3学期の授業録


使用教科書/『高等学校 新現代社会 改訂版』清水書院(清水・現社517)

授業の方法
3単位の授業。授業を2本立てで行なう。3学期は、1月で授業が終了するので、理論編のみ。
理論編=基本的に教科書の内容を学習する。テーマとしては「人間らしく(自分らしく)豊かに生きることを考える」。内容的には「労働と経済」→「法と人権」→「青年期」で1年間授業を行なう。
実態分析編=週の最後の授業は、「新聞を読み、分析し、発信する」というテーマで行なう。1学期は、主に「新聞を読み、分析する」。2学期は「新聞を分析し、発信する」ことを主眼に置き、「新聞切り貼り作品コンクール」(中日新聞社主催)に応募する作品を作成する。

第63回 親しくなるということ〜青年の恋愛行動C〜
埼玉県の女子高生のお悩み。カノジョはカレと一緒にいるだけで幸せだったのに、カレはエッチを求めてくる。それがイヤになって、とうとうカノジョはキレてしまう。男と女は違うのかと。恋愛関係(友人関係)はどのように深まっていくのだろうか。初期・進展期・深化期に分けて考えた。一般的に、男性は恋愛の初期に感情が高まり、女性はやや遅れて感情が高まってくる。このズレが、最初の女子高生のお悩みの原因だったのではないだろうか。そこには、男性の側がリードしなくてはいけないという性別役割分担の意識がみえかくれする。

松井豊『恋ごころの科学』(サイエンス社)、土田昭司編『対人行動の社会心理学』(北大路書房)、吉田俊和・松原敏浩編『社会心理学 個人と集団の理解』(ナカニシヤ)、長田雅喜編『対人関係の社会心理学』(福村出版)

第64回 親しみのコミュニケーション〜青年の恋愛行動D〜
人と人とがいくつかの手がかりを用いて、心理的に意味のあるメッセージを伝え合うことを対人コミュニケーションという。「いくつかの手がかり」と書いたが、一つはことば(言語的コミュニケーション)である。でもことばは意外に感情を伝えない。第二に、声の大きさ・速さ・高さなど話し方(近言語的コミュニケーション)である。第三に、顔の表情とか、視線・姿勢、対人距離、化粧・被服などといったことば以外(NVC)である。実は、相手の気持ちを読み取るときに、このNVCに6割近くを頼っている。なかでもとくに顔の表情は大切で、いい人間関係を築くためには、笑顔でいることである。

松井豊『恋ごころの科学』(サイエンス社)、大坊郁夫『しぐさのコミュニケーション』(サイエンス社)、土田昭司編集『対人行動の社会心理学』(北大路書房)、齊藤勇『仕事・恋愛・人間関係 心理分析ができる本』(三笠書房)、大坊郁夫編著『わたしそしてわれわれ ミレニアムバージョン』(北大路書房)

第65回 愛するふたり、別れるふたり〜青年の恋愛行動E〜
別れについて、データとVTR(からくりテレビ)を用いながら考えた。日本において、恋愛の終了は卒業、進学、就職など転機となるできごとがある3月にもっとも多い。そして、データによれば、別れの決定権をもっているのは女性の側である。失恋を経験すると、@くり返し相手のことを思い出し、A一般的に男性は、失った恋に執着し、別れた相手に未練たらたらである(「女々しい」?)。女性のほうが、気持ちの切り替えが早く、新しい恋に向かっていく傾向がある。「からくりテレビ」の昌平くん(小1)とミハヤちゃん(幼稚園)の事例をみた。こんなに幼いのに、まったくあてはまっていたのが、おもしろい。

松井豊『恋ごころの科学』(サイエンス社)、土田昭司編『対人行動の社会心理学』(北大路書房)

第66回 21世紀の歩き方@〜男女共同参画社会へ〜
学校社会では、男の子は「女の子に勝てない」(『中日新聞』)。会社に行けば、過労死・過労自殺。定年後は、熟年離婚、離婚しなくても「産業廃棄物」とよばれる毎日。これまでの性別役割分担というのは、女性も、男性も不幸にしてきた。だからこそ、「男女」共同参画社会が必要なのだ。21世紀の日本社会は、少子・高齢社会である。さまざまな問題を抱えている。21世紀の日本は、成人男性だけではもう支えられない。高齢者・外国人・女性の力が必要である。とくに人間の半分いる女性の力は重要である。

伊藤公雄『NHK人間講座 「男らしさ」という神話』(日本放送出版協会)、清水博子『新装版・夫は定年妻はストレス』(青木書店)、鹿嶋敬『男女共同参画の時代』(岩波新書)、綾小路きみまろ『有効期限の過ぎた亭主・賞味期限の切れた女房 綾小路きみまろ独演会』(PHP)、山藤章二・尾藤三柳・第一生命選『平成サラリーマン川柳傑作選@』(講談社+α文庫)

第67回 つくられた「女/男らしさ」〜「女/男らしさ」の神話〜
私たちを縛る「女/男らしさ」とは一体何なのか?それは生まれつき備わっているものなのか?これについて考えた。日本以外の社会では、男が「女性的」であったり、その逆であったりする社会もある。また同じ日本でも、中世という時代をかえりみれば、女性が生産活動や商業活動を担っている例もゴロゴロころがっていたり、男性が来客のために料理し、もてなすということもよくあった。結局、「女/男らしさ」は、その社会、文化、歴史によってつくられるのである。ボーヴォワールはこう言った。「人は女に生まれない。女になるのだ」

伊藤公雄『NHK人間講座 「男らしさ」という神話』(日本放送出版協会)、伊藤公雄『男性学入門』(作品社)、網野善彦『日本の歴史00「日本」とは何か』(講談社)、網野善彦・宮田登『歴史の中で語られてこなかったこと おんな・子供・老人からの「日本史」』(洋泉社)、網野善彦『女性の社会的地位再考』(御茶の水書房)、網野善彦『古典講読シリーズ 職人歌合』(岩波書店)、安川寿之輔『女性差別はなぜ存続するのか』(明石書店)

第68回 ワタシはどちらかというと<女/男>〜多様な性〜
赤ちゃんが誕生すると、「おめでとうございます!女/男の子が生まれました」と言われる。しかし中には、外性器のようすから性別の判断しにくい子どもたちが2000人に1人くらいの割合で生まれる。かれらをインターセックスという。女と男しか性がないといわれる、この社会では、かれらは極めて生きにくい。彼らが「自分らしく」生きにくいと感じるのであれば、この社会の仕組み・あり方を見直していかねばならない。

森永康子『女らしさ・男らしさ ジェンダーを考える』(北大路書房)、山内俊雄『性の境界 からだの性とこころの性』(岩波書店)、伊藤公雄『NHK人間講座 「男らしさ」という神話』(日本放送出版協会)、伊藤公雄『男性学入門』(作品社)、伊藤公雄『「男女共同参画」が問いかけるもの』(インパクト出版会)、日本インターセックス・イニシアティヴWEB

第69回 どうする人口減少社会〜少子高齢社会を生きる〜
先週は、「女・男らしさ」が神話であることを学習した。じゃあ、どのように生きたらよいのかということを、最後に提案してみます。以前学習したように、少子高齢社会である。だからこそ、男だけでは支えられなく、女性も社会参加が必要になる社会である。しかし、現在の日本の現状は男性が育児休暇をとろうとすると非難の声が。女性においては、いわんやをや。男女共同参画社会に向けては、企業の理解がカギである。いくつかの先進的な企業の事例を紹介した。

伊藤公雄『男性学入門』(作品社)、伊藤公雄『「男女共同参画」が問いかけるもの』(インパクト出版会)、内閣府の少子・高齢化対策WEB

第70回 「専業主夫」の誕生〜男性にとっての家事労働〜
「専業主夫」になる人もいる。その中で主夫体験記を記すものもいる。が、それを読むと、ほんの数ヵ月で「かごの鳥の憂鬱」が襲ってくることが記される。自分が社会から疎外されているという悩みを抱くようになる。実は、専業主婦である女性たちも、そんな思いはかねてからしている。結婚・出産を契機に専業主婦となった女性たちも、潜在的には働きたいと考えているからだ。やはりもう性別役割分担はダメだ。だからといって、単純に男女を入れ替えただけでもダメである。男性も、女性も、広い意味での社会参加の場がなければ、息が詰まってしまう。

伊藤公雄『「できない男」から「できる男」へ』(小学館)、伊藤公雄『男性学入門』(作品社)、伊藤公雄『「男女共同参画」が問いかけるもの』(インパクト出版会)、伊藤公雄『NHK人間講座 「男らしさ」という神話』(日本放送出版協会)

第71回
(事故により中止)
21世紀の歩き方A〜「女・男らしさ」を超えて〜
日本は高齢社会となった。女性も男性もどのように生きるのかが大きな課題となっている。中高年の女性たちは結構満足度が高い生活を送っている。それはボランティア活動など、さまざまな社会活動に積極的に参加しているからだ。一方男性は、社会活動への参加率も低く、満足度が低い。男性たちは「仕事の顔」しかもっていないからだ。仕事以外にもっといろいろな「顔」をもつべきであろう。最後に、「仕事の顔」以外の「顔」をもつ若い男性の例として、APバンクやホワイトバンドプロジェクトに参加しているMr.Childrenの櫻井和寿さんを紹介した。

伊藤公雄『NHK人間講座 「男らしさ」という神話』(日本放送出版協会)、伊藤公雄『男性学入門』(作品社)、伊藤公雄『「男女共同参画」が問いかけるもの』(インパクト出版会)、Bank Band『沿志奏逢』、『SWITCH』2005 VOL.231、2005 VOL.239

学年末テスト

2学期へ】  【戻る