2学期の授業録


使用教科書/『高校 日本史A』実教出版 (7実教・日A002)
副教材/『地歴高等地図・最新版』帝国書院 (帝国・地図599)

第21回 「小さな政府」それとも「大きな政府」?〜世界恐慌〜
失業者が増えれば、いくつかの社会問題が発生する。だから、政府はこの失業者をどうしようかと考える。世界恐慌の最中の1933年アメリカ大統領選挙は、この点が最大の争点となった。共和党から立候補した、現職のフーヴァー候補は、政府は経済にはなるべく関係しない方がよいとした。一方、民主党から立候補したローズヴェルト候補は、ニューディール政策を実施すると約束した。選挙民は、ローズヴェルトを大統領に選出し、ニューディール政策が矢継ぎ早に行なわれた。アメリカの社会保障制度が整ったのもこの時期だ。しかし現在、ローズヴェルトが目指した「大きな政府」の課題も見えてきた。いま、キミたちはどちらを選択する?

中村政則『経済発展と民主主義』(岩波書店)、中村政則『明治維新と戦後改革−近現代史論』(校倉書房)、木村靖二・柴宜弘・長沼秀世『世界の歴史26 世界大戦と現代文化の開幕』(中央公論社)、杉原泰雄『人権の歴史』(岩波書店)、二宮厚美『憲法25条+9条の新福祉国家』(かもがわ出版)

第22回 歴史の「分かれ道」〜恐慌からの脱出策〜
恐慌をいかにして乗り越えるか。世界恐慌時の資本主義諸国の共通の悩みだ。今回は日本とドイツを考える。私たちは結論を知っている。つまり、ともに軍事大国となることによって、恐慌を「克服」したのだ。ドイツでは、ヒトラーが民主的な手法によって政権を握り、再軍備宣言をした。日本では、陸軍軍人の石原莞爾が満蒙の価値を説き、領有すべきであることを説いた。その道は果たして「正解」だったのか?もちろんそうではない。他の道はなかったのだろうか?そこで、石橋湛山の主張をみた。

中村政則『明治維新と戦後改革−近現代史論』(校倉書房)、中村政則『昭和恐慌』(岩波ブックレット)、田中彰『小国主義〜日本の近代を読みなおす〜』(岩波新書)、歴史教育者協議会『わかってたのしい中学社会科歴史の授業』(大月書店)、山本秀行『ナチズムの記憶 日常生活からみた第三帝国』(山川出版社)、『静岡県史通史編6』、松尾尊~編『石橋湛山評論集』(岩波文庫)

第23回 犯人はだれだ?〜満州事変〜
1931年9月18日、奉天郊外の柳条湖で満鉄爆破事件がおこる。これをきっかけに日本は「満州国」を建国した。中国侵略のきっかけとなる柳条湖事件をおこしたのは、新聞は中国軍という。日本国民はそれを熱狂的に支持する。一方、首相ら政府首脳は日本軍の仕業かもと疑う。それは、3年前の張作霖爆殺事件の経験があったからだ。この事件をおこしたのは一体だれか?戦後になって、関係者の証言があちこちから出てきた。そして、軍を統帥する最高責任者であった昭和天皇もその「張本人」を知っていたようだ。そういえば、2003年3月にはじまった「イラク戦争」もウソからはじまった。

江口圭一『十五年戦争小史・新版』(青木書店)、江口圭一『日本帝国主義史研究』(青木書店)、『新聞に見る静岡県の100年』(静岡新聞社)、原田熊雄『西園寺公と政局 第2巻』(岩波書店)、黒羽清隆『日中戦争前史』(三省堂選書)、「昭和天皇独白録」(文藝春秋)

第24回 そうだ満州行こう〜「満州国」と静岡県〜
中国残留孤児が帰国し、本当の肉親を探しにくる。それにしてもなぜ身元の分からない日本人が中国にいるのか?それを考えた。「満州国」建国後、昭和恐慌の影響を受け、窮乏していた静岡県の農村では、「満州に行けば大地主になれる」という宣伝文句にのって、村ごと「満州国」に行ったところもある。しかしその方法は…。1945年8月、ソ連の参戦によって「満州国」にいた日本人は悲劇的な最後を迎える。この中で親子がバラバラとなり、「残留孤児」が発生する。満州移民は被害者の側面と加害者の側面をもつのである。それにしても残留孤児の現在は、拉致被害者に比べても厳しいものがある。いったい誰が、中国に送ったのか?

静岡県近代史研究会『史跡が語る静岡の十五年戦争』(青木書店)、山本義彦「経済更生運動と満蒙開拓移民―静岡県地域の事例―」(『静岡大学 経済研究』2巻4号)、静岡県地域史教育研究会『静岡県民衆の歴史を掘る』(静岡新聞社)、ふらっと人権情報ネットワークWEB、『朝日クロニクル週刊20世紀 1981年』(朝日新聞社)、NHKスペシャル『満蒙開拓団はこうして送られた』(2006年放送)

第25回 興津と平和を愛した西園寺公望A〜軍部の台頭〜
再び元老・西園寺公望である。元老とは次の首相を推薦するという役割を担っていた。元老・西園寺公望は、政党政治の確立による立憲政治の発展に尽力し、国際連盟を重視して英米協調外交を推進した。5・15事件発生。「次の首相は誰だ?」。政界、マスコミが興津に押しかける。政党政治家は汚職事件により国民の信用を失っていた。西園寺は、政局の安定のために軍部と妥協し、「挙国一致」内閣をつくらせたが、2・26事件をきっかけに軍部の発言力はさらに高まった。西園寺は、1940年興津で亡くなる。日本は西園寺が思い描いていたのとは全く正反対の方へ進んでいき、西園寺にとってはまさに死んでも死にきれない思いだったのではないだろうか?

木坂順一郎「軍部の台頭〜最後の元老〜」(『NHK教育 歴史でみる日本』1998年度版)、岩井忠熊『西園寺公望〜最後の元老〜』(岩波新書)、『岡義武著作集第4巻近代日本の政治家』(岩波書店)、原田熊雄『西園寺公と政局 第2巻、第3巻、第8巻』(岩波書店)、立命館大学編『西園寺公望傳 第4巻』(岩波書店)、森口英生監修『目で見る清水100年史』静岡郷土出版社

第26回 ≪修学旅行特論@≫サダコと折り鶴〜時を超えた生命の伝言〜
中間テストの後、西日本に修学旅行に行くので、この授業を設定した。原爆の被害は投下直後だけではない。数年後、いや数十年後におこるとも限らない。今回は原爆投下から10年後に白血病で亡くなった佐々木禎子さん(「原爆の子の像」のモデル)にスポットをあて、VTRをみた(約20分)。禎子は亡くなる1年前まで、全く問題のない健康状態であった。しかし突如発病し、入院した。そして、お見舞いに千羽鶴をもらったことをきっかけに禎子も鶴を折りはじめた。1000羽折れば病気が治ると信じて折り続けたが、禎子は亡くなってしまった。10年前、イラクで湾岸戦争があった。そこでは劣化ウラン弾が使われ、放射能の影響を受け、第2、第3の「サダコ」が誕生している。これからも、それは増え続けるだろう。

『広島平和記念資料館企画展・サダコと折り鶴〜時を超えた生命の伝言〜』(広島平和記念資料館)、広島市WEB、「NHKスペシャル サダコ・ヒロシマの少女と20世紀」(1999年放送)

第27回 七夕の夜の銃声〜日中全面戦争〜
1937年7月7日夜、一発の銃声がなった。これをきっかけにして、日中両軍が盧溝橋周辺で戦闘を繰り返した。盧溝橋事件である。これを聞いた陸軍内部では、2つの空気があったという。ひとつは「厄介なことが起こったな」(柴山軍務課長)、もうひとつは「愉快なことが起こったね」(武藤作戦課長)。7月11日、現地では停戦協定が成立し、武力衝突は「終わった」。しかし同日、日本政府は華北への派兵を決定した。これによって中国東北部だけでの戦争が、宣戦布告もないままに中国全体に広がる全面戦争へと拡大していった。宣戦布告をしなかったのは、アメリカとの関係による。

江口圭一『十五年戦争小史・新版』(青木書店)、江口圭一『盧溝橋事件』(岩波ブックレット)、藤原彰『昭和の歴史D日中全面戦争』(小学館ライブラリー)、岡義武『近衛文麿―「運命」の政治家―』(岩波新書)、立命館大学編『西園寺公望傳 第4巻』(岩波書店)

第28回 静岡兵もみた南京大虐殺〜人間から「兵士」へ〜
「鶏でも殺すような」、「銃剣で突き刺したが面白い」と表現したのは静岡県出身の兵士が書いた手紙の一部である。この人たちが特別な人間であったのかというとそうではない。まったく普通の農民であり、日本では「良き父」「良ききょうだい」であった人物である。中国に行って、なぜこのような「兵士」になってしまったのだろうか?その原因を探る。なお南京大虐殺については、世界中に報道され日本は国際的非難を受けたものの、日本では報道規制が行なわれ、日本人が本格的にこれを知るのは戦後になってからである。この手紙の存在は、南京大虐殺が否定しようのない事実であることを証明するものである。

江口圭一『十五年戦争小史・新版』(青木書店)、江口圭一「中国戦線の日本軍」『日本帝国主義史研究』(青木書店)、小池善之「南京事件を追う〜軍事郵便の中の日中戦争〜」(『静岡県近代史研究 第24号』静岡県近代史研究会)、藤原彰『新版・南京大虐殺』(岩波ブックレット)、藤原彰『昭和の歴史D日中全面戦争』(小学館ライブラリー)、南京事件調査研究会編『南京大虐殺否定論13のナゾ』(柏書房)

第29回 ≪修学旅行特論A≫原爆投下、その時なにが〜原爆の被害〜
この国の首相となったAB氏はかつて、「憲法解釈上は、自衛のための必要最小限度を超えなければ核兵器も保有できるが、非核三原則やNPTにより、核保有という選択肢は全くない」とか、「北朝鮮など核攻撃で焦土にしてやる」とかという発言をしたことがある。「核攻撃で焦土に」なるとはどういうことか。かつてのヒロシマ・ナガサキで一体何があったのかをVTRを見ながら検討した。NHKスペシャル『赤い背中』は圧倒的な迫力をもつ。こうした経験がじつは、日本国憲法を生んだのである。それにしても、AB氏には想像力が足りない。

広島平和記念資料館『図録 ヒロシマを世界に』、水島朝穂『憲法「私」論』(小学館)、広島平和記念資料館WEB、「NHKスペシャル 原爆投下・10秒の衝撃」(1998年放送)、「NHKスペシャル ZONE 核と人間」(2005年放送)、「NHKスペシャル 赤い背中 原爆を背負い続けた60年」(2005年放送)

第30回 ≪修学旅行特論B≫もう一つの「核戦争」〜世界に広がるヒバクシャ〜
1991年の「湾岸戦争」後、イラクの人びとに変化が見られた。例えば、ガン患者・白血病が増えた。また、障害児・奇形児として誕生してくる子どもの数も増えた。いったいなぜか? アメリカ政府は否定するが、その原因は、「湾岸戦争」や「イラク戦争」で使われた劣化ウラン弾にあるといわれている。その原料となる劣化ウランは大量にある「核のゴミ」で、放射性物質である。いま、放射能の影響を受け「ヒバクシャ」となった人は、世界中に存在しているのであり、日本だけが被爆国とはいえない状況にある。そのようなかれらと手を結び、核廃絶に向けた取り組みを行なう必要があるだろう。

佐藤真紀編著『ヒバクシャになったイラク帰還兵』(大月書店)、豊田直巳『写真集 イラクの子供たち』(第三書館)、森住卓『イラク 湾岸戦争の子どもたち』(高文研)、森住卓『イラク 占領と核汚染』(高文研)、森住卓ホームページ、第9条の会・オーバー東京『イラク この子どもたちの笑顔を消さないで』(あーてぃくる9ブックレット)

中間テスト
第31回 テスト返却
第32回 経済制裁のあとに…〜第2次世界大戦と日本〜
北朝鮮の核実験「成功」によって、北朝鮮に対して「圧力」をかけろという声が日本国内で強まっている。ちょっと待てと言いたい。「圧力」=経済制裁が何をもたらすのかは、日本自身がよく知っているはずだ。つまり、アジア・太平洋戦争直前に、日本はアメリカをはじめとした国ぐにからくず鉄・鋼鉄、さらに石油類の輸出を禁止されるという経済制裁を受けていたのである。その経済制裁の結果、日本はアメリカ等との戦争を決意したのである。戦前の日本とよく似た北朝鮮が、経済制裁によって追い込まれたとき、かつての日本のように暴発する可能性は否定できない。いま一度、北朝鮮に対する「圧力」を再考したい。

江口圭一『十五年戦争小史・新版』(青木書店)、江口圭一『日本の歴史M二つの大戦』(小学館ライブラリー)、木坂順一郎『昭和の歴史F太平洋戦争』(小学館ライブラリー)、渡辺賢二『近現代日本をどう学ぶか』(教育史料出版会)

第33回 戦争のつくりかた〜ファシズム体制の確立〜
戦前の反戦ジャーナリスト・清沢洌は1945年1月1日の日記(『暗黒日記』)に「日本国民は、今、初め『戦争』を経験している」と述べる。しかし、日本は1931年以来、中国や太平洋各地で戦争をしていた。頭に爆弾が落ちてきてはじめて、「『戦争』を経験」する。1945年に至るまでに戦争はどのようにつくられたのか?すると驚くほど戦前と現在が似ていることに気づく。現在の日本も、遠くイラクに航空自衛隊を派兵している。いつの日か再び頭に爆弾が落ちてきてはじめて「『戦争』を経験」するのかもしれない。しかしそうなっては遅いのである。

高橋哲哉「戦争の論理か平和の哲学か」(『いま私たちに問われていること』第9条の会なごやブックレット)、清沢洌『暗黒日記3』(ちくま学芸文庫)、高橋哲哉『「心」と戦争』(昌文社)、高橋哲哉・斎藤貴男『平和と平等をあきらめない』(昌文社)、柳田芙美緒『静岡連隊写真集』(静岡連隊写真集刊行会)、『静岡市の100年写真集』(静岡新聞社)

第34回 「だれがこんな戦争を始めたんだ!」〜アジア・太平洋戦争〜
映画『きけ わだつみの声』の最後の場面で、徴兵逃れをした大学生が「だれがこんな戦争を始めたんだ!」と叫んだ。この問いは重い。日本が東南アジアへ進駐したことによって、東南アジアに縄張りをもつアメリカやイギリスとの対立が深まったという話は第32回でしたが、なぜあれほどまでに経済格差のあるアメリカと戦争したのだろうか?とくに昭和天皇をはじめとする政府首脳たちは、アメリカとの戦争にどのような見通しをもっていたのだろうか?その点を史料を通じて学習した。ちなみに、現在の日本国憲法・前文には、「政府の行為によって再び戦争の惨禍が起こることのないやうに」とある。

江口圭一『十五年戦争小史・新版』(青木書店)、藤原彰・吉田裕・伊藤悟・功刀俊洋『天皇の昭和史』(新日本新書)、藤原彰「天皇の戦争責任」(『十五年戦争と天皇』あずみの書房)、藤原彰『昭和天皇の十五年戦争』(青木書店)、山田朗『昭和天皇の軍事思想と戦略』(校倉書房)

第35回 地図から消された島〜中国への加害の一例〜
日中関係において重要なのは「歴史認識問題」である。被害国となった中国の人びとはよく勉強している。一方で、日本の人びとはあまりに知らない。今後、良好な日中関係を築いていくためには、この溝を埋めなくてはならない。さて、今回、広島県竹原市にある大久野島に焦点を当てる。この島は、戦前地図から消されていた。それはなぜか? ボクが昨年この島を訪れたときのスライドを見ながら考えた。国際法違反の戦争をやっていたのである。だから、敗戦時、これを隠すための「工作」が行なわれた。これによって、現在、静岡県を含めた日本の各地、そして中国の各地で、問題がおきているのである。その意味で、まだ戦争は終わっていない。

江口圭一『十五年戦争小史・新版』(青木書店)、毒ガス島歴史研究所WEB、『毒ガスの島 大久野島 悪夢の傷跡』(中国新聞社)、島本慈子『戦争で死ぬ、ということ』(岩波新書)、武田英子『地図から消された島 大久野島 毒ガス工場』(ドメス出版)、日本軍による細菌戦の歴史事実を明らかにする会『731部隊の細菌戦〜いまアジアが問う日本の戦争責任〜』、森村誠一『新版・悪魔の飽食』『新版・続悪魔の飽食』『第三部・悪魔の飽食』(角川文庫)

第36回 涙の金メダリスト〜植民地・朝鮮と台湾への加害の一例〜
1936年のベルリン・オリンピックで、孫基禎は当時のオリンピック記録で優勝した。しかし表情は冴えない。それは朝鮮の出身でありながらも、当時は日本の植民地支配の下にあり、「日本」代表として出場したからだ。日本は植民地とした朝鮮と台湾にいったい何をしたのかを史料を通じて考えた。優勝を果たした孫選手は、『東亜日報』の日章旗抹消事件の影響を受けて、厳しい監視の下で戦時下暮らすことになってしまった。しかし、1988年のソウルオリンピックで聖火ランナーを務めることになったときは、喜びのなかトラックを走る。1992年のバルセロナオリンピックでは韓国の黄選手が日本の森下選手を破って優勝する。そのとき、スタンドで見ていた孫さんは歓喜の涙を流したという。

東亜日報WEB、朝鮮日報WEB、木坂順一郎『昭和の歴史F太平洋戦争』(小学館ライブラリー)、水野直樹・藤永壮・駒込武編『日本の植民地支配 肯定・賛美論を検証する』(岩波ブックレット)、内海愛子『戦後補償から考える日本とアジア』日本史リブレット68(山川出版社)、静岡県近代史研究会『史跡が語る静岡の十五年戦争』(青木書店)

第37回 「自衛」「平和」のための戦争か?〜東南アジアへの加害の一例〜
「イラク戦争」では、イラクの民主化、つまりフセインからの「解放」も開戦のきっかけとされた。イラクの人々は果たして「解放」されたのか?アジア太平洋戦争もアジアの「解放」が目的の一つであった。果たしてアジアの人々は「解放」されたのか?VTR、資料を読みつつ考えていく。その中で、「アジア太平洋戦争」という理由を考えた。もう「日本人であることがイヤ」と思う人もいるだろう。しかし、それは大日本帝国憲法下でおこったことであり、戦後60年近く日本国憲法の下で人を殺害しなかったことは記憶しておくべきことである。

江口圭一『十五年戦争小史・新版』(青木書店)、江口圭一『日本帝国主義史研究』(青木書店)、吉見義明『従軍慰安婦』(岩波新書)、『朝日クロニクル 週刊20世紀 1942年』『朝日クロニクル 週刊20世紀 1943年』(朝日新聞社)、『立命館大学国際平和ミュージアム常設展示詳細解説』、日本の現代史と戦争責任についてのホームページWEB

第38回 「英霊」の死の諸相〜日本軍の敗退〜
1942年6月のミッドウェー海戦をきっかけに日本は敗戦へと転じ、多くの戦死者が出始める。ガダルカナル島での戦いを例に、「名誉の戦死」「靖国の英霊」について考える。ガダルカナル島は「餓島」とも言われ、日本軍の多くが餓死・病死した。アジア太平洋戦争全体をみても、半数を超える人々が餓死・病死した。「靖国の英霊」の実態は、華々しい戦闘の中での名誉の戦死ではなく、飢餓地獄の中での野垂れ死にだったのである、という研究者もいる。使用したVTRは、「映像の世紀D・世界は地獄を見た」、「ETV2002・緑の島は戦場になった」などである。

藤原彰・吉田裕・伊藤悟・功刀俊洋『天皇の昭和史』(新日本新書)、藤原彰『餓死した英霊たち』(青木書店)、荒川章二『軍隊と地域』(青木書店)、吉田裕「アジア・太平洋戦争の戦場と兵士」『岩波講座 アジア・太平洋戦争5 戦場の諸相』(岩波書店)、『朝日クロニクル 週刊20世紀 1943』(朝日新聞社)

第39回 戦争で死ぬ、ということ〜学生の戦争動員〜
柳田芙美夫さんの『静岡連隊写真集』に、のどに剣を突き刺して自殺した若い兵士の写真が載っている。なぜこの若い兵士は自殺したのだろうか?学徒兵を中心に「1銭5厘」といわれた兵士の境遇をさぐる。またこのようにして容易く集められたからこそ、「特攻」という思想がでてくる。そして将来の日本を支えるはずであった優秀な学生たちが、国家によって無駄に死んで(殺されて)いった。使用VTRはNHKスペシャル『学徒出陣』、と『映像の世紀』第5集である。

柳田芙美夫『静岡連隊写真集』(静岡連隊写真集刊行会)、安川寿之輔『十五年戦争と教育』(新日本出版社)、日本戦没学生記念会編『新版 きけわだつみのこえ』(岩波文庫)、日本戦没学生記念会『平和への遺書・遺品展〜戦没青年との対話〜』(江戸東京博物館ホールでの展示パンフレット)、白井厚編『いま特攻隊の死を考える』(岩波ブックレット572)、吉田裕「アジア・太平洋戦争の戦場と兵士」『岩波講座 アジア・太平洋戦争5 戦場の諸相』(岩波書店)

第40回 命どぅ宝・前編〜唯一の地上戦・沖縄戦〜
森山良子さんの「さとうきび畑」の中の「ざわわ」は、風の音である。その風の中に怒号と嗚咽の声が含まれているという。怒号と嗚咽とはいったい何か?今回は、沖縄戦の概況を写真を見ながら概観した。わずか3ヵ月ほどの闘いで、20万人以上の人が亡くなり、とくに一般住民の死者の多さに驚かされる。当時の沖縄県民の4人に1人が亡くなった。そして日本軍によって殺害されたり、死を強要されたりした沖縄県民もいた。なぜこのようなことがおきたのか。使用VTRは、『その時歴史が動いた』と『NHKスペシャル・太平洋戦争(後編)』の2本。

江口圭一『十五年戦争小史・新版』(青木書店)、藤原彰編『沖縄戦〜国土が戦場になったとき』(青木書店)、大田昌秀『写真記録 これが沖縄戦だ』(琉球新報社)、大田昌秀『新版 醜い日本人〜日本の沖縄意識〜』(岩波現代文庫)、安仁屋政昭・徳武敏夫『母と子でみる 沖縄戦と教科書』(草の根出版会)、沖縄県平和祈念資料館WEB、林博史さんWEB

第41回 命どぅ宝・後編〜沖縄戦の教訓〜
突然戦場となった宜野湾村の戦没率は、北部において低く、南部において高い。なぜか?また、「集団死」のあった渡嘉敷島の向かいにある前島ではアメリカ軍が上陸したものの、被害者がでなかった。なぜか?両者に共通するのは、日本軍がいなかったことである。沖縄戦の重要な教訓は、軍隊は住民を守ちゃくれないと言うことである。大田実司令官は「(沖縄)県民に対し後世特別のご高配を」と言ったが、戦後、沖縄は本土から切り捨てられ、本土に復帰してからも、日本国憲法体制から切り捨てられた状態が続いている。つまり、住民を守らないアメリカ軍が居座り続け、事件・事故が相次ぎ、まさに住民を守っていない。そして本土の閣僚は、「基地か、経済か」と沖縄県民を脅迫する。使用VTRは、『筑紫哲也NEWS23』。

江口圭一『十五年戦争小史・新版』(青木書店)、山田朗『昭和天皇の軍事思想と戦略』(校倉書房)、藤原彰編『沖縄戦〜国土が戦場になったとき』(青木書店)、大田昌秀『新版 醜い日本人〜日本の沖縄意識〜』(岩波現代文庫)、沖縄タイムスWEB、琉球新報WEB、早乙女勝元『戦争を語りつぐ〜女たちの証言〜』岩波新書

期末テスト

1学期へ】  【戻る】  【3学期へ