逃げていきますか。その場所は、 たいてい決まっていますか。 @ いつも逃げ場が決まっていて、しばらくすると気をとりなおして出てくる。 A 逃げ場はないようだ。そのつどいろいろな場所に身を隠しているようだ。 B このところ家出をするようになった。家から一方向に遠ざかっていくことがある。 A どんな動物にも、最後の逃げ場というのがある。もちろん人間の子どもにもある。子どもが その逃げ場へ逃げ込んだら、親はその逃げ場を荒らしてはいけない。子どもは逃げ場に逃げ 込むことによって、体を休め、疲れた心をいやす。たいていは自分の部屋が逃げ場になるが、 その逃げ場を荒らすと、子どもの情緒は不安定になる。ばあいによっては精神障害の遠因とも なる。あるいはその前の段階として、子どもはほかの場所に逃げ場を求めたり、最悪のばあい には、家出ということにもなりかねない。逃げ場がなくて、犬小屋に逃げた子どももいたし、近く の公園の電話ボックスに逃げた子どももいた。 またこのタイプの子どもの家出は、もてるものをすべてもって、一方向に家出するというと特 徴がある。買い物バッグの中に、野菜やタオル、ぬいぐるみのおもちゃや封筒をつめて家出し た子ども(年長男児)がいた。(これに対して目的のある家出は、その目的にかなったものをも って家を出るので、区別できる。) 子どもが逃げ場へ逃げたら、その中まで追いつめて、叱ったり、説教してはいけない。子ども が逃げ場へ逃げたら、子どものほうから出てくるまで待つ。そういう姿勢が子どもの心を守る。 (正解@) +++++++++++++++++++++++++++++++++++はやし浩 司 ベッドタイムゲーム Q あなたの子どもは、毎晩寝るとき、どんなふうにして、眠りにつきますか。全体としてどういう 様子かを、思い出してみてください。 @ 毎晩、寝させるのに苦労している。夜ふかしをして、翌朝、起きられないことがある。 A 毎晩、同じことを繰り返して眠りにつく。眠ることに恐怖感はもっていないようだ。 B 今まで夜驚症や夢中遊行などの睡眠障害があった。興奮性が強く、なかなか寝ない。 A 子どもは床についてから眠るまで、毎晩、同じことを繰り返す習性がある。これを英語では 「ベッドタイムゲーム」(日本語では、「就眠儀式」)という。このベッドタイムゲームのしつけが悪 いと、子どもはなかなか寝つかなくなるばかりでなく、ばあいによっては情緒そのものが不安定 になることもある。もしあなたの子どもが寝る前になると決まって、ぐずったり(マイナス型)、暴 れたりする(プラス型)ようであれば、このしつけの失敗を疑ってみる。 方法としては、@毎晩同じことを繰り返すようにする。A心安らかな状態を大切にし、就寝前 少なくとも一時間はテレビやゲームなど、はげしい刺激は避ける。Bベッドのまわりにぬいぐる みなどを置いてあげ、心が暖まる雰囲気をつくるなどがある。毎晩本を読んであげるとか、静 かな音楽を聞かせるというのもよい。まずいのは子どもを子ども部屋に閉じ込め、強引に電気 を消してしまうような行為。こうした乱暴な行為が繰りかえされると、子どもは眠ることそのもの に恐怖心を抱くようになる。 ちなみに年中児で睡眠時間(眠ってから起きるまでのネット時間)は、一〇時間一五分、年長 児で、一〇時間(筆者調査)である。(正解A) +++++++++++++++++++++++++++++++++++はやし浩 司 先生 Q 子どもが園や学校から帰ってきたとき、子どもがあれこれ先生の悪口を言い始めました。 そういうときあなたは…… @ 子どもの不平や不満にはしっかりと耳を傾け、話を聞くようにしている。 A 子どもの言い分が正しいときには、子どもをなぐさめたり、励ましたりする。 B 子どもの言い分は聞くには聞くが、判断をくだしたり、先生を批判したりしない。 A 教育もつきつめれば人間関係で決まる。教師と生徒との良好な人間関係が、よい教育の 基本。この基本なくして、よい教育は望めない。そこで大原則。『子どもの前では、先生の悪口 は言わない』。先生を批判したり、あるいは子どもが先生の悪口を言ったとしても、それに相づ ちを打ってはいけない。打てば打ったで、今度は、「あなたが言った言葉」として、それは先生 の耳に入る。必ず、入る。 教育というのは、手をかけようと思えば、どこまでもかけられる。しかし手を抜こうと思えば、 いくらでも抜ける。ここが教育のこわいところでもあるが、それを決めるのが、ここでいう「人間 関係」ということになる。実際、やる気を決めるのは、教師自身ではなく、この人間関係である。 それを一方で破壊しておいて、「よい教育をしてほしい」はない。が、それだけではすまない。 あなたが先生の悪口を言ったり、先生を批判したりすると、子ども自身もまた先生に従わなく なる。一度そうなるとそれが悪循環となって、(損とか得とかいう言い方は好きではないが… …)、結局は子ども自身が損をすることになる。仮に先生に問題があるとしても、子どもの知ら ないところで、問題を処理する。子どもが先生の悪口を言ったとしても、「あなたが悪いからでし ょ」と言ってのける。(正解@B) +++++++++++++++++++++++++++++++++++はやし浩 司 成長 Q あなたの子どもが、何か新しいことができるようになりました。園や学校の先生にほめられ たようなときでも結構です。そのときあなたの子どもは…… @ 親にはあまりそういった報告はしない。たいてい自分の世界で止めてしまうようだ。 A どんなことでも、「見て、見て!」と、喜んで報告にくる。心底うれしそうな顔をする。 B 何かにつけて、自信がなく、「どうせダメ」というような考え方をするようだ。 A 伸びる子どもには、三つの特徴がある。@好奇心が旺盛(いつもあらゆる方向に触覚がの びている)、A生活力がある(自立し、自分で何でもできる)、B頭がやわらかい(頭がやわらか く、臨機応変にものごとに対処できる)。もちろん生まれつきの能力も関係するが、これは遺伝 子の問題。教育的にはあまり意味がない。で、こうした三つの要素を側面から支えるのが、家 庭、なかんずく「親」ということになる。 子どもを伸ばす最大の秘訣は、子どもの成長を喜んでみせること。ウソではいけない。本心 から喜んでみせる。そういう前向きな姿勢が、子どもを伸ばす。が、そうでない親もいる。子ど もが何をするにも、心配ばかりしている。中には「やっぱりあんたはダメ」式の、人格の「核」に 触れるような攻撃をする親もいる。しかしこれはタブー中のタブー。子どもの表情が暗くなって 当然。こういう家庭では、子どもは決して、「見て、見て!」とは言わない。「どうせ、ぼくはダメな 人間」と逃げてしまう。もしそうなら、今日からでも遅くないから、子どもの成長を喜ぶようにす る。たとえテストの点が悪くても、「去年よりはずっとよくなったわね」などと言う。そういう前向き な暗示が子どもを伸ばす。子どもの表情を明るくする。(正解A) +++++++++++++++++++++++++++++++++++はやし浩 司 過信 Q あなたはあなたの子どものことを、どの程度知っていると思いますか。つぎの項目に答えて みてください。 @ 子どもの仲のよい友だちの名前を、三人以上、スラスラと言える。 A 子どもが今、どんなことで夢中になっているか、それを知っている。 B 子どもが今、何を大切にし、そしてそれをどこに大切にもっているかを知っている。 A 『己の子どもを知るは賢い父親だ』と言ったのはシェークスピア(「ベニスの商人」)だが、そ れくらい自分の子どものことを知るのはむずかしい。親というのは、どうしても自分の子どもを 欲目で見る。あるいは悪い部分を見ない。『人、その子の悪を知ることなし』(「大学」)というの もある。こうした親の目は、えてして子どもの本当の姿を見失う原因になる。 ある子ども(小六男児)が、祭で酒を飲んでいて補導された。親は「誘われただけ」と、がんば っていたが、調べてみると、その子どもが主犯格だった。あるいはある夜、一人の父親が、A 君(中一)の家に怒鳴り込んできた。「お宅の子どものせいで、うちの子が不登校になってしま った」と。A君の父親は、「そんなはずはない」とがんばったが、A君は学校でもいじめグループ の中心にいた、など。こうした例は、本当に多い。子どもの姿を正しくとらえることはむずかしい が、子どもの学力となると、さらに難しい。たいていの親は、「うちの子はやればできるはず」と 思っている。成績が悪くても、「勉強の量が少なかっただけ」とか、「調子が悪かっただけ」と。 そう思いたい気持ちはわかるが、しかしそう思ったら、「やってここまで」と思いなおす。(やる・ やらない)も力のうち。子どもを疑えというわけではないが、親の過剰期待ほど、子どもを苦し めるものはない。(正解@AB) +++++++++++++++++++++++++++++++++++はやし浩 司 親孝行 Q 親と子どもの関係について、あなたは日ごろ、どのように考えていますか。「親孝行」という 言葉を聞くと、どんな感じがしますか。 @ 親に産んでもらい、育ててもらったのだから、子どもが親孝行するのは当然のこと。 A 親孝行は美徳のひとつ。子どもは親孝行をして、はじめて一人前の人間になる。 B たとえ親が悪いことをしても、親が子どもに謝る必要はない。親は絶対である。 A 日本では「親孝行」が、当たり前になっている。しかしそういう常識(?)の陰で、人知れず、 それに苦しんでいる人も多い。親を前にすると体が緊張する(三四歳女性)、実家へ帰るのが 苦痛(三〇歳女性)など。しかし世の中には、親をだます子どもがいるが、子どもをだます親も いる。Yさん(六五歳女性)は、息子が海外へ赴任している間に、息子の土地を勝手に転売して しまった。あとで息子が抗議をすると、その母親はこう言ったという。「親が先祖を守るために、 息子の財産を使って何が悪い!」と。 親孝行するかしないかは、あくまでも子どもの問題。もっと言えば、一対一の人間関係が基 本。「親が上で、子は下」という関係では、そもそも良好な人間関係など育たない。親子はあく までも平等。その基本なくして、親孝行はありえない。言いかえると、親は、子どもを「モノ」と か、「所有物」として考えるのではなく、一人の「人間」として認める。すべてはここから始まる。 また親孝行を子どもに求める親というのは、それだけで、依存心の強い親とみる。依存と自 立は、ちょうど対立関係にある。そういう親からは、自立した子どもは生まれない。依存心とい うのは、あくまでも相互的なものである。そんなわけで子どもを自立させたかったら、親自身も 子どもから自立する。またそのほうが親子の絆も太くなる。(正解?) +++++++++++++++++++++++++++++++++++はやし浩 司 叱り方 Q あなたは子どもを叱るとき、つぎの三つのうち、どんなことに心がけていますか。またどのよ うな叱り方をしていますか。 @ 子どもがこわがるほどまで、威圧感を与えないように注意している。 A 子どもの目線まで、自分の目線を落とし、肩を両手で押さえながら叱っている。 B 言うべきことは何度も繰り返し言いながら、あとは時間を待つ。 A 『かわいくば、五つ数えて三つほめ、二つ叱って、よき人となせ』と言ったのは、二宮尊徳 (江戸時代後期の農政家)だが、まさにそのとおり。子どもを叱ったら、必ずほめて仕上げる。 「ほら、あなたもちゃんとできるでしょ」と。決して叱りっぱなしにしてはいけない。これは子育て の大原則。……と言っても、実際にその場になるとむずかしいので、頭の中で格言として、この 言葉を何度も繰り返しておくとよい。『叱ったら、ほめる』と。その叱り方にもコツがある。 ●子どもに威圧感を与えない……『威圧で閉じる、子どもの耳』と覚えておく。親がガミガミと叱 れば叱るほど、子どもの耳は閉じる。つまり叱っても意味がないということ。 ●相手が幼児のときは、目線を幼児の目線まで落とす……親のほうが腰を落とし、幼児の目 線まで自分の目線を落とす。 ●子どもの肩を両手でしっかりと固定し、視線を子どもの目からはずさない……両手で子ども の肩を両側からはさみ、肩をしっかりと固定する。そして叱るときは、子どもの目をしっかりと見 つめ、視線をはずさないようにする。 ●言うべきことを繰り返す……怒鳴ったり、大声をあげたりしない。言うべきことをしっかりと繰 り返し、あとは子どもの判断に任せる。(正解@AB) +++++++++++++++++++++++++++++++++++はやし浩 司 神経症 Q 子どもが「おなかが痛い」と言いました。そこで病院へつれていくと、「どこも悪くありません」 と。そういうときあなたは…… @ 気はもちようだ。こうしたケースでは、まず子どもの仮病を疑ってみる。 A 子どもは気分屋だから、おおげさに考える必要はない。そのうちなおるだろうと思う。 B 子どもの心はデリケート。原因がなくても、本当にあちこちが痛くなることはある。 A 子どもの神経症(心理的な要因が原因で、精神的、身体的な面で起こる機能的障害)は、 まさに千差万別。「どこかおかしい」と感じたら、この神経症を疑う。 精神面の神経症…恐怖症(ものごとを恐れる)、強迫症状(周囲の者には理解できないものに 対して、おののく、こわがる)、不安症状(理由もなく悩む)など。 身体面の神経症……夜驚症(夜中に狂人的な声をはりあげて混乱状態になる)、夜尿症、頻 尿症(頻繁にトイレへ行く)、睡眠障害(寝ない、早朝覚醒、寝言)、嘔吐、下痢、便秘、発熱、 喘息、頭痛、腹痛、チック、遺尿(その意識がないまま漏らす)など。一般的には精神面での神 経症に先立って、身体面での神経症が起こることが多く、身体面での神経症を黄信号ととらえ て警戒する。 行動面の神経症……神経症が慢性化したりすると、さまざまな不適応症状となって行動面に 現れてくる。不登校もその一つということになるが、その前の段階として、無気力、怠学、無関 心、無感動、食欲不振、引きこもり、拒食などが断続的に起こるようになる。 神経症が子どもに現れたら、子どもの側からみて、親の存在を感じないほどまでに、家庭環 境をゆるめる。親があれこれ気をつかうのは、かえって逆効果。子どもがひとりでぼんやりとで きる時間と場所を大切にする。(正解B) +++++++++++++++++++++++++++++++++++はやし浩 司 たくましさ Q あなたが急用で、家をあけることになりました。あなたの子どもが、五、六歳前後という想定 で、子どもの様子を想像してみてください。そのとき…… @ こまごまとした家事を、あれこれ言いつけて、安心してでかけることができる。 A 子どもだけを残して家をあけることは、とてもできない。心配でならない。 B 親の姿が見えないだけで、うちの子はパニック状態になるので、とてもムリ。 A 子どものたくましさは、緊急時をみて判断する。けんかが強いとか、そういうことではない。 ある子ども(年長男児)は、親が急用で家をあけなければならなくなったとき、食事の世話、戸 じまり、消灯など、さらには妹の世話まで、すべてをひとりでやりこなした。こういう子どもをたく ましい子どもという。母親は「やらせればできるものですねえ」と笑っていた。 そのたくましさは、あるべき環境の中で、あるがままに育てれば、自然と子どもの身につく。し かし溺愛、過保護、過干渉、過関心が、日常化すると、そのたくましさが消える。親はよく、「ど うしてうちの子はグズでしょう」と言うが、そういう子どもにしたのは、親自身。中には、「うちの 子は生まれつき、そうだ」と言う人もいるが、生まれたときからグズな子どもは、絶対にいない。 また親の姿が見えなくなっただけでパニック状態になるのを、分離不安という。「捨てられる のではないか」という被害妄想が、不安発作を引き起こすと考えるとわかりやすい。ワーワーと 泣き叫んで、あとをおいかけるプラス型と、オドオドして混乱状態になるマイナス型がある。どち らにせよ、家庭教育の失敗が原因と考えてよい。無理をしないで、半年単位で、少しずつ心を 解きほぐすようにして対処する。(正解@) ++++++++++++++++++++++++++++++++++はやし浩司 やさしさ Q 「やさしい子ども」という言葉を聞いたとき、あなたはつぎのどのタイプの子どもを想像しま すか。 @ 柔和で従順で、大声をだして騒ぐこともなく、いつもおだやかな様子の子ども。 A いつも相手を喜ばすことを考え、サービス精神が旺盛な子ども。 B だれかが「ほしい」と言えば、すぐそのものを与えてしまうタイプの子ども。 A やさしい子どもというのは、相手を喜ばすことを知っている子どもをいう。ある男の子(年長 男児)は幼稚園でみかけると、いつもだれかを三輪車に乗せ、それを押していた。そこで、ある 日私が、「たまには君が押してもらってはどう?」と聞くと、その子どもはこう言った。「ぼくはこ のほうが楽しいもん」と。そういう子どもをやさしい子どもという。 このやさしさは、子ども自身が苦労をして、はじめて身につく。対照的な位置にいるのが、ドラ 息子、ドラ娘。自分勝手でわがまま。ものの考え方が自己中心的で、その分、ねたみやすく、 ひがみやすい。他人が喜ぶのを好まない。 そのやさしさは、ちょっとしたコツで、子どもの中から引き出すことができる。たとえば買い物 につれていっても、いつも、「これがあると、パパが喜ぶわね」「これを妹の○○に、半分分けて あげてね」と、だれかを喜ばすようにしむける。そしてそれがとても気持ちよいことだということ を教える。 やさしさというのは、心の問題。一見乱暴そうな子どもでも、やさしい子どもはいくらでもいる。 また自分のものを、平気で人にあげてしまう子どもを、やさしい子どもとは言わない。(正解A) ++++++++++++++++++++++++++++++++++はやし浩司 まじめ Q あなたはあなたの子どもに、いわゆる「まじめな子」になってほしいと願っています。そのと き、どんな子どもを考えますか。 @ 自分で考え、自分で結論を出し、自分の行動を律することができる子ども。 A 言われたことを従順に、しっかりとやりとげることができる子ども。 B 書き取りや計算練習など、決められたことをコツコツと努力する子ども。 A 言われたことを、言われたまま、従順に、きちんとする子どもを、「まじめな子」と誤解してい る人がいる。あるいは書き取りや計算練習などを、黙々とつづける子どもを、「まじめな子」と誤 解している人がいる。しかしこれは誤解。このタイプの子どもは、その裏で、心をゆがめやす く、かえってあとあと何かの問題を起こすことが多い。 教育、なかんずく幼児教育の世界では、まじめな子というのは、自らを律する力をもっている 子どもをいう。こんな子ども(小三女児)がいた。 バス停でたまたま出あったので、「ジュースを買ってあげようか」と声をかけたときのこと。そ の子どもはこう言った。「これから家でごはんを食べますからいいです」「ジュースを飲んだら、 食べられなくなります」と。こういう子どもをまじめな子どもという。 要するに自分で善悪を考えながら、その判断にしたがって行動できる子どもということにな る。しかしその「考える」ということがむずかしい。「考える」ことには、ある種の苦痛がともなう。 そのためほとんどの人は、それを避けようとする。つまりそういうおとなたちの姿を見て、子ども もまた、考えることを避けようとする。言いかえると、考える子どもにしたかったら、親がまず、 子どもの前で考えて見せる。またそれにまさる教育法はない。(正解@) ++++++++++++++++++++++++++++++++++はやし浩司 未来 Q 子どもを伸ばす親がいれば、子どもをつぶす親もいます。子どもを伸ばすコツは、つぎの三 つのうちの、どれだと思いますか。 @ いつも未来を楽しみにさせるように仕向ける。明日は今日よりよくなると教える。 A いつも前向きの暗示を与え、子どもがどんどんと伸びていることを教える。 B 子どもに何か問題があれば、むしろ反対に、それを前向きにほめてみる。 A 『未来をおどさない』は大鉄則だが、これを裏がえしていうと、『未来を楽しみにさせる』とい うことになる。たとえば幼稚園への入園を迎えるころは、「幼稚園は楽しい」「先生はいい人」 「あなたは先生にほめられる」など、そのつど前向きの暗示をかける。まちがっても、「幼稚園 はこわい」式の暗示をかけてはいけない。一人、こんなことを言う母親がいた。「幼稚園では、 一〇数えるうちに服を着られないと、先生に叱られるわよ。先生はママと違ってこわいわよ」 と。あるいは「幼稚園では先生の言うことを聞かないと、叩かれる」と。その母親は子どもに緊 張感をもたせるためにそう言ったのかもしれないが、子どもによっては、まさに逆効果。しかも この時期、一度未来に対して不安をいだくようになると、それがそのまま一つの思考回路とな って残り、子どもは未来に対していつも不安をいだくようになる。そうなればなったで、家庭教育 の大失敗というもの。 子どもに何か問題があれば、むしろ反対に、それをほめてみる。たとえば服の脱ぎ着が遅い ようであれば、「あなたはこの前より、早く服が着られるようになったわね」、計算が遅いと感じ ていたら、「あら、先月より、はやくできるようになったわね」と。『欠点はほめてなおす』というの は、そういう方法をいう。(正解@AB) ++++++++++++++++++++++++++++++++++はやし浩司 教育 Q 子どもの勉強を考えるとき、あなたは「勉強ができる、できない」を、何を基準にして判断し ますか。 @ 何といっても、勉強ができる、できないの評価は、学校での成績で決まる。 A 勉強すればするほど、勉強というのは、できるようになる。努力が大切。 B できる、できないではなく、どのように考えたか、考えるかで判断する。 A あのアインシュタイン(一八七九〜一九五五、ドイツの物理学者)は、こう言っている。「教育 とは、学校で習ったことをすべて忘れ去ったあとに残っているものをいう」(「教育について」) と。学校で習ったことを忘れたからといって、教育がムダだったということにはならない。むしろ 「忘れる」ことを理由に、教育を否定する人のほうが、問題だ。……と言っても、知識教育をそ のまま肯定することもできない。知識そのものは、生きるための武器であり、ないよりはあった ほうがよい。しかし知識が多いからといって、アインシュタインが言うところの、「あとに残ってい るもの」になるとは限らない。大切なのは、その中身であり、思考プロセスということになる。 たとえばこんなことがある。中学生に教えているとき、その子どもがもっている能力のほんの 少し先の問題を出してみると、「できない」「わからない」「まだ習ってない」と言い、自分では考 えようともしない子どもがいる。が、反対にあちこちテキストを見ながら、調べ始める子どもい る。この時点で重要なことは、「その問題が解ける、解けない」ということではない。「解くために どのような思考プロセスを働かすか」ということである。もちろん「できない」とこぼす子どもよ り、調べだす子どものほうがすばらしい。またそういう方向に子どもを導いていくのが、教育と いうことになる。(正解B) ++++++++++++++++++++++++++++++++++はやし浩司 部屋 Q 子ども部屋で、机、イス、本棚などの配置を考えます。あなたは何が大切なポイントだと思 いますか。 @ 心の休まる部屋を考える。子ども自身がくつろげる部屋であることが重要。 A 機能的に勉強ができるように机やイスを配置する。何かと便利なほうがよい。 B 中央を広くあけ、勉強第一に考え、机や棚類はカベに寄せておくのがよい。 A 子ども部屋にはいくつかのポイントがある。@机の前には、できるだけ広い空間を用意す る。A棚や本棚など、圧迫感のあるものは背中側に配置する。B座った位置からドアが見える ようにする。C光は左側からくるようにする(右利き児のばあい)。Dイスは広く、たいらなもの。 かためのイスで、机と同じ高さのひじかけがあるとよい。E窓に向けて机を置くというのが一般 的だが、あまり見晴らしがよすぎると、気が散って勉強できないということもあるので注意する。 机の前に広い空間があると、開放感が生まれる。一方、ドアが背中側にあると、心理的に落 ちつかないことがわかっている。意外と盲点なのが、イス。深々としたイスはかえって疲れる。 ひじかけがあると、作業が格段と楽になる。ひじかけがないと、腕を机の上に置こうとするた め、どうしても体が前かがみになり、姿勢が悪くなる。 さらに学習机をどこに置くかだが、子どもが学校から帰ってきたら、どこでどのようにして体を 休めるかを観察してみるとよい。好きなマンガなどを、どこで読んでいるかをみるのもよい。た いていは台所のイスとか、居間のソファの上だが、もしそうであれば、思い切って、そういうとこ ろを勉強場所にしてみるという手もある。子どもは進んで勉強するようになるかもしれない。(正 解@) ++++++++++++++++++++++++++++++++++はやし浩司 受験 Q 子どもが成長するにつれて、「受験」という関門を、そのつど通らねばなりません。それにつ いて、あなたは…… @ 何ごとにつけ、「結果」が大切。『終わりよければすべてよし』ともいう。 A 今、がんばることによって未来が開ける。いつも未来に向かって努力することが大切。 B 輝かしい未来があるなら、現在が多少、犠牲になってもしかたない。 A 英語に、『休息を求めて疲れる』という格言がある。愚かな生き方の代名詞のようにもなっ ている格言である。「いつか楽になろう、なろうと思ってがんばっているうちに、疲れてしまって、 結局は何もできなくなる」という意味だが、この格言は、言外で、「そういう生き方をしてはいけ ません」と教えている。 たとえば子どもの教育。小学校教育は、中学校へ入るための準備教育と考えている人がい る。同じように、中学校は、高校へ入るため。高校は、大学へ入るため。そして大学は、よき社 会人になるため、と。こうした子育て観、つまり常に「現在」を「未来」のために犠牲にするという 生き方は、ここでいう愚かな生き方そのものと言ってもよい。いつまでたっても子どもたちは、 自分の人生を、自分のものにすることができない。あるいは社会へ出てからも、そういう生き方 が基本になっているから、結局は自分の人生をムダにしてしまう。「やっと楽になったと思った ら、人生も終わっていた……」と。 ロビン・ウィリアムズが主演する、『今を生きる』という映画があった。「今という時を、偽らず に、懸命に生きよう」と教える教師。一方、進学指導中心の学校教育。この二つのはざまで、 一人の高校生が自殺に追いこまれるという映画である。この「今を生きる」という生き方が、 『休息を求めて疲れる』という生き方の、正反対の位置にある。(正解?) +++++++++++++++++++++++++++++++++++はやし浩 司 スキンシップ Q あなたの子どもが何かにつけて、あなたに体をすり寄せてきます。そういうときあなたは、 それをどう思いますか。 @ 抱きグセがつくと、子どもの自立が遅れるので、できるだけ拒否するようにする。 A 何かのサインなので、ていねいに子どもの心の中をさぐってみるようにする。 B スキンシップには不思議な力があるので、いつも大切にしている。 A 子どもの心の問題で、何か行きづまりを感じたら、子どもは抱いてみる。ぐずったり、泣い たり、だだをこねたりするようなときである。「何かおかしい」とか、「わけがわからない」と感じた ときも、やさしく抱いてみる。しばらくは抵抗する様子を見せるかもしれないが、やがて収まる。 と、同時に、子どもの情緒(心)も安定する。 ところが、だ。こんなショッキングな報告もある。抱こうとしても抱かれない子どもが、四分の 一もいるという。「全国各地の保育士が、預かった〇歳児を抱っこする際、以前はほとんど感じ なかった『拒否、抵抗する』などの違和感のある赤ちゃんが、四分の一に及ぶことが、『臨床育 児・保育研究会』(代表・汐見稔幸氏)の実態調査で判明した」(二〇〇〇年・中日新聞)と。 よく抱きグセが問題になるが、そうした問題は、アメリカやオーストラリアを訪れてみると、吹 っ飛んでしまう。向こうでは、恋人どうしだけではなく、夫婦も親子も、ごく日常的にスキンシップ を大切にしている。あのブッシュ大統領も、いつも妻と手をつないで歩いている! 日本人は国 際的にみても、そのスキンシップが決定的に不足している。質の高い、濃厚なスキンシップを 大切にする。「質が高い」というのは、子どもに深い安心感を与えるスキンシップのことをいう。 (正解AB) ++++++++++++++++++++++++++++++++++はやし浩司 愛情 Q 四歳になった娘が、下の子どもが生まれたことが原因で、赤ちゃんがえりを起こしてしまい ました。愛情不足が原因というのですが…… @ やはり愛情不足だと思うので、上の娘に対する愛情問題を考えなおしてみる。 A 上の子も、下の子も平等にかわいがることが大切。平等をつらぬけばよい。 B 赤ちゃんがえりの原因は、上の子の嫉妬と、わがままによるものだと思う。 A 親が子どもに与える愛情に、絶対的な尺度はない。どの程度、どれだけ深く与えればよい というものではない。しかし子どもは、その「落差」にはきわめて敏感に反応する。 たとえばよく知られた現象に赤ちゃんがえりがある。下の子どもが生まれたことがきっかけと なって、子どもが急に赤ちゃんぽくなる症状をいう。言葉や言い方そのものが赤ちゃんぽくなっ たり、おねしょをしたり、指しゃぶりをしたりするようになる。(反対に、下の子に攻撃的に出る 子どももいる。)こういうケースでは、ほとんどの親は、「上の子も下の子も、平等にかわいがっ ている」と言う。「だから文句はないはずだ」と。しかし上の子どもにしてみれば、それまで一〇 〇あった愛情が、半分の五〇に減ったことが問題なのだ。つまり子どもへの愛情の問題は、 量ではなく、落差の問題である。 ふつうはこうした赤ちゃんがえりを起こさないように、下の子を妊娠したときから、上の子教育 を始める。たとえば上の子が下の子の誕生を楽しみにさせるような雰囲気づくりをするなど。ま ずいのはある日突然、下の子が生まれたというような状態にすること。子どもの側からみて、 嫉妬するのは当然。また嫉妬がいかに恐ろしい感情であるかは、いまさらここで説明する必要 はない。(正解@) ++++++++++++++++++++++++++++++++++はやし浩司 愛想 Q あなたの子どもは、だれに対しても愛想がよいほうですか。それとも愛想が悪いほうです か。あなたはどちらが理想的だと思いますか。 @ 愛想がよければ、それだけ人にかわいがられるので、子どもの愛想はよいほうがよい。 A ヘラヘラと愛想がよいからといって、心を開いていることにはならない。 B 人に取り入るのがうまい子どもは、愛情不足を疑ってみる。好ましいことではない。 A 子どもは生後六か月くらいから一歳半にかけて、人見知りする時期がある。見知らぬ人に 近寄られたり抱かれたりすると、ワーワー泣いて抵抗したり、いやがったりする。じっと相手を 見すえることもある。しかしこれはきわめて自然な恐怖反応であり、それをおかしいとか、悪い とか決めてかかってはいけない。親子の愛着が密な子どもほど、人見知りする。またこの時期 をとおして子どもは親との絆(愛着)を深める。 ふつう穏やかな家庭で、豊かな愛情を受けて育った子どもほど、静かな落ち着きを示す。ど っしりしているというか、態度がふてぶてしく、大きい。反対に不安定な家庭で、愛情飢餓の状 態で育てられた子どもほど、反対にヘラヘラとし、見た目には愛想がよくなることがある。一見 人なつっこく見えるが、その実だれにも心を許さない。許さない分だけ、心は冷たい。あるいは 自分がキズつくのを恐れるあまり、先に自分から相手をキズつけて遠ざかろうとする。たとえば 自分が好意を寄せている相手に、わざと意地悪をして嫌われるなど。どこかものの考え方がゆ がんでくる。 昔から『愛想がいい子はいい子』と言うが、そんな単純な問題でもない。子どもが見せる愛想 にもいろいろな問題が隠されている。子どもは表面的な症状だけをみて、判断してはいけな い。(正解AB) +++++++++++++++++++++++++++++++++++はやし浩 司 虐待 Q 子どもへの虐待について、「親だから子どもを愛しているハズ」という、ハズ論を言う人がい ます。あなたはそれについて…… @ そのとおりだと思う。母性本能というのは、人間本来の本能。だれにも否定できない。 A 本能も変調するときがある。親の愛もこうしたハズ論で片づけることはできない。 B 子どもを虐待する親にしても、母性本能があるはず。その本能を信ずるべき。 A 親だから……というふうに、ものごとは決めてかかってはいけない。「親だから子どもを愛す る心があるはず」とか。先日も朝のワイドショーを見ていたら、キャスターの一人がそう言ってい た。しかし実際には、人知れず子どもを愛することができないと悩んでいる母親は多い。「弟は 愛することができるが、兄はどうしてもできない」とか、あるいは「子どもがそばにいるだけで、 わずらわしくてしかたない」とか。東京都精神医学総合研究所の調査でも、自分の子どもを気 があわないと感じている母親は、七%もいることがわかっている。そして「その大半が、子ども を虐待していることがわかった」(同研究所調査・有効回答五〇〇人・二〇〇〇年)という。 その研究所の妹尾栄一氏らの調査によると、約四〇%弱の母親が、虐待もしくは虐待に近 い行為をしているという。(妹尾氏らは虐待の診断基準を作成し、虐待の度合を数字で示して いる。「食事を与えない」「ふろに入れたり、下着をかえたりしない」などの一七項目を作成し、 それぞれについて、「まったくない……〇点」「ときどきある……一点」「しばしばある……二点」 の三段階で親の回答を求め、虐待度を調べた。その結果、「虐待あり」が、有効回答(四九四 人)のうちの九%、「虐待傾向」が、三〇%、「虐待なし」が、六一%であったという。)ハズ論だ けで、親の心を決めつけてはいけない。(正解A) +++++++++++++++++++++++++++++++++++はやし浩 司 学力 Q あなたは日本の子どもたちが、今、どの程度、家で勉強していると思いますか。つぎの三つ の中から、選んでください。 @ 家での学習時間が三〇分以下の小学生が、全体の四〇%。中学生で三〇%。 A 家ではほとんど勉強しない高校生が、全体の二〇%以上。 B 日本の中学生たちは、平均して毎日、三時間以上、テレビやビデオを見ている。 A 学習時間が、三〇分以下……小学生で、四〇・三%、中学生で、三〇・七%、高校生で、 三七・一%。家ではほとんど勉強しないと答えた中、高校生は、二三・一%、だそうだ(ベネッセ コーポレーション「第三回学習基本調査」・〇一年)。反対に「テレビを見る時間」については、 小学校の中学年で、二時間以上が四六%、高学年で、五九%(静岡県出版文化会・〇一年調 査)。日本の子どもたちがますます勉強嫌いになり、かつ家での学習時間が短くなっていること が、これらの調査でわかる。 国際教育到達度評価学会(IEA、本部オランダ・一九九九年)の調査によると、日本の中学 生の学力は、数学については、シンガポール、韓国、台湾、香港についで、第五位にはなって いるが、同じ調査で、「数学が好き」と答えた割合は、日本の中学生が最低(四八%)。「理科 が好き」と答えた割合は、韓国についでビリ二であった(韓国五二%、日本五五%)。学校の外 で勉強する学外学習も、韓国についでビリ二。一方、その分、前回(九五年)と比べて、テレビ やビデオを見る時間が、二・六時間から三・一時間にふえている。 これらの調査から、日本の中学生たちがますます勉強嫌いになり、かつ家での学習時間が 短くなっていることがわかる。が、それにしても小学生よりも高校生のほうが、勉強時間が短い とは!(正解@AB) +++++++++++++++++++++++++++++++++++はやし浩 司 叱られ方 Q あなたの子どもは、あなたが強く叱るとき、どのような様子を見せますか。一番、近いもの を選んでください。 @ 親の言うことに静かに耳を傾け、悪いと思っているときは、静かに反省しているよう。 A 親が何かを叱ると、ギャーギャーと叫ぶなど、興奮状態になり、手がつけられない。 B あれこれ反論してくる。口答えが多く、そのやりとりだけで疲れてしまうこともある。 A 叱られじょうずな子どもがいる。親や先生が叱るときだけ、いかにも反省していますというよ うな態度を示す。しおらしく頭をうなだれたりする。しかしそういう様子にだまされてはいけない。 「だます」という言い方には少し語弊があるかもしれないが、子どもの心というのは、もっと別の 角度からみる。あるいは子どもを叱るというのは、もっと別のことと考える。 子どもの叱り方は、子育ての要。叱り方をまちがえると、伸びる子どもも伸びなくなってしま う。あるいは反対に子どもの伸びる芽をつんでしまうこともある。そこでその叱り方。たとえば 『威圧で閉じる子どもの耳』と覚えておく。親が威圧的になればなるほど、子どもの耳は閉じる ということ。そして一度閉じると、あとはいくら叱っても意味がない。実際こんな子ども(小五男 児)がいた。親に叱られるときは、いつも心の中で「♪ポケモン言えるかな」を歌っているという のだ。この歌は、ポケモンの名前を連ねただけの意味のない歌だが、意味がないだけに、そう いうときに役にたつらしい? なお親の威圧的な過干渉が日常的につづくと、子どもは俗にいう「常識ハズレ」になりやす い。自分で静かに考えて行動するということができなくなるためと考える。(正解B) +++++++++++++++++++++++++++++++++++はやし浩 司 意地 Q 子どもの意地とがんこ、それにわがままは、区別します。あなたは子どものこれらの三つの 状態を、どこで区別しますか。 @ 意地を張るには、それなりの理由があるが、わがままにはない。 A かたくなな態度をとり、融通がきかなくなるのを、がんこという。 B 意地っ張りな子どもは、性格やものの考え方がはっきりしていて、わかりやすい。 A レストランで、その子どもが「もう一枚ピザを食べる」と言い出した。そこでお母さんが、「お 兄ちゃんと半分ずつならいい」と言ったのだが、「どうしてももう一枚食べる」と。そこで母親はも う一枚ピザを頼んだのだが、その子どもはヒーヒー言いながら、そのピザを食べたという。「お となでも二枚はきついのに……」と、その母親は笑っていた。 今、こういう意地っ張りな子どもが少なくなった。丸くなったというか、やさしくなった。心理学の 世界では、意地を「自我」という。英語では、EGOとか、SELFとかいう。少し昔の日本人は、 「根性」といった。教える側からすると、このタイプの子どもは、人間としての輪郭がたいへんハ ッキリとしている。ワーワーと自己主張するが、ウラがなく、あつかいやすい。正義感も強い。 ただし意地とがんこ。さらに意地とわがままは区別する。カラに閉じこもり、融通がきかなくな ることをがんこという。毎朝、同じズボンでないと幼稚園へ行かないというのは、がんこ。また 「あれを買って!」「買って!」と泣き叫ぶのは、わがままということになる。がんこは、ふつう心 の問題がからむことが多い。わがままは一般的には、無視するという方法で対処する。「わが ままを言っても、だれも相手にしない」という雰囲気を子どものまわりにつくる。(正解@AB) +++++++++++++++++++++++++++++++++++はやし浩 司 常識 Q あなたの子どもの学力が、かなり低下してきました。日本にはドロップアウト制度はありま せんが、もしあなたの子どもが、落第を勧められたら…… @ どんなことをしても、その学年の、ふつう学級で学習できるようにしたい。 A 子どものためなら、落第もやむなし。またそのほうが子どものためにもよい。 B 落第なんて、とんでもないこと。人生の入り口で落第を経験させることはできない。 A アメリカにはホームスクールという制度がある。親が教材一式を自分で買い込み、親が自 宅で子どもを教育するという制度である。希望すれば、州政府が家庭教師を派遣してくれる。 日本では、不登校児のための制度と理解している人が多いが、それは誤解。アメリカだけでも 九七年度には、ホームスクールの子どもが、一〇〇万人を超えた。毎年一五%前後の割合で ふえ、二〇〇一年度末には二〇〇万人に達しただろうと言われている。それを指導しているの が、「Learn in Freedom」(自由に学ぶ)という組織。「真に自由な教育は家庭でこそできる」とい う理念がそこにある。地域のホームスクーラーが合同で研修会を開いたり、遠足をしたりして いる。またこの運動は世界的な広がりをみせ、世界で約千もの大学が、こうした子どもの受け 入れを表明している(LIFレポートより)。 「自由に学ぶ」という組織が出しているパンフレットには、J・S・ミルの「自由論」を引用しなが ら、「国家教育というのは、人々を、彼らが望む型にはめて、同じ人間にするためにある」「教 育は人々の心の上に専制政治を行うための手段」とある。 日本でもホームスクール(日本ではフリースクール)の理解者がふえている。なお二〇〇一年 度に、小中学校での不登校児は、一三万九〇〇〇人を超えた。中学生では、三六人に一人 が不登校児ということになる。この数字は前年度より五〇〇〇人多い。(正解?) +++++++++++++++++++++++++++++++++++はやし浩 司 一芸 Q 受験期をひかえ、子どもの成績がさがってきました。原因は、どうも大好きなサッカーのよう です。あなたは…… @ 子どもは抵抗するだろうが、しばらくサッカーをやめさせ、勉強に専念させる。 A 今までどおり、サッカーはサッカーとしてつづけさせ、ほかに方法をさがす。 B 受験が終わればサッカーをさせてあげるとか言い、できるだけ子どもを説得する。 A 子どもの一芸は、聖域と思うこと。この聖域を踏み荒らすようなことがあると、子どもの心は 大きな影響を受ける。よくある例が、「成績がさがったから、(好きな)サッカーはやめさせる」と いうもの。こういうケースでは、サッカーをやめさせればさせたで、成績はかえってさがる。 子どもが一芸にのめりこむ背景には、そうせざるをえない子ども自身の心の問題が隠されて いることが多い。いわば自分の心のすきまをうめるための代償行為ともいえるもので、それを 無理に奪うと、子どもによっては情緒そのものが、不安定になることがある。H君(中二)がそう だった。H君は、やがて朝起きられなくなり、つづいて昼と夜が逆転し始めてしまった。食事も 不規則になり、食べたり食べなかったり。何とか学校へは行くものの、どこかボーッとしてしま い、感情的な反応そのものも鈍くなってしまった。 また一芸が、子どもによってはいわば生きがいそのものになっていることが多い。ある女の 子(中学生)は手芸で、また別の男の子(小学生)はスケボーで自分を光らせていた。もしそう ならなおさら、それを奪ってはいけない。さらに……。 これからはプロが生き残る時代といってもよい。少なくとも世界は、そういう方向に向かって 進んでいる。そういうことも考えながら、子どもの一芸は大切にする。(正解A) +++++++++++++++++++++++++++++++++++はやし浩 司 危機感 Q 夜、寝る前になって突然、あなたの子どもが、「あしたの宿題を、まだやっていない」と言い 出しました。そのときあなたは…… @ たいてい子どもを起こし、子どもといっしょに宿題を片づけてあげる。 A 子どもは寝させたまま、できるだけ親のほうで、宿題を片づけてあげる。 B 「あした先生に叱られてきなさい」と言って、そのまま寝させる。 法句経の一節に、『己こそ、己のよるべ。己をおきて、たれ(誰)によるべぞ』というのがある。 法句経というのは、釈迦の生誕地に残る、原始経典の一つだと思えばよい。釈迦は、「自分こ そが、自分が頼るところ。その自分をさておいて、だれに頼るべきか」と。つまり「自分のことは 自分でせよ」と教えている。 この釈迦の言葉を一語で言いかえると、「自由」ということになる。自由というのは、もともと 「自らに由る」という意味である。つまり自由というのは、「自分で考え、自分で行動し、自分で 責任をとる」ことをいう。好き勝手なことを気ままにすることを、自由とは言わない。子育ての基 本は、この「自由」にある。 過保護ママと呼ばれるタイプの母親は、子どもに自分で結論を出させない。あるいは自分で 行動させない。いろいろな過保護があるが、子どもに大きな影響を与えるのが、精神面での過 保護。「乱暴な子とは遊ばせたくない」ということで、親のひ護のもとだけで子育てをするなど。 子どもは精神的に未熟になり、ひ弱になる。俗にいう「温室育ち」というタイプの子どもになる。 外へ出すと、すぐ風邪をひく。 己のことは己によらせる。一見冷たい子育てに見えるかもしれないが、子育ての基本は、子 どもを自立させること。その原点をふみはずして、子育てはありえない。(正解B) +++++++++++++++++++++++++++++++++++はやし浩 司 教師 Q 何かと忙しそうに動きまわっている先生と、どこかヒマをもてあまし、のんびりしている先生 がいます。あなたはどちらの先生を選ぶでしょうか。 @ 忙しそうな先生を選ぶ。ほどよい緊張感があり、その緊張感が子どもを伸ばす。 A のんびりしている先生。その分だけ子どもの勉強をていねいにみてくれる。 B その中間の先生。忙しすぎるのも、ヒマすぎるもの、よくないと思う。 A 昔から、『大工は、忙しい大工に頼め』という。ヒマな大工ほど、ていねいな仕事をしてくれそ うな気がするが、実際には、ヒマな大工ほど、仕事がルーズ。同じように、『先生は、忙しい先 生に頼め』ということになる。とくに子どもの教育には、ある程度の緊張感が必要。子どもはそ の緊張感に巻き込まれながら、伸びる。のんべんだらりとした教師のもとでは、子どもは伸びな い。 話は少しそれるが、アメリカ・ミシガン大学のW・ゲーリング博士らの研究によると、何でもギ ャンブルで負けたりすると、「頭が熱くなる」ということが、科学的に実証されたというのだ。「勝 敗の表示から、平均〇・二六五秒後から、脳の前頭葉皮質部から、強い神経系処理信号が出 る」(サイエンス・〇二年)と。しかもそれは「勝ったときよりも、負けたときのほうが信号が強く出 る傾向があった」という。これはギャンブルの話だが、ほどよい緊張感が頭を熱くすると考えて よい。 また教育というと、日本人はすぐ知識教育を考えるが、実際には、先生から受ける無形の教 育のほうが重要。先生の生きザマが、子どもの心に大きな影響を与える。園や学校を選ぶとき もそうで、どこかキビキビした雰囲気のある園や学校ほど、よい園や学校ということになる。(正 解@) +++++++++++++++++++++++++++++++++++はやし浩 司 権威主義 Q あなたか、あなたの夫が、だれかと電話で話している様子を思い出してみてください。その とき…… @ 無意識のうちにも、相手との上下関係を判断し、話し方、声の調子などが変わる。 A 目上と感ずる人には、必要以上にペコペコし、そうでない人には尊大ぶったりする。 B 相手がだれでも、上下を区別することなく、ほぼ同じような調子で話している。 A その人が権威主義的なものの考え方をする人かどうかは、電話のかけ方をみればわか る。権威主義的なものの考え方をする人は、無意識のうちにも、人間の上下関係を厳格に判 断する。それが電話の応対のし方に現れる。目上の人や、地位、肩書きのある人には必要以 上にペコペコし、そうでない人にはいばってみせる。私の知人にそういう人がいる。相手によっ て電話のかけ方が、まるで別人のように変わるからおもしろい(失礼!)。 日本人は伝統的に、この権威に弱い。あのテレビドラマの『水戸黄門』がいまだに、視聴率を 二〇〜二五%(東海地区調べ)も稼いでいるのもそのひとつ。三つ葉葵の紋章を見せて、「控 えおろう!」と一喝すれば、みなが頭をさげる。日本人にはたまらないほど痛快な場面だが、し かし昔、オーストラリアの友人が私にこう聞いた。「ヒロシ、もし水戸黄門が悪いことをしたら、 日本人はどうするのか。それでも頭をさげるのか」と。 親が権威主義的であればあるほど、子どもは親の前では仮面をかぶるようになる。そしてそ の分だけ、子どもの心は親から離れる。仮にうまくいっているように見える家庭があったとして も、それは子ども自身がきわめて従順か、あるいは子ども自身も権威主義的なものの考え方 を受け入れてしまっているかのどちらかとみる。どちらにせよ、たいてい親子関係はぎくしゃくし てくる。キレツから断絶へと進むことも多い。(正解B) +++++++++++++++++++++++++++++++++++はやし浩 司 代償的過保護 Q このところあなたの子どもが、あなたの思いどおりにいかないことが多くなりました。そうい うときあなたは…… @万事、子どもにあわせるしかないと思う。なるようにしかならないのが、子育て。 Aイライラし、親としての重圧感を覚える。強いあせりも感ずることもある。 B子どもというのは保護される存在であり、その範囲で親の指示には従うべき。 A 本来、過保護というのは親の愛がその背景にある。その愛があり、何かの心配ごとが重な って、親は子どもを過保護にするようになる。しかしその愛がなく、子どもを自分の支配下にお いて、自分の思いどおりにしたいという過保護を、代償的過保護という。いわば過保護もどき の過保護、親のエゴにもとづいた、自分勝手な過保護と思えばよい。 代償的過保護の特徴は、@親の支配意識が強く、A子どもを自分の思いどおりにしたいとい う意欲が強い。そのためB心配過剰、過干渉、過関心になりやすい。C子どもを人間というよ りは、「私のモノ」として見る傾向が強く、子どもが自立して自分から離れていくのを望まないな どがある。 あなたという親にも、いろいろな面があり、その中の一部に、この代償的過保護的な部分が あるかもしれない。もしそうなら、あなたの中のどの部分が代償的過保護であり、どこから先が 代償的過保護でないかを、冷静に判断してみる。 この問題は、子育てのどこがどのように代償的過保護的であるかに気がつくだけで、問題の ほとんどは解決したとみる。ほとんどの親は、それに気づかないまま、代償的過保護を繰り返 す。そしてその結果として、親子の間を大きく断絶させたり、反対に子どもを、自立できないひ 弱な子どもにしたりする。(正解@) +++++++++++++++++++++++++++++++++++はやし浩 司 思考 Q 五年前のあなた自身と比較してみてください。五年前にしていたことや、五年前に考えてい たことでもいいです。そのとき…… @以後、毎月のように新しい本を読んだりして、ものの考え方が大きく変わった。 A五年前にはなかった趣味や習慣が、この五年間で新しく生まれた。 Bどこか生活が単調で、この五年間、子育てに追われるだけで進歩はなかったようだ。 A 大半の人は、無意識のうちにも、考えることを避けようとする。しかし子どもを考える子ども にしたかったら、親がまず、自ら考えてみせる。それにまさる教育法はない。そこでつぎのよう な症状がみられたら、あなたの思考は停止しているとみてよい。 ●ループ性……一〇年一律のごとく、同じことを考え、それを繰り返す。とくに人生論や価値観 など、思想の根幹にかかわるようなことについて、何ら変化がない。 ●退化性……思考が停止すると、その段階から思想は退化し始める。スポーツ選手が、練習 をやめるのに似ている。練習をやめたとたん、技術は低下する。思想も同じ。 ●先鋭化……思想が縮小化するとき、多くのばあい、その思想は先鋭化する。ものの考え方 が極端になったり、かたよったりするようになる。 考えるからこそ、人間なのである。『われ思う、ゆえにわれあり』(「方法序説」)と言ったデカ ルト、『人間は考えるアシである』(「パンセ」)と言ったパスカル、さらに『私は何か書いていると きのほか、考えたことはない』(「随想録」)と、ただひたすら文を書きつづけたモンテーニュなど がいる。この日本では伝統的に知識偏重教育が主流で、そのため、ものをよく知っている子ど もイコール、賢い子どもと誤解しやすい。しかしそれこそ、まさに世界の非常識。少なくともこれ からの教育ではない。(正解@A) +++++++++++++++++++++++++++++++++++はやし浩 司 虚言 Q 子どもはウソをつかないというのは、ウソ。子どもによっては、シャーシャーとウソをつきま す。しかし心配なウソは…… @すぐバレるようなウソ。バレバレのウソで、矛盾だらけのウソ。 Aあたかも虚構の世界に住んでいるかのように、表情を変えないで言うウソ。 B思い込みが強く、ウソをつき始めると、最後の最後までつきとおすウソ。 A ウソをウソとして自覚しながら言うウソ「虚言」と、あたかも空想の世界にいるかのようにして つくウソ「空想的虚言」は、区別して考える。 虚言というのは、自己防衛(言い逃れ、言いわけ、自己正当化など)、あるいは自己顕示(誇 示、吹聴、自慢、見栄など)のためにつくウソをいう。子ども自身にウソをついているという自覚 がある。母「誰、ここにあったお菓子を食べたのは?」、子「ぼくじゃないよ」、母「手を見せなさ い」、子「何もついてないよ。ちゃんと手を洗ったから……」と。 同じようなウソだが、思い込みの強い子どもは、思い込んだことを本気で信じてウソをつく。 「昨日、通りを歩いていたら、幽霊を見た」とかいうのが、それ。その思い込みがさらに激しく、 現実と空想の区別がつかなくなってしまった状態を、空想的虚言という。 イギリスの格言に、『子どもが空中の楼閣を想像するのはかまわないが、そこに住まわせて はならない』というのがある。子どもがあれこれ空想するのは自由だが、しかしその空想の世 界にハマるようであれば、注意せよという意味である。 子どものウソは、静かに問いつめてつぶす。「なぜ」「どうして」を繰り返しながら、最後は、「も うウソは言わないこと」ですます。必要以上に子どもを責めたり、はげしく叱ってはいけない。追 いつめると、子どもはますますウソがうまくなる。(正解AB) +++++++++++++++++++++++++++++++++++はやし浩 司 能力 Q 「うちの子はやればできるはず」と、たいていの親は、そう考えています。あなたはこの言葉 をどう思いますか。 @能力は平等のはず。その能力に差がつくのは、やる気の問題。そのとおりだと思う。 A「やる気」も能力のうち。「やればできるはず」と、子どもを追い込むのは正しくない。 Bやる気がないのは、根性がないから、根性を鍛えれば、やる気も出てくるはず。 A イギリスの格言に、『馬を水場へ連れて行くことはできても、水を飲ますことはできない』とい うのがある。要するに最終的に子どもが勉強するかしないかは、子どもの問題。大脳生理学の 分野でも、つぎのように説明されている。 大脳半球の中心部に、間脳や脳梁という部分がある。それらを包み込んでいるのが、大脳 辺縁系といわれるところだが、ただの「包み」ではない。認知記憶をつかさどる海馬もこの中に あるが、ほかに価値判断をする扁桃体、さらに動機づけを決める帯状回という組織がある(伊 藤正男氏)。つまり「やる気」のあるなしも、大脳生理学の分野では、大脳の活動のひとつとし て説明されている。つまり「考えるにしても、一生懸命で、乗り気で考えるばあいと、いやいや考 えるばあいとでは、自ずと結果が違う。結果がよければさらに乗り気になるというように、動機 づけが大切であり、これを行っているのが帯状回である」(日本実業出版社「脳のしくみ」新井 康允氏)ということらしい。 親はよく「うちの子はやればできるはず」と言う。しかし脳というのは、あらゆる部分がそれぞ れに仕事を分担しながら、有機的に機能している。いくら能力(大脳皮質の連合野)がすぐれて いても、やる気が起こらなかったら、能力は十分に発揮されない。つまり『水を飲む気のない馬 に、水を飲ませることはできない』のである。(正解A) +++++++++++++++++++++++++++++++++++はやし浩 司 学力 Q 〇二年度から新学習指導要領によって、小学校で、約三割の教科内容が削減されまし た。あなたはこれについて…… @子どもの学力が低下するので反対。公立学校の子どもはますます不利になる。 A日本の教育そのものが、もうにっちもさっちもいかない状態になっているからだと思う。 B教師が雑務ばかりに追われ、肝心の授業そのものがおろそかになるのではと心配。 A 二〇〇二年三月末の読売新聞社の調査によれば、小中学校の教科内容が削減されるこ とに対して、六七%もの人がそれに反対していることがわかった。「新学習指導要領の削減 に、反対六七%、完全学校週五日制に、反対六〇%(賛成三六%)」と。とくに教科内容の削 減については、小学校高学年児をもつ親の七一%が、また中学生をもつ親の七三%が反対し ていることがわかった。で、問題はその理由だが、トップは、「学力が低下する」。これが六 九%。小学校の高学年児をもつ親の七六%、中学生をもつ親の七四%が、そう答えている。 読売新聞は「学力低下に対する危機感をもっているため」と分析しているが、これはウソ。 親たちが心配しているのは、「学力の低下」ではなく、「自分の子どもが受験競争で不利にな る」こと。簡単に「三割削減」というが、三割といえば、六年掛ける〇・三で、約一・八年分という ことになる。わかりやすく言えば、小学校の六年間のうち、約二年分が削減されるということ。 これからは今まで小学四年で勉強していたことを、六年ですることになる。私立小学校や中学 校は「削減しない」と言っているから、この差は大きい。受験ということになったら、公立学校へ 通っている子どもは、決定的に不利である。親たちが心配している点は、すべてこの一点に集 中する。(正解@AB) +++++++++++++++++++++++++++++++++++はやし浩 司 運筆能力 Q 子どもにこまかいぬり絵をさせてみてください。そのときあなたの子どもは、どのようにして 色をぬるでしょうか。 @縦線、横線、曲線をたくみに使い分け、こまかい四角や丸をじょうずにぬる。 A常識的な色づかいをし、いつも子どもらしいぬくもりのある絵になる。 Bぬり絵は子どもをワクに閉じ込めるので、子どもにぬり絵をさせることには反対。 A ぬり絵には、いくつか、すばらしい効果がある。 ●運筆能力を養う……手でペンや鉛筆をもって絵や文字をかくという能力は、いわば特殊な能 力である。ある程度の指導と訓練があってはじめて、それができるようになる。しかもその時期 は、かなりはやく、年中児(五歳児)になるころには、すでにその能力は定着する。だから子ど もにペンをもたせるようになったら、ぬり絵をすることをすすめる。子どもはこまかいところを、 縦線、横線、あるいは円い線を使いながらぬりつぶすことを覚える。文字の学習に入る前に、 ぬり絵をするとよい。 ●色彩感覚……たとえば白黒の線だけでかいた、森や家や川のある絵をわたし、子どもに色 をぬらせてみてほしい。色彩感覚が豊かな子どもは、色づかいが自然で、おとなが見てもほっ とするような色づかいで色をぬる。そうでない子どもは、たとえば紫色の空、茶色の川、黒い家 など、どこかぞっとするような色をぬる。(緑の木を茶色にぬるようであれば、色覚障害が疑っ てみる。)その色彩感覚も、ぬり絵で養うことができる。 色彩心理学の世界には、幼児が使う色によって、子どもの心理を推しはかるという方法もあ るが、あまり神経質になる必要はない。色づかいになれていない子どもなどは、ときとして不自 然な色づかいをすることがある。(正解@A) +++++++++++++++++++++++++++++++++++はやし浩 司 早期教育 Q 近所の子どもが、英会話教室や学習塾に通い始めました。そういう話を聞いて、あなたは …… @スタートが少しでも早ければ、それだけ勉強がよくできるようになると思う。 A漢字のトメ、ハネ、ハライなども、できるだけ早い時期に教えたほうがよい。 B幼児教育というのは、子どもになるための準備教育。その準備は怠ってはいけない。 A よく誤解されるが、早期教育が悪いのではない。悪いのは「やり方」をまちがえたとき。たと えば胎教。しかし胎教そのものよりも、悪いのは、そうした母親の姿勢そのもの。まだ子どもが 望みもしないうちから、(望むわけがないが……)、親が勝手に教育を始める。子どもの意思な ど、まったく無視。こういうリズムは一度できると、それがずっと子育てのリズムになってしまう。 それが悪い。 またたいていの親は、小学校でするような勉強を、先取りして教えるのが、早期教育と誤解し ている。年中児に漢字を教えたり、掛け算の九九を覚えさせたりするなど。もっとも漢字をテー マにすることは悪いことではない。漢字を複雑な図形ととらえると、漢字はおもしろいテーマとな る。それをつかった応用はいくらでもできる。私もよく子どもたちの前で、漢字を見せるが、漢 字を教えるのではなく、漢字のおもしろさを教える。ここに先取り教育と、早期教育の違いがあ る。ただこの日本では、「知識や知恵をつけさせるのが教育」ということになっている。そして早 期教育とは、知識や知恵をつけさせることだと多くの親は思っている。これは誤解というより も、世界の常識からは大きくかけ離れている。幼児の教育を考えるときは、早期教育、先取り 教育、それに幼児教育の三つは、分けて考えるとよい。混同すればするほど、子育てが混乱 する。(正解なし) +++++++++++++++++++++++++++++++++++はやし浩 司 関係 Q 何かのことで、子どもに注意したいことがあったとします。そのときあなたは子どもを前にし て…… @子どもに嫌われるようなことはしたくないので、できるだけがまんするようにしている。 A子どもに何かを言うと、反対に子どもの機嫌をそこねそうなので、注意はできない。 B何でもサラッと言うことができる。子どももすなおに親の話を聞いてくれる。 A 以前『遠慮は黄信号』という格言を考えた。子どもの中にその遠慮を感じたら、親子関係は かなり危険な状態にあるとみてよい。 遠慮するというのは、たがいに心を許さない状態と考えてよい。もっとも他人との関係なら、 ある程度の遠慮はつきものだし、むしろ遠慮なくわがもの顔でふるまうほうが、問題ということ もある。それはそれとして、心を許せないというのは、それ自体がたいへんなストレスとなる。 親子とて例外ではない。「実家の親に会うだけで、神経が疲れる」「正月に実家に向かうだけで 言いようのない緊張感に襲われる」というのであれば、要注意。良好な親子関係など、望むべ くもない。 同じことが子どもにも言える。あなたの子どもはあなたの前で態度も大きく、図々しいだろう か。あなたのいる前で、平気で好き勝手なことをしているだろうか。ときに体を休め、ときにあな たに甘えてくるだろうか。もしそうならそれでよし。しかしどこかあなたの目を気にしたり、あなた の機嫌をうかがうようなところがあれば、あなたは今の子育てをかなり反省したほうがよい。今 は、一見、何ごともなくうまくいっているように見えるかもしれないが、やがてあなたとあなたの 子どもの間には、すき間風が吹くようになる。そしてそのすき間風が親子断絶の引き金となる。 (正解B) +++++++++++++++++++++++++++++++++++はやし浩 司 うしろ姿 Q 生活や子育てで苦労している姿を、「親のうしろ姿」といいます。あなたはこのうしろ姿を… … @できるだけ子どもに、見せるようにしている。『子は親のうしろ姿を見て育つ』という。 A見せたくなくても見せてしまうが、できるだけ見せないようにしている。 B親への感謝の念をもたせるためにも、親のうしろ姿はしっかりと子どもに見せておく。 A 親は子どもに「産んでやった」「育ててやった」と恩を着せる。子どもは子どもで、「産んでも らった」「育ててもらった」と恩を着せられる。親のうしろ姿は、まさにそのために利用される。日 本型の子育ての特徴は、ここにある。そしてその結果、親にベタベタ甘える子どもイコール、か わいい子イコール、よい子とする。反対に独立心が旺盛で、親の言うことを聞かない子どもを、 昔から「鬼っ子」として嫌う。 子育ての目標は、子どもを自立させること。そして親は、一度は子どもに対して、「あなたの 人生はあなたのものだから、思う存分、あなたの人生を生きなさい」と肩を叩いてあげてこそ、 親の義務を果たしたことになる。安易な孝行論や、「家」で、子どもをしばってはいけない。いわ んやそれを子どもに求めたり、強制してはいけない。子どもの人生は、あくまでも子どもの人 生。もちろん子どもが自分で考えて、親のめんどうをみるとか、家の心配をするというのであれ ば、それはあくまでも子どもの勝手。子どもの問題。 よく日本は依存型社会だと言われる。「生きるのは私」と考えるよりも先に、「人が何とかして くれるだろう」と考える。どこかでいつも他人に甘えるような生き方をする。そういう社会から抜 け出るためにも、恩着せがましい子育てはしない。親は親でどこまでも前向きに生きる。それ が結局は長い目で見て、親と子どもの絆を深めることになる。(正解A) +++++++++++++++++++++++++++++++++++はやし浩 司 不安 Q うちの子は、何をしても心配です。すべての行動に問題があるようで、子どもの将来を考え ると、不安でなりません…… @子どもの将来を心配するのは、親の務め。ひとつずつ問題を克服していくしかない。 A心配先行型の親から見ると、子どものすべてが心配になる。まず親自身の心を変える。 B子どもの見方そのものが、まちがっている。これは子どもの問題ではなく、親の問題。 A 少し前ビデオで見た映画(イラン映画「桜桃の味」)の中に、こんなジョークがあった。 ある男が病院へ来てこう言った。「ドクター、頭を押さえても痛い。腹を押さえても痛い。足を 押さえても痛い。体中、どこを押さえても痛い。私は何の病気でしょうか」と。するとそのドクター は、こう言った。「あなたはどこも悪くない。ただあなたの指の骨が折れているだけだよ」と。 子どもの世界でも、ほんの少しだけ見方を変えると、ものの考え方も一八〇度変わるというこ とが、よくある。「うちの子は何もかもダメだ」と思うときも、見方を変えると一変する。ダメなの は、子どもではなく、親の見方なのだ。 勉強はしない。夜な夜なコンビニの前に座り、酒を飲む。タバコを吸う。叱るどころか、こわく て話をすることもできない。子育ても、どこかで歯車が狂うと、そうなる。そしてそういうとき親 は、深い絶望感にさいなまれる。子どもを産んだことを後悔する親さえいる。が、そういうときで も、ダメなのは子どもではなく、子どもを見る、親の見方なのだ。もし子育てで行きづまったら、 このジョークを思い出し、あなたの見方そのものを変えてみる。できれば「生きている」という原 点から、子どもを見つめなおす。とたん、すべての問題が解決するはずである。(正解AB) +++++++++++++++++++++++++++++++++++はやし浩 司 おねしょ Q 子どもがおねしょをするようになりました。あなたはつぎのどの対処法を大切にしますか。 @おねしょは、あくまでも随伴的な症状と考え、子どもを包む環境の改善にこころがける。 Aおねしょはあくまでも習慣的なもの。夜トイレに行かせたり、水分を減らしたりする。 B五、六歳児にもなっておねしょをすること自体おかしい。子どもをよく説得する。 A いわゆる生理的ひずみをストレスという。多くは精神的、肉体的な緊張が引き金になること が多い。たとえば急激に緊張すると、副腎髄質からアドレナリンの分泌が始まり、その結果心 臓がドキドキし、さらにその結果、脳や筋肉に大量の酸素が送り込まれ、脳や筋肉の活動が 活発になる。が、そのストレスが慢性的につづくと、副腎機能が亢進するばかりではなく、「食 欲不振や性機能の低下、免疫機能の低下、低体温、胃潰瘍などの種々の反応が引き起こさ れる」(新井康允氏)という。こうしたストレスが日常的に重なると、脳の機能そのものが変調す るというのだ。おねしょについても、最近では、大脳生理学の分野で、脳の機能変調説が常識 になっている。つまり子どもの意思ではどうにもならない問題という前提で考える。 で、子どもがここでいうような、「変調」を見せたら、いわば心の黄信号ととらえ、家庭のあり方 を反省する。手綱にたとえて言うなら、思い切って、その手綱をゆるめる。一番よいのは、子ど もの側から見て、子ども自身がだれの目を感ずることもなく、ひとりでのんびりとくつろげるよう な環境を用意する。子どものおねしょについても、そのおねしょをなおそうと考えるのではなく、 家庭のあり方そのものを考えなおす。そしてあとは、あきらめて、時がくるのを待つ。(正解@) +++++++++++++++++++++++++++++++++++はやし浩 司 性差 Q うちの子は男の子なのに、このところ女の子のするような遊びをしたがって困ります。そう いうときあなたは…… @男と女は本質的に違うはずなので、女の子の遊びはできるだけやめさせる。 A子どもはいろいろな時期を経て、成長していく。そういう時期があってもよい。 B同性愛者になると心配なので、専門の医療機関に相談して、対処する。 A 肉体的な性差を「セックス」。社会的、文化的、伝統的な性差を「ジェンダー」という。もちろ ん男女の間には、越えがたいセックスがある。それはそれとして、問題はジェンダー。このジェ ンダーについては、それ自体、意味がなく、それから生まれる偏見と誤解をなくすのが、今、世 界の常識にもなっている。 で、男らしさ、女らしさを決めるのが、アンドロゲンというホルモンであることは、よく知られて いる。男性はこのアンドロゲンが多く分泌され、女性には少ない。さらに脳の構造そのものに も、ある程度の性差があることも知られている。そのため男は、より男性的な遊びを求め、女 はより女性的な遊びを求めるということらしい。(ここでどういう遊びが男性的で、どういう遊び が男性的でないとは書けない。それ自体が、偏見を生む。) ただ子どものばあい、こうした性差が明確でなく、時期的に、男児が女児の遊びを求めたり、 女児が男児の遊びを求めたりすることは、よくある。私も小学三年生くらいのとき、人形がほし くてたまらなかったことがある。そこで伯母に内緒で作ってもらい、毎晩抱いて寝たことがある。 だからといって、今、どうこうということはない。こうした現象は半年単位で、様子をみるのがよ い。また同性愛者になるかならないかは、もっと本質的な理由によるという。(正解A) +++++++++++++++++++++++++++++++++++はやし浩 司 笑い Q 園や学校の参観日などで、あなたの子どもの様子を観察してみてください。何か先生がお もしろい話をしたときのことです。 @みなが笑うようなとき、自分もどっと大声を出してゲラゲラと笑う。 A静かでおとなしく、家での様子とは違う。大声を出して笑うことはない。 B園や学校で、集団生活になじめず、先生にも心を許さない。神経疲労を起こしやすい。 A 「笑う」ことにより、心は解放される。しかも大声で笑えば笑うほどよい。「笑う」という行為に は、不思議な力がある。言いかえると、大声で笑える子どもに心のゆがんだ子どもはまずいな い。反対に、どこか心がつかめない子どもや、どこか心がゆがんだ子どものばあい、大声で笑 わせることによって、それがなおることがある。 ふつう威圧的な過干渉、気が抜けない過関心が日常化すると、子どもの心は内閉する。さら に症状が進むと、萎縮する。子どもらしいハツラツとした表情が消え、動作そのものが緩慢に なったりする。急に何かを言いつけても、機敏に行動できないなど。 「笑う」ということを簡単に考えている人も多いが、実際には、年中児(満五歳児)で、みなとい っしょに、大声で笑えない子どもは、一〇人のうち、一〜二人は必ずいる。みなが笑っていて も、顔をそむけて、クックッと笑うなど。もしそうなら、子どもの問題というより、親の問題と考 え、家庭のあり方そのものをかなり反省する。 今、親子でありながら、親に対して心を開くことができない子どもがふえている。子どものばあ い、心を開いているかどうかは、抱いてみればわかる。心を開いている子どもは、抱くと、スー ッと体をこちらへすり寄せてくる。さらに心が通いあうと、呼吸のリズムまで同じになる。本来、 親子は、そうでなければならない。(正解@) +++++++++++++++++++++++++++++++++++はやし浩 司 命令 Q 子どもを指導するとき、あなたはどんな言い方をしていますか。子どもが何か悪いことをし たときのことを思い浮かべてみてください。 @ 「〜〜しなさい」「〜〜してはダメ」という、命令型の言い方が多いようだ。 A 「〜〜してね」「〜〜したらどう」と、提案したり、考えさせるような言い方をする。 B 具体的に、何かをやってみせて、それをまねさせるようにしている。 A 「〜〜をしてはダメ」「〜〜はやめなさい」というのを、禁止命令という。この禁止命令が多け れば多いほど、育て方がヘタということになる。イギリスの格言にも、『無能な教師ほど、規則を 好む』というのがある。家庭でいうなら、『無能な親ほど、命令が多い』(失礼!)ということにな る。 私も子どもたちを教えながら、この禁止命令は、できるだけ使わないようにしている。たとえ ば「立っていてはダメ」というときは、「パンツにウンチがついているなら、立っていていい」、「騒 ぐな」というときは、「ママのオッパイを飲んでいるなら、しゃべっていい」と言うなど。また指しゃ ぶりをしている子どもには、「おいしそうだね。先生にも、その指をなめさせてくれない?」と声を かける。禁止命令が多いと、何かにつけて会話がトゲトゲしくなる。そのトゲトゲしくなった分だ け、子どもは心を閉ざす。 一方、ユーモアは、子どもの心を開く。『笑えば伸びる』というのが私の持論だが、それだけで はない。心を開いた子どもは、前向きに伸びる。イギリスにも、『楽しく学ぶ子どもは、よく学ぶ』 というのがある。心が緊張すると、それだけ大脳の活動が制限されるということか。私は勝手 にそう解釈しているが、そういう意味でも、緊張は避けたほうがよい。禁止命令には、どうしても その緊張感がついてまわる。(正解AB) +++++++++++++++++++++++++++++++++++はやし浩 司 心 Q あなたは子どもの前で、したいことをし、言いたいことを言っていますか。たとえばオナラで も、平気で出していますか。 @親子の間にも、たしなみというものがある。子どもの前でオナラなど、考えられない。 A日常的に、平気で出している。子どもがそこにいることなど考えたこともない。 B言いたいことさえ、子どもの反応がこわくて、つい遠慮してしまうことが多い。 A 親子にかぎらず、人間関係というのは、相互的なもの。よく「子どもは、あるがままを受け入 れろ」という。それはそうだが、それは口で言うほど、簡単なことではない。簡単なことでないこ とは、親ならだれしも知っている。が、方法がないわけではない。 「あるがままを受け入れる」ということは、まず自分も、「あるがままをさらけ出す」ということ。 子どもについていうなら、子どもにはまず、あるがままの自分をさらけ出す。美しいものも、きた ないものも、みんな見せあう。悲しいときは悲しいと言い、うれしいときはうれしいと言う。少なく とも、親子はそういう関係でなければならない。心を許すということは、そういうことをいうが、そ れが互いの絆を深めるコツということにもなる。が、もしそれができないというのであれば、もう すでにその段階で、親子の断絶は始まっていると考えてよい。 ただここで注意しなければならないのは、あなたが子どもに自分をさらけ出したからといっ て、子どももそれに応ずるとはかぎらないということ。ばあいによっては、子どもはあなたに幻 滅し、さらには軽蔑するようになるかもしれない。しかしそうなったとしても、それはしかたないこ と。親子関係もつきつめれば、人間関係。つまりさらに言いかえると、親になるということは、そ れだけきびしいことだということになる。(正解A) +++++++++++++++++++++++++++++++++++はやし浩 司 親子 Q あなたの子どもは、よく友だち(とくに異性)の誕生日パーティなどに招待されますか。あな た自身はどうですか? @いつも誕生日に誘われる。何をするにも、いろいろな親たちから声をかけられる。 A園や学校で、遠足や運動会などで、何かの世話役や委員に選ばれたことがない。 Bこちらから誘うことはあるが、しかし誘われることはめったにない。 A よきにつけ、悪しきにつけ、親は子で目立つ。つまり目立つ子どもの親は、目立つ。たとえ ば園や学校で、よい意味で目立つ子どもの親は、あれこれ世話役や委員の仕事を任せられ る。そんなわけでもしあなたが、よく何かの世話役や委員の仕事を、園や学校から頼まれると したら、それはあなたの子どもがよい意味で目立つからと考えてよい。 子どもというのは、家へ帰ってから、園や学校での友だちの話をする。ほかの親たちはそう いう話をもとにして、あなたのことを知る。もちろん悪い意味で目立つ子どももいる。しかしそう いうばあいは、世話役や委員などの仕事は回ってこない。一つの基準として、あなたの子ども が、友だち(とくに異性)の誕生会などのパーティによく招かれるようであれば、あなたの子ども は園や学校で人気者と考えてよい。実際に子どもを招くのは親。その親は日ごろの評判をもと にして、どの子どもを招待するかを決める。同性のときは、ギリやつきあいで呼ぶことも多い が、異性となると、かなり人気者でないと呼ばない。 先日もある母親が、こう相談してきた。「いつも世話役を命じられて困っています」と。そこで、 私はこう言った。「それはあなたの子どもがいい子だからですよ」と。ついでながら人気のある 子どもというのは、明るく活発で、運動や学習面で目立つ子どもをいう。やさしい子どもや、おも しろい子どもも、それに含まれる。(正解@) +++++++++++++++++++++++++++++++++++はやし浩 司 志向 Q 正月など、子どもにお年玉などを渡したとき、あなたの子どもはそのお年玉を、どのように 使うでしょうか。 @だいたいそのときまでにほしいものを決めていて、それを買ったりして使ってしまう。 Aいつもあればあるだけ使ってしまう。貯金するという習慣そのものが、ないようだ。 Bいつも何かの目標や目的をもっていて、そのために貯金するという姿勢が見られる。 A ドラ息子(失礼!)には、つぎのような症状がある。@ものの考え方が自己中心的。自分の ことはするが他人のことはしない。他人は自分を喜ばせるためにいると考える。ゲームなどで 負けたりすると、泣いたり怒ったりする。自分の思いどおりにならないと、不機嫌になる。あるい は自分より先に行くものを許さない。いつも自分が皆の中心にいないと、気がすまない。Aもの の考え方が退行的。約束やルールが守れない。目標を定めることができず、目標を定めても、 それを達成することができない。あれこれ理由をつけては、目標を放棄してしまう。ほしいもの にブレーキをかけることができない。生活習慣そのものがだらしなくなる。その場を楽しめばそ れでよいという考え方が強くなり、享楽的かつ消費的な行動が多くなる。Bものの考え方が無 責任。他人に対して無礼、無作法になる。依存心が強い割には、自分勝手。わがままな割に は、幼児性が残るなどのアンバランスさが目立つ。Cバランス感覚が消える。ものごとを静か に考えて、正しく判断し、その判断に従って行動することができない、など。 一方、このタイプの子どもとは対照的に、前向きに伸びていく子どももいる。「お金をためて、 楽器を買って、それで練習して、コンクールに出る」というように。ドラ息子をマイナス型というな ら、このタイプの子どもはプラス型ということになる。(正解B) +++++++++++++++++++++++++++++++++++はやし浩 司 兄弟 Q 昔から『総領の甚六』(おっとりしていて、世渡りがへた)という。また『末っ子は甘えん坊』と いう。ではまん中の子どもはどうか…… @ほかの子どもとくらべて親子の関係が、疎遠になりやすい。 Aほかの子どもとくらべると、親子の親密度が高くなり、より良好な親子関係をつくる。 Bほかの子どもとくらべて、愛情豊かになり、親への依存心が強くなる。 A 「三人兄弟の第二子は、両親に電話する回数が少なく、疎遠になりやすいことが東京大学 大学院のアンケート調査でわかった」(読売新聞〇二年五月)という。 同大学院認知行動科学研究所が、全国の三人兄弟の大学生男女一二九人に、一か月に何 回、両親に電話するかを聞いたところ、長子……六・九回、第二子……四・六回、末子…… 五・九回と、第二子は明らかに少なかった。男女別に分けても、傾向は同じだったという。さら にその報告によれば、「出生順位と親子関係について、一九九八年にカナダで行われた研究 でも、長子や末子にくらべて、中間の子どもは両親をあまり親しい人物と考えていないという結 果が出ている」という。理由として、「長子は両親が子育てにかける手間を独占できる期間があ り、末子も、その後に弟妹がいないので、親が世話をしやすいため」と分析している。そして「一 方、じゅうぶんに手をかけてもらっていない中間の子どもは、両親への親密度を減らす」とも。 そこで読売新聞はつぎのように報道している。「東大とカナダの調査結果は、(中間の子は、 両親への親密度を減らすという)学説を裏づけるデータと言えそうだ。同研究室は、『中間の子 だけに特有の性格があることは興味深い。電話以外の行動も調べてみたい』と述べている」 と。(正解@) +++++++++++++++++++++++++++++++++++はやし浩 司 学校 Q 子どもがあなたに、「明日は、ズル休みをして、家族で遊びにいこうよ」とねだったとします。 そのときあなたは…… @学校をズル休みするなどというのは、とんでもない考え方である。絶対、反対! Aたまにはそういうことをして、息抜きをしたり、気晴らしをするのはいいことだと思う。 Bそのまま不登校児になったり、休みグセがつくのではないかと、心配になる。 A 子どもを見れば、すぐ「学校、学校」という民族は、そうはいない。私たち日本人は明治以 後、徹底してそう教育を受けている。「学校」という言葉に独特の響きを感ずる。先日もテレビ を見ていたら、戦場の跡地でうろうろしている子ども(一〇歳くらい)に向かって、「学校はどうし ているの?」と聞いていたレポーターがいた(アフガニスタンで、〇二年四月)。その少し前も、 そのシーズンになると、海がめの卵を食用に採取している子どもたちが紹介されていた。南米 のある地域の子どもたちだった。その子どもたちに向かっても、レポーターが、「今日は、学校 は行かなくてもいいの?」(NHKテレビ)と。 そこでズル休みの勧め。ときどき学校はサボって、家族で旅行をすればよい。私たち家族も よくした。平日にでかけると、たいていどこの遊園地も行楽地もガラあきで、のんびりと旅行す ることができた。またそういうときこそ、「子どもを教育しているのだ」という充実感を味わうこと ができた。よく「そんなことをすれば、休みぐせがつきませんか」と心配する人がいたが、心配 無用。たいてい翌日は、子どもたちはすがすがしい表情で学校へでかけていった。ウソだと思 うなら、あなたも一度、ズル休みをしてみるとよい。私の意見に目を白黒させている人ほど、そ うだ。あなたも明治以後、体をがんじがらめにしている束縛の鎖を、少しは解き放つことができ るかもしれない。(正解A) +++++++++++++++++++++++++++++++++++はやし浩 司 能力 Q あなたはあなたの子どもを横において、あなたの友人と立ち話を始めました。そういうとき あなたの子どもは…… @すぐ「退屈ウ〜」「おうちへ帰ろうヨ〜」とか言って、あなたを困らすことが多い。 Aまわりの様子を楽しみながら、静かに待っていることができる。 Bすぐ身のまわりから、自分なりの遊びを発見したり、考えたりして時間をつぶし始める。 A 伸びる子どもと伸び悩む子どもの違いといえば、「頭のやわらかさ」。頭のやわらかい子ど もは伸びる。そうでない子どもは伸び悩む。たとえば頭のやわらかい子どもは、多芸多才。友 だちも多く、趣味も特技も幅広く、そのつどそれぞれの分野で、自分を楽しませることができ る。子どもにいたずらはつきものだが、そのいたずらも、どこかほのぼのとした子どもらしさを 感じさせるものが多い。食パンをくりぬいて、トンネルごっこ、スリッパをつなげて、電車ごっこな ど。 一方伸び悩む子どもは、融通がきかない。ある子どもとこんな会話をしたことがある。子「ま ちがえたところはどうするのですか?」、私「なおせばいい」、子「消しゴムで消すのですか」、私 「そうだ」、子「きれいに消すのですか」、私「そうだ」と。実際、小学三年生の子どもとした会話 である。 頭をやわらかくするためには、意外性を大切にする。子どもの側からみて、「アレッ!」と思う ような環境をいつも用意する。私も最近、こんな経験をしたことがある。オーストラリア人の夫 婦を、ホームステイさせたときのこと。彼らは朝食に、白いご飯にチョコレートをかけて食べて いた。それを見たとき、私は頭の中で「知恵の火花」がバチバチと飛ぶのを感じた。単調で変 化のない生活は、子どもの知能の大敵と考える。(正解AB) +++++++++++++++++++++++++++++++++++はやし浩 司 心 Q あなたの子どもが、園あるいは学校から帰ってきて、疲れた様子でいつものところに座って います。そのときあなたは…… @いつものことだし、何をどう考えているか、手にとるようによくわかる。 Aどうしてそういう状態なのか、ときどきわからなくなることがある。 B親の前では、どこか仮面をかぶったようなところがある。心がつかみにくくなった。 A 心をゆがめ始める子どもには、いくつかの特徴がある。その中でも最大の特徴は、心がつ かめなくなるということ。よい子ぶったり、見た目にはよくできた子といった印象を与えることが 多い。静かで従順、何を言いつけても、それにおとなしく従ったりする。 つぎに「すなおさ」が消える。幼児教育の世界で、「すなおな子ども」というときには、二つの意 味がある。ひとつは、心の状態と表情が一致していること。悲しいときには悲しそうな顔をす る。うれしいときにはうれしそうな顔をする、など。もうひとつは、「心のゆがみ」がないこと。いじ ける、ひがむ、つっぱる、ひねくれるなどの心のゆがみがない子どもを、すなおな子どもという。 心がいつもオープンになっていて、やさしくしてあげたり、親切にしてあげると、それがそのまま スーッと子どもの心の中にしみこんでいくのがわかる。が、心がゆがんでくると、どこかでその やさしさや親切がねじまげられてしまう。私「このお菓子、食べる?」、子「どうせ宿題をさせた いのでしょう」と。 家庭でも、こうした症状が見られたら、子どもをなおそうと考えるのではなく、家庭のあり方を かなり真剣に反省する。そしてここが重要だが、子どもの中に心のゆがみを感じたら、「今の 状態をより悪くしないこと」だけを考え、一年単位でその推移を見守る。あせればあせるほど、 逆効果になるから注意する。(正解@) +++++++++++++++++++++++++++++++++++はやし浩 司 職業 Q 子どもの将来を考えたとき、あなたは子どもには、どんな職業についてほしいと思っていま すか。その職業の内容ですが…… @医師や弁護士、会計士など、特権的な職業についてほしい。 A才能を伸ばしながら、個性的な仕事についてほしい。 B公務員など、安定的で、楽な職業についてほしい。のんびりとした生活をしてほしい。 A 職業観というのは、国によって違う。私がメルボルン大学に留学していたときのこと。当時、 メルボルン市全体でも、正規の日本人留学生は私一人だけだった。 私が友人の部屋でお茶を飲んでいると、一通の手紙を見つけた。許可をもらって読むと、「君 を外交官にしたいから、面接に来るように」と。私が喜んで、「外交官ではないか! おめでと う」と言うと、その友人は何を思ったか、その手紙を丸めてポイと捨てた。「アメリカやイギリスな ら行きたいが、九九%の国は、行きたくない」と。考えてみればオーストラリアは移民国家。「外 国へ出る」という意識が、日本人のそれとはまったく違っていた。 こうした職業観というのは、決して絶対的なものではない。時代によって、それぞれの国によ って、そのときどきの「教育」によってつくられる。大切なことは、そういうものを通り越した、そ の先で子どもの将来を考える必要があるということ。 私の母は、私が幼稚園教師になると電話で話したとき、電話口の向こうで、オイオイと泣き崩 れてしまった。「浩チャーン、あんたは道を誤ったア〜」と。母は母の時代の常識にそってそう 言っただけだが、その一言が私をどん底に叩き落したことは言うまでもない。しかしあなたとあ なたの子どもの間では、こういうことはあってはならない。これからは、そういう時代ではない。 またそういう時代であってはならない。(正解?) +++++++++++++++++++++++++++++++++++はやし浩 司 虐待 Q 子どもを虐待する事件が報道されています。虐待について、あなたはつぎの三つのうち、ど れが正しいと思いますか。 @虐待する親でも、大半の時間は、よき母親であり、よき父親であることが多い。 A虐待されても、子ども自身は、施設よりも、父親や母親といっしょにいたがることが多い。 B虐待といっても、肉体的暴力をともなわない、言葉による虐待もある。 A 虐待といっても、四六時中子どもを虐待しているわけではない。(いつも虐待しているケース もないことはないが……。)虐待する親でも、ふだんは、よき父親であり、よき母親であることが 多い。そうした親が突発的に変化し、そして子どもを虐待する。 つぎに虐待されても虐待されても、子どもは「親のそばがいい」と言う。その親しか知らないか らだ。中には親の虐待で明らかに精神そのものが虐待で萎縮してしまっている子どももいる。 しかしそういう子どもでも、「お父さんやお母さんのそばにいたい」と言う。ある児童相談所の相 談員は、私にこう言った。「子どもの心は悲しいですね」と。 また虐待といっても、肉体的な暴力をともなわないケースもある。言葉によって、子どもを追 いつめるなど。「あんたなんか、どこかで死んでしまえ」「クビにロープを巻けば、楽に死ねるか らね」「お父さんやお母さんに迷惑がかからないよう、どこか遠くで死んでくれ」と言った、母親 がいた(報道)。 こうした虐待がわかると、園や学校は児童相談所に連絡し、最悪のばあいは、親子を強制的 に分離する。が、これとて簡単なことではない。現に今、「お前を殺してやる」と、脅されている 小学校の校長がいる。(正解@AB) +++++++++++++++++++++++++++++++++++はやし浩 司 エゴ Q あなたの子どもは、毎日書き取りを三枚することになっています。二枚目までは何とかしま すが、三枚目をどうしてもしたがりません。そういとき…… @決められたことは、しっかりとさせるようにする。無理をしてでもやらせる。 Aいやなことをするから忍耐力が身につく。子どももあとで、感謝してくれるはず。 B子どもに課する勉強は、少なめにするのがコツ。そういうときは二枚でやめる。 A 多くの親は子育てをしながら、結局は自分のエゴを子どもに押しつけているだけ。こんな相 談があった。これは不登校児をもつ、ある母親からのものだが、こう言った。「昨日は何とか、 二時間だけ授業を受けました。が、そのまま保健室へ。何とか給食の時間まで皆といっしょに 授業を受けさせたいのですが、どうしたらいいでしょうか」と。 こうしたケースでは、私は「二時間だけ授業を受けて、今日はがんばったねと子どもをほめ て、家へ帰ればいい」と答えるようにしている。仮にこの子どもが、給食を食べるようになると、 親は今度は、「午後の授業も受けさせたい」と言うようになる。こういう相談も多い。「何とか、う ちの子をC中学へ。それが無理なら、D中学へ」と。そしてその子どもがC中学に合格できそう とわかってくると、今度は、「何とかB中学へ……」と。要するに親のエゴには際限がないという こと。そしてそのつど、子どもはそのエゴに、限りなく振り回される……。 親は「子どものため」と思ってそうするが、肝心の子どもはそう思っていない。よい例が残り勉 強。学校の先生は、勉強ができない子どもを、よく残り勉強させる。先生は「子どものため」と 思ってそうするかもしれないが、子どもは、それをバツととらえる。こうした意識のズレは親子に もあって、それが、たがいの間にキレツを入れる。(正解B) +++++++++++++++++++++++++++++++++++はやし浩 司 先行意識 Q 今度の休みの計画を立てることになりました。その計画を、いつもあなたはどのようにして 決めていますか。 @だいたいの目的と内容は、親のほうで決める。なるだけ意義のある過ごし方にしたい。 A子どもに「何をしたいか」「どこへいきたいか」を、確かめながら、決めている。 B「親」という意識は、あまりない。いつも友だち的な立場で、相談して決める。 A 子育てで失敗する親には、共通のパターンがある。その中でも、もっとも特徴的なのは、 「子どもの心に耳を傾けない」。あるいは「子どものことは私が一番よく知っている」と過信し、 子どもの世界を親が勝手に決めてしまう。たとえば「……のハズ」というハズ論で、子どもの心 を決めてしまう。「こうすれば子どもは喜ぶハズ」「ああすれば子どもは親に感謝するハズ」と。 そのつど子どもの心を確かめるということをしない。ときどき子どもの側から、「NO!」のサイ ンを出しても、そのサインを見落としてしまう。あるいは「あなたは私に従っていればいい」と、 それをはねのけてしまう。 このタイプの親は、子どもの心のみならず、ふだんから他人の意見にはほとんど耳を傾けな い。自己中心的で、独断的。私「明日の休みはどう過ごしますか?」、母「夫の仕事が休みだか ら、近くの緑花木センターへ、息子と娘を連れて行こうと思います」、私「緑花木センター……で すか?」、母「息子はああいう子だからあまり喜ばないかもしれませんが、今から自然に親しま せておくことは大切ですから」と。あとでその母親の夫に話を聞くと、「私は家で昼寝をしていた かった」と言う。息子は、「おもしろくなかった」と言う。(正解AB) +++++++++++++++++++++++++++++++++++はやし浩 司 依存性 Q 「私は(夜も)眠られない」「早く帰ってきておくれ」と息子に懇願したのは、野口英世の母シ カですが、それについて、あなたは…… @ 「母が子を思う気持ちがにじみでたすばらしい手紙」(新鶴村役場パンフ)と思う。 A親が子どもにこんな手紙など、書くべきではない。親として失格だと思う。 Bシカにそういうさみしい思いをさせた英世は、親不孝者。子どもとして失格だと思う。 A 母シカは、「いつ帰ってくるか、教えてください。私は夜も眠られない。心細いので、早く帰っ てきておくれ。早く帰ってきておくれ」(一九一二年一月二三日・福島県耶麻郡猪苗代町・「野口 英世記念館パンフレット」)と、英世に手紙を書いている。当時の社会的事情からすれば、シカ は英世に頼るしかなかったのかもしれない。しかしこの手紙から感ずる母シカは、人生の先輩 者である親というより、子離れできない、未熟な親でしかない。親としての尊厳もなければ、自 覚もない。母シカがそのとき、病気か何かで伏せっていたのならまだしも、母シカがそうであっ たという記録はどこにもない。事実、野口英世記念館には、野口英世がそのあと帰国後にとっ た写真が飾ってあるが、いっしょに写っている母シカは、どこから見ても元気そうである。 ……と書くと、猛反発を買うかもしれない。先にも書いたように、「母が子を思う気持ちがにじ み出た素晴らしい手紙」というのが、日本の通説になっているからである。いや、私も昔、学生 のころ、この話を何かの本で読んだときには、涙をこぼした。しかし今、自分が親になってみる と、この考え方は変わった。私なら仮に手紙を書くとしても、「元気か」「私の心配はするな」と書 く。あくまでもこれは私の個人的な意見だが……。(正解?) +++++++++++++++++++++++++++++++++++はやし浩 司 マザーコンプレックス Q あるプロ野球選手が、結婚の条件として、妻に、「親のめんどうをみて、親を大切にするこ と」と言ったといいます。その話を聞いて…… @とんでもない男性だと思う。もしそうなら結婚などすべきではないと思う。 A子どもとしては当然のことだと思う。親思いのすばらしい選手だと思う。 B親、自らが、息子に対して、「私のことは気にするな」と、突きはなすべきだと思う。 A 冬彦さん(「テレビドラマ『ずっとあなたが好きだった』の主人公」)のような例は、特別として も、しかしそれに似た話はいくらでもある。総じてみれば、日本人は、マザコン型民族。よい例 が、森進一が歌う、『おふくろさん』である。世界広しといえども、大のおとなが夜空を見あげな がら、「ママー、ママー」と涙をこぼす民族は、そうはいない。 このマザコン性には、相互性がある。マザコン的であることを、息子(もちろん娘のケースも あるが)は「親孝行」と誤解する。一方親は、「親思いのいい息子」と誤解する。そして息子は、 親を必要以上に美化することで、自分のマザコン性を正当化しようとする。このタイプの息子 は、たとえ兄弟でも、自分以外の人間が親の悪口を言うのを許さない。こうした相互性が、た がいの関係を、ますますベタベタにする。 えてしてこのタイプの人は、一方で、ものの考え方が権威主義的。自分の親に対しても、子ど もに対しても、「親は絶対」と考える傾向が強い。あなたが権威主義的であることは、しかたな いとしても、しかしそれをあなたの子どもに押しつけてはいけない。それがあなたの子どもに受 け入れられれば、それでよし。そうでなければ断絶の原因となる。本来こうならないためにも、 親が自分の息子のマザコン性に気づいたら、「(私ではなく)、あなたの妻と仲よくしなさい」と突 きはなす。(正解@B) +++++++++++++++++++++++++++++++++++はやし浩 司 親孝行 Q 今でも親孝行は美徳と考えている人は多いですね。あなたは親孝行をどのように考えてい ますか。 @親孝行は、子育ての基本。子どもが親の老後のめんどうをみるのは、当然。 A親子もつきつめれば、対等の人間関係で決まる。「ワク」にこだわる必要はない。 Bアメリカ人のように親子の関係がドライになるのは、かえって好ましくない。 A つい先日も、「あなたは日本人の美徳のひとつである親孝行を否定するのか」と言ってきた 女性(四〇歳)がいた。私は親孝行を否定しているのではない。たとえば私は二四歳のときか ら、収入の約半分を実家へ仕送りをしてきた。当時の常識として、そうしただけだが、経済的負 担感もさることながら、その社会的重圧感は相当なものだった。それを知っているから、私は 自分の息子たちには、そういう思いをさせたくない。 またよく、「日本人の美徳論」を説く人がいるが、たしかに英語には、「孝行」にあたる単語す らない。しかし現実には、こんな調査結果がある。 平成六年に総理府がした調査だが、「どんなことをしてでも親を養う」と答えた日本の若者は たったの、二三%(三年後の平成九年には一九%にまで低下)しかいない。自由意識の強いフ ランスでさえ五九%。イギリスで四六%。あのアメリカでは、何と六三%である。 ほかにフィリ ッピン八一%(一一か国中、最高)、韓国六七%、タイ五九%、ドイツ三八%、スウェーデン三 七%など。日本の若者のうち、六六%は、「生活力に応じて(親を)養う」と答えている。これを 裏から読むと、「生活力がなければ、養わない」ということになる。欧米の人ほど、親子関係が 希薄というのは、誤解である。 今、日本は、大きな転換期にきているとみるべきではないのか。(正解A) +++++++++++++++++++++++++++++++++++はやし浩 司 ジェンダー Q 『内助の功』という言葉があります。男は仕事、女は家事。妻は家庭で夫を支えてこそ、妻 の価値が認められるというのですが…… @まさにジェンダー。文化的、社会的性差別。こういう言葉があるかぎり日本は後進国! Aやはりこれが家庭のあるべき姿。夫の出世があってこそ、家族は平和で、安泰。 Bアメリカでは夫婦でも裁判闘争しているケースが多い。悪しき欧米化には反対! A いまだに女性、なかんずく「妻」を、「内助」程度にしか考えていない男性が多いのは、驚き でしかない。いや、男性ばかりではない。女性自身でも、「それでいい」と考えている人が、二割 近くもいる。たとえば国立社会保障人口問題研究所の調査(二〇〇〇)によると、「掃除、洗 濯、炊事の家事をまったくしない」と答えた夫は、いずれも五〇%以上。「夫も家事や育児を平 等に負担すべきだ」と答えた女性は、七六・七%いる。が、その反面、「(男女の同権には)反 対だ」と答えた女性も二三・三%もいる! ある農村地域でこのジェンダーについて話したら、担当者(教育委員会課長)が、「そういう話 はまずいです。そうでなくても、どの家も、嫁の問題で頭をかかえているのだから」と。「夫が家 事をするというのも、現実的な話ではない」とも。この話に私は驚いた。 それはともかくも、こんな現状に、世の女性たちが満足するはずがない。夫に不満をもつ妻も ふえている。「第二回、全国家庭動向調査」(厚生省・一九九八年)によると、「家事、育児で夫 に満足している」と答えた妻は、五一・七%しかいない。この数値は、前回一九九三年のときよ りも、約一〇ポイントも低くなっている(九三年度は、六〇・六%)。「(夫の家事や育児を)もとも と期待していない」と答えた妻も、五二・五%もいた。なお、アメリカでは裁判闘争が多いのは 事実だが、これは裁判制度の違いによるもの。(正解?) +++++++++++++++++++++++++++++++++++はやし浩 司 わだかまり Q あなたは電撃に打たれるような恋をして、相思相愛のまま結婚し、心から望んで今の子ど もをもうけましたか? @どこか不本意な結婚だった。出産するにもいろいろ問題があり、不本意な出産だった。 A何となくなりゆきで結婚し、そのまま子どもを出産。あとは平凡な結婚生活だった。 Bまさに電撃に打たれるような恋愛だった。子どもも万全の状態でもうけた。 A 心の奥底に潜み、人間の心や行動を裏から操るのが、わだかまり。このわだかまりがある と、無意識のまま、人は同じ失敗を繰り返す。しかし問題はわだかまりがあることではなく、(だ れだって無数のわだかまりをもっている)、そのわだかまりに気づかないまま、それに操られる こと。ある母親は子ども(三歳)が、何か失敗するたびに、「あんたさえ、いなければ!」と、子ど もを虐待していた。その母親は、いわゆる「できちゃった婚」で、今の夫と、不本意な結婚をして いた。その母親はこう言う。「ふだんはいい母親だと思うのですが、とっさの場になると、わけも わからないまま、子どもを虐待してしまいます」と。 そこでもしあなたがいつも同じパターンで、同じ失敗を繰りかえすというのであれば、まずそ のわだかまりをさぐってみる。何かあるはずである。ある母親は、息子(小二)に、服のソデを つかまれるたびに、息子をはげしく手で払いのけていた。条件反射的に、そうしていた。そこで 私のところに相談があったが、話を聞くと、その母親は結婚前に、ある男性のストーカー行為 に苦しんでいたことがわかった。つまり息子にソデをつかまれるたびに、そうしたいやな思い出 が、無意識のまま、その母親を動かしていた。 このわだかまりは、それが何であるかがわかるだけで、問題のほとんどは解決したとみる。 あとは時間が解決してくれる。(正解B) +++++++++++++++++++++++++++++++++++はやし浩 司 表情 Q 子どものほしがっていたものを、子どもの前にそっと出してみてください。そのとき子どもの 表情を観察すると…… @すばやく反応し、ニコニコと顔中に喜びを表現し、ワーッと声を出す。 A驚くものの、喜びが顔に出てくるのに、時間がかかる。「どうして」と聞くことがある。 B見て見ぬふりをしたり、ほとんど表情を変えない。黙ってそれを受け取ることが多い。 A 昔から、『子どもの表情は親がつくる』という。事実そのとおりで、表情豊かな親の子ども は、やはり表情が豊か。うれしいときには、うれしそうな顔をする。悲しいときには悲しそうな顔 をする。(ただし親が無表情だからといって、子どもも無表情になるとはかぎらない。)しかしこ の「表情」には、いろいろな問題が隠されている。 その一。今、表情のない子どもがふえている。「幼稚園児でも表情のとぼしい子どもは、全体 の二割前後はいる」と、大阪市にあるI幼稚園のS氏が話してくれた。ほかの子どもたちがドッと 笑うようなときでも、表情を変えない。うれしいときも悲しいときも、無表情のまま行動する、な ど。 その二。子どものばあい、とくに警戒しなければならないのは、心(情意)と表情の遊離であ る。悲しいときにニコニコと笑みを浮かべる、あるいは怒っているはずなのに、無表情のままで ある、など。心(情緒)に何か問題のある子どもは、この遊離が現れることが多い。 とくに幼児教育の世界では、心と表情の一致する子どもを、「すなおな子ども」という。いやだ ったら「いや」と言う。したかったら、「したい」と言う。外から見ても、心の状態がわかりやすい。 表情は、それを見分ける大切な手段ということになる。(正解@) +++++++++++++++++++++++++++++++++++はやし浩 司 心配 Q 近所で大きな交通事故がありました。そのため一人の子どもが死にました。あなたの子ど もと同年齢です。その話を聞いて…… @言いようのない不安にかられ、子どものことが心配になる。子どもの外出を禁止する。 A他人の話は他人の話として処理できる。一応心配はするが、その範囲でとどめる。 B心配が高じて、不安発作、さらには妄想にかられ、夜も眠られなくなることがある。 A こういう話を耳にすると、母親たちの反応はいろいろに分かれる。@他人の話は他人の話 として、自分の子どもとは切り離すことができるタイプ。A「自分の子どもでなくてよかった」と思 い、「自分の子どもだったら、どうしよう」と、あれこれ考えるタイプ。そしてその心配を、かぎりな く広げていく。「歩道といっても安全ではない」「うちの子もフラフラと歩くタイプだから心配だ」 「道路を歩くときは、うしろも見なくてはいけない」など。 もしあなたがここでいうAのタイプなら、子育て全体が、心配過剰になっていないかを反省す る。こうした心配は、えてして妄想性をもちやすく、それが子育てそのものをゆがめることがあ る。ある母親は、子ども(小四女児)が遠足に行った日、日焼け止めクリームを渡すのを忘れ た。そこで心配になり、そのクリームをわざわざ遠足先まで届けたという。「紫外線に多くあたる と、おとなになってから皮膚ガンになるから」と。 こうした妄想性は、いわばクセのようなもの。一度クセになると、いつも同じようなパターンで 現れるようになる。どこかでその妄想性を感じたら、できるだけ軽い段階でそれに気づき、そこ でブレーキをかけるようにする。(正解A) +++++++++++++++++++++++++++++++++++はやし浩 司 過去 Q 子どもが受験期を迎えたとき、あなたは言いようのない不安にかられました。その不安に ついて、あなたは…… @子どもの受験のことで親が不安になるのは、ごく自然なこと。どの親もそうだ。 A子どもが選別されるというのは、親にしてみれば身を切られるほど、つらいこと。 B自分の中に自分を不安にさせる、もっと別の、大きな原因があるように思う。 A 親は、子どもを育てながら、自分の過去を再現する。そのよい例が、受験時代。それまで はそうでなくても、子どもが、受験期にさしかかると、たいていの親は、言いようのない不安に 襲われる。受験勉強で苦しんだ親ほどそうだが、原因は、「勉強」そのものではない。受験にま つわる、「将来への不安」「選別されるという恐怖」が、その根底にある。それらが、たとえば子 どもが受験期にさしかかったとき、親の心の中で再現される。 親が不安になるのは、親の勝手だが、親はその不安を子どもにぶつけてはいけない。このタ イプの親に向かって、「今はそういう時代ではない」と言っても、ムダ。脳のCPU(中央処理装 置)そのものが、ズレている。親は親で、「すべては子どものため」と、確信している。が、それ だけではない。こうした不安が、親子関係そのものを破壊してしまう。青少年白書によれば、 「父親を尊敬していない」と答えた中高校生は、五五%もいる。「父親のようになりたくない」と答 えた中高校生は、八〇%弱もいる(平成十年)。この時期、「勉強せよ」と子どもを追いたてれ ばたてるほど、子どもの心は親から離れる。 たいていの親は、自分の過去を再現しながら、「再現している」という事実に気づかないまま、 その過去に振り回される。そこで、まず自分の過去に気づく。それで問題は解決する。受験時 代にいやな思いをした人ほど、一度自分を冷静に見つめてみるとよい。(正解B) +++++++++++++++++++++++++++++++++++はやし浩 司 夫婦 Q 今日も、夫(妻)は、仲間たちと、ゴルフ(コンサート))にでかけました。そういう夫(妻)を玄 関先で見送りながら、あなたは…… @それぞれが自分の世界をもち、楽しむことは、大切なことだ。いつもそうしている。 A夫婦が休日を別々に過ごすということは、本来、あってはならないことと思う。 Bアメリカでは離婚率が三〇%を超えているという。日本型夫婦のほうがよい。 A 『釣りバカ日誌』の中で、浜ちゃんとスーさんは、よく魚釣りに行く。見慣れたシーンだが、欧 米ではああいうことは、ありえない。たいてい妻を同伴する。向こうでは家族ぐるみの交際がふ つうで、夫だけが単独で外で飲み食いしたり、休暇を過ごすということは、まず、ない。そんなこ とをすれば、それだけで離婚事由になる。 またよく私の「家族主義」について、つぎのように攻撃してくる人がいる。「林君は、欧米型の 家族主義を主張するが、アメリカのほうが離婚率が高いではないか」と。 これについて反論。離婚率が高いから、家族が破壊されているとはかぎらない。低いから家 族がしっかりしていることにもならない。たまたま日本の離婚率が低いのは、それだけ女性が がまんしているからにほかならない。社会的、経済的地位も、まだ低い。男尊女卑思想もまだ 残っている。たとえばオーストラリアあたりで、夫が妻に、「おい、お茶!」などと言おうものな ら、それだけで即、離婚事由になる。実際にはそういう会話をする夫はいない。 日本では何かにつけて、仕事が優先され、そのため家族が犠牲になってきた。夫婦が別々 の生活をするという、「いびつな家庭」をつくりながら、それがいびつだとさえ思わない。そこまで 日本の社会は狂っている……、とみるべきではないのか。(正解A) +++++++++++++++++++++++++++++++++++はやし浩 司 勉強 Q 子どもに何かの使いを頼んだとき、あなたの子どもが、「宿題がある。(だからできない)」と 言ったとします。そのときあなたは…… @ 「そう、それならいいわ」「勉強、がんばってね」と言って、使いを免除する。 A 子どもはいつも勉強第一なので、勉強のためなら家事の免除は当然と思う。 B 家事の手伝いのほうが宿題より大切。たいてい手伝いがすんでから勉強させる。 A 二〇〇〇年の春、J・ルービン報道官が、国務省を退任した。約三年間、アメリカ国務省の スポークスマンを務めた人である。理由は妻の出産。「長男が生まれたのをきっかけに、退任 を決意。当分はロンドンで同居し、主夫業に専念する」(報道)と。 日本では、「仕事がある」と言えば、すべてが免除される。子どもでも、「勉強する」「宿題があ る」と言えば、すべてが免除される。仕事第一主義が悪いわけではないが、そのためにゆがめ られた部分も多い。今でも妻に向かって、「お前を食わせてやる」「養ってやる」と暴言を吐く夫 は、いくらでもいる。あるいはあなたは、妻の出産のために、報道官という要職を棒にふるよう な生きザマが、理解できるだろうか。 そのルービン報道官だが、最後の記者会見の席に、妻のアマンポールさんが飛び入りして、 「あなたはミスターママになるが、おむつを取り替えることができるか」と。それに答えてルービ ン報道官は、「必要なことは、すべていたします。適切に、ハイ」と答えた。 日本の常識は決して、世界の標準ではない。たとえばニュージーランドでは、放課後、夕食 が終わるまで、家事を手伝うのが子どもたちの日課になっている。よき家庭人として自立させ ることが、家庭教育の柱になっている。日本の子育ては、基本的な部分で、どこかおかしい。 (正解B) +++++++++++++++++++++++++++++++++++はやし浩 司 宗教 Q 宗教に走る妻がふえています。信仰を求めるというよりは、自分の心のスキ間をうめるた めにそうする人も少なくありません。あなたは…… @原則として、夫婦は心をひとつにするためにも、同じ宗教を信仰すべきと思う。 A原則として、信仰は個人の自由だから、夫婦別々の信仰をしてもかまわない。 B妻が宗教にのめりこむということは、すでに夫婦関係は崩壊状態にあるとみてよい。 A 宗教にもいろいろある。しかしその中でも、カルトと呼ばれる宗教には、いくつかの特徴が ある。排他性(他の思想を否定する)、情報の遮断性(他の思想を遮断する)、組織信仰化(個 人よりも組織の力を重要視する)、迷信性(外から見ると、「?」と思うようなことを信ずる)、利 益論とバチ論(信ずれば得をし、離れるとバチが当ると教える)など。巨大視化(自説を正当化 するため、ささいな事例をことさらおおげさにとらえる)を指摘する学者もいる。 信仰のし方としては、催眠性(呪文を繰り返させ、思考能力を奪う)、反復性(皆がよってたか って同じことを口にする)、隔離性(ほかの世界から隔離する)、布教の義務化(布教すればす るほど利益があると教える)、献金の奨励(結局は金儲け?)、妄想性と攻撃性(自分たちを批 判する人や団体をことさらおおげさに取りあげ、攻撃する)など。その結果、カルトやその信者 は、一般社会から遊離し、ときに反社会的な行動をとることが多い。極端なケースでは、ミイラ 化した死体を、「まだ生きている」と主張した団体、毒ガスや毒薬を製造していた団体、さらに 足の裏をみて、その人の運命や前世がわかると主張した団体などがあった。こうした団体に妻 が入信し、今、人知れず、はげしい家庭内宗教戦争を繰り返している家庭は多い。(正解?) +++++++++++++++++++++++++++++++++++はやし浩 司 夢 Q あなたの子どもに、未来の夢についての絵を描かせてみてください。そのときあなたの子ど もは、どんな絵を描きますか。 @子どもらしい夢のある絵をつぎつぎと描き、その絵の中に自分を投影させて楽しむ。 A「描くものがない」と言って描かない。あるいは描いても身近なものが多い。 B「おとなになりたくない」と言ったり、描くとしてもどこか幼稚っぽいものが多い。 A 赤ちゃんがえりならぬ、幼児がえりをする子どもがふえている。大きくなることに恐怖感をも っているためと考えるとわかりやすい。よくある例は、兄や姉のはげしい受験勉強をみていて、 それで恐怖心をもち、幼児がえりを起こすケース。動作、話し方、遊びまで幼児的になる。ある 男の子(小六)は、ボロボロになった幼児漫画をかたときも離さず、カバンの中に入れてもって いた。私が「これは何?」と声をかけると、「どうチェ、ダメだと言うんでチョ、言うんでチョ」と。 一方、最近の子どもたちは、夢が何であるかさえわからないでいる。三〇年前には、「野球の 選手になりたい」「幼稚園の先生になりたい」「花屋さんになりたい」と子どもたちは言ったもの だが、今は、「魔法使いになりたい」「ゲームのプロになりたい」「金持ちになりたい」などと言う。 私が「君たちも宇宙飛行士のM氏が言っているように、夢をもったら?」と言うと、「どうせなれ ないもんね」などと答えたりする。大卒者の人気就職業種のナンバーワンが、公務員というの も、そのひとつ。時代が変わったというより、子どもたちの世界から夢をうばってしまったおとな たちに責任がある。 当然のことながら、将来に向かって前向きに生きていく子どもは伸びる。子どもはそういう子 どもにしなければならない。(正解@) +++++++++++++++++++++++++++++++++++はやし浩 司 悪魔性 Q あなたの子どもは日ごろ、どんな絵を描いていますか。ノートのはしなど、子どもが何気なく 描いている絵を見てください。 @そのときどきの人気キャラクターや、アニメの主人公の絵を描くことが多い。 Aおとなが見ても、ぞっとするような絵(がい骨、戦争、武器)の絵が多い。 B空想力や想像力を働かせた、どこか楽しいドラマのある絵が多い。 A イギリスの諺に、『抑圧は悪魔を生む』というのがある。心の抑圧状態が続くと、ものの考え 方が悪魔的になることを言ったものだが、この諺ほど、子どもの心にあてはまる諺はない。き びしい勉強の強要など、子どもの能力をこえた過負担が続くと、子どものものの考え方は、まさ に悪魔的になる。こんな子ども(小四男児)がいた。 その子どもは静かで、穏やかな子どもだった。見た感じでは、ごくふつうの子どもだった。が、 ある日、私はその子どものノートを見て、びっくりした。何とそこには、血が飛び散ってもがき苦 しむ人間の姿が、いっぱい描かれていた! 「命」とか、「殺」とかいう文字もあった。しかも描 かれた顔はどれも、口が大きく裂け、そこからは血がタラタラと流れていた。ほかに首のない死 体や爆弾など。原因は父親だった。 親のきびしい過負担や過干渉が日常的に続くと、子どもは自分で考えるという力をなくし、い わゆる常識はずれの子どもになりやすい。異常な自尊心や嫉妬心をもつこともある。そういう 症状の子どもが皆、過負担や過干渉でそうなったとは言えない。しかし過負担や過干渉が原 因でないとは、もっと言えない。子どもは自分の中にたまった欲求不満を何らかの形で発散さ せようとする。Aのような絵を描くようであれば、家庭のありかたそのものを、かなり反省したほ うがよい。(正解@B) +++++++++++++++++++++++++++++++++++はやし浩 司 計算力 Q 丸を一〇〜三〇個を描いたものを子どもに見せて、それを子どもに数えさせてみてくださ い。そのときあなたの子どもは…… @ 「ヒトツ、フタツ……」とかみしめるようにして数える。正確だが、時間がかかる。 A 「イチ、ニイ、サン……」、あるいは、「イ、ニ、サ……」とリズミカルに数える。 B 「ピッ、ピッ、ピッ……」と、数を信号化して数え、五秒で二〇個くらい数える。 A よく誤解されるが、計算力があるから算数の力があるということにはならない。計算力は、 訓練で早くなる。しかし算数の力(考える力)は、日常の生活力と密接にからんでいて、伸ばす のは容易ではない。「多い、少ない」「ふえた、減った」「得した、損した」という経験をとおして、 子どもは、算数の力を身につける。 その計算力は、ここに書いたように、訓練で伸びる。訓練すればするほど、計算は早くなる。 で、その計算力を伸ばすカギが、「早数え」。言いかえると、幼児期は、この早数えの練習をす るとよい。たとえば手をパンパンと叩いて、それを数えさせる。一〇〜三〇の丸を描いたものを 瞬間に見せて、数えさせるなど。 少し練習すると、一〇秒前後の間に、三〇くらいまでのものを数えることができるようになる。 最初は「ヒトツ、フタツ……」と数えていた子どもが、「イチ、ニイ……」、さらに「イ、ニ……」と進 み、やがて「ピッ、ピッ……」と信号化して数えることができるようになる。こうなると、「2+3」の 問題も、「ピッ、ピッと、ピッ、ピッ、ピッで5!」と計算できるようになる。反対に早数えが苦手な 子どもに、足し算や引き算を教えても、苦労の割には計算は早くならない。(正解B) +++++++++++++++++++++++++++++++++++はやし浩 司 教訓 Q あなたは子育てで成功して東大へ入った子どもの話と、子育てで失敗して、落ちこぼれた 子どもの話のどちらに耳を傾けますか。 @子どもを伸ばすためには、上を見ながら育てることが大切。成功した人の話を聞く。 A子育ての基本は失敗しないこと。失敗しなければ成功。だから失敗した人の話を聞く。 Bケースバイケース。そのつど必要な情報を、自分なりに判断して利用する。 A 子育てでは、だれもが成功するわけではない。しかし失敗する可能性は、だれにでもある。 そんなわけで子育ての基本は、「失敗しないこと」。失敗しなければ成功とみる。私もときどき子 どもたちにこういう。「まちがえるな。まちがえなければ、答はマル」と。 で、子育てで役にたつのは、失敗した人の話。成功した人の話など、ほとんど役にたたない。イ ギリスの格言にも、『航海のし方は、難破したことがある人に聞け』というのがある。私の立場 でいうなら、『子育ては、子育てで失敗した人に聞け』ということになる。 たとえばスイスイと受験戦争を勝ち抜いていった子どもの話など、ほとんど役にたたない。 が、親たちは、目が上ばかり向いている(失礼!)。成功者の話だけを一方的に聞き、その話 をもとに自分の子育てを組みたてようとする。そのため反対に自分の子どもが失敗したとき、 大混乱に陥ってしまう。それだけではない。その失敗によって、どのように子どもの心にキズが つき、またその後遺症が残るなどということは考えない。しかし本当に大切な話は、そのあと、 いかにすれば子どもの心をケアできるかということ。そのケアのし方をまちがえると、子どもは そのしこりを、一生引きずることになる。自信をなくし、「私は何をしてもダメ」と、子どもが思い 込んでしまうようになるかもしれない。もしそうなったら、それこそ家庭教育の大失敗というも の。(正解AB) +++++++++++++++++++++++++++++++++++はやし浩 司 型 Q トメ、ハネ、ハライ、書き順などは、幼児期にきちんと教えたほうがよいと思います。一度ま ちがって覚えると、なおすのが大変です。 @この考え方はおかしい。言葉はルールではなく、中身。内容が大切である。 Aこの考え方は正しい。日本語には日本語の美しさがある。それを守るのは重要。 B日本の教育は総じてみれば、子どもを型に押しこめる教育。これもその一つ。 A もう一〇年ほど前だが、H市で児童英語の研究会があった。そしてその席で、英語の「U」 は、二画、「W」「M」は、四画と決まった。英語国にもない画数が日本にあるところがおかし い。 一方、昔、オーストラリアの小学校を訪れたとき、壁に張られた子どもたちの作文を見て驚い た。文法はもちろん、スペルさえまちがいだらけ。そこで私が先生(小三担当)に、「なおさない のですか」と聞くと、その先生はこう言った。「言葉はルール(文法)ではなく、中身です。またシ ェークスピアの時代から、正しいスペルなんてものはないのです。意味がわかれば、それでい いのです」と。オーストラリアの教育法がよいとか悪いとか言う前に、日本の教育法を一度、全 体に疑ってみる必要はある。言うまでもなく、日本の教育のルーツは、寺子屋。さらにそのルー ツといえば、各宗派の本山教育。その本山では、平安の昔から、徹底した上意下達方式によ る詰め込み教育が基本になっている。そのためこの日本では、ごく最近まで、まさに画一人間 をつくるための、画一教育が基本になっている。トメ、ハネ、ハライ、書き順というのも、そういう 過程から生まれた。 そんなわけで、「無視しろ」というわけではないが、しかしこうまで毛筆時代の名残を守らねば ならない理由が、私たちにはあるのか。みんなで一度、考えて見たい。(正解?) +++++++++++++++++++++++++++++++++++はやし浩 司 読書 Q 日本の中学生はどれくらい読書をしていると思いますか。「毎日、読書をしない」と答えた子 どもは…… @毎日読書をしないと答えた中学生は、約五〇%。この割合は、ほぼ世界最多。 A毎日読書をしないと答えた中学生は、約四〇%。この割合は、世界でも中位。 B毎日読書をしないと答えた中学生は、約三〇%。日本人の読書好きは世界一。 A 他の先進国では読書が教育の柱になっている。たとえばアメリカでは、どこの小学校を訪 れても、図書室が学校の中心部、あるいは玄関のすぐ奥にある。図書室には、専門の司書(ラ イブラリアン)がいて、子どもたちは週に一度の、読書指導が義務づけられている。私が「コン パルサリー(義務教育)ですか?」と聞くと、担当の先生は、「そうです」と笑った(アメリカ・アー カンソー州)。ふつうの教師は大学卒の学位をもった人でもできるが、司書は、大学院を出た マスターディグリー(修士号)をもった先生があたるとのこと。つまり「読者は、それだけ重要」と 位置づけられている。 で、日本の子どもたちの読書について。経済協力開発機構(OECD)が調査した「学習到達 度調査」(PISA・二〇〇〇年調査)によれば、「毎日、趣味で読書をするか」という問いに対し て、日本の生徒(一五歳)のうち、五三%が、「しない」と答えている。この割合は、参加国三二 か国中、最多であった。また同じ調査だが、読解力の点数こそ、日本は中位よりやや上の八 位であったが、記述式の問題について無回答が目立った。無回答率はカナダは五%、アメリカ は四%。しかし日本は二九%! 日本のアニメは世界一と言われているが、その背景に、日本人の文字離れがあるとしたら、 あまり喜んでばかりはいられない。(正解@) +++++++++++++++++++++++++++++++++++はやし浩 司 しつけ Q 最近の子どもたちの風紀が乱れていることについて、「甘やかしが原因。家庭でもっときび しくしつけろ」と主張する評論家がいます。あなたは…… @自分自身の子ども時代はどうだったのかということを、謙虚に反省してほしいと思う。 Aこうした復古主義的なものの考え方は、今に始まったことではない。 Bきびしくすべきは、むしろおとなの世界。子どもの世界は、むしろその結果でしかない。 A 「『いまの若い者は』などと、口はばたきことを申すまじ」と言ったのは、あの山本五十六(書 簡)だが、「青年は老人をアホだと思うが、老人は青年をアホだと思う」(チャップマン「すべての アホ」)というのは、古今東西、共通の真理と言えるのではないか。 江戸時代に山鹿素行という人物が、『武教小学』という本を書いた。これは朱子の「小学」を 模範として、武士の子弟のしつけ教育を目的として書かれた本である。その中にこんな一節が ある。「今世、学講せず、男女幼より便ち、驕惰に懐了し、長ずるに至りて益々狂狼なり、ただ 未だすべて子弟のことをなさざるがために、すなわち、その親において、己の物我ありて肯て 屈下せず、病根常にあり」(「嘉言」)と。 わかりやすく言うと、「最近は、学問もせず、男の子も女の子も、幼いころから怠惰で、歳をと るにつれて、ますます狂暴になっていく。こうした子弟の教育をしないことにあわせて、つまり親 自身も我欲が強く、頭をさげることをしないところに、問題の原因がある」と。(何とも意味不明 な難解な文章なので、訳は適当につけた。) いつの時代も、老人から見れば、若者の世界がだらしなく見えるもの。声高らかに「きびしく せよ」と言う人の意見は、じゅうぶん疑ってみる必要がある。人は年をとればとるほど、自分の 青年時代を美化したがるものらしい。(正解@AB) +++++++++++++++++++++++++++++++++++はやし浩 司 能力 Q 「子どもの能力は平等」という意見があります。「平等ではない」という意見もあります。あな たはどちらだと思いますか。 @能力は平等である。重要なのは、伸ばし方。その伸ばし方によって差が生ずる。 A能力の発達は平等ではない。そのため得意、不得意分野が生じ、それが差となる。 B平等な面もあるし、不平等な面もある。それを見極めるのが大切。 A 最近の研究によれば、こと知的能力についていえば、平等ではない。専門的に言えば、「脳 の神経シナプスは、非同時的に発達する」※ということがわかっている。この「非同時性」が、 子どもの「差」となって表れる。つまり基本的には平等でも、その発達のし方によって、平等で なくなるというわけである。 問題はその発達のし方であるが、環境的要因、教育的要因、遺伝子的要因、本人の意思や 意欲によって大きな影響を受ける。つまりこうした要因が無数にからみあって、その子どもの 能力を形成する。言いかえると、「平等か、平等でないか」という議論は、あまり意味がない。 (正解は@AB) ※……シナプスの過剰生産と選択は、脳の異なった部分で異なった速度で進む(フッテンロッ カー・ダーホルカー博士・九七年)という。「選択過程は、概念的にはパターンの主な組織に相 当するものであるが、更にそれに続く四、五年続き、初期の青年期で終わる。このように脳の 部分で異なった速度で進むことは、それぞれの皮質のニューロンでも異なったインプットを受け て、異なった速度で進む可能性が高い」(ジュラスカ・「動物学について」・八二年)とも。 +++++++++++++++++++++++++++++++++++はやし浩 司 性教育 Q 昼寝をしていたら、六歳の息子が私の腰にペニスをこすりつけてきました。小さいながら勃 起しているのがわかりましたが…… @幼児期からそういうことをするようでは、先が心配なので、すぐ叱ってやめさせる。 A子どもに罪悪感をもたせないように、サラリと受け流して、忘れる。 B不愉快だったら不愉快と子どもにその気持ちを伝える。親ががまんすることはない。 A 理性と性欲は、どちらが優位に立つかという議論はよくなされる。しかしこういう議論そのも のがあまり意味がない。いうなればこれは、知性(大脳新新皮質)と本能(間脳の視床下部ほ か)の対立のようなもの。脳の中でも機能する部分そのものが違う。しかもどちらも人間にとっ ては、必要不可欠な部分である。あえて言うなら、性欲を理性で抑えこむことは、不可能。要 は、調和の問題ということになる。 子どもの性教育は、男児だったら父親が、女児だったら母親がするとよい。異性だとたがい に戸まどいが生まれ、その戸まどいが、偏見や誤解を生む原因となる。このケースでも、その 母親は私にこう言った。「私が起きているとわかると、子どもの心にキズをつけるように思った ので、黙ってがまんしていました」と。 子どもたちの性の問題は、(性の氾濫)→(性教育)→(対策)と、すでに第三番目の段階に入 りつつある。高校でも、セックスの実技を教えたり、託児室をもうけたり、未婚の母を援助する ような制度ができるようになるのは、もはや時間の問題。大切なことは、そういう前提で心構え を決め、対策を立てるということ。そうした心構えや対策が現状に追いつかないとき、そのはざ まで、多くの親や子どもたちが、もがき苦しむことになる。「うちの子にかぎって」と高をくくるの は、もはや幻想でしかない。(正解AB) +++++++++++++++++++++++++++++++++++はやし浩 司 右脳教育 Q 最近「右脳教育」という言葉がよく聞かれます。あなたはこの右脳教育について、どう思い ますか。 @右脳には無限の可能性があるという。右脳教育は効果があるし、大切だと思う。 A左右の脳の機能の違いがわかるようになって、一〇年足らず。もう少し慎重にしたい。 B要はバランスの問題。右脳ばかり刺激するのは、かえって危険なことでもある。 A 左脳は言語をつかさどり、右脳はイメージをつかさどる(R・W・スペリー)。その右脳をきた えると、たとえば次のようなことができるようになるという(七田眞氏)。@インスピレーション、ひ らめき、直感が鋭くなる(波動共振)、A受け取った情報を映像に変えたり、思いどおりの映像 を心に描くことができる(直観像化)、B見たものを映像的に、しかも瞬時に記憶することがで きる(フォトコピー化)、C計算力が速くなり、高度な計算を瞬時にできる(高速自動処理)など。 こうした事例は、現場でもしばしば経験する。 しかし現場では、それがたとえ神業に近いものであっても、「神童」というのは認めない。もう 少しわかりやすい例で言えば、一〇〇種類近い自動車の、その一部を見ただけでメーカーや 車種を言い当てたとしても、それを能力とは認めない。「こだわり」とみる。 右脳が創造性やイメージの世界を支配するとしても、右脳型人間が、あるべき人間の理想像 ということにはならない。むしろゆっくりと言葉を積み重ねながら(論理)、他人の心を静かに思 いやること(分析)ができる子どものほうが、望ましい子どもということになる。その論理や分析 をつかさどるのは、右脳ではなく、左脳である。 要はバランスの問題。左脳教育であるにせよ右脳教育であるにせよ、バランスが大切。子ど もに与える教育は、いつもそのバランスを考えながらする。(正解AB) +++++++++++++++++++++++++++++++++++はやし浩 司 常識 Q 『子はかすがい』『老いては子に従え』など、いろいろな子育て格言がありますが、あなたは こういう格言をどう思いますか。 @先人の知恵が凝縮されているので、たいへん参考になるし、子育ての要にしている。 A格言というのは、考えない人には便利だが、えてしてものの本質を見誤らせる。 B古い格言を口にすることで、古い体質を引きずることもあるので慎重に使っている。 A 『子はかすがい』論……たしかに子どもがいることで、夫婦が力を合わせるということはよく ある。夫婦の絆も、それで太くなる。しかしその前提として、夫婦は夫婦でなくてはならない。夫 婦関係がこわれかかっているか、あるいはすでにこわれてしまったようなばあいには、子はま さに「足かせ」でしかない。日本には『子は三界の足かせ』という格言もある。 『老いては子に従え』論……この格言を反対に読むと、「老いるまでは子には従わなくてもよ い」ということになる。もしそうなら、これほど、傲慢な格言はない。そればかりか、この格言が 裏で意味しているのは、「子どもには、めんどうをみてもらわねばならないから、静かに従った ほうがよい」ということ。まさに依存型社会を代弁しているような格言となる。むしろ大切なこと は、年齢に関係なく、親だって、子どもに従うべきことは従い、そして年をとったらなおさら、自 分の生きザマを子どもに示す。『老いたらなおさら、自分の生きザマをつらぬく』である。 格言というのは、えてして、それを安易に口にすることで、時代を逆行させることがある。使う としても、慎重に判断して使う。(正解@AB) +++++++++++++++++++++++++++++++++++はやし浩 司 トラブル Q 園や学校で、あなたの子どもが何かのトラブルに巻き込まれているようです。そういうとき あなたは…… @どんなことでも、まず先生に相談するのがよい。いっしょに原因を考え、対策をねる。 A目にあまるようであれば、子どもの様子だけを先生に伝え、あとの判断は先生に任す。 Bまず一、二歳年上の子どもをもつ親に相談し、それまでの経験談を聞いて参考にする。 A 子どもどうしのトラブルが、限界を超えたら、(どこが限界かを判断するのはむずかしい が)、学校の先生に相談、ということになる。その相談について……。 これはどんなばあいでもそうだが、自分の子どものことを先生に相談するときは、子どもの症 状だけを、ていねいに訴えて、それですます。親が原因さがしをしたり、理由づけをしてはいけ ない。いわんや相手の子どもの名前を出したり、先生を批判してはいけない。あくまでも子ども の症状だけを訴えて、それですます。それがわからなければ、たとえばあなたが病気になった ときのことを思い浮かべればよい。あなたはドクターに、自分の診断名や治療法を話すだろう か。そんなことをしても、意味がない。ないばかりか、かえって、診断や治療のさまたげになる。 学校という社会では、先生は、まさに教育のドクター。が、それよりも大切なことは、できるだけ 親の世界だけで解決すること。そこで私は、つぎのような格言を考えた。 『子どもどうしのトラブルは、一に静観、二にがまん。三、四がなくて、五にほかの親に相談… …』と。「ほかの親」というのは、一、二歳年齢の大きい子どもをもつ親のこと。そういう親に相 談すると、「うちもこんなことがありまたよ」というような会話で、大半の問題は解決する。学校 の先生に相談するのは、そのあとということになる。(正解AB) +++++++++++++++++++++++++++++++++++はやし浩 司 愛情 Q 今度の誕生日に、子どもへのプレゼントとして、小さな石にペインティングしたものを渡して みてください。そのときあなたの子どもは…… @いつものように、あなたの子どもはそれを喜んでくれ、ありがとうと言う。 Aあまり関心を示さず、「何、これ?」というような態度で、それを粗末にあつかう。 Bいつもそのようなプレゼントを渡すのが我が家の習慣になっている。 A 外国では、「家族どうしのプレゼントは、買ったものはダメ」というハウス・ルールを守ってい る家庭が多い。「人の心はお金やモノでは買えない」という精神が、そこにある。私もときどきオ ーストラリアの友人宅にとめてもらうが、帰りに渡されるプレゼントは質素なものばかりである。 粘土で作ったトカゲの置物、ドライフラワーで作った壁かけ、ガラスに絵をかいたかざりものな ど。先日、アメリカ人の友人がアメリカに帰っていったが、そのときもらったのも、石にペインテ ィングしたものだった。実のところ、最初のころは、そういうものをもらうと、内心、「何だ、こんな もの!」と思った。しかしそう思った私のほうが、まちがっていた! より高価なプレゼントであればあるほど、子どもは喜ぶハズとか、子どもは親に感謝するハ ズと考えるのは、誤解。日本人は戦後の高度成長期の中で、心の奥までお金に毒されている から、そのおかしさすら気づかないでいる(失礼!)。実際には逆効果で、子ども自身はますま す金銭的な物欲の世界におぼれることになる。 ほかにも私の友人の家では、『家族はたがいをジャッジ(判断)しない』、『家族の悪口は言わ ない』、『家族のプライバシーは守る』、『家族にはウソは言わない』、『家族どうしは命令や、禁 止命令はしない』などの、ハウス・ルールがあるという。参考までに。(正解@B) +++++++++++++++++++++++++++++++++++はやし浩 司 自尊心 Q あなたの子どもに、「あなたの名前をどう思うかな?」と聞いてみてください。そのときあなた の子どもは……。 @自分の名前をあまり気に入っていないようなそぶりを見せる。関心を示さない。 Aどこか自分の名前や漢字が嫌いなようだ。愛称などで呼ばれるのをいやがるようだ。 Bいつも「いい名前」と喜んでいる。自分の名前をたいへん気にいっているようだ。 A 自分を大切にする。それが子どもの自尊心につながり、この自尊心が、子どもの道徳や倫 理の基礎となる。その第一歩が、『名前を大切にする』。 子どもの名前は、大切にする。子どもの名前が書いてあるものは、粗末にあつかわない。新 聞や雑誌に、子どもの名前が出たら、その新聞や雑誌は、ていねいにあつかう。切り抜いて壁 に張ったり、アルバムにしまったりする。そして日ごろから、「あなたの名前はいい名前ね」「あ なたの名前を大切にしようね」と教える。子どもは自分の名前を大切にすることから、自分を大 切にすることを学ぶ。まちがっても、子どもの名前を茶化したり、からかってはいけない。名前 は、その子どもの人格そのものと考える。 ところでこんな子どもがいた、その家は、女の子ばかりの三人姉妹。上から、麗菜、晴美、み どり。その「みどり」という子ども(小四)にある日、「名前を漢字で書いてごらん」と指示すると、 その女の子はさみしそうにこう言った。「だって私には漢字がないもん」と。女の子が三人もつ づくと、親もそういう気持ちになるらしい。しかしこういうことは、本来、あってはならない。さらに 以前、自分の子どもに、「魔王」とかそんなような名前をつけた親もいた。ときどきこうした私の 常識では理解できない親が現れる。親の勝手とは言うが、ただ、今ごろその子どもはどうして いるかと、ときどき考える。(正解B) +++++++++++++++++++++++++++++++++++はやし浩 司 気負い Q 「親は、こうあるべき」「親子だから……」「子どもはこうあるべき」という気負いが強いと疲れ ますね。あなたは…… @親としての気負いは、ない。子どもの前では、気楽にあるがままの自分でいられる。 A親としての責任は感ずることはあるが、気負いは、ほとんどない。 Bいつも気負いが強く、子育てをしていて、疲れを感ずることが多い。子育てがつらい。 A 不幸にして不幸に育った人ほど、「いい親でなければならない」「いい家庭をつくらねばなら ない」という気負いが強い。その気負いが親子関係をぎくしゃくさせる。そして結果として、よい 家庭づくりに失敗しやすい。 親ばかりではない。子ども自身が、「いい子でいなければならない」という気負いをもつことも ある。たいていはこうした気負いはプラスに作用するが、しかしその気負いが強すぎると、子ど もは疲れてしまう。疲れるだけならまだしも、あるとき突然、プッツンということにもなりかねな い。これがこわい。そんなわけで親が自分で、よい親を演ずるのはしかたないとしても、子ども があなたの前でよい子ぶっていないか、慎重に観察してみる。そしてもしそうなら、親子のあり 方を、基本的な部分で、考えなおすとよい。 要するに気負いなどというのは、できるだけないほうがよい。とくに家族の中では、ないほうが よい。家族はたがいにあるがままをさらけ出し、あるがままを受け入れる。気負うことはない。 その気楽さが、家族の風通しをよくする。「親だからとか、子どもだから」という、ダカラ論。「親 だから〜〜のはず、子どもだから〜〜のはず」という、ハズ論。「親は〜〜すべき、子どもは〜 〜すべき」という、ベキ論は、それがあればあるほど、結局は、親子関係をぎくしゃくさせる。 (正解@A) +++++++++++++++++++++++++++++++++++はやし浩 司 勇気 Q 何か失敗したようなとき、あなたは子どもの前で、それを正直に認めることができますか。 いつも心を開いていますか。 @自分の心を正直に話し、まずいことをしたときには、すなおに謝ることができる。 Aいつもどこかつっぱっているようで、すなおになれないときがある。 B家族の心がつかめないときがある。自分もまた、心をさらけ出すということができない。 A 少し前、ワイフと口論して、家を飛び出したことがある。そのときは、「今夜は家には戻らな い」と、そう思った。しかし電車に飛び乗り、遠くまできたとき、ふと、自分の心に問いかけてみ た。「お前は、ホテルの一室で、ひとりで寝たいのか?」と。すると本当の私がこう答えた。「ノ ー。ぼくは、家に帰って、いつものふとんで、いつものようにワイフと寝たい」と。そこで家に帰っ た。帰って、ワイフに、「いっしょに寝たい」と言った。それは勇気のいることだった。自分のプラ イドをねじまげることでもあった。しかし私がそうして心を開いたとき、ワイフも心を開いた。と、 同時にワイフとのわだかまりは、氷解した。 仲よくしたかったら、「仲よくしたい」と言えばよい。さみしかったら、「さみしい」と言えばよい。 いっしょにいたかったら、「いっしょにいたい」と言えばよい。自分の心に、がまんすることはな い。ごまかすことはない。勇気を出して、自分の心を開く。あなたが心を開かないで、どうして相 手があなたに心を開くことができるというのか。 本当に勇気のある人というのは、自分の心に正直に生きる人をいう。負けを認め、欠点を認 め、自分が弱いことを認める人をいう。みなは、それができないから、苦しんだり、悩んだりす る。無理をしたり、虚勢をはったりする。(正解@) +++++++++++++++++++++++++++++++++++はやし浩 司 耐久力 Q あなたの子どもがどこかで、ボットン便所(汚れたトイレ)を使うことになりました。そのとき あなたの子どもは…… @ほぼ平気で、苦情を言うこともなく、ふつうに用を足すことができると思う。 Aあれこれ不平を言って、親を困らせると思う。せっぱつまれば何とか用を足すと思う。 Bそういうトイレでは、用を足すことができない。別の方法を考える。 A 一人の生徒(小四)が、レッスンの途中でトイレに行った。が、すぐ帰ってきてしまった。理由 を聞くと、「ゴキブリがいたから」と。あるいは別の日。私の家に遊びに来ていた中学生(中二女 子)が、突然タクシーを呼んでくれと言った。理由を聞いても言わない。しかたないので、タクシ ーを呼んだ。で、それからしばらくしてから母親に理由を聞くと、こう話してくれた。「あの子は、 洋式のトイレだと、(自分のお尻が汚れるから)、よそのトイレが使えないのです」と。 私が過ごしたような時代が、よい時代とは思っていない。しかし今の子どもたちよりは、はる かに耐性があった。が、問題は耐性がなくなったことではない。今のような豊かな生活が維持 できれば、それでよし。しかし生活がマイナス方向に進みはじめたとき、果たして今の子ども に、それを乗り越える力があるかということ。仮に明日から、「トイレはボットン便所にします」と 宣言したら、パニック状態になってしまうかもしれない。 今では、小さなハエが一匹教室に入ってきただけで、クラスは大騒ぎになる。いわんやゴキブ リとなると、大騒動! 私はそういう状態を見るたびに、「これでいいのか」と思ってしまう。今の 子どもたちには、山を登る力はある。しかし山をくだる力はない。いかにして山をくだるかを教 えていくのも、教育の大切な役目ではないのか。(正解@A) +++++++++++++++++++++++++++++++++++はやし浩 司 密度 Q あなたの子どもの仲のよい友だちの名前を、今すぐ口に出して言ってみてください。そのと きあなたは…… @即座に三人以上の名前を言うことができる。どんな遊びをしているかも知っている。 Aかろうじて一〜三人の名前を言える。だいたいどんな遊びをしているかも言える。 B一人くらいなら何とかわかる。どんな遊びをしているかまではわからない。 A あなたは子どもの世界(小学生)を、どれだけ知っているだろうか。つぎの言葉の中で、知っ ているのがいくつあるか、考えてみてほしい。 ●アブトロニック(流行製品名) ●かじま物語(テレビゲーム) ●ホグワーツのグリフィンドール(ハリーポッターの寄宿舎) ●ベイブレード(コマ遊びのコマ) ●ブルーアイズ、アルティミッドドラゴン(遊戯王カードの怪獣) ●かごちゃん、つじちゃん、ごっちん、なっち(モー娘のメンバー) ●SAKURAドロップス(宇多田ヒカルの歌) ●桃色片想い(松浦亜弥の歌) 八問のうち、五〜六問まで知っていれば、あなたはすばらしい親と考えてよい。子どもの心を しっかりと、つかんでいる。あるいはあなたも一度、子どもの前で、こう言ってみたらどうだろう。 「あのね、私、かごちゃん、つじちゃん、ごっちん、なっちの中で、やっぱりかごちゃんが一番、 すてきだと思うわ」と。あなたの子どもは、あなたを尊敬のまなざしで見るようになる。コツは、さ りげなく、サラリと子どもの前で言うこと。(正解@) +++++++++++++++++++++++++++++++++++はやし浩 司 悪循環 Q あなたは日ごろ、子育てをしていて、その子育てが空回りをしたり、悪循環に陥っているよ うに感じたことはありませんか。 @いつも何かしらムダなことばかりしているような気がする。教育的な効果はまるでない。 Aがんばればがんばるほど、子どもがますます悪くなっていくように感ずることがある。 B何をしても、子どもの知恵となり経験となっていくようで、子育てが楽しい。 A 何らかの理由で、子どもは一度勉強嫌いになると、それ以後、好きになるということは、ま ず、ない。あるいは同じ勉強をさせようとしても、そうでない子どもの何倍もの努力と時間が必 要となる。たとえば今、年中児(満五歳児)で、「名前をひらがなで書いてごらん」と指示すると、 体をこわばらせる子どもは、一〇人のうち、一〜二人は必ず、いる。中には涙ぐんでしまう子ど ももいる。文字に対して、何らかの恐怖心をもっているためと考えてよい。そういう子どもが、そ の先、たとえば小学校などで、国語が好きになるということは、まず、ない。(絶望的とは言わな いが、好きになるのは、たいへんむずかしい。)先日もある母親が、こう言って相談にきた。 「うちの子(小一男子)は、『39は30と□』という問題ができない。みんなはできるのに、どうし てできないか」と。そしてたまたまそばにいた息子に向かって、「どうしてこんな簡単な問題がで きないの!」と。勉強が、子どもを責める道具になっている! しかし一度、この悪循環におち いると、あとは底なしの悪循環。(親が叱る)→(子どもはますます勉強嫌いになる)→(ますま す叱る)の悪循環で、子どもはドロ沼に! 幼児期は、子どもの方向性をつくるための、大切な時期。ものごとは、すべて慎重にする。こ の世界では、こう言う。『はじめよければ、すべてよし』と。(正解B) +++++++++++++++++++++++++++++++++++はやし浩 司 あせり Q 近所の同年齢の子どもたちが、夏休みの間、塾の特訓教室へ通い始めました。それを聞 いたとき、あなたは…… @人は人、うちはうちと、割り切って考えることができる。休みの過ごし方は人それぞれ。 A夏休みなのに、かわいそうだと思う。通うとしても、子どもの意思を確かめてからする。 Bジリジリするような不安感を覚え、自分の子どもも何とかしようと考える。 A つぎのような症状に、思い当たるようであれば、あなたはここでいう「あせる親」と考えてよ い。 ●近所や知り合いの子どもが、英会話教室や算数教室に通っているという話を聞くだけで、言 いようのない不安感に襲われる。自分の子どもだけが取り残されていくように感ずる(不安、妄 想)。 ●明けても暮れても、頭の中にあるのは、子どものことばかり。テストでまちがえたりすると、そ れが気になって、夜も眠られないことがある。こまかいことが気になる(過関心)。 ●学校や塾の先生と顔を合わせるたびに、すかさず「うちの子、どうですか」と聞く。あるいは 子どもの問題点を並び立て、「どうしたらいいでしょうか」と聞く(心配過剰)。 こういう状態が、長くつづくと、親のみならず、子どもの精神状態も不安定になる。この段階か ら、育児ノイローゼ、うつ病に進む人も多い。そうなると、もう、子どもの勉強どころではない。 子どもというのは、親があせっても、どうかなるものではない。しかしほうっておいても育つ。 そうした冷めた目が、一方で、子どもを伸ばす。もしあなたが今、あせりを感ずるようなら、こう 考えてほしい。『親のあせり、百害あって、一利なし』と。(正解@A) +++++++++++++++++++++++++++++++++++はやし浩 司 たくましさ Q 急用で、子ども(幼稚園児)を家に残して出かけることにしました。いろいろ言いつけたので すが、あなたは…… @いつもそういうことを頼んでいるので、何の心配もなく、出かけることができる。 A心配なので、そのつど家に電話をして、家や子どもの様子を聞く。 Bうちの子には、留守番はとても無理。子どもを残して家をあけることはできない。 A 子どもの年齢にもよる。またアメリカでは、家に子どもだけを残して出かけることは、児童遺 棄罪になり、法律的に禁じられている。そういうことはあるが、子どものたくまししさは、生活力 のあるなしをみて判断する。 年中児でも、あと片づけのできない子どもは、一〇人のうち、二、三人はいる。皆が道具をバ ッグの中にしまうときでも、ただ立っているだけ。あるいはプリントでも力まかせに、バッグの中 に押し込むだけ。しかも時間がかかる。S君もそうだった。私が身振り手振りでそれを促してい ると、そのうちメソメソと泣き出してしまった。 原因は手のかけすぎ。S君のケースでは、祖父母と、それに母親の三人が、S君の世話をし ていた。裕福な家庭で、しかも一人っ子。ミルクをこぼしても、誰かが横からサッとふいてくれる ような環境だった。しかしこのタイプの母親に、手のかけすぎを指摘しても、意味がない。第一 に、その意識がない。「私は子どもにとって、必要なことをしているだけ」と考えている。あるい は子どもに楽をさせるのが、親の愛だと誤解している。手をかけることが、親の生きがいになっ ているケースもある。中には子どもが小学校に入学したとき、先生に(先生に!)、「指導のポ イント」を書いて渡した母親すらいた。親の過保護や溺愛は、子どもをひ弱にするから注意す る。(正解@) +++++++++++++++++++++++++++++++++++はやし浩 司 溺愛 Q あなたの子どものことで、あなたは今、園か学校の先生と話しています。そのときあなたは あなたの子どもを…… @子どものことであれこれ悪く言われると、自分のことを言われているようでつらい。 A子どもの問題は子どもの問題として、冷静に聞いたり、判断することができる。 B子どもの話になると、どこか投げやりな気分になり、どうでもいいと思うことが多い。 A 溺愛の特徴に、親と子の間にカベがないこと。それに子どもを溺愛する親は、それを「親の 深い愛」と誤解し、それをかえって人に誇ること。「私こそ親のカガミ」と、その溺愛ぶりを自慢 する母親も多い。 ところで先生にも、話しにくい親というのがいる。たとえばこんな会話をする。 先生「このところ元気がありませんが……」、母「家ではふつうです」、先生「どこかで無理をし ていませんか」、母「いや、K塾では問題なく、ちゃんとやっています」と。 子どもの問題を指摘されると、あたかも自分が非難されたかのように、カリカリする。こんなこ とを言った母親もいた。何でも公園などで、子どもどうしがけんかを始めると、そのけんかの中 に飛び込んでいって、相手の子どもを殴りつけたい衝動にかられるというのだ。「自分でもどう してよいのかわからなくなります」と。 親が子どもを溺愛する背景には、親自身の情緒的未熟性や、精神的な問題があることが多 い。それに恵まれない結婚生活や、事故や事件などがきっかけとなって、親は子どもを溺愛す るようになる。そしてその結果として、子どもは自立できない、ひ弱な子どもになる。柔和でおと なしいが、ハキがない、など。ちょうどひざに抱かれたペットのようになるから、私は勝手に「ペ ット児」(失礼!)と呼んでいる。(正解A) +++++++++++++++++++++++++++++++++++はやし浩 司 愛情 Q 外出から帰ってくると、部屋の中が散らかっていました。つい先ほどまで、子どもが遊んで いたようです。それを見て…… @見るたびにイライラすることが多く、こまかいことが気になってしかたない。 A一応叱らなければと思っても、「子どものすることだから」と、割り切ることができる。 B子どものしたことは、すべていとおしい。何も考えずに、片づけることができる。 A 愛情の程度によって、子どもに対する態度は、微妙に違う。たとえば子どものことでこまか いことが気になるようだったら、自分自身の愛情不足を疑ってみる。心のどこかに、何らかの わだかまりがあり、そのわだかまりが、姿を変えて、親を神経質にすることがある。ある母親 は、子ども(幼児)の食べ散らしたパンくずを見ただけで、怒鳴りちらしていた。「いつになった ら、あなたはちゃんと食べられるの!」と。 一方、ベタベタの溺愛がよいというわけではない。自己愛の代償として、子どもを利用しては いけない。親は子どもを育てるが、その間に一線を引いてこそ、親は親なのである。言うべきこ とは言う、すべきことはするという姿勢が、子どもを自立させる。 なお心の中に何らかのわだかまりがあるときは、まずそのわだかまりが何であるかを知る。 わだかまりがあることが悪いのではない。悪いのは、そのわだかまりに気がつかないまま、そ のわだかまりに振りまわされること。わだかまりはあなたの心の奥に潜み、あなたを裏からあ やつる。これがこわい。が、そのわだかまりが何であるか気がつけば、そのあと多少時間はか かるが、問題は解決する。もしあなたが@のようであれば、一度、自分の心の中を冷静にのぞ いてみるとよい。なお現在、「子育てが楽しい」と感じている親(父母)は四三%しかいないそう だ(〇二年内閣府「国民生活に関する世論調査」)。(正解A) +++++++++++++++++++++++++++++++++++はやし浩 司 トラブル Q あなたの子どもがトラブルを起こしました。言い分を聞くと、相手の子どものほうにも、非が あるようです。そういうとき…… @ 子どもの心を守るためにも、正義をつらぬく。言うべきことは言い、正当性を訴える。 A 子どものトラブルは、万事『負けるが勝ち』と心得て、こちらから頭をさげてすます。 B 子どもどうしのトラブルは、子どもに任せ、親は感知しない。 A 子どもが、友だち、近所の人、あるいは学校の先生と何かトラブルを起こしたときの鉄則 は、ただひとつ。『負けるが勝ち』。 あなたにもいろいろ言いたいこともあるだろう。がまんできないこともあるだろう。しかしそれ でも、『負けるが勝ち』。ほかのことならともかくも、こと間に子どもをはさんでいるときは、そうす る。そしてこちらから先に頭をさげる。これはあなたというより、あなたの子どもの世界を守るた めである。大切なことは、あなたが一歩も二歩も引きさがって、子どもにとって住みやすい世界 をつくってあげること。子どものことで親がカリカリしたところで、何の得もない。しかしあなたが 先に、「すみませでした。うちの子によく言って聞かせておきますから」と折れてしまえば、相手 も、「いいんですよ。うちも悪いのです」となる。そしてそういう良好な人間関係が、子どもの世 界を住みやすくする。 今、親どうしのトラブルが本当に多い。多すぎる。トラブルがこじれて、転校……というケース は日常茶飯事。数年前だが、「言った」「言わない」がこじれて、裁判闘争にまでなった事件も ある。あるいは任期半ばで、転校を余儀なくさせられた教師となると、数知れない。しかし、だ。 そういうトラブルの陰で一番キズついているのは、子どもたち自身だということを忘れてはなら ない。だから繰りかえす。『負けるが勝ち』と。(正解A) +++++++++++++++++++++++++++++++++++はやし浩 司 断絶 Q 父親が事業に失敗し、娘(高三)の大学進学がむずかしくなりました。しかし娘は、それに 納得しません。「大学へ行かせろ」と言います。あなたは…… @ とんでもない娘だと思う。むしろ自分で働いて、家計を助けるべき。 A 子どもをよく説得して、進学はあきらめてもらう。無理をすることはない。 B 子どもを大学へやるのは親の義務。どんなことをしても、大学へやるべき。 A これは実際、あった話。高校三年生になったばかりの娘は、父親にこう言った。「私を大学 へやるのは、あんたの役目でしょ。借金でも何でもして、お金をつくってよ!」と。そこで私に相 談があった。私は最初、設問@のように思った。で、私の家に呼び、その娘を説得することにし た。Aのように話すことができればと考えていた。が、会ってみると、私の考えは大きくゆらい だ。その娘はこう言った。 「私は小さいときから、勉強しろ、勉強しろとさんざん言われてつづけてきた。学校から帰って くると、テストは何点だった、偏差値は何点だった、平均点は何点だった、順位は何点だった と、そんなことばかり言われてきた。日曜日も、宿題はやったか、今度のテストはがんばれと、 ゆっくり休むヒマもなかった。行きたくもないのに、進学塾へも入れさせられた。その私が高校 三年生になったら、『お前はもう勉強しなくていい』って、どうしてそんなことが言えるの。そんな こと許されるの!」と。 私たちは安易に、子どもに向かって「勉強しろ」と言い過ぎるのではないか。言うなら言うで、 その責任をとるのは、親の私たち。あるいは言うとしても、なぜ勉強が大切なのか。またなぜ 子どもが勉強しなければならないのか、一度、それを説明する必要がある。それをしないま ま、子どもに勉強を強いると、ここに書いたようなことが起きる。(正解?) +++++++++++++++++++++++++++++++++++はやし浩 司 確執 Q A氏は七二歳。息子のB氏は四五歳。A氏とB氏は同居していますが、この三〇年間、ほと んど会話らしい会話はありません。そういう状態をあなたは…… @ 一度断絶すると、その修復は、ほぼ不可能。親子であるがゆえに、その根も深い。 A 息子のB氏のほうがおかしい。親は親なのだから、B氏はA氏に妥協すべき。 B いつまでもいがみあっていても、意味がない。親子なのだから、許しあえるはず。 A 親子の断絶を安易に考えてはいけない。親子であるがゆえに、その根も深く、確執も大き い。部外者は、「親子だから」とか、「気のもちよう」と、考えがちだが、断絶は、そのレベルの問 題ではない。一度、そういう状態になると、表面的なつきあいはともかくも、たがいの心を修復 するのは、ほぼ不可能と言ってもよい。実際、A氏とB氏のような関係になったら、別居するの が好ましいが、古い因習にしばられて、それもできない家庭も少なくない。そこで私はある日、 そのB氏に会って話を聞いてみた。「何が原因なのか」と。B氏はこう言った。 「今でもオヤジは、『お前の学費には、三〇〇〇万円かけたからな』と言う。そういう言い方が 不愉快でならない」と。もっとも、学費の問題だけではないだろう。こうしたA氏の子育て観は全 体におよんでいて、それがA氏とB氏を断絶させたと考えるのが正しい。しかも長い時間をかけ て、そうなった。だから……。こういうケースでは、子どもの側ばかりが責められるが、生き方を 変えない親のほうにも責任はある。実際B氏は、何度も修復を試みた。が、そのたびにそれを つぶしてきたのは、ほかならぬA氏なのである。こうした確執が積もりに積もって、今の状態を つくった。「根が深い」というのは、そういう意味である。(正解@) +++++++++++++++++++++++++++++++++++はやし浩 司 過関心 Q 園や学校の参観授業で、子どもの様子を観察してみてください。そのときあなたの子ども は、あなたのことを…… @ たいへん気にしているようで、そのつど顔色をうかがうようにあなたをチラチラ見る。 A まったく気にせず、いつものようにマイペースで好き勝手なことをしている。 B 先生にほめられたりすると、あなたを気にして、あなたのほうを誇らしげに見る A 参観授業でのこと。親と子どもの視線が合ったようなとき、ときとして親の視線を鋭く感じ て、授業そのものをやりにくく思うことがある。ふつうの視線ではない。ビリビリと私の心をも突 き刺すような視線である。過関心ママ(パパ)特有の視線だが、そういう視線が日常化すると、 子どもは萎縮する。親の顔色ばかりをうかがうようになる。そんなわけで、私は『親の視線は子 どもを刺す』という格言を考えた。 親が子どもに関心をもつのは当然のことだが、それが度を超すと、過関心になる。ささいなこ とを気にしては、それをことさらおおげさに問題にする。こんなことがあった。ある男の子(年長 児)が、体操教室で、自分の番がくると、こっそりとうしろに回り、自分の番を逃げてしまうという のだ。それについて、母親が、「今からこんなでは先が思いやられる」と相談してきた。私が「何 でもないことです」と笑うと、その母親は目を白黒させて驚いた。「そんないいかげんなことでは 困ります!」と。 もしあなたの子どもが@のようであれば、思いきって子育てから離れる。もっともよい方法 は、親自身が別に生きがいをつくり、結果として、子育てから離れる。このタイプの親は、子育 てから離れようと思えば思うほど、ますます子どものことを気にするようになる。もちろんBのよ うなケースもあるが、これは問題ない。(正解AB) +++++++++++++++++++++++++++++++++++はやし浩 司 (02−12−26収録版) |