3学期の授業録


使用教科書/『高校日本史A』実教出版 (実教・日A002)
副教材/『地歴高等地図・最新版』帝国書院 (帝国・地図599)

全体を通してのベースとなる参考文献
江口圭一『十五年戦争小史・新版』(青木書店)
藤原彰・吉田裕・伊藤悟・功刀俊洋『天皇の昭和史』(新日本新書)
『昭和の歴史』全10巻(小学館ライブラリー)

第38回 特論≫平和のつくりかた〜敗戦60周年の年に〜
今年は1945年に日本が敗戦してから60周年。60年といえば人間で言えば還暦である。敗戦し、戦争のおろかさを骨の髄まで味わった日本国民は、平和主義を掲げた日本国憲法を歓迎した。しかし60年近くたち、敗戦直後にあった雰囲気が消えうせ、小泉政権となって、憲法「改正」が声高に叫ばれるようになった。敗戦から60年、もう一度、初めに戻って、平和のつくりかたを考えたい。

『中日新聞』(2005年1月1日付け、社説)、山口二郎『戦後政治の崩壊〜デモクラシーはどこへゆくか〜』(岩波新書)、水島朝穂『武力なき平和〜日本国憲法の構想力〜』(岩波書店)

第39回 「英霊」の死の諸相@〜戦局の転機〜
映画『きけ、わだつみの声』で、織田裕二が演じた勝村寛は特攻死した。またサイパンでは「玉砕」が行なわれた。戦争におけるさまざまな死について2回にわたり考える。1942年6月のミッドウェー海戦をきっかけに日本は敗戦へと転じ、「玉砕」や「特攻」が相次いだ。なぜ投降(降伏)せず、自ら死を選んだのだろうか?使用したVTRは、「映像の世紀D・世界は地獄を見た」と「ETV2002・緑の島は戦場になった」よりサイパン島での戦闘などである。

木坂順一郎『昭和の歴史F太平洋戦争』(小学館ライブラリー)、藤原彰・吉田裕・伊藤悟・功刀俊洋『天皇の昭和史』(新日本新書)、藤原彰『餓死した英霊たち』(青木書店)、荒川章二『軍隊と地域』(青木書店)、柳田芙美緒『戦友 静岡連隊写真集』(講談社)、『朝日クロニクル 週刊20世紀 1943』(朝日新聞社)

第40回 「英霊」の死の諸相A〜戦局の転機〜
1945年2月、近衛文麿は昭和天皇に対し「戦争終結」を直訴するが、天皇は国民の苦しみを知ることなく、それを棚上げにする。前回に引き続き、ガダルカナル島での戦いを例に、「名誉の戦死」「靖国の英霊」について考える。ガダルカナル島は「餓島」とも言われ、日本軍の多くが餓死・病死した。アジア太平洋戦争全体をみても、半数を超える人々が餓死・病死した。「靖国の英霊」の実態は、華々しい戦闘の中での名誉の戦死ではなく、飢餓地獄の中での野垂れ死にだったのである、という研究者もいる。使用したVTRは、「映像の世紀D・世界は地獄を見た」と次回の授業の関係から「映像記録史・太平洋戦争(後編)」の中から沖縄戦をみた。

木坂順一郎『昭和の歴史F太平洋戦争』(小学館ライブラリー)、藤原彰・吉田裕・伊藤悟・功刀俊洋『天皇の昭和史』(新日本新書)、藤原彰『餓死した英霊たち』(青木書店)、荒川章二『軍隊と地域』(青木書店)、柳田芙美緒『戦友 静岡連隊写真集』(講談社)、『朝日クロニクル 週刊20世紀 1943』

第41回 (ヌチ)どぅ宝〜唯一の地上戦・沖縄戦〜
森山良子さんの「さとうきび畑」の中の「ざわわ」は、風の音である。その風の中に怒号と嗚咽の声が含まれているという。怒号と嗚咽とはいったい何か?今回は、沖縄戦の概況を写真を見ながら概観した。わずか3ヵ月ほどの闘いで、20万人以上の人が亡くなり、とくに一般住民の死者の多さに驚かされる。当時の沖縄県民の4人に1人が亡くなった。そして日本軍によって殺害されたり、死を強要されたりした沖縄県民もいた。なぜこのようなことがおきたのか。

江口圭一『十五年戦争小史・新版』(青木書店)、藤原彰ほか『天皇の昭和史』(新日本新書)、藤原彰編『沖縄戦〜国土が戦場になったとき』(青木書店)、大田昌秀『新版 醜い日本人〜日本の沖縄意識〜』(岩波現代文庫)、大田昌秀『写真記録 これが沖縄戦だ』(琉球新報社)、安仁屋政昭・徳武敏夫『母と子でみる 沖縄戦と教科書』(草の根出版会)、早乙女勝元『戦争を語りつぐ〜女たちの証言〜』(岩波新書)

第42回 戦場となった静岡県〜本土空襲〜
日本本土の空襲のようすを探った。特に、1945年6月19日から20日にかけての静岡大空襲の体験談を読んだり、センターが所蔵する体験画を拡大コピーしたものを利用したりした。最後に、なぜ静岡県が空襲の対象となったのかを考えた。静岡県は空襲の被害者であると同時に、加害者であったことを忘れてはならない。それにしても、そのとき静岡には軍隊があったはずだ。軍隊は何をしていたのだろう?

江口圭一『十五年戦争小史・新版』(青木書店)、木坂順一郎『昭和の歴史F太平洋戦争』(小学館ライブラリー)、静岡・平和資料館の設立をすすめる市民の会『ドキュメント・静岡の空襲』、静岡市平和を考える市民の会『画集 静岡市空襲の記録 街が燃える 人が燃える』、静岡平和資料館をつくる会『県下の空襲(1)〜静岡・浜松・沼津・下田・島田〜』、枝村三郎「静岡県の空襲と住民被害〜B29爆撃機による戦略爆撃〜」(『静岡県近代史研究・第26号』)、静岡県地域史教育研究会『静岡県 民衆の歴史を掘る〜人びとの生きたくらしと歩み〜』(静岡新聞社)

第43回 アインシュタインの苦悩〜原子爆弾の投下〜
2005年の今年は国際物理年である。アインシュタインが特殊相対性理論などを発表してから今年で100年目だからである。アインシュタインは物理学者としてよく知られるが、一方で核廃絶を求める運動の先頭に立った人物としても知られる。その彼は、ドイツが原爆を保有する危機に対抗するために、アメリカ大統領に原爆開発を提案する手紙を送った。しかし、そのドイツは1945年5月に降伏。アメリカが原爆を使う理由はなかったが、ソ連との対抗関係の中で原爆が使用され、アインシュタインは悔やむ。現在、新たな核兵器といってよい劣化ウラン弾が使われ、さらにアインシュタインは苦悩していることだろう。

広島平和記念資料館『図録 ヒロシマを世界に』、油井大三郎『日米戦争観の相剋【摩擦の深層心理】』(岩波書店)、秋葉忠利『報復ではなく和解を いま、ヒロシマから世界へ』(岩波書店)、森住卓『セミパラチンスク』『イラク 湾岸戦争の子どもたち』(高文研)

第44回 遅すぎた「聖断」〜日本の敗戦〜
アジア・太平洋での激しい戦闘、沖縄戦、全国各地での空襲、そして原爆。多くの人びとが苦しんでいた。しかし、それでもポツダム宣言を受け入れようとしない日本政府。なぜか?それは「国体護持」に不安があったからである。「国体護持」をめぐって、不毛な議論が8月14日まで続く。この間にも、空襲が相次ぎ多くの人が亡くなっていった。そして8月15日、「玉音放送」が流れた。15年にわたる戦争が日本の敗戦という形で終わり、アジアの人びとにとっては解放、独立運動へ動き出す日となった。

江口圭一『十五年戦争小史・新版』(青木書店)、江口圭一『体系日本の歴史M二つの大戦』(小学館ライブラリー)、藤原彰・吉田裕・伊藤悟・功刀俊洋『天皇の昭和史』(新日本新書)、山田朗『大元帥 昭和天皇』(新日本出版社)、由井正臣『日本の歴史8 大日本帝国の時代』(岩波ジュニア新書)、木坂順一郎「太平洋戦争〜戦争終結への道〜」(『歴史でみる日本』2001年度放送)、吉田裕『昭和天皇の終戦史』(岩波新書)、油井大三郎・古田元夫『世界の歴史28 第二次世界大戦から米ソ対立へ』(中央公論社)、静岡平和資料館をつくる会『県下の空襲(U)展ガイド』

第45回 戦争はもうコリゴリだ!〜戦後改革〜
敗戦。日本はGHQにより占領され、戦後改革が行なわれる。その集約点として日本国憲法の制定がある。現在、日本国憲法はもう古くなったとして、変えようという動きがあるが、果たしてそうなのか?日本国憲法の世界史上の位置をみた。すると日本国憲法9条は、戦前の不戦条約(1928)や国連憲章(1945)をふまえてつくられ(戦争の違法化)、かつその精神は、世界各国の憲法に取り入れられていることが分かる。
浜林正夫・森英樹編『歴史のなかの日本国憲法 世界史から学ぶ』(地歴社)、浦部法穂『全訂・憲法学教室』(日本評論社)、森英樹『国際協力と平和を考える50話』(岩波ジュニア新書)、吉田喜一「近現代史学習に国際法を取り入れて」(『歴史地理教育』2004年11月号)、国立国会図書館web内の電子展示会「日本国憲法の誕生」というサイト
第46回 富士山を世界遺産に〜戦後改革の転換〜
富士山は世界遺産に登録されていない。それはゴミ問題のためであると言われるが、89歳の女性はもう一つ理由があると指摘する。それは富士のすそには演習場があり、ドカンドカンと大砲を打ち込む演習が行われているからだ、と。なぜこんなことが日常的に行われているのか?もっといえば、なぜ平和憲法をもつ日本に自衛隊があり、在日米軍があるのか?この問題を考えた。89歳の女性の「一日も早く兵器のない世の中になって、富士山が世界中の遺産になることを祈ります」という願いが早くかないますように。

防衛庁『平成16年度版 日本の防衛〜防衛白書〜(コンパクト版)』、静岡県地域史教育研究会『静岡県 民衆の歴史を掘る〜人びとの生きたくらしと歩み〜』(静岡新聞社)、静岡県平和委員会『米軍基地再編と静岡県』、『静岡県史 通史編6 近現代二』、伊波洋一、永井浩『沖縄基地とイラク戦争』(岩波ブックレット646)、沖縄県庁web

第47回 ヴェトナムの衝撃〜現代の戦争〜
「ベトちゃん・ドクちゃん」、丸坊主の森林。これは一体何だろうか?なぜこんなことがおきたのか?ヴェトナムでの長期間の戦争について概観した。インドシナ戦争、それに続くヴェトナム戦争。ヴェトナム戦争は、超大国アメリカの敗北で終結し、ヴェトナムは統一を果たした。この戦争を終わらせた力は、アメリカ国内での反戦運動である。使用したVTRは『NHKスペシャル・映像の世紀・第9集・ベトナムの衝撃』(約20分)である。使用したVTRはNHKスペシャル『ベトナム戦争を記録した男たち』、『映像の世紀・第9集・ベトナムの衝撃』、『世紀を越えて・トラウマ・心の傷』。

桜井由躬雄「スカルノとホーチミン〜国づくりの苦悩〜」(『歴史でみる世界』2001年度)、藤原彰『体系日本の歴史N 世界の中の日本』(小学館ライブラリー)、立命館大学国際平和ミュージアム『立命館大学国際平和ミュージアム・常設展示詳細解説』

第48回 Imagine〜日本から発信する平和への道〜
1989年に冷戦が終わると、世界に平和が訪れると思われたが、現実はそれとは逆に向かった。1991年には湾岸戦争がおこる。2001年には、アメリカで9・11事件がおこり、アメリカはアフガニスタンを攻撃した。その後、2003年には「イラク戦争」がはじまり、「イラク戦」後の2004年11月にはファルージャ大虐殺がおこった。「イラク戦争」がはじまる前、ヴェトナム反戦運動以上の反戦運動が世界中で展開していた。その時、ジョン・レノンの「Imagine」が歌われた。彼は何を訴えかけるのか。こうした市民の動きが、世の中を大きく変える原動力となる。21世紀はそうした時代だ。そして、アジア太平洋戦争の経験を経て生まれた日本国憲法をもつ日本(日本に住む人びと)は、今、何をすべきであろうか?

森住卓『イラク 湾岸戦争の子どもたち 劣化ウラン弾は何をもたらしたか』(高文研)、豊田直巳『写真集 イラクの子供たち』(第三書館)、藤原帰一『デモクラシーの帝国〜アメリカ・戦争・現代世界〜』(岩波新書)、高橋邦典『ぼくの見た戦争 2003年イラク』(ポプラ社)、森英樹『国際協力と平和を考える50話』(岩波ジュニア新書)、姜尚中・きくちゆみ・田島泰彦・渡辺治『「イラク」後の世界と日本』(岩波ブックレット)、伊波洋一、永井浩『沖縄基地とイラク戦争』岩波ブックレット646

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