はやし浩司

Q&A-2
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生活の問題
はやし浩司


はやし浩司先生へ

●保育園VS幼稚園

娘のKは、生後六か月の頃から保育園に通っています。

今から考えれば笑い話なのですが、初めての育児でどうしたらよいかわからず
一人で悩んでどうにかなりそうだったので、六か月で育児休暇を切り上げ、
保育園に入れ、仕事に復帰したのです。

保育園の先生方は、私の悩みを聞いてくれたり、色々なアドバイスをしてくれました。

娘のKは、人見知りしない子だったので(今もですが)どの先生にでも抱っこされて、
大変かわいがってもらいました。(今もです)。

娘のKも、異年齢のお友達と遊びながら、時にはお姉ちゃん、時には妹となり、楽しく遊んでい
ます。保育園に入れて良かったと感じています。

ところが、最近、一部のお母さん方に「Kちゃんは、どこの幼稚園に行くの?」と聞かれるので
す。

小学校まで今の保育園のままだと答えると、「えー!」と驚かれます。

「SSの幼稚園はひらがなを教える」とか「AA幼稚園は算数を教える」と言うのです。

更に「保育園出身では授業中じっと座っていられない」と・・・。
私達(夫婦)は、今の保育園で十分満足していますし、ひらがなや簡単な算数なら
普段の生活の中で少しずつ覚えていくと考えています。
(実際、ひらがなは自然と覚えていきましたし、数字にも興味津々です。)

幼稚園出身児に比べ、保育園出身児は授業中じっと座っていられないのでしょうか?
小学校でじっと座っていられるように、今から訓練(?)させるなんて、おかしいような気がする
のですが・・・。
それとも私達がおかしい・・・?

先生のお時間がある時にご意見を聞かせて頂ければ嬉しいです。
長々とすみませんでした。
(佐賀県U市、TEより)

+++++++++++++++

はやし浩司より、TEさんへ、

 保育園児だからとか、幼稚園児だからという区別は、まったくナンセンスです。最近では、教
育カリキュラムにしても、保育園の幼稚園化が進み、区別できなくなっているのが、現状です。
保育園は旧厚生省管轄、幼稚園は旧文部省管轄という点だけをのぞけば、外から見たところ
では、区別できません。保育園と幼稚園の一本化が叫ばれる理由は、こんなところにもありま
す。(保育時間などの違いは、ありますが……。)

 さらに保育園児だから、じっと座っていることができないとか、幼稚園児だから、座っているこ
とができるとか、そういう区別も、ナンセンスです。問題の「根」は、もっと別のところにありま
す。まったく関係ないと断言できます。

 で、先取り教育と幼児教育、さらに早期教育は区別して考えます。小学校で勉強することを、
先に教えるのが、先取り教育。今、私の住む地方でも、掛け算の九九を教えている幼稚園が
あります。典型的な先取り教育です。
 
 幼児教育は、幼児期にしておくべきことを教える教育です。それについては、私の専門です
から、またマガジンを参考にしてください。

 で、早期教育ですが、これには、いろいろな意味が含まれます。(こういうふうに、区別して考
えるのは、正しくないかもしれませんが……。)たとえば音感やある種のスポーツなどは、かな
り早い時期から訓練を開始したほうがよいと言われています。たとえばピアノ演奏の練習など
は、満一〇歳を過ぎてから始めても、遅いと言われています。だから早い時期から、教育を始
める……。これが早期教育です。

 文字、数の学習については、私のサイトのあちこちに書いていますので、どうか参考にしてく
ださい。大切なのは、この時期、できる、できないではなく、前向きな姿勢が育っているかどう
か、です。文字や数を見たとき、逃げ腰になっているようであれば、失敗ということです。そのた
めにも、この時期は、「楽しい」ということだけを教え、あとは子ども自身がもつ力に任せます。
これが幼児教育です。

 あまりよい回答になっていないかもしれませんが、私は、TEさんの今のやり方で、よいと思い
ます。もちろんすぐれた教育を実践している幼稚園も多いので、一度、見学などをなさってみら
れたらいかがでしょうか。あくまでも「先生」「園」「園長」を見て、判断なさることだと思います。
園の選び方などは、たまたま一月七日号のマガジンに、簡単に書いておきました。どうか、参
考にしてください。

 なおいただきましたメールを、マガジンに転載しますが、よろしくご了解ください。ご都合の悪
い部分があれば、改めます。

                                はやし浩司
(03−1−15)※

******************************************************************************

Q:2週間程前に、長女と次女の事で相談のメールを送りました三重県のTTです。

 その後、今までは、主人の両親が車で3分のところに住んでいますので、
次女は主人の義母に預けて、義母が都合が悪い日は義父に見てもらっていたのですが、
二人ともボランティアや町内会の仕事などで忙しく、また幼稚園を休むようになって
からは次女を一日中見てもらわなくてはならなくて、それで疲れている様子も見られたので、
先週から私の母が月曜から金曜まで泊まりで来てくれています。1週間はそれで喜んでいた次
女もやはりそろそろ「ママがいい!」と言い始めています。
それは、もうしょうがないことなんだと思っています。

 最近私は、長女の「学校へ行く」「行かない」の言葉に家族や祖父母までが
振り回されてしまっている、ということを思うようになりました。
 
 確かに学校へは行って欲しいですし、私が付いていくことで行けるのであればそれを続けた
いと、思っていました。また、そうしているうちに一人で行けるようになるなら、それまではと思っ
ていました。そして、私が教室にいなくても大丈夫になっているのだし、もう少し。。。と。  
でも、その為に妹や祖父母を巻き込んでしまってもいいのか?と思い始めました。長女が「学
校へ行く」「行かない」は本人の問題としてうけとめ、本人が決める事で、その事に私が振り回
されず、次女もいるので私は家にいた方がいいのではないか。 それで、今は行けている学校
へ行かなくなってしまっても、それはそれとして受け止めるしかないのではないのでは、と思うよ
うになりました。 でも、主人はそこまでは思えないようで、やはり学校で学び続けることを望ん
でいます。 それも解るのですが・・・はやしさんはどう思われますか?ぜひ、ご意見をお聞か
せ下さい。よろしくお願いします。

三重県TTより


A:拝復
メール、ありがとうございました。

この種の問題を考えるときは、
(1)どうにかなる問題と、
(2)どうにもならない問題の二つに分けて
考えます。
まず(2)のどうにもならない問題は何かということを
選り分けて、それについては、あきらめ、受け入れます。
それをまずはっきりと納得してください。

TTさんのばあい、協力的な義父母、それに母親が
いらっしゃるようなので、まずもって、たいへん
恵まれた環境にあることを忘れないでください。
多少ぎくしゃくすることがあるでしょうが、しかし
恵まれていることは事実です。

次に私のところへ寄せられる相談の中でもTTさんの
ケースは、軽いです。たいへん軽いケースです。
ですから、その程度の問題は多かれ少なかれ
どの家庭にもあると思ってください。外から見ると
どの家庭もうまく言っているように見えますが、
問題のない家庭はありませんよ。

さて本論ですが、不登校の問題は、とにかく
こじらせないこと。わかりやすく言えば無理をしない
こと。どこかに親や子どもを怒鳴りつけて不登校を
なおす(?)女性がいるそうですが、ああいった
やり方は邪道中の邪道です。今の状態をより悪く
しないことだけを考えて、とにかく心静かに対処します。
私のサイトの中に「不登校」がありますので、
どうかお読みください。
(実のところ、先週、私のパソコンにウィルスが入り、
鈴木さんのメールも含めて、すべて削除してしまい
鈴木さんの前回のメールをなくしてしまいました。
ですからもう一度、前回のメールを送って
ほしいと思っているような次第です。)

メールから察するに、あなたと義父母との関係は
どこかぎくしゃくしているように思います。
ひょっとしたら、あなたがあまり他人に心を
許さないタイプなのかもしれません。もう少し
心を許してみたらどうでしょうか。
巻き込んでしまってよいものかどうかという問題ではなく、
今は協力してもらうしかないと思います。
頭をさげて、あなた自身がすなおに助けを
請えばよいのです。「お父さん、お母さん
助けてください」とです。どこかであなたがへんに
がんばればがんばるほど、あなたも疲れますが
義父母も疲れますよ。

あなたのお母さんについても、そうですが、
「ママがいい」とのこと。そのあたりは、
だからといって、次女に問題がないようであれば、
受け入れてもらうしかないだろうと思います。
しっかりと説得すべきことは説得しながら、
事情を受け入れてもらうのです。もう
それが理解できる年齢にはなっていると
思います。

「長女が「学校へ行く」「行かない」は本人の問題としてうけとめ、本人が決める事
>で、
>その事に私が振り回されず、次女もいるので私は家にいた方がいいのではないか。
> それで、今は行けている学校へ行かなくなってしまっても、それはそれとして
>受け止めるしかないのではないのでは、と思うようになりました。」とのこと。

……私もそう思います。本人がいちばん緊張状態にあることを
わかってあげましょう。この問題は、もう少し長い時間的経過をみながら
考えます。親は「3か月くらい」と思うかもしれませんが、私は一年単位
とみています。一年単位で気長に見るしかないのです。
サイトの「ポイント」(トップページより)のどこかに書いておきましたので
一度、お読みになっていただけませんか。

どちらにせよ、前回のメールをなくしてしまいましたので、
詳しくはお答えできません。ごめんなさい。
今日はこれで失礼します。


Q:はじめまして
長女8歳(小2)と長男6歳(年長)の二人の子をもつ母です。子供の友達関係の事
でメールしました。

長女は一人では遊ぶのが苦手で友達と遊ぶのが大好きな子なんですけど、7月頃から
友達と遊ぶ事がなくなりました。最初は一人でいたい時もあるのかなと思い気にして
なかったんですが、夏休み明けに偶然、公園で長女の同級生の何人かに会った時のこ
とです。同級生の子の一人がお菓子を持っていたのでみんなに配っていたのですが
「○○ちゃん(長女)にはあげない」と言ってくれませんでした。長女は悲しそうな
顔をするだけで何も言いません。そして次の日に他の同級生にあった時、長女は友達
と遊びたくて走って駆け寄ったら、みんな逃げて行ってしまったのです。その日から
そうゆう光景を何度か目にしています。それ以降気をつけて学校の様子を聞くと「放
課後は一人で本を読んでいるか、友達が遊んだりゲームをしているのを見ている」と言
います。仲間に加わる事はないみたいです。心配なので先生に上記の出来事を伝え、
様子を聞いたのですが「特に仲間ハズレにされている所はみかけません。」と言われ
ました。親の私からみると長女は気が弱いところがあったり少々難点はあるけれど、
特に問題のある性格だとは思ってなかったのですが、現状は友達と遊びたくても上手
くいってません。友達との事については話したがらないのであまり聞く事ができませ
ん。女の子は高学年になると派閥ができたり影でいじめがあったりすると聞き心配で
す。長女の学年は1クラスなので仲間ハズレにされたら小学校の間中ひとりでいるこ
とになりそうで怖いです。長女の友達に長女の事をどう思っている?と言う事も聞き
にくいので、どうしていいのかわかりません。

長男のことですが、お調子者で融通がきかない性格をしています。幼稚園で男の子同
士の争いも多いようで、長男は口が達者ではないし喧嘩でも負けることが多くてよく
拗ねたりごねたりします。友達から見下されていてリーダー格の子の気分で仲間ハズ
レにされることも少なくないようです。年少の頃から登園拒否をすることが何度もあ
りました。それでも今年の春までは男の子達のグループと遊んでいました。最近は仲
間に入れてもらいたいと言っているのですが、クラスの男の子の誰とも遊んでもらえ
ないのでしかたなく女の子と遊ぶ日が続いています。明るく振舞っているので先生に
分かってもらおうと長男の気持ち(男の子の仲間に入りたくても入れてもらえない。
一緒に遊ぼうと言っても無駄だからいじめられないように近寄らないようにしている
事)を伝えたのですが先生の態度は今までと変わっていませし、園での様子を聞いて
もあまり話してもらえません。長男の友達の一人が言うことには長男はよく怒ってい
るそうです。
来年は小学校に入りもっと親の目がいき届かなくなるので今のうちに状態を良くした
いと思うのですがどうすればいいのかわかりません。小学校は一クラスしかなく、今
の友達がみんな同じ学校に入るのでこれから先が不安です。どうしたら今の状態から
抜け出すことができるのでしょうか?

ところで先生にお聞きしたい事があるのですが、いじめはいじめる子だけに問題があ
ると思われますか?いじめられる子にもなにか原因があるのでしょうか?

一回のメールでずうずうしく二人分の相談事をしてしまいましたが同時に悩んでいま
す。私の育て方に問題があるのでしょうか?アドバイスをよろしくお願いします。

A:メ−ルありがとうございました。
親の心配は尽きないものです。特に子どもの人間関係には
気を使います。子どもが仲間とうまくつきあってくれればそれでよし。
そうでなければ、これまた頭痛のタネです。心配もそこから生まれます。
しかし子どもは、外の世界で、そのつどつらい思いをしながら、人間的に
成長していきます。この「つらさ」を、どこでどの程度与えるか。いいかえると
親は子どもが感ずるであろう「つらさ」にどこまで寛容であるかということに
なります。

一つのポイントは、(1)子どもが、そのつらさに耐えられる範囲であれば、
親としては苦しいことかもしれませんが、がまんするしかないということです。
口を出したり、介入すればするほど、結局は子どもが社会性のない子どもに
なってしまいます。問題を先送りするだけになってしまうということです。
(2)しかし親の目から見て、子どもに何らかの情緒的、精神的変化が見られたら
そのときは、積極的に介入していきます。(神経症、情緒不安症状、何らかの
精神障害的な症状などが見られたら、ということです。
神経症などについては、私のサイトに書いておきましたので、参考に
してください。)

メールの内容ですと、お嬢さんの先生も、弟さんの先生も、それほど積極的に
(つまり深刻に)考えておられないということは、一応プロの目から見て、
「あまり問題ない」とみておられるのではないかということです。
つまり「よくある、日常的な問題」という範囲ではないかということです。
先生には、問題をすでに話しておられるということですので、学校や幼稚園での
問題は、先生と子どもに任すしかないと思います。

そこで家庭ではどうするかということですが、(1)外の世界でかなり神経を
するへらしているようであれば、(実際、そうでしょうが……)、家の中では
子どもの生活をゆるめます。家庭の役割を、「しつけ」から、「やすらぎの場」へと
変化させます。多少、親に向かって生意気なことや、乱暴なことを言っても
許します。「ああ、うちの子は、外でつらい思いをしているから、家の中で
荒れるのだ」とです。そうして暖かい、濃厚なスキンシップのある家庭に
します。(日本人は本当にスキンシップのない国民です。少なすぎます!)

二人のお子さんに社会性(問題解決の技法として、人間関係をうまく調整
できないこと)は、多分に、お母さんの育て方に問題があったようです。
あなたはお子さんが小さいとき、親子だけの、マンツーマンの世界だけで
子育てをしませんでしたか? お子さんが「ものわかりのよい人」だけの
世界で育てられると、いわゆる社会性のない子どもになります。
今でもそうですが、お母さんの心配過剰な子育てが、(イコール過保護が)
今の状態を作り出していると考えてもよいのではないでしょうか。

もっとも過去のことを持ち出しても、いまさらどうにもなりませんが、
要するに、(1)もうこれから社会性のある子どもにするのは、たいへん……
というより、あきらめます。その上で、(2)「うちの子どもは、こんなものだ」
「人間関係が苦手なのだ」とわかってあげることです。オールマイティな
子どもを望まないこと。そういう子どもを求めないこと。約30%の子どもは
あなたのお子さんのようですし、集団行動を嫌います。(子どもだから
遠足や運動会が好きなはずと考えるのは、まちがいです。)
年長児になったら、子どもの「核」が見えてきますので、その核にあわせた
子育てを考えます。得意な面、苦手な面がはっきりしてくるということです。

少し問題を感ずるのは、お姉さんのほうです。

外の世界で、仮面をかぶっていませんか。いい子ぶったり、心の
状態を隠したりするとか。あなたというお母さんの前ではどうですか?
もしそうなら、過干渉、過関心を疑ってみてください。うれしかったら、
うれしそうな顔をし、そうでなかったら、そうでな顔をする。そうであれば、
問題はありません。心がつかみにくいと感ずるようであれば、少し
様子をみてください。あなたの前でおおいに甘え、おおいに言いたいことを
行っているようであれば、問題はありません。

弟さんは、女の子と遊ぶのが好きということですが、
これはお母さんの影響力が強すぎた(父親の影が薄い?)ということです。
今、そういう子どもは(男の子)は珍しくありません。
(実のところ、私も、母親との交際が主体なため、女性が集まる講演会は
得意ですが、父親が集まる講演会は苦手です。そういうものです。)
これも過去の育て方の問題に踏み込んでしまいますので、
いまさら問題にしても意味がありませんね。まあ、そういう状態なら
そういう状態でいいのではないでしょうか。やはり男児でも、実際
約30%(推定)は、女の子と遊ぶのが好きなどと言っています。
(実際のところ、小学校の低学年児でみるなら、最近では、
いじめるのは女の子、いじめられるのは男の子という図式がもう
20年ほど前からできています。男の子がやさしく、その一方で
昔的なたくましさをさくしているのは事実です。家庭環境、教育環境、
さらには環境ホルモン説までありますが、ともかくも事実はそんな
ところです。)

いじめについてですが、内容はきわめて複雑です。単なるいじわるから、
嫉妬がからんだ陰湿なものまで、いろいろあります。
本能的な闘争心に根ざすいじめもあれば、いじめられる前に
別の子どもをいじめるという防衛的ないじめもあれば、また
ストレスを発散するためのいじめもあります。で、それぞれの
ケースで、いじめられる側の問題も変わってきます。ですから
ご質問の件には、「あります」とも、「ない」とも答えられません。
(いじめを論じたら、それだけで膨大な量になってしまいます。
近くサイトにまとめておきますので、またサイトをご覧になってください。)

あなた様のケースでは、まだ「いじめられている」という段階ではないように
思います。年齢も小さいですし、本格的な「いじめ」は、そんなものではないです
よ。
熾(し)烈というか、陰湿というか、もっともっと激しいものです。
もしそうであれば、それはそれとして問題にしますが、メールの範囲内で
あれば、「よくある通常の悪戯」と考えていいのではないでしょうか。

で、問題が一つあるとすれば、あなた自身のことです。
過関心? 不安神経症? 過保護? ……などが疑われます。
お子さんが自分で外の世界でがんばっているようであれば、子どもの
世界のことは子どもに任せて、あなたは少し、親業から離れて、
つまり子育てを忘れて、外の世界を見たらいいのではないでしょうか。
そうでないと、あなた自身が、精神的にまいってしまいますよ。
お子さんがリーダー格の子どもの「下」に入るのは、親としても
どこかなさけない気持ちになるものですが、この段階では、どうにも
なりません。もし心配なら、お子さんの「一芸」を伸ばすようにします。
私のサイトから「一芸論」を検索して、どうか参考にしてください。
ヤフーで、「はやし浩司 一芸論」を検索すると、読んでいただけると
思います。要するに、「下」に入ったからといって、それがずっと続くものでは
ないし、リーダー格だから、それがずっと続くというものではないということです。
「下」にいる子どもでも、下を学ぶことによって、やがてべつのところで
リーダーになったり、あるいは同時に別のところで子分になったりしながら、
複雑な人間関係を展開するようになります。ここは静観したらよいと思います。
(親として、すべきことはないので……。)

いただく相談はもっともっと深刻なものが多いですよ。それにくらべたら、
二人とも、問題なく、いいお子さんのようですから、お母さんは
もっと自信をもって前向きに進んでください。親としてすべきことがあるなら、
キズついて、疲れて学校や幼稚園から帰ってくるお子さんを、暖かく
迎えてあげることぐらいしかもうありません。「よくがんばっているわね」と
お子さんの心を理解してあげてください。そういうねぎらいが、お子さんの
心をいやし、疲れを取ります。今のところ、初期症状としての神経症は
出ていないようなので、この点はうまくいっていると判断されます。

お母さんはお母さんで、そろそろ子離れの準備をします。子どもは小学
3年生くらいから親離れを始めますよ。お母さんはお母さんで子育てを
忘れられるような環境を自分の周囲に用意します。

何か神経症的な、心の問題が出てきたときには、また相談してください。力に
なれます。では……。


Q:はじめまして・・・。高3と中3の娘をもつ母親です。次女のことで、「ず〜〜っと」悩んでおりま
す。(涙)。
もっと早くに、このページにめぐりあっていれば・・・と後悔しきりです。中日新聞の「子育て論」
は読んでましたし、一度、講演を聞かせていただいたこともあります。次女は中2の頃から、目
だって悪くなった様です。生活態度、言葉づかい等・・・昨年暮れ頃から、一つ年上の「彼氏」が
でき、すぐに、心配な交際(あえてそう言わせていただきます)の仕方となり、「最後の一線」ま
では、どうか・・・親としては、それだけは守っていてほしい!と思うのですが、定かではありま
せん・・・このような心配は、私がたまたま耳にした、二人の電話でのやりとりや、手紙の内容
(いけない事とと承知で見てしまった)から、生じました。かなり衝撃的な内容で、(とても口では
いえない様な・・・性的表現)非常にショックを受けました。・・・いつからこんな子に・・・!?
と・・・。携帯電話も、親に内緒で勝手にプリペイド式のを購入し、もう何回か、カードを買い換え
ています。彼氏やクラスの男子と、くだらないエッチメールを交換しているようです。(あまりに
も、強烈な・・・)。今どき?と思われるかもしれませんが、うちは特にお小遣いはあげてなく、
時々おばあちゃん(私の実家の母)からいただくお小遣いから、カードなどは買っていて、その
他服など、入用に応じて、お金を与えています。(しぶしぶ)。

先生はよく、「勉強」のことは言ってはならないとおっしゃっていますが、「受験生」真っ只中の娘
は、本当に勉強からはほど遠い生活態度なんです。今、この場に及んでも、机の上には、分厚
いプリクラ帳と、マニキュア、毛抜き、鏡が置いてあって、いわゆる勉強道具はどこへやら・・・と
いう状態です。明日も、塾の模試があるらしいのですが、全く勉強に手がつかず、鱈腹食べて
は、(静かだと思うと)寝ている、という状態・・・今月ある英検(準2級)も自分から受けるといっ
て、受験料を支払ったものの、これまたどういうつもりなのか、マッタク勉強してません。私も、
たまりかねて、「受ける限りは、合格できるように努力したら?」とか、いってはみるのですが、
うん・・・と一応答えるだけ。なんだか、自分で勉強できなくなってしまっている、仕方がわからな
い?(今さらながら・・・)という感じがします。いったい、どういうつもりなのか・・・本人は、「どっ
か、公立には入ってやるさぁー」みたいな言い方しますが、本心はちゃんと入りたい高校がある
のです。(それは、彼氏のいる高校なのですが)。でも、このままでは・・・。この時期皆それぞれ
にガンバッテいることですし、こんなに勉強しないでいたら、実力なんてつきっこないし、・・・私
自信がかなり不安でいっぱいです。(←先生は、こんな言い方をすると、お笑いになるかもしれ
ませんが(^−^;)

やはり、失敗はこわいです。本人だって、絶対そのはずです!誰だって、希望がかなって、幸
せな気分で、笑って卒業式を迎えたいと思います。・・・まだまだと思っていたこの時期もあっと
いう間に訪れてしまい、日々は、どんどん過ぎてゆくのです・・・!こうしていると、わたしはどう
にかなりそうでー不安と焦りー

のんき(本当はそうじゃないのかもしれませんが)に寝ている娘が、憎らしいような、はがゆいよ
うな、なんともいえない嫌な気分です!!

それから、いったいこれはどういう「心理」かしら?と思うのですが・・・とにかく目立ちたがり屋
で、(本人も言っています)後期学級委員に立候補したり、「卒業式のとき、みんなの前で何か
言いたい」←(そんな次第があるか知りませんが)と言ったり、やたら声が大きかったり・・・ちょ
っと、あれっ?って思ってしまうような言動なのですが、これはどうなんでしょうか?なんか、心
理的に欠陥があるのでは?などと心配になります。

長くいろいろと書いてしまいましたが、私の悩み、心配はつきません・・・一刻でも早く、こんな状
態から開放されたい・・・っていうか、娘自信をなんとか良い方向へ(言い方悪いですが)向かわ
せたい!!という一心です。先生、お時間がなかなか足りないのでしょうが、どうか、こんな
「母」の悩みにお答えを頂戴したいと思います!勝手なお願いですが、できる限り早くに・・・(す
みません・・・)
このQコーナーを知って、藁をもすがる思いです。。。
どうか、よろしくお願い致します。     ☆とっても悩める母より☆

A:メールをいただきました。
まず前もって、お話しますが、「悩める母」様(以後Nさん)の悩みは、多かれ少なかれ、
ほとんどの親がもつ共通の悩みですよ。男女の性交渉にしても、もう関東地域では、
約70%弱の女子高校生が、卒業までに性体験をしています。また高校進学については
今、この静岡県では、約60%が、内申書による推薦入学という現状になっています。
私たちの時代とは、ものの考え方が違うし、社会も変わってきています。受験制度その
ものも変わってきています。
 
そういう前提で、Nさんのケースですが、お嬢さんのようなケースも、これまた多くはなくても
珍しくありません。まず第一に、「うちの子だけが……、なぜ?」というような悩み方は
しないでくださいね。子どもは親離れをし、そして巣立っていきますが、それはいつも
必ずしも、美しいものばかりとは限りません。中には、壮絶な親子戦争を繰り返して巣立って
いく子どももいます。そしてここが大切なことですが、どんな巣立ちであるにせよ、Nさんの
愛情がしっかりしていれば、必ず子どもはあなたのところに戻ってくるということです。
単調直入に言いましょう。今、あなたがかかえている問題は、どれもいつか「笑い話」になる
ような問題ばかりです。いつかあなたは二女の方にこう話すのです。
「あんたは、中学生のとき、たいへんだったのよ。お母さん、心配したのよ」と。すると
あなたのお嬢さんは、こういうのです。「まあね、いろいろ心配かけて、ごめん」と。
 
順に話していきます。
 
(1)この問題は、「今の状態より、より悪くなって、はじめて今の状態が軽かった」と気づく
ことを繰り返して、あなたから見れば(本当はそうではないのですが)、どんどんお嬢さんは
悪く(?)なっていきます。今はまだ塾へも通っている、立候補もするという状態ですが、
それも今の状態では風前のともしびかもしれませんね。今ここで大切なことは、今の状態を
これ以上、悪くしないことだけを考えて、お子さんと接することです。今はまだ進学のことを
本人も多少は心配しているようですが、しかしここで追い込んでしまうと、その進学すら
放棄してしまうかもしれません。そのとき、あなたは、今の状態が、まだよかったと気づくの
です。
 
(2)セックスの問題は、これは熱病のようなものです。私も教える側から見ると、性体験してい
る女子中学生は、その様子からすぐわかります。「男」を見るめつきが、なまめかしくなるから
です。しかしそういう女子中学生を無数に見てきましたが、高校生になると、これまたふつうの
高校生になっていくから不思議です。(ふつうにするかしないかは、Nさんが、お子さんとの
きずなを切るかきらないかの違いです。このあとに、10月号にファミリスに書いた原稿を
添付しておきます。参考にしてください。)つまり熱病のようなものですから、抑えても
抑えきれないでしょう。どうしようもないのです。私も、かつてはそういう中高校生を懸命に
指導した経験もありますが、結論は、「もう関せず」です。NさんにはNさんの、性教育観が
あるのでしょうが、今の若い人たちは、別の観点で動いています。ショックを与えるような
ことを言いますが、恐らく、年上の男の子に誘惑されたというよりは、お嬢さんのほうが
多分積極的だと思います。(今は、もう、男の子が遊ばれる時代なのです。)
ですから、今は、避妊と性病だけに心配し、その指導を家庭でするしかないです。
とにかく、今の状況を悪くしないことだけを考えてください。本人たちに罪悪感などないのですか
ら、いくら説教してもムダですよ。
 
(3)受験についてですが、二女の方は、あなたが思っている以上に、学校で苦しみ、
キズついています。ただ誤解ですが、私は「勉強については言ってはならない」とは、
書いたことはありません。受験勉強は子どもの心に大きな影響を与えるとはあちこちで
書いています。「言う」についても、注意しなさいという意味です。追い込むと子どもの
心をゆがめます。Nさんのあせる気持ちはわかりますが、子育てはまさに許して忘れるの
連続。そしてここが重要ですが、「あきらめは悟りの境地」です。先ほども書きましたように、
今はもう受験制度もちがいますし、学校の指導も変わってきています。それ以上に
子どもたちの意識も変わってきています。昔は勉強がよくできる子どもは、それだけで
尊敬されたものですが、今はむしろ「へんなヤツ」と見られたりします。それにあわせて
社会の構造も変わってきています。これからの日本は、学歴ではなく、欧米型の
プロ型社会がやってきます。どんなことでもいいのです。プロが生き残る時代が、
もうすぐそこまできているのです。意識改革をすべきは、まさに私たち自身のほうだと
いうことです。
 
(4)不安なNさんへ、
こう書いてもなぐさめにしかなりませんが、みんな不安ですよ。子どものテスト週間に
なると、病院通いしたり、おかゆしかのどをとおらないという人は、いくらでもいます。
息子が受験に失敗したあと、自殺をはかった母親すらいます。決してあなただけでは
ないのです。それもこれも、もとを正せば、明治以来(あるいは平安の昔から)続いた
学歴信仰が原因なのです。私たちは、みな、学歴信仰というカルト教団の信者なの
です。もっと言えば、あなたの不安は、「つくられた不安」ということです。もっと言えば
あなた自身のエゴにもとづいた不安です。あなたがお嬢さんをあなたの思い通りに
したいだけ。思い通りにならないから不安に思っているだけです。あなたのお嬢さんは
何も不安に思っていないのですから……。今、中学生で、家でまともに勉強している
子どもは、約10〜15%とみてよいでしょう。そんなものです。あなたはガリガリと
机に向かって受験勉強をするお嬢さんを理想の娘と思っているかもしれませんが、
そんな子どもは、もういないということ。
 
(5)思うようにならないのが子育て。しかしそれでも子どもは育っていく。親は
夢や希望を一枚ずつはがされながら、自分の子育てを終えていくのです。あなただけではない
し、あなたのかかえている問題は、まだまだ軽い! もっと深刻なケースで苦しんでいる
人はいくらでもいるし、みんな外面をよくしているだけ。近所のSさんなんかは、
二人の息子とも、高校へ入ってすぐ中退。下の子どもは、そのまま名古屋にある
人形劇団に入団。今は遊園地などでぬいぐるみを着て踊っています。当時のSさんは
死ぬほど苦しんだのですが、今は息子さんが楽しそうに踊っている姿を見ながら、
笑い話にしていますよ。そしてこう言っています。「人間、何でも、じぶんの好きなことを
すればいいのよね」とです。Nさんも、あと一歩でそういう境地に達することができる
ようになりますよ。
 
下に2作エッセイをはりつけておきます。
@親子の断絶が始まるとき

●最初は小さな亀裂
最初は、それは小さな亀裂で始まる。しかしそれに気づく親は少ない。「うちの子に限って……」「まだうちの子は小さいから……」と思っているうちに、互いの間の不協和音はやがて大きくなる。そしてそれが、断絶へと進む……。
 今、「父親を尊敬していない」と考えている中高校生は55%もいる。「父親のようになりたくない」と思っている中高校生は79%もいる(「青少年白書」平成十年)。が、この程度ならまだ救われる。親子といいながら会話もない。廊下ですれ違っても、目と目をそむけあう。まさに一触即発。親が何かを話しかけただけで、「ウッセー!」と、子どもはやり返す。そこで親は親で、「親に向かって、何だ!」となる。あとはいつもの大げんか!
……と、書くと、たいていの親はこう言う。「うちはだいじょうぶ」と。「私は子どもに感謝されているはず」と言う親もいる。しかし本当にそうか。そこでこんなテスト。
あなたの子どもが、学校から帰ってきたら、どこで体を休めているか、それを観察してみてほしい。そのときあなたの子どもが、あなたのいるところで、あなたのことを気にしないで、体を休めているようであれば、それでよし。あなたと子どもの関係は良好とみてよい。しかし好んであなたの姿の見えないところで体を休めたり、あなたの姿を見ると、どこかへ逃げて行くようであれば、要注意。かなり反省したほうがよい。ちなみに中学生の多くが、心が休まる場所としてあげたのが、@風呂の中、Aトイレの中、それにBふとんの中だそうだ(「学外研」九八年報告)。

●断絶の三要素
 親子を断絶させるものに、三つある。権威主義、相互不信、それにリズムの乱れ。「私は親だ」というのが権威主義。「子どものことは、私が一番よく知っている」「子どもは親に従うべき」という親ほど、あぶない。親が権威主義的であればあるほど、子どもは親の前では、仮面をかぶる。いい子ぶる。が、その分だけ、子どもの心は離れる。親は親で、子どもの心を見失う。次に相互不信。「うちの子はすばらしい」という自信が、子どもを伸ばす。しかし親が「心配だ」「不安だ」と思っていると、それはそのまま子どもの心となる。人間の心は、鏡のようなものだ。イギリスの格言にも、「相手は、あなたが思っているように、あなたのことを思う」というのがある。つまりあなたが子どものことを「すばらしい子」と思っていると、あなたの子どもも、あなたを「すばらしい親」と思うようになる。そういう相互作用が、親子の間を密にする。が、そうでなければ、そうでなくなる。三つ目にリズム。あなたの子どもがまだヨチヨチ歩きをしていたころを思い出してみてほしい。そのときあなたは子どもの横か、うしろを歩いていただろうか。そうであれば、それでよし。しかしあなたが子どもの前を、子どもの手を引きながら、ぐいぐいと歩いていたとするなら、あなたと子どものリズムは、そのときから狂い始めていたとみる。おけいこ塾でも何でも、あなたは子どもの意思を無視して、勝手に決めていたはずだ。今もそうだ。これからもそうだ。そしてあなたは、やがて子どもと、こんな会話をするようになる。親「あんたは誰のおかげでピアノがひけるようになったか、それがわかっているの! お母さんが高い月謝を払って、毎週ピアノ教室へ連れていってあげたからよ!」、子「いつ誰が、そんなこと、お前に頼んだア!」と。
 権威主義は百害あって一利なし。頭ごなしの命令は、タブー。子どもを信じ、今日からでも遅くないから、子どものうしろを歩く。決して前を歩かない。アメリカでは親子でも、「お前はパパに何をしてほしい?」「パパはぼくに何をしてほしい?」と聞きあっている。そういう謙虚さが、子どもの心を開く。親子の断絶を防ぐ。

 
 
A子どもが非行に走るとき
 
●こぼれた水は戻らない
 子どもは、なだらかな坂をのぼるように成長するのではない。ちょうど階段をトントンとのぼるように成長する。子どもが悪くなるときも、そうだ。(悪くなる)→(何とかしようと親があせる)→(さらに悪くなる)の悪循環の中で、子どもは、トントンと悪くなる。その一つが、非行。暴力、暴行、窃盗、万引き、性行為、飲酒、喫煙、集団非行、夜遊び、外泊、家出など。最初は、遠慮がちに、しかも隠れて悪いことしていた子どもでも、(叱られる)→(居直る)→(さらに叱られる)の悪循環を繰り返すうちに、ますます非行に走るようになる。この段階で親がすべきことは、「それ以上、症状を悪化させないこと」だが、親にはそれが理解できない「なおそう」とか、「元に戻そう」とする。しかし一度、盆からこぼれた水は、簡単には戻らない。が、親は、無理に無理を重ねる……。

●独特の症状
 子どもが非行に走るようになると、独特の症状を見せるようになる。脳の機能そのものが、変調すると考えるとわかりやすい。「心の病気」ととらえる人もいる。実際アメリカでは、非行少年に対して薬物療法をしているところもある。それはともかくも、その特徴としては、@拒否的態度(「ジュースを飲むか?」と声をかけても、即座に、「ウッセー」と拒否する。意識的に拒否するというよりは、条件反射的に拒否する)、A破滅的態度(ものの考え方が、投げやりになり、他人に対するやさしさや思いやりが消える。無感動、無関心になる。他人への迷惑に無頓着になる。バイクの騒音を注意しても、それが理解できない)、B自閉的態度(自分のカラに閉じこもり、独自の価値観を先鋭化する。「死」「命」「悪霊」などという言葉に鋭い反応を示すようになる。「家族が迷惑すれば、結局はあなたも損なのだ」と話しても、このタイプの子どもにはそれが理解できない。親のサイフからお金を抜き取って、それを使い込むなど)、C野獣的態度(行動が動物的になり、動作も、目つきが鋭くなり、肩をいからせて歩くようになる。考え方も、直感的、直情的になり、「文句のあるヤツは、ぶっ殺せ」式の、短絡したものの考え方をするようになる)などがある。
 こうした症状が見られたら、できるだけ初期の段階で、親は家庭のあり方を猛省しなければならない。しかしこれがむずかしい。このタイプの親に限って、その自覚がないばかりか、さらに強制的に子どもをなおそうとする。はげしく叱ったり、暴力を加えたりする。これがますます子どもの非行を悪化させる。こじらせる。

●最後の「糸」を切らない
 家族でも先生でも、誰かと一本の「糸」で結ばれている子どもは、非行に走る一歩手前で、自分をコントロールすることができる。が、その糸が切れたとき、あるいは子どもが「切れた(捨てられた)」と感じたとき、子どもの非行は一挙に加速する。だから子どもの心がゆがみ始めたら(そう感じたら)、なおさら、その糸を大切にする。「どんなことがあっても、私はあなたを愛していますからね」という姿勢を、徹底的に貫く。子どもというのは、自分を信じてくれる人の前では、自分のよい面を見せようとする。そういう性質をうまく使って、子どもを非行から立ちなおらせる。そのためにも最後の「糸」は切ってはいけない。切れば切ったで、ちょうど糸の切れた凧ように、子どもは行き場をなくしてしまう。そしてここが重要だが、このタイプの子どもは、「なおそう」とは思わないこと。現在の症状を今より悪化させないことだけを考えて、時間をかけて様子をみる。一般に、この非行も含めて、「心の問題」は、一年単位(一年でも短いほうだが……)で、その推移を見守る。こじらせればこじらせるほど、その分、子どもの立ちなおりは遅れる



Q:我が家には小学校1年生の男の子(6歳)と幼稚園年少の女の子(4歳)の子供がいます。
今日は、下の子についての相談です。以前から近所に住んでいる3人兄妹の家と母親同士も
仲が良いということもありよく行き来をしています。前から気にはなっていたのですが、その家
の長女(2年生)が娘と良く遊んではくれるのですが、かなり強引なところがあり娘に「嫌だ」とい
う間さえも与えずにいろいろな面で突っ走っていきます。先日、その家族とキャンプに行った時
にもその子が「Kちゃん(娘の名)、私と一緒に寝たいって。だからそうするね」と行ってきまし
た。私が娘に確認すると「寝るって言ったもんねぇ」とその子が答える始末。「あのね、おばちゃ
んはいまKに聞いてるの」と言ったものの娘はその子の強引さに押されてしまったようで小さく
「うん…」とうなずきました、がいざ二人でテントに入ると娘の号泣が。「ママと寝たかったのに、
ママとが良かったのに」と。キャンプの間4日間そんなことの連続でした。帰ってきて、娘の髪の
毛を結わこうと分け目をつけている時に2箇所の円形脱毛を発見しました。ショックでした。原
因は、そのことしか考えられません。その子と娘とは年も離れているのですが、我が家の長男
とその子の弟とが同級のためにいつもセットでやって来るのです。その子の母親にもある程度
のことは伝えてあるのですが、なかなか……今では娘のその子が来るのを恐怖に感じていま
す。いつも、そんな様子を見ている長男も「琴を虐めるから来て欲しくない」と。私としては、そ
の弟君と長男とは遊ばせてあげたいのですが、お姉さんのほうはちょっと……今後、どのよう
に接していけばよいでしょう。

A:子どもどうしの交際には、ある一定の許容範囲と程度(深さ)があります。ある程度のトラブ
ルは、覚悟して子どもたちに任せます。こうしたトラブルを経験して、子どもは社会性と問題解
決の技法を身につけます。しかしその許容範囲を超える場合は、別です。ご相談の件ですが、
円形脱毛症の原因がその小2の女の子にあるとしたら、明らかに許容範囲を超えています。ど
こかで瞬間的な恐怖心を経験したのが原因です。年齢も年少と小2ですから、この時期には離
れすぎています。さらにその子どもに対して、恐怖心を感じているなら、当然、遠ざけます。ふ
つうめんどうみのよい、1〜2歳年上の子どもは、すばらしい先生になるのですが、このケース
では、かえって子どもをマイナスに引っ張ってしまいます。対人恐怖、自信喪失、神経症の原
因ともなりかねません。小2の女の子が、お嬢さんに対して、自分の欲求不満のはけ口にして
いるようならなおさら、遠ざけます。そしてできるだけ同年齢の子どもと遊ばせるようにします。
具体的な方法については、家の様子、友人関係などがわかりませんので、お答えできません
が、その女の子がきたら、お母さんがお嬢さんを外へ連れてでたり、間にこまめに入ったりす
ればいいのではないかと思います。数回繰り返すと、その女の子は来なくなるのでは……。長
男には、相手の子に「お前の姉を連れてくるな」と言うようにしむけたらどうでしょうか。要するに
こういうケースでは、相手の女の子を遠ざけるのが賢明です。


Q:7歳の息子に、性生活そのものを見られてしまいました。その場は適当にごまかしましたが、
心にキズがついたのではないかと心配です。どうしたらいいでしょうか?

A:まったくありません。子どもがキズつくのは、親の不正義、不誠実、非倫理、不道徳的行為で
す。たとえば不倫現場を見られる、など。これはまずいです。が、夫婦が愛し合い、いたわり合
す姿は、どんどん見せます。(セックスまで見せろということではありません。) 国によっても違
いますが、ラテン系の国へ行くと、目のやり場のないほど、若い人たちは人の目もはばから
ず、抱き合ったり、愛撫しあったり、キスしたりしています。若い夫婦もそうです。アメリカでもそ
うです。オーストラリアは、もう少し謙虚です。しかし恐ろしいほど何もしないのが、日本人です。
 7歳ですから、やがてすぐ親たちが何をしていたかを知る時期にくるでしょうが、「へへへ」で
終わります。そういうものです。こうした例はたいへん多く、教室でも、ときどき、「きのうの夜、
パパとママが、裸でプロレスをしていた!」と言う子どももときどきいます。そういうときは、私
は、「ふうん。どこで?」ととぼけて聞くことにしています。すると子どもは「ふとんの上で……」と
言ったりします。その程度でおさめておきます。子どもは、ときどきおとなの世界をかいまみな
がら、情報を蓄積していきます。そしておとなになっていきます。
 要は、性にうしろめたさをもたせいないこと。スウェーデンでは、もう30年も前から、大学の講
義で、「セックスの仕方」そのものを教えています。教官が、「そこのA君、そこのBさん、前でセ
ックスしてみなさい」などと、まあ、実にあっけらかんです。日本人のように、「性」にうしろめたさ
をもたないことによるものです。親が悪いことをしたと思っていると、子どもに罪悪感をもたせて
しまいます。それは避けます。親が子どもに、「セックスは楽しいものよ」「愛し合う人どうしがす
るものよ」と、その年齢の子どもに言えるようになったとき、性の解放は達成されるのです。「秘
め事」ではないのです。また秘め事と考える必要もないのです。昔、スウェーデンのベッテルグ
レン女史という、性教育協会の会長の通訳として全国を回ったことがあります。その女史から
これは私が学んだことです。
 アングロサクソン系の夫婦は、ベッドの中ではいつも真っ裸です。子どもはいつもそういう夫
婦像を見ていますが、それで「子どもの心がゆがんだ」という話は聞いたことがありません。も
うその話には触れないで、知らぬ顔をして、子どもの成長を見守ればいいでしょう。(あえて文
字をピンクにしました! ははは)


Q:あと片づけをしない

A:「あと片づけ」と「あと始末」は違います。子どもが外の世界をもつようになったら、あと片づ
けは大目に見ます。しかしあと始末は別です。どんなことでも、あと始末をしっかりとさせるよう
します。たとえば食後、食器をシンクにもってこさせるとか、など。


Q:よい友だちと遊ばせたいが、どうしたらよいか。

A:実際に、子どもの友人を選ぶのは親ですね。よい友だちというのは、1〜2年、年上で、たっ
ぷりと親の愛情を受けた、めんどうみのよい子どもをいいます。そういう友だちをもつと、あな
たの子どもは飛躍的に伸びます。そういう子どもは、誕生会に呼んであげたり、夕食をごちそう
してあげたり、親ぐるみのつきあいをしたりします。ただしこの方法は、小学3〜4年生ぐらいま
でしか通用しません。それ以後は、子どもの友だちは、子どもに任すしかありません。


Q:どうもよくない友だちと、つきあいはじめたようです……

A:そういうときは、「友を責めるな、行為を責めよ」(イギリスの教育格言)です。相手の子ども
の行為だけを責めて、決して友だちを責めてはいけません。「タバコを吸うことは、体に悪い」と
かなど。コツは、決して、相手の友だちの名前を出さないようにすることです。以下に、私が書
いた原稿(新聞コラムより)を、添付しておきます。

「A君は悪い子だから、つきあってはダメ」・友を責めるな、行為を責めよ

 あなたの子どもが、あなたから見て好ましくない友人とつきあい始めたら、あなたはどうするだろうか。しか
もその友人から、どうもよくない遊びを覚え始めたとしたら……。こういうときの鉄則はただ一つ。『友を責め
るな、行為を責めよ』、である。これはイギリスの格言だが、こういうことだ。
 こういうケースで、「A君は悪い子だから、つきあってはダメ」と子どもに言うのは、子どもに、「友を取るか、
親を取るか」の二者択一を迫るようなもの。あなたの子どもがあなたを取ればよし。しかしそうでなければ、
あなたと子どもの間には大きな亀裂が入ることになる。友だちというのは、その子どもにとっては、子どもの
人格そのもの。友を捨てろというのは、子どもの人格を否定することに等しい。あなたが友だちを責めれば責
めるほど、あなたの子どもは窮地に立たされる。そういう状態に子どもを追い込むことは、たいへんまずい。
ではどうするか。
 こういうケースでは、行為を責める。またその範囲でおさめる。「タバコは体に悪い」「夜ふかしすれば、健
康によくない」「バイクで夜騒音をたてると、眠れなくて困る人がいる」とか、など。コツは、決して友だちの名
前を出さないようにすること。子ども自身に判断させるようにしむける。そしてあとは時を待つ。
 ……と書くだけだと、イギリスの格言の受け売りで終わってしまう。そこで私はもう一歩、この格言を前に
進める。そしてこんな格言を作った。『行為を責めて、友をほめろ』と。
 子どもというのは自分を信じてくれる人の前では、よい自分を見せようとする。そういう子どもの性質を利用
して、まず相手の友だちをほめる。「あなたの友だちのB君、あの子はユーモアがあっておもしろい子ね」と
か。「あなたの友だちのB君って、いい子ね。このプレゼントをもっていってあげてね」とか。そういう言葉はあ
なたの子どもを介して、必ず相手の子どもに伝わる。そしてそれを知った相手の子どもは、あなたの期待に
こたえようと、あなたの前ではよい自分を演ずるようになる。つまりあなたは相手の子どもを、あなたの子ど
もを通して遠隔操作するわけだが、これは子育ての中でも高等技術に属する。ただし一言。
 よく「うちの子は悪くない。友だちが悪いだけだ。友だちに誘われただけだ」と言う親がいる。しかし『類は
友を呼ぶ』の諺どおり、こういうケースではまず自分の子どもを疑ってみること。祭で酒を飲んで補導された
中学生がいた。親は「誘われただけだ」と泣いて弁解していたが、調べてみると、その子どもが主犯格だっ
た。……というようなケースは、よくある。自分の子どもを疑うのはつらいことだが、「友が悪い」と思ったら、
「原因は自分の子ども」と思うこと。だからよけいに、友を責めても意味がない。何でもない格言のようだが、
さすが教育先進国イギリス!、と思わせるような、名格言である。


Q:一人っ子の育て方の注意点を……

A:第一に考えなければならないのは、社会性の欠落です。ですから幼いときから、同年齢の子
どもたちと遊ぶ機会を多くしてください。この点さえ気をつければ、大きな問題は起きません。
ただどうしても一人っ子だと、過干渉、過関心、溺愛、過保護になりやすいですから、親は親と
して、別の生きがいを見出すようにしてください。子どもの問題というより、親の問題のほうが大
きいです。


Q: 兄(8歳)と弟(6歳)の兄弟喧嘩が激しく手に負えません。

A: 兄弟喧嘩は、それが一定のワクの範囲なら、一に静観、二に静観。互いの言い分は聞い
ても、ジャッジはしない、です。ここでいう一定の「ワク」というのは、いわゆる「仲のよい兄弟の
範囲内で」という意味です。しかしそのワクを越えて、本当に憎しみあうとか、暴力行為が過激
になるというのであれば、もっと別の原因をさぐってみます。頭から押さえても、意味がないば
かりか、かえって喧嘩を激しくさせてしまいます。別の原因として考えられるのは、上の子ども
の側の嫉妬、欲求不満など。さらには外の世界で受けるストレスの発散など。情緒不安も考え
られます。それぞれのケースに応じて、考え、対処します。


Q: 夫と子どもの教育のことでよく対立します。どうしたらよいでしょうか。

A: 子どもの前では意見の対立をしない……これが大鉄則です。子どもの前では、「お父さん
がそう言っているから、そうしなさい」とだけ言います。そして夫婦の意見の対立は、子どものい
ないところでします。賢い母親なら、そうします。昔から「船頭が二人では舟は進まない」と言い
ます。夫婦の意見が一致していても難しいのが子育て。こういうときは、夫に船頭になってもら
い、夫に子育てをリードしてもらいます。……こう書くと、封建的なことを言っていると思われる
かもしれませんが、相談者が父親なら、私は逆のことを言います。つまり互いに高い次元にお
いて、子どもを教育します。子育てでタブー中のタブーは、互いの悪口を子どもに言うことで
す。「お父さんの給料が少ないから、お母さんは苦労しているのよ」式のグチもタブーです。母
親は子どもを自分の味方につけたいため、そう言いますが、かえって子どもの心は親から離れ
ます。


Q: 子どもをどう叱ったらよいのですか。

A: 子どもを叱るときは、子どもにその子ども(あなたから見れば孫)の叱り方を教えるつもり
で叱ります。「あなたが親になったら、こういうふうに叱るのですよ」と、です。そういう心づもりを
どこかでもちながら子どもを叱ると、あなたと子どもの間にワンクッション置くことができ、ギクシ
ャクした関係を和らげることができます。あなたは親の見本なのです。そういうつもりで叱って
みてください。