3学期の授業録


使用教科書/『高校 日本史A』実教出版 (7実教・日A002)
副教材/『地歴高等地図・最新版』帝国書院 (帝国・地図599)

第42回 映画『きけ わだつみの声』をみる@
1995年に封切られた映画『きけ わだつみの声』を3回にわたってみました。今回はその1。それぞれの大学生はどのように戦争と対峙したのか。
第43回 映画『きけ わだつみの声』をみるA
『きけ わだつみの声』のその2。具体的な戦場での戦闘シーン、「慰安婦」の問題など、いろいろと考えさせられます。
第44回 映画『きけ わだつみの声』をみるB
『きけ わだつみの声』のその3。それぞれの大学生はどのように戦場で死を迎えたのか。そして、その死の意味は?それを考えたい。
第45回 戦場となった静岡県〜本土への空襲〜
静岡・清水の空襲については、市民運動の結果、空襲体験画や体験談が数多く残されている。それらをもとに、静岡・清水の空襲を再現してみたい。また、静岡・清水への空襲を、世界史の中で位置付けてみると、錦州→ゲルニカ→重慶→静岡・清水→ヒロシマ・ナガサキという一連の流れがあることに注意したい。そして、日本への空襲を企てたルメイに対して、日本政府は戦後、勲章を授けたことも忘れてはならない。

静岡平和資料館をつくる会編『静岡・清水空襲の記録』、静岡平和資料館をつくる会編『静岡・清水大空襲と艦砲射撃』、静岡・平和資料館の設立をすすめる市民の会『ドキュメント・静岡の空襲』、静岡平和資料館をつくる会『県下の空襲(1)〜静岡・浜松・沼津・下田・島田〜』、枝村三郎「静岡県の空襲と住民被害〜B29爆撃機による戦略爆撃〜」(『静岡県近代史研究・第26号』)、静岡県地域史教育研究会『静岡県 民衆の歴史を掘る〜人びとの生きたくらしと歩み〜』(静岡新聞社)

第46回 アインシュタインの苦悩〜原子爆弾の投下〜
アインシュタインは物理学者としてよく知られるが、一方で核廃絶を求める運動の先頭に立った人物としても知られる。その彼は、ドイツが原爆を保有する危機に対抗するために、アメリカ大統領に原爆開発を提案する手紙に署名をして送った。しかし、そのドイツは1945年5月に降伏。アメリカが原爆を使う理由はなかったが、ソ連との対抗関係の中で原爆が使用され、アインシュタインは悔やむ。現在、新たな核兵器といってよい劣化ウラン弾が使われ、さらにアインシュタインの苦悩は深まっていることだろう。

広島平和記念資料館WEB、油井大三郎『日米戦争観の相剋【摩擦の深層心理】』(岩波書店)、森住卓『イラク 湾岸戦争の子どもたち』(高文研)

第47回 遅すぎた「聖断」〜日本の敗戦〜
アジア・太平洋での激しい戦闘、沖縄戦、全国各地での空襲、そして原爆。多くの人びとが苦しんでいた。しかし、それでもポツダム宣言を受け入れようとしない日本政府。なぜか?それは「国体護持」に不安があったからである。「国体護持」をめぐって、不毛な議論が8月14日まで続く。この間にも、空襲が相次ぎ多くの人が亡くなっていった。そして8月15日、「玉音放送」が流れた。15年にわたる戦争が日本の敗戦という形で終わり、アジアの人びとにとっては解放、独立運動へ動き出す日となった。

江口圭一『十五年戦争小史・新版』(青木書店)、江口圭一『体系日本の歴史M二つの大戦』(小学館ライブラリー)、藤原彰・吉田裕・伊藤悟・功刀俊洋『天皇の昭和史』(新日本新書)、山田朗『昭和天皇の軍事思想と戦略』(校倉書房)、由井正臣『日本の歴史8 大日本帝国の時代』(岩波ジュニア新書)、木坂順一郎「太平洋戦争〜戦争終結への道〜」(『歴史でみる日本』2001年度放送)、吉田裕『昭和天皇の終戦史』(岩波新書)、油井大三郎・古田元夫『世界の歴史28 第二次世界大戦から米ソ対立へ』(中央公論社)

第48回 「戦前レジームからの脱却」〜戦後改革・前編〜
「戦後レジームからの脱却」を掲げるAB首相は、日本国憲法は「GHQによって一週間余りでつくられたもの」、だから「われわれの手で新しい憲法をつくっていこう」という。AB首相のこの認識は果たして正しいのだろうか。歴史の事実に即して検討してみたい。まず、敗戦直後、GHQは日本政府に憲法の自由化を求めている。それを受けて、日本政府は自ら憲法を検討するが、それはまるで時代錯誤のものであった。そこで、GHQが乗り出すのであった。そのときGHQは、憲法研究会の「憲法草案要綱」を大いに参照し、マッカーサー草案を作成した。その憲法研究会の「要綱」をまとめた鈴木安蔵(のち静大教授)は、明治・自由民権期の植木枝盛の研究者であった。つまり、日本国憲法は、鈴木安蔵を介して自由民権の思想が流れており、さらに言えば、植木枝盛を介してアメリカ独立革命やフランス革命などの市民革命の思想が流れているのである。AB首相の認識がいかに浅はかであるのかは明白であろう。

浜林正夫・森英樹編『歴史のなかの日本国憲法 世界史から学ぶ』(地歴社)、浦部法穂・大久保史郎・森英樹『現代憲法講義1〔講義編〕』(法律文化社)、水島朝穂『憲法「私」論』(小学館)、樋口陽一『個人と国家―今なぜ立憲主義か』(集英社新書)、国立国会図書館WEB内の電子展示会「日本国憲法の誕生」というサイト

第49回 「日本は正しいことを、ほかの国より先に行った」〜戦後改革・後編〜
2005年に発表された自民党「新憲法草案」では、9条2項(戦力不保持、交戦権の否認)を削除するが、1項(戦争放棄)は残すから安心していいよ、なんていう。果たしてそれは本当か。それを検討する。実は、9条1項だけでは戦争は止められない。それは歴史が証明するところである。9条1項はあのパリ不戦条約を引き写したものである。パリ不戦条約で戦争は止められたであろうか。その後、「自衛」のためにということで、どんどんと戦争が展開していったことは忘れてはならない。だから、2項が重要なのである。それは、日本が原爆を経験したがゆえに、徹底して「力によらない平和」を求めたのである。そしてまた、9条は戦争の被害にあったアジアの人びとに誓った≪誓約書≫でもある。

文部省『あたらしい憲法のはなし』、浜林正夫・森英樹編『歴史のなかの日本国憲法 世界史から学ぶ』(地歴社)、浦部法穂『全訂・憲法学教室』(日本評論社)、森英樹『国際協力と平和を考える50話』(岩波ジュニア新書)、水島朝穂『憲法「私」論』(小学館)、古関彰一『憲法九条はなぜ制定されたか』(岩波ブックレット)、国立国会図書館web内の電子展示会「日本国憲法の誕生」というサイト

第50回 渡辺清の怒り〜戦争責任〜
アジア太平洋戦争では、日本人だけではなく、アジア全域において、多くの人が命を落とした。その戦争の責任は、当然昭和天皇にあるはずである。アメリカ国民の世論や中国、オーストラリアなどは天皇の責任を追及した。のしかしながら、昭和天皇は何の責任をとることもなく、1989年に亡くなった。なぜ昭和天皇は何の責任もとらず、生き残ったのであろうか?GHQの構想を見ていきたい。

江口圭一『十五年戦争小史・新版』(青木書店)、浦部法穂・大久保史郎・森英樹『現代憲法講義1〔講義編〕』(法律文化社)、古関彰一『憲法九条はなぜ制定されたか』(岩波ブックレット)、愛敬浩二『改憲問題』(ちくま新書)、荒井信一『戦争責任 現代史からの問い』(岩波現代文庫)、国立国会図書館web内の電子展示会「日本国憲法の誕生」というサイト

第51回 富士山を世界遺産に〜戦後改革の転換〜
富士山は世界遺産に登録されていない。それはゴミ問題のためであると言われるが、89歳の女性はもう一つ理由があると指摘する。それは富士のすそには演習場があり、ドカンドカンと大砲を打ち込む演習が行われているからだ、と。なぜこんなことが日常的に行われているのか?もっといえば、なぜ平和憲法をもつ日本に自衛隊があり、在日米軍があるのか?この問題を考えた。89歳の女性の「一日も早く兵器のない世の中になって、富士山が世界中の遺産になることを祈ります」という願いが早くかないますように。

浜林正夫・森英樹編『歴史のなかの日本国憲法』(地歴社)、森英樹『国際協力と平和を考える50話』(岩波ジュニア新書)、『静岡県史 通史編6 近現代二』、静岡県地域史教育研究会『静岡県 民衆の歴史を掘る〜人びとの生きたくらしと歩み〜』(静岡新聞社)、『NHKスペシャル シリーズ憲法 私たちは9条とどう向き合うのか』2005年放送

第52回 ゴジラの怒り〜新日米安全保障条約〜
1954年11月3日、『ゴジラ』が公開された。この映画は、その年の3月1日にあったビキニ事件をきっかけにつくられたものである。ゴジラは首都東京を襲うが、ゴジラは何に対して怒っていたのであろうか?当時、米ソによる核軍拡競争が激しくなり、世界がアメリカにつくかまたはソ連につくか、迫られた。日本の岸信介内閣はアメリカと手を組むことを考え、手始めに新日米安全保障条約に調印した。しかしながら、それは国民の大反発をまねき、条約は批准したものの、岸自身は退陣せざるを得なくなる。その後、歯止めとなる条約もいくつか結ばれたものの、一方で核軍拡競争は世界に広がった。『ゴジラ』の山根博士の「ゴジラの同類が、また世界のどこかへ現れてこないとはいいきれまい」というセリフが現実のものとなる日も遠くない?

浜林正夫・森英樹編『歴史のなかの日本国憲法 世界史から学ぶ』(地歴社)、水島朝穂WEB「平和憲法のメッセージ」、『朝日クロニクル 週刊20世紀 1954年』(朝日新聞社)、井上英之『検証・ゴジラ誕生 昭和29年・東宝撮影所』(朝日ソノラマ)、森住卓『セミパラチンスク』(高文研)、『NHKスペシャル 映像の世紀・第8集 恐怖の中の平和』

第53回 ヴェトナムの衝撃〜揺れる超大国・アメリカ〜
昨年末、ドクさんが結婚した。ドクさんは、双子の兄ベトさんと体がくっついた状態で誕生した。なぜこんなことがおきたのか?ヴェトナムでの長期間の戦争について概観した。インドシナ戦争、それに続くヴェトナム戦争。ヴェトナム戦争は、超大国アメリカの敗北で終結し、ヴェトナムは統一を果たした。この戦争を終わらせた力は、アメリカ国内での反戦運動である。日本においても、同様に反戦運動が盛り上がった。使用したVTRは『NHKスペシャル・映像の世紀・第9集・ベトナムの衝撃』(約20分)である。

桜井由躬雄「スカルノとホーチミン〜国づくりの苦悩〜」(『歴史でみる世界』2001年度)、藤原彰『体系日本の歴史N 世界の中の日本』(小学館ライブラリー)、立命館大学国際平和ミュージアム『立命館大学国際平和ミュージアム・常設展示詳細解説』、『NHKスペシャル 映像の世紀・第9集 ベトナムの衝撃』

第54回 アジアの「ドラえもん」〜1970〜80年代のアジアと日本〜
米誌『タイム』(アジア版、2002年)で「アジアのヒーロー」の一人として、ドラえもんが選ばれた。ドラえもんは、アジア諸国で受け入れられている。ドラえもんだけではない。日本の文化や企業がアジア諸地域で受け入れられている。かつてあれだけの戦争を引きおこし、十分な謝罪もないのに、なぜアジアで日本の文化や企業が受け入れられているのだろうか。この問題を考えた。安保闘争など日本国内における平和運動を背景に、1970年代、9条を具現化する政策がとられた。非核三原則、武器輸出禁止三原則など。それら9条に基づく平和国家・日本だったからこそ、アジアに受け入れられたのではないだろうか。一方で、アジアからの警戒心も日本を平和国家に育てたのである。

渡辺治・後藤道夫編『講座・戦争と現代1「新しい戦争」の時代と日本』(大月書店)、渡辺治「小国主義政治の歴史的終焉」(後藤道夫編『日本の時代史28 岐路に立つ日本』吉川弘文館)、渡辺治「戦後保守政治の中の安倍政権」(『現代思想 vol.35-1』)、『NHKスペシャル シリーズ憲法・私たちは9条とどう向きあうのか』(2005年放送)

第55回 どうする?「国際貢献」〜1990年代の世界と日本〜
1989年に冷戦が終結し、世界に平和が訪れると思われた。しかし、現実はそうではなかった。例えば、1991年には湾岸戦争がおき、そこではそれまで使われたことのない新しい兵器が次々と投入された。このとき、日本国内では「国際貢献すべき!」という世論が沸き起こり、自衛隊を海外に派兵しようとする動きがおこった。湾岸戦争時は、結局、多国籍軍の中に自衛隊は加わることはなく、合計130億ドルものお金を出しただけであった。しかし、「世界」からは評価されず、それが日本政府にとってある種のトラウマとなっていく。そして、湾岸戦争後の1992年、PKO協力法が成立し、自衛隊の海外派兵によって「国際貢献」する流れが定着した。いま一度、平和憲法をもつ日本ができる「国際貢献」を考えていきたいところだ。使用したVTRは『NHKスペシャル 世紀を越えて・戦場の革命』(約10分)である。

渡辺治・後藤道夫編『講座・戦争と現代1「新しい戦争」の時代と日本』(大月書店)、渡辺治「小国主義政治の歴史的終焉」(後藤道夫編『日本の時代史28 岐路に立つ日本』吉川弘文館)、森英樹『これがPKOだ』(岩波ジュニア新書)、森英樹『国際協力と平和を考える50話』(岩波ジュニア新書)、防衛省WEB、『NHKスペシャル 世紀を越えて・戦場の革命』

第56回 永遠平和のために〜日本から発信する平和への道〜
9・11同時多発テロ事件をきっかけとしたアフガニスタン戦争やイラク戦争では、「国益」を守るために自衛隊が派兵された。「国際貢献」といえば、いまや自衛隊を派兵することのように思われているが、果たして9条の理念を活かした日本が行える「国際貢献」とは自衛隊を派兵することであろうか?いや、そうではないはずである。「力によらない平和」を追求した9条は、NGOや民間人の活躍を求めているし、実際、例えば、ペシャワール会の中村哲さんらは「力によらない平和」を実践している。こうした活動がある一方で、、安倍内閣はクラスター爆弾禁止条約にも後ろ向きの姿勢をとる。日本が日本国憲法前文や9条を活かし、そのような条約にも積極的に参加したとき、日本は、はじめて「国際社会において、名誉ある地位を占め」ることができるであろうし、また、諸外国から攻撃の対象となることもなく、「われらの安全」を「保持」することができるのである。

渡辺治「小国主義政治の歴史的終焉」(後藤道夫編『日本の時代史28 岐路に立つ日本』吉川弘文館)、渡辺治・和田進編『戦争と現代5 平和秩序形成の課題』(大月書店)、水島朝穂編著『改憲論を診る』(法律文化社)、井筒和幸ら『憲法を変えて戦争へ行こうという世の中にしないための18人の発言』(岩波ブックレット)、中村哲『NHK知るを楽しむ この人この世界 アフガニスタン・命の水を求めて』(日本放送出版協会)、Bank Band『沿志奏逢』

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