3学期の授業録


第43回 ≪特論≫小泉首相の靖国「初詣で」〜靖国問題〜
2004年1月1日、小泉首相は靖国神社を参拝した。これに対し、中国や韓国、北朝鮮がいっせいに反発した。小泉は、「初詣で」と言い訳をした。しかし一方で、1月5日には小泉首相は、三重県の伊勢神宮に参拝した。このときは、とくに問題はなかった。この違いは、一体何か? 靖国神社の特殊性を考えた。小泉首相は、「中国などもだんだん理解して頂けると思います」と言ったが、彼自身、アジアの国ぐにの考えを理解しようとしない。結局、この行動はアジアにおける日本の「孤立」を招くだけである。

田中伸尚『靖国の戦後史』(岩波新書)、江口圭一『体系日本の歴史M二つの大戦』(小学館ライブラリー)、藤原彰『体系日本の歴史N世界の中の日本』(小学館ライブラリー)、大江志乃夫『靖国神社』(岩波新書)、田中伸尚・田中宏・波田永実『遺族と戦後』(岩波新書)

第44回 (ぬち)どぅ宝@〜沖縄戦〜
森山良子さんの「さとうきび畑」の中の「ざわわ」は、風の音である。その風の中に怒号と嗚咽の声が含まれているという。怒号と嗚咽とはいったい何か?今回は、沖縄戦の概況を写真を見ながら概観した。わずか3ヵ月ほどの闘いで、20万人以上の人が亡くなり、とくに一般住民の死者の多さに驚かされる。当時の沖縄県民の4人に1人が亡くなった。

江口圭一『十五年戦争小史・新版』(青木書店)、藤原彰ほか『天皇の昭和史』(新日本新書)、池宮城秀意『戦争と沖縄』(岩波ジュニア新書)、藤原彰編『沖縄戦〜国土が戦場になったとき』(青木書店)、大田昌秀『写真記録 これが沖縄戦だ』(琉球新報社)

第45回 (ぬち)どぅ宝A〜沖縄戦〜
沖縄戦は、本土決戦の準備のための時間稼ぎの戦いであった。そのため、無意味な死も相次いだ。そして日本軍によって殺害されたり、死を強要されたりした沖縄県民もいた。なぜこのようなことがおきたのか。敗戦。敗戦後も、沖縄にはアメリカ軍基地が存在し、さまざまな事件・事故が相次いでいる。しかし、事件・事故をおこした米兵は何の責任をとることもなく、帰国することが多い。1995年9月には米兵による少女暴行事件がおこり、8万5000人もの県民が集まり、抗議集会をひらいた。

江口圭一『十五年戦争小史・新版』(青木書店)、大田昌秀『新版 醜い日本人〜日本の沖縄意識〜』(岩波現代文庫)、大田昌秀『写真記録 これが沖縄戦だ』(琉球新報社)、安仁屋政昭・徳武敏夫『母と子でみる 沖縄戦と教科書』(草の根出版会)、早乙女勝元『戦争を語りつぐ〜女たちの証言〜』(岩波新書)

第46回 戦場となった静岡県〜本土空襲〜
日本本土の空襲のようすを探った。特に、1945年6月19日から20日にかけての静岡大空襲の体験談を読んだり、センターが所蔵する体験画を拡大コピーしたものを利用したりした。最後に、なぜ静岡県が空襲の対象となったのかを考えた。静岡県は空襲の被害者であると同時に、加害者であったことを忘れてはならない。それにしても、そのとき静岡には軍隊があったはずだ。軍隊は何をしていたのだろう?

江口圭一『十五年戦争小史・新版』(青木書店)、木坂順一郎『昭和の歴史F太平洋戦争』(小学館ライブラリー)、静岡・平和資料館の設立をすすめる市民の会『ドキュメント・静岡の空襲』、静岡平和資料館をつくる会『県下の空襲(1)〜静岡・浜松・沼津・下田・島田〜』、枝村三郎「静岡県の空襲と住民被害〜B29爆撃機による戦略爆撃〜」『静岡県近代史研究・第26号』、静岡県地域史教育研究会『静岡県 民衆の歴史を掘る〜人びとの生きたくらしと歩み〜』(静岡新聞社)、早乙女勝元『東京が燃えた日 戦争と中学生』(岩波ジュニア新書)

第47回 アインシュタインの苦悩〜原子爆弾の投下〜
原爆投下はどのような意味をもっていたのかを学んだ。1938年にドイツで核分裂が実証されると、アインシュタインは危機感を抱き、大統領に原爆開発を進言した。そして「マンハッタン・プロジェクト」と呼ばれる巨大計画が始まった。しかし、実際の使用にあたっては、核軍拡競争を憂慮する科学者の意見は排除され、広島・長崎に投下された。アメリカは、原爆を戦争に勝利する手段というだけでなく、戦後世界におけるソ連に対する優位を実現する武器として重要視していたのだ。もうこの時点で、冷戦は始まっていたのだ。

江口圭一『十五年戦争小史・新版』(青木書店)、油井大三郎『日米戦争観の相剋【摩擦の深層心理】』(岩波書店)、由井正臣「1940年代の日本―世界制覇の挫折」『岩波講座日本通史 第19巻 近代4』(岩波書店)、吉見義明「沖縄、敗戦前後」『岩波講座日本通史 第19巻 近代4』(岩波書店)

第48回 サダコと折り鶴〜時を超えた生命の伝言〜
原爆の被害は投下直後だけではない。数年後、いや数十年後におこるとも限らない。今回は原爆投下から10年後に白血病で亡くなった佐々木禎子さん(「原爆の子の像」のモデル)にスポットをあて、VTRをみた(約20分)。禎子は亡くなる1年前まで、全く問題のない健康状態であった。しかし突如発病し、入院した。そして、お見舞いに千羽鶴をもらったことをきっかけに禎子も鶴を折りはじめた。1000羽折れば病気が治ると信じて折り続けたが、禎子は亡くなってしまった。10年前、イラクで湾岸戦争があった。そこでは劣化ウラン弾が使われ、放射能の影響を受け、第2、第3の「サダコ」が誕生している。これからも、それは増え続けるだろう。

『広島平和記念資料館企画展・サダコと折り鶴〜時を超えた生命の伝言〜』(広島平和記念資料館)、「NHKスペシャル サダコ・ヒロシマの少女と20世紀」(1999年放送)、森住卓『イラク 湾岸戦争の子どもたち』(高文研)

第49回 遅すぎた「聖断」〜戦争終結工作と日本の敗戦〜
アジア・太平洋での激しい戦闘、沖縄戦、全国各地での空襲、そして原爆。多くの人びとが苦しんでいた。しかし、それでもポツダム宣言を受け入れようとしない日本政府。なぜか?それは「国体護持」に不安があったからである。「国体護持」をめぐって、不毛な議論が8月14日まで続く。この間にも、空襲が相次ぎ多くの人が亡くなっていった。そして8月15日、「玉音放送」が流れた。15年にわたる戦争が日本の敗戦という形で終わり、アジアの人びとにとっては解放、独立運動へ動き出す日となった。

江口圭一『十五年戦争小史・新版』(青木書店)、江口圭一『体系日本の歴史M二つの大戦』(小学館ライブラリー)、藤原彰・吉田裕・伊藤悟・功刀俊洋『天皇の昭和史』(新日本新書)、山田朗『大元帥 昭和天皇』(新日本出版社)、由井正臣『日本の歴史8 大日本帝国の時代』(岩波ジュニア新書)、木坂順一郎「太平洋戦争〜戦争終結への道〜」『歴史でみる日本』2001年度放送、吉田裕『昭和天皇の終戦史』(岩波新書)、油井大三郎・古田元夫『世界の歴史28 第二次世界大戦から米ソ対立へ』(中央公論社)、静岡平和資料館をつくる会『県下の空襲(U)展ガイド』

第50回 戦争はもうコリゴリだ!〜戦後改革〜
敗戦。日本はGHQにより占領され、戦後改革が行なわれる。その集約点として日本国憲法の制定がある。よく日本国憲法は「押し付け」られたと言われる。しかし、あの戦争を経験した日本の人びとは、日本国憲法の3原則を自らの手で発想できなかったのだろうか?とくに平和主義(戦争放棄)に焦点をあて、憲法制定にかかわった2人の憲法学者(美濃部達吉と宮沢俊義)に注目した。日本の人びとは、日本国憲法を「押し付け」られ、嫌がっているわけではなく、9条に限れば、昔も、今も、圧倒的に支持しているのである。

高見勝利「憲法9条をめぐる解釈対立の源流」『法学教室』279(有斐閣)、大石眞「憲法9条の政府解釈」『法学教室』277(有斐閣)、神田文人『昭和の歴史G占領と民主主義』(小学館ライブラリー)、長谷川正安『憲法とはなにか』(新日本新書)、鈴木昭典『日本国憲法を生んだ密室の九日間』(創元社)、国立国会図書館web内の電子展示会「日本国憲法の誕生」というサイト

第51回 憲法9条はまだ生きている!〜朝鮮戦争と日本の独立〜
日本国憲法や『あたらしい憲法のはなし』を読むと、戦争は放棄され、それは正しいこととされた。しかし今、現実には自衛隊が存在する。なぜか?しかし、自衛隊ができても、長い間、自由に行動することはできなかった(今も)。それは、@日本国憲法、A平和運動の力、Bアジア諸国民の声があったからだ。小泉首相は、日本国憲法の前文を「つまみ食い」し、自衛隊を戦地に派兵した。今こそ、なぜ9条ができたのかを思い返し、地道な平和運動を盛り上げる時期ではないだろうか?

大江志乃夫・永原慶二・池田理代子・鎌田慧『復刻 あたらしい憲法のはなし』(永絵夢社出版局)、渡辺治・後藤道夫編『講座戦争と現代1 「新しい戦争」の時代と日本』(大月書店)、小野耕二『新版・日本政治の転換点』(青木書店)、梅田正己『有事法制か、平和憲法か 私たちの意思が問われている』(高文研)、水島朝穂『同時代への直言』(高文研)、水島朝穂さんのweb(直言バックナンバー)、首相官邸のweb(小泉内閣のメールマガジン)

第52回 ヴェトナムの衝撃〜現代の戦争〜

「ベトちゃん・ドクちゃん」、丸坊主の森林。これは一体何だろうか?なぜこんなことがおきたのか?ヴェトナムでの長期間の戦争について概観した。インドシナ戦争、それに続くヴェトナム戦争。ヴェトナム戦争は、超大国アメリカの敗北で終結し、ヴェトナムは統一を果たした。この戦争を終わらせた力は、アメリカ国内での反戦運動である。使用したVTRは『NHKスペシャル・映像の世紀・第9集・ベトナムの衝撃』(約20分)である。使用したVTRはNHKスペシャル『ベトナム戦争を記録した男たち』、『映像の世紀・第9集・ベトナムの衝撃』、『世紀を越えて・トラウマ・心の傷』。

桜井由躬雄「スカルノとホーチミン〜国づくりの苦悩〜」(『歴史でみる世界』)藤原彰『体系日本の歴史N 世界の中の日本』(小学館ライブラリー)、立命館大学国際平和ミュージアム『立命館大学国際平和ミュージアム・常設展示詳細解説』

第53回 Imagine〜日本から発信する平和への道〜
1989年に冷戦が終わると、世界に平和が訪れると思われたが、現実はそれとは逆に向かった。1991年には湾岸戦争がおこる。2001年には、アメリカで9・11事件がおこり、「報復」のためにアメリカはアフガニスタンを攻撃した。その後、2003年には「イラク戦争」がはじまった。「イラク戦争」がはじまる前、ヴェトナム反戦運動以上の反戦運動が世界中で展開していた。その時、ジョン・レノンの「Imagine」が歌われた。彼は何を訴えかけるのか。こうした市民の動きが、世の中を大きく変える原動力となる。21世紀はそうした時代だ。そして、アジア太平洋戦争の経験を経て生まれた日本国憲法をもつ日本(日本に住む人びと)は、今、何をすべきであろうか?

森住卓『イラク 湾岸戦争の子どもたち 劣化ウラン弾は何をもたらしたか』(高文研)、豊田直巳『写真集 イラクの子供たち』(第三書館)、藤原帰一『デモクラシーの帝国〜アメリカ・戦争・現代世界〜』(岩波新書)、高橋邦典『ぼくの見た戦争 2003年イラク』(ポプラ社)、森英樹『国際協力と平和を考える50話』(岩波ジュニア新書)、森英樹「いま、憲法の魂を守るために」(『クレスコ』2004年1月号)、姜尚中・きくちゆみ・田島泰彦・渡辺治『「イラク」後の世界と日本』(岩波ブックレット)

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