2学期の授業録


使用教科書/『高校日本史A』実教出版 (実教・日A002)
副教材/『地歴高等地図・最新版』帝国書院 (帝国・地図599)

全体を通してのベースとなる参考文献
江口圭一『十五年戦争小史・新版』(青木書店)
藤原彰・吉田裕・伊藤悟・功刀俊洋『天皇の昭和史』(新日本新書)
『昭和の歴史』全10巻(小学館ライブラリー)

第19回 はじまりはいつもウソ〜満州事変〜
1931年9月18日、奉天郊外の柳条湖で満鉄爆破事件がおこる。これをきっかけに日本は「満州国」を建国した。中国侵略のきっかけとなる柳条湖事件をおこしたのは、新聞は中国軍という。日本国民はそれを熱狂的に支持する。一方、首相ら政府首脳は日本軍の仕業かもと疑う。この事件をおこしたのはだれか?昭和天皇はその「張本人」を知っていた。そういえば、2003年3月にはじまった「イラク戦争」もウソからはじまった。

江口圭一『十五年戦争小史・新版』(青木書店)、江口圭一『日本帝国主義史研究』(青木書店)、『新聞に見る静岡県の100年』(静岡新聞社)、原田熊雄『西園寺公と政局 第2巻』(岩波書店)、黒羽清隆『日中戦争前史』(三省堂選書)、「昭和天皇独白録」

第20回 そうだ 満州 行こう〜「満州国」と静岡県〜
中国残留孤児が帰国し、本当の肉親を探しにくる。それにしてもなぜ身元の分からない日本人が中国にいるのか?それを考えた。「満州国」建国後、昭和恐慌の影響を受け、窮乏していた静岡県の農村では、「満州に行けば大地主になれる」という宣伝文句にのって、村ごと「満州国」に行ったところもある。しかしその方法は…。1945年8月、ソ連の参戦によって「満州国」にいた日本人は悲劇的な最後を迎える。この中で親子がバラバラとなり、「残留孤児」が発生する。満州移民は被害者の側面と加害者の側面をもつのである。それにしても残留孤児の現在は、拉致被害者に比べても厳しいものがある。いったい誰が、中国に送ったのか?

静岡県近代史研究会『史跡が語る静岡の十五年戦争』(青木書店)、『新聞に見る静岡県の100年』(静岡新聞社)、静岡県地域史教育研究会『静岡県民衆の歴史を掘る』(静岡新聞社)、『静岡県史 通史編6 近現代二』、坂本龍彦『孫に語り伝える「満州」』(岩波ジュニア新書)

第21回 興津を愛した最後の元老・西園寺公望A〜軍部の台頭〜
再び元老・西園寺公望である。元老とは次の首相を推薦するという役割を担っていた。元老・西園寺公望は、政党政治の確立による立憲政治の発展に尽力し、国際連盟を重視して英米協調外交を推進した。5・15事件発生。「次の首相は誰だ?」。政界、マスコミが興津に押しかける。政党政治家は汚職事件により国民の信用を失っていた。西園寺は、政局の安定のために軍部と妥協し、「挙国一致」内閣をつくらせたが、2・26事件をきっかけに軍部の発言力はさらに高まった。西園寺は、1940年興津で亡くなる。日本は西園寺が思い描いていたのとは全く正反対の方へ進んでいき、西園寺にとってはまさに死んでも死にきれない思いだったのではないだろうか?

木坂順一郎「軍部の台頭〜最後の元老〜」(『NHK教育 歴史でみる日本』1998年度版)、静岡県日本史教育研究会『静岡の歴史百話』(山川出版社)、粟屋憲太郎『昭和の歴史E昭和の政党』(小学館ライブラリー)、歴史教育者協議会編『人物で読む近現代史 上』(青木書店)、岩井忠熊『西園寺公望〜最後の元老〜』(岩波新書)、森口英生監修『目で見る清水100年史』(静岡郷土出版社)

第22回 七夕の夜の銃声〜日中全面戦争〜
サッカー・アジアカップでの日本に対するブーイングの原因は何だったのか?1937年7月7日夜、一発の銃声がなった。これをきっかけにして、日中両軍が盧溝橋周辺で戦闘を繰り返した。盧溝橋事件である。4日後、現地では停戦協定が成立した。しかし同日、日本政府は華北への派兵を決定した。これによって、中国東北部だけでの戦争が中国全体に広がる全面戦争へと拡大していった。地図への作業も行なう。日本は「点(=都市)」と「線(=鉄道)」しか支配できない。それだけ中国の人びとの抵抗が強かったのである。すぐ終わると思っていた日中戦争は、長期化し、泥沼化する。

江口圭一『十五年戦争小史・新版』(青木書店)、江口圭一『体系日本の歴史M二つの大戦』(小学館ライブラリー)、『週刊朝日百科日本の歴史116 中国との戦争』(朝日新聞社)、柳田芙美緒『静岡連隊写真集』

第23回 静岡の兵士もみた南京大虐殺〜人間から「兵士」へ〜
「鶏でも殺すような」、「銃剣で突き刺したが面白い」と表現したのは静岡県出身の兵士が書いた手紙の一部である。この人たちが特別な人間であったのかというとそうではない。まったく普通の農民であり、日本では「良き父」「良ききょうだい」であった人物である。中国に行って、なぜこのような「兵士」になってしまったのだろうか?その原因を探る。なお南京大虐殺については、世界中に報道され日本は国際的非難を受けたものの、日本では報道規制が行なわれ、日本人が本格的にこれを知るのは戦後になってからである。この手紙の存在は、南京大虐殺が否定しようのない事実であることを証明するものである。

江口圭一『十五年戦争小史・新版』(青木書店)、藤原彰『昭和の歴史 5日中全面戦争』(小学館ライブラリー)、小池善之「南京事件を追う〜軍事郵便の中の日中戦争〜」(『静岡県近代史研究 第24号』静岡県近代史研究会)、江口圭一「中国戦線の日本軍」『日本帝国主義史研究』(青木書店)、江口圭一『体系日本の歴史M二つの大戦』(小学館ライブラリー)、南京事件調査研究会編『南京大虐殺否定論13のナゾ』(柏書房)

第24回 戦争のつくりかた〜国家総動員体制〜
戦前の反戦ジャーナリスト・清沢洌は1945年1月1日の日記(『暗黒日記』)に「日本国民は、今、初め『戦争』を経験している」と述べる。しかし、日本は1931年以来、中国や太平洋各地で戦争をしていた。頭に爆弾が落ちてきてはじめて、「『戦争』を経験」する。1945年に至るまでに戦争はどのようにつくられたのか?話題の『戦争のつくり方』をもとに、戦前と現在を比較してみた。すると驚くほど戦前と現在が似ていることに気づく。現在の日本も、遠くイラクに自衛隊を派遣している。いつの日か再び頭に爆弾が落ちてきてはじめて「『戦争』を経験」するのかもしれない。しかしそうなっては遅いのである。

『戦争のつくりかた』(りぼんぷろじぇくと)、高橋哲哉「戦争の論理か平和の哲学か」『いま私たちに問われていること』(第9条の会なごやブックレット)、清沢洌『暗黒日記3』(ちくま学芸文庫)、森口英生監修『目で見る清水100年史』(静岡郷土出版社)、江口圭一『十五年戦争小史・新版』(青木書店)

第25回 矛盾をかかえる大日本帝国@〜第二次世界大戦の開始〜
日本には資源がないので、輸入に頼らざるを得ない。石油などの軍需物資はアメリカからの輸入に頼っていたので、極力アメリカとの対立は避けたいという志向はあった。しかし日中戦争の長期化、「東亜新秩序」建設の提唱などにより、現実はアメリカとの対立へと向かっていた。その中で日中戦争打開のために、日本にはどのような道が選択肢としてあったのだろうか?地図の作業をする。

江口圭一『十五年戦争小史・新版』(青木書店)、江口圭一『日本の歴史M二つの大戦』(小学館ライブラリー)、木坂順一郎『昭和の歴史F太平洋戦争』(小学館ライブラリー)

第26回 矛盾をかかえる大日本帝国A〜第二次世界大戦の開始〜
ヨーロッパでは第二次世界大戦がはじまった。1940年4月からの、ドイツの「電撃作戦」が成功し、日本はうかれた。今こそ、南進のチャンス!近衛内閣はすぐさま、フランス領インドシナに進駐し、南進を実行。さらに日独伊三国同盟を結び、快進撃のドイツとも手を結んだ。しかし、日本のこのような行動が、アメリカ・イギリスなどとの対立を深めていく。戦争を避ける道もあったのに、日本は最悪の選択肢を選んだのだった。

江口圭一『十五年戦争小史・新版』(青木書店)、江口圭一『日本の歴史M二つの大戦』(小学館ライブラリー)、木坂順一郎『昭和の歴史F太平洋戦争』(小学館ライブラリー)

第27回 「事件」は会議の裏でおきた〜昭和天皇の戦争責任〜
大日本帝国のトップに立つ昭和天皇は、いつごろ、なぜアメリカとの開戦を決意したのであろうか?今回は、御前会議の前に行なわれる内奏等での昭和天皇や近衛文麿首相ら権力中枢にいた人びとの発言に注目する。帝国憲法には何の規定もない機関である御前会議が日本の人びとをはじめ、アジア全域の人びとの運命を決めていったのである。「責任者、出てこい!」といっても、戦後「オレは戦争を望んではいなかった」と、だれもでてこない。あぁ、無責任!現代社会にも通じる。

江口圭一『十五年戦争小史・新版』(青木書店)、藤原彰・吉田裕・伊藤悟・功刀俊洋『天皇の昭和史』(新日本新書)、藤原彰「天皇の戦争責任」『十五年戦争と天皇』(あずみの書房)、藤原彰『昭和天皇の十五年戦争』(青木書店)、山田朗『昭和天皇の軍事思想と戦略』(校倉書房)

第28回 ≪特論≫サダコと折り鶴〜時を超えた生命の伝言〜
中間テストの後、西日本に修学旅行に行くので、この授業を設定した。原爆の被害は投下直後だけではない。数年後、いや数十年後におこるとも限らない。今回は原爆投下から10年後に白血病で亡くなった佐々木禎子さん(「原爆の子の像」のモデル)にスポットをあて、VTRをみた(約20分)。禎子は亡くなる1年前まで、全く問題のない健康状態であった。しかし突如発病し、入院した。そして、お見舞いに千羽鶴をもらったことをきっかけに禎子も鶴を折りはじめた。1000羽折れば病気が治ると信じて折り続けたが、禎子は亡くなってしまった。10年前、イラクで湾岸戦争があった。そこでは劣化ウラン弾が使われ、放射能の影響を受け、第2、第3の「サダコ」が誕生している。これからも、それは増え続けるだろう。

『広島平和記念資料館企画展・サダコと折り鶴〜時を超えた生命の伝言〜』(広島平和記念資料館)、「NHKスペシャル サダコ・ヒロシマの少女と20世紀」(1999年放送)

中間テスト
第29回 テストを返却した後、VTRを見ました。例年に比べて、見ていないもんですから。一つは、ヒトラー政権について。ヒトラーというと暴力によって政権をとっていったように見えるが、実は合法的に政権を奪取し、独裁政治へと転換していったのだ。もう一つは、5分程度の短いVTRだったが、盧溝橋事件から日中戦争についてのVTR。ともにNHKスペシャル『映像の世紀・ヒトラーの野望』より。
第30回 「戦闘状態に入れり」〜アジア太平洋戦争の開始〜
帝国憲法を無視して開戦が決定されたアジア太平洋戦争は、陸軍のマレー半島上陸、それに続く海軍の真珠湾攻撃によって開始される。日本の緒戦における勝利は、その後の日本を狂わせていく。関連のVTR(「映像記録史・太平洋戦争(前編)」、各5−6分)を視聴した。

江口圭一『十五年戦争小史・新版』(青木書店)、江口圭一『体系日本の歴史M二つの大戦』(小学館ライブラリー)、山田朗『昭和天皇の軍事思想と戦略』(校倉書房)

第31回 悪魔の飽食〜日本の加害T〜
清工生が就職する企業の多くが中国との関係が強い。今、中国との関係こそ重要である。そのなかで過去の問題を放っておくことはできない。これからしばらく日本の加害について概観する。今回は、中国における日本の加害、とくに731部隊に注目して授業を行なった。細菌の感染実験と生体解剖、凍傷実験、毒ガス実験などなど、「平然と実行に移された」(森村誠一の『悪魔の飽食』より)。その後の731部隊の隊員たちについても触れる。また、中国や日本国内で日本軍が遺棄した毒ガス兵器による被害も出てきた。

江口圭一『十五年戦争小史・新版』(青木書店)、江口圭一『日本帝国主義史研究』(青木書店)、小池善之「強制連行された中国人(その1・証言編)〜静岡県の事例〜」(『静岡県近代史研究 第26号』)、森村誠一『新版・悪魔の飽食』『新版・続悪魔の飽食』『第三部・悪魔の飽食』(角川文庫)、日本軍による細菌戦の歴史事実を明らかにする会『731部隊の細菌戦〜いまアジアが問う日本の戦争責任〜』、『2002年戦争展・特別企画・731部隊関係資料とラストエンペラー日本画コレクションの発見』、『毒ガスの島 大久野島 悪夢の傷跡』(中国新聞社)、静岡県地域史教育研究会『静岡県民衆の歴史を掘る〜人びとの生きたくらしと歩み〜』(静岡新聞社)、村瀬隆彦「資料紹介 歩兵第34連隊とガス関連資料」(『静岡県近代史研究会 第27号』)、竹内康人「浜松陸軍飛行学校と航空毒ガス戦」(『静岡県近代史研究会 第28号』)、本多勝一『中国の旅』(朝日文庫)、『静岡県史 通史編6 近現代二』

第32回 「松田優作」と「ヨン様」の間〜日本の加害U〜
人気俳優・松田優作にはもう一つの名前があった。「金優作」である。彼はこれを公にはしなかった。一方、今人気の「ヨン様」は韓国人であることを隠すことはしない。言える時代と言えない時代。日本と朝鮮半島との関係について考えた。朝鮮・台湾は日本の戦争を支える兵站基地としての役割が与えられ、人や資源が戦争への動員された。朝鮮での皇民化政策・「慰安婦」について資料を読んだ。日本は「解放のための戦争」といいながら、なぜ朝鮮・台湾を「解放」しなかったのだろうか?

家永三郎『太平洋戦争・第2版』(岩波書店)、木坂順一郎『昭和の歴史F太平洋戦争』(小学館ライブラリー)、静岡県地域史教育研究会『静岡県民衆の歴史を掘る〜人びとの生きたくらしと歩み〜』(静岡新聞社)、静岡県近代史研究会『史跡が語る静岡の十五年戦争』(青木書店)、水野直樹・藤永壮・駒込武編『日本の植民地支配 肯定・賛美論を検証する』(岩波ブックレット552)、伊藤孝司『平壌からの告発』(風媒社ブックレット11)、内海愛子『戦後補償から考える日本とアジア』(日本史リブレット68、山川出版社)、田中伸尚・田中宏・波田永実『遺族と戦後』(岩波新書)、姜尚中『日朝関係の克服』(集英社新書)

第33回 アジア太平洋戦争は「解放」のための戦争か?〜日本の加害V〜
「イラク戦争」では、イラクの民主化、つまりフセインからの「解放」も開戦のきっかけとされた。イラクの人々は果たして「解放」されたのか?アジア太平洋戦争もアジアの「解放」が目的の一つであった。果たしてアジアの人々は「解放」されたのか?VTR、資料を読みつつ考えていく。その中で、「アジア太平洋戦争」という理由を考えた。もう「日本人であることがイヤ」と思う人もいるだろう。しかし、それは大日本帝国憲法下でおこったことであり、戦後60年近く日本国憲法の下で人を殺害しなかったことは記憶しておくべきことである。

江口圭一『十五年戦争小史・新版』(青木書店)、江口圭一『日本帝国主義史研究』(青木書店)、家永三郎『太平洋戦争・第2版』(岩波書店)、木坂順一郎『昭和の歴史F太平洋戦争』(小学館ライブラリー)、『朝日クロニクル 週刊20世紀 1942年』『朝日クロニクル 週刊20世紀 1943年』(朝日新聞社)、『立命館大学国際平和ミュージアム常設展示詳細解説』

第34回 ハガキ1枚=兵士1人の命の値段〜学生の戦争動員〜
柳田芙美夫さんの『静岡連隊写真集』に、のどに剣を突き刺して自殺した若い兵士の写真が載っている。なぜこの若い兵士は自殺したのだろうか?学徒兵を中心に「1銭5厘」といわれた兵士の境遇をさぐる。またこのようにして容易く集められたからこそ、「特攻」という思想がでてくる。そして将来の日本を支えるはずであった優秀な学生たちが、国家によって無駄に死んで(殺されて)いった。使用VTRはNHKスペシャル『学徒出陣』、と『映像の世紀』第5集である。

柳田芙美夫『静岡連隊写真集』(静岡連隊写真集刊行会)、安川寿之輔『十五年戦争と教育』(新日本出版社)、日本戦没学生記念会編『新版 きけわだつみのこえ』(岩波文庫)、日本戦没学生記念会『平和への遺書・遺品展〜戦没青年との対話〜』(江戸東京博物館ホールでの展示パンフレット)、白井厚編『いま特攻隊の死を考える』(岩波ブックレット572)

第35回 映画『きけ、わだつみの声』を見る@
1995年に封切された『きけ、わだつみの声』を3回にわたって視聴する。それぞれの登場人物はどのような運命をたどっていくのか?
第36回 映画『きけ、わだつみの声』を見るA
1995年に封切された『きけ、わだつみの声』を3回にわたって視聴する。
第37回 映画『きけ、わだつみの声』を見るB
1995年に封切された『きけ、わだつみの声』を3回にわたって視聴する。感想を記入する。「名誉の戦死」とは一体なんだったのか?緒方直人が演じた鶴谷勇介が問うた「この戦争、誰が始めたんだ!」「オレたちの仲間を返せ!」ということばは、重い。
期末テスト

1学期へ】  【戻る】  【3学期へ