3学期の授業録


第68回 私は、どちらかというと<女/男>@〜身体の性〜
赤ちゃんが誕生すると、「おめでとうございます!女/男の子が生まれました」と言われる。しかし中には、外性器のようすから性別の判断しにくい子どもたちが2000人に1人くらいの割合で生まれる。かれらをインターセックスという。女と男しか性がないといわれる、この社会では、かれらは極めて生きにくい。彼らが「自分らしく」生きにくいと感じるのであれば、この社会の仕組み・あり方を見直していかねばならない。

森永康子『女らしさ・男らしさ ジェンダーを考える』(北大路書房)、山内俊雄『性の境界 からだの性とこころの性』(岩波書店)、セクシュアルマイノリティ教職員ネットワーク編著『セクシュアルマイノリティ〜同性愛、性同一性障害、インターセックスの当事者が語る人間の多様な性』(明石書店)、伊藤公雄『NHK人間講座 「男らしさ」という神話』(日本放送出版協会)、伊藤公雄『男性学入門』(作品社)

第69回 私は、どちらかというと<女/男>A〜こころの性〜
人気番組「3年B組金八先生」で、知られるようになった「性同一性障害」について考えた。そういえば、おすぎやピーコ、KABA.ちゃんなど、このところテレビで<女/男>の区別がしにくい人がいることに気がつく。かれらについてどう考えたらよいのだろうか?かれらに対して、「男らしく生きろ」と言えない。もう、「女/男らしさ」は「神話」であることがはっきりし、人間の性は性自認(こころの性)を中心にして考えなければならないのである。

セクシュアルマイノリティ教職員ネットワーク編著『セクシュアルマイノリティ〜同性愛、性同一性障害、インターセックスの当事者が語る人間の多様な性』(明石書店)、森永康子『女らしさ・男らしさ ジェンダーを考える』(北大路書房)、伊藤公雄『NHK人間講座 「男らしさ」という神話』(日本放送出版協会)、伊藤公雄『男性学入門』(作品社)

第70回 <男らしさ>へのこだわり〜DVを中心に〜
夫婦間、あるいは恋人同士で、暴力が見られることがある。ドメスティック・バイオレンス(DV)という。なぜDVがおこるのか?<男らしさ>という観点から考えた。男性たちが、自分の家庭で、一種の支配権をにぎるべきだという思い込みにとらわれているという問題があるといわれる。いわば、男性たちの<男らしさ>へのこだわり(他者をたえず支配し、優越しようという心理的傾向)が、何かをきっかけにして、妻に向かって暴力という形で表現されたのである。セクハラ、ストーカーも同様である。これら女性に対する暴力をなくすためには…。

伊藤公雄『NHK人間講座 「男らしさ」という神話』(日本放送出版協会)、伊藤公雄『男性学入門』(作品社)、内閣府編『平成15年版 男女共同参画白書』、伊藤公雄・樹村みのり・国信潤子『女性学・男性学 ジェンダー論入門』(有斐閣アルマ)、鹿嶋敬『男女共同参画の時代』(岩波新書)、メンズセンター編『「男らしさ」から「自分らしさ」へ』(かもがわブックレット)

第71回 男の子がアブナイ〜ひ弱な男の子〜
学校にいても、わずか1割しかいない女子が元気があることに気がつく。一方で、男子は<ひ弱>に感じる。なぜ男の子はひ弱になってしまったのだろうか?その一方で、そのひ弱な男の子が「凶悪」事件を引き起している。高度経済成長期以降、核家族化し、性別役割分担の中で、母親とテレビに子育てされていることが大きな問題なのである。母親の過保護・過干渉の中で育てられた男の子はひ弱になるが、テレビからのメッセージは暴力性・攻撃性である。この矛盾の中で育つ男の子は、ときに「凶悪」事件を引き起こすのである。父親の育児参加が求められる。

伊藤公雄『NHK人間講座 「男らしさ」という神話』(日本放送出版協会)、伊藤公雄『男性学入門』(作品社)

第72回 「専業主夫」の誕生〜男性にとっての家事労働〜
「専業主夫」になる人もいる。その中で主夫体験記を記すものもいる。が、それを読むと、ほんの数ヵ月で「かごの中の憂鬱」が襲ってくることが記される。自分が社会から疎外されているという悩みを抱くようになる。実は、専業主婦である女性たちも、そんな思いはかねてからしている。結婚・出産を契機に専業主婦となった女性たちも、潜在的には働きたいと考えているからだ。やはりもう性別役割分担はダメだ。だからといって、単純に男女を入れ替えただけでもダメである。男性も、女性も、広い意味での社会参加の場がなければ、息が詰まってしまう。

伊藤公雄『NHK人間講座 「男らしさ」という神話』(日本放送出版協会)、伊藤公雄『男性学入門』(作品社)、伊藤公雄『「男女共同参画」が問いかけるもの』(インパクト出版会)

第73回 21世紀の歩き方@〜男女共同参画社会へ〜
あと2回。これまでのまとめをしたい。21世紀、男女共同参画社会が必要となる。なぜ、今、男女共同参画社会なのか?21世紀の日本社会は、少子・高齢社会である。さまざまな問題を抱えている。21世紀の日本は、成人男性だけではもう支えられない。高齢者・外国人・女性の力が必要である。とくに人間の半分いる女性の力は重要である。女性が社会参加すると少子化が進むとよく言われるが、実際は、スウェーデンなどの例をみれば、そんなことはないことに気づく。

伊藤公雄『「できない男」から「できる男」へ』(小学館)、伊藤公雄『男性学入門』(作品社)、伊藤公雄『「男女共同参画」が問いかけるもの』(インパクト出版会)、鹿嶋敬『男女共同参画の時代』(岩波新書)、『インパクション131 特集 男女共同参画の死角と誤算』(インパクト出版会)

第74回 21世紀の歩き方A〜「女/男らしさ」を超えて〜
いよいよラスト。これまでの性別役割分担というのは、女性も、男性も不幸にしてきた。だからこそ、男女共同参画社会が必要なのだが、これに対するバックフラッシュ(逆流)もおきている。しかし、男女共同参画社会となることによって、より家族同士の絆が強まるものである。21世紀の日本社会は、少子・高齢社会に対応した、「自分らしく」生きることのできる、ゆとりある成熟社会を目指さなければならない。そのためには、いくつか課題があるのである。A科も、J科も、3年間教えてきました。まだまだ、いい足りなかったこともありますが、一応、基本的な視点は出したつもりです。これからは、自分で勉強して、実践していってください。では、これからもがんばってください!

伊藤公雄『「できない男」から「できる男」へ』(小学館)、伊藤公雄『男性学入門』(作品社)、伊藤公雄『「男女共同参画」が問いかけるもの』(インパクト出版会)、『インパクション131 特集 男女共同参画の死角と誤算』(インパクト出版会)

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