2学期の授業録


第21回 「変革」のファラオ@〜エジプト文明〜
ツタンカーメンの黄金のマスクはよく知られている。しかし、ツタンカーメン当人となると「?」である。今回と次回にわたり、ツタンカーメンを題材として、古代エジプト史を概観する。今回は、古王国・中王国・新王国時代のエジプトを大雑把に概観した。

吉村作治『吉村作治の古代エジプト講義録(下)』(講談社)、吉村作治『NHK人間大学 ビラミッド文明・新たなる謎 ナイル川古代遺跡の旅』(日本放送出版協会)、『国立カイロ博物館所蔵 古代エジプト文明展』、増田義郎・吉村作治『インカとエジプト』(岩波新書)

第22回 「変革」のファラオA〜エジプト文明〜
新王国時代、アメン・ラー神官団の排除をねらったアメンホテプ4世は大胆な宗教改革を実行した。多神教の世界であるエジプトにおいて、唯一神アトンを創造したのである。しかし彼の死後、排除されていたアメン・ラー神官団は自らの勢力回復のために動きはじめる。その中で若きツタンカーメンはファラオとなる。
吉村作治『吉村作治の古代エジプト講義録(下)』(講談社)、吉村作治『NHK人間大学 ビラミッド文明・新たなる謎 ナイル川古代遺跡の旅』(日本放送出版協会)、『国立カイロ博物館所蔵 古代エジプト文明展』、増田義郎・吉村作治『インカとエジプト』(岩波新書)
第23回 「変革」のファラオB〜エジプト文明〜
イギリス人考古学者ハワード・カーターがツタンカーメンの黄金のマスクを発見するまでの過程を描いたVTR「発掘ツタンカーメン王墓〜王家の谷・封印された扉〜」(NHK教育、「知への旅」1998年放送より)を視聴する。
第24回 「文明の共存」をめざして@〜イスラームの誕生〜
アメリカでの同時多発テロから1年がたった。テロの犯人は「イスラーム原理主義」の者とされ、テロの「被害者」であるアメリカは、「アメリカにつくか、テロの側につくか」と世界の国々をおどしている(日本はそれにビビって右往左往している)。ところで、私たちは「イスラーム」についてよく知っているのだろうか?誤解はないのだろうか?さまざまな考え方をもつ人びとが共存する道はないのか?を2回にわたって考える。今回は、ムハンマドがイスラームを伝えはじめるまでを概観した。

佐藤次高『世界の歴史Gイスラーム世界の興隆』(中央公論社)、中村廣治郎『イスラム教入門』(岩波新書)、片倉もとこ『イスラームの日常世界』(岩波新書)

第25回 「文明の共存」をめざしてA〜イスラームの誕生〜
イスラームを信仰する人びとは日頃どのようなことを実践しているのか?そんな中でイスラームの教えを忠実に守らないムスリムも出てきた。また、ムスリムの中での貧富の格差も拡大してきた。このような現状を腐敗・堕落しているとして、イスラーム本来の姿にもどるべきだと主張する人びとも出てきた。この考え方を「イスラーム原理主義」という。中には過激な人たちもいるが、違う考え方をもつ人びとと、どうすれば共存できるのか、その手がかりを考えた。
佐藤次高『世界の歴史Gイスラーム世界の興隆』(中央公論社)、中村廣治郎『イスラム教入門』(岩波新書)、片倉もとこ『イスラームの日常世界』(岩波新書)
第26回 平和と繁栄のなかで@〜ローマ帝国と地中海世界〜
古代ローマでは、戦車競争、剣闘士競技、演劇などが無料で観ることができた。平和のなかで「豊かな社会」が実現したのだ。しかしその裏側では、深刻な事態が進行し、それがローマ帝国衰退の一原因ともなっていく。また、それは現代日本の政治の世界を見ているかのようでもある。古代ローマと現代日本、その共通点とは?2回にわたり考える。今回は地図への作業を中心に古代ローマ史を概観した。

「五賢帝の時代〜ローマ帝国と地中海世界〜」(NHK教育『歴史で見る世界』2001年度)櫻井万里子・本村凌二『世界の歴史Dギリシアとローマ』(中央公論社)

第27回 平和と繁栄のなかでA〜ローマ帝国と地中海世界〜
古代ローマ史は長い歴史をもつが、その中の五賢帝時代に着目した。この時代は平和で繁栄した時代だったが、皇帝がローマ市民の支持を得、自らの権威を維持するために過剰なまでの市民サービスを行なった。その結果、財政難となり、ローマ帝国は衰退していった。これは現代日本の政治にもそっくりそのままあてはまる。選挙民の支持を得るために、不要な公共事業(道路・空港建設)を展開した。その結果、日本は財政難。さて日本は、ローマ帝国と同じ道を歩むのか?
「五賢帝の時代〜ローマ帝国と地中海世界〜」(NHK教育『歴史で見る世界』、2001年度放送)、櫻井万里子・本村凌二『世界の歴史Dギリシアとローマ』(中央公論社)
第28回 なぜイエスは処刑されたのか?〜キリスト教の誕生〜
冒頭、2001年に放送された「再現!イエス・キリストの生涯」(第3回)のイエスの処刑に関するビデオを見た(約5分)。現在、キリスト教を信仰する人は多い。なぜイエスは処刑されたのだろうか?イエスの教えを概観した。最後に、再び同ビデオの、イエスの顔をコンピュータで復元したところを見た(約8分)。
成瀬治・佐藤次高監修『世界史テーマ学習80』(山川出版社)、櫻井万里子・本村凌二『世界の歴史Dギリシアとローマ』(中央公論社)、「NHK教育 地球時間・再現!イエス・キリストの生涯」(2001年放送)
第29回 ヴァイキングがやって来た!〜ゲルマン人の移動〜
北方に住むゲルマン人であるノルマン人は、ヴァイキングとよばれ恐れられた。かれらは年中、ヴァイキング活動を行なっていたのだろうか?資料を読みつつ、ノルマン人の生活をみる。また、ノルマン人のなかには大西洋を横断し、アメリカ大陸に渡った者もいた。その約500年後にコロンブスがアメリカ大陸に到達する。

歴史教育者協議会編『100問100答・世界の歴史』(河出書房新社)、樺山紘一『《ビジュアル版》世界の歴史7・ヨーロッパの出現』(講談社)、佐藤彰一・池上俊一『世界の歴史I西ヨーロッパ世界の形成』(中央公論社)

第30回 教皇は太陽、皇帝は月@〜教皇権の強大化〜
ゲルマン諸部族は西ローマ帝国内に国を建てた。そのうちフランク族のフランク王国はキリスト教との結びつきを強め、現在の西ヨーロッパ世界に基礎となる。西ヨーロッパ世界には、宗教上のトップの教皇、政治上のトップの国王や皇帝が存在した。教皇と国王・皇帝の関係はいかに?今回と次回、考える。

樺山紘一『《ビジュアル版》世界の歴史7・ヨーロッパの出現』(講談社)、佐藤彰一・池上俊一『世界の歴史I西ヨーロッパ世界の形成』(中央公論社)

第31回 教皇は太陽、皇帝は月A〜教皇権の強大化〜
聖職者任命権闘争がおきた。教皇グレゴリウス7世は教会改革をとなえ、皇帝・国王による聖職者任命権を否定した。それに対し、神聖ローマ皇帝ハインリヒ4世は「ちょっとまった!」をかける。教皇と皇帝の全面対決である。この結末は、皇帝ハインリヒ4世が教皇グレゴリウス7世に謝罪するという形で終わった。中世は教皇=キリスト教が絶対的な力をもつ社会であった。
樺山紘一『《ビジュアル版》世界の歴史7・ヨーロッパの出現』(講談社)、佐藤彰一・池上俊一『世界の歴史I西ヨーロッパ世界の形成』(中央公論社)
中間テスト
第32回 「聖戦」という美名にかくれて@〜西ヨーロッパ世界の変化〜
2001年5月5日付『静岡新聞』によれば、ローマ教皇が謝罪をしている。なぜローマ教皇は謝罪したのか?ローマ教皇(カトリック)の罪について2回にわたって見る。1回目はキリスト教の分裂についてである。あわせてビザンツ帝国についても簡単に紹介。
『静岡新聞』(2001年5月5日)
第33回 「聖戦」という美名にかくれてA〜西ヨーロッパ世界の変化〜
聖地イェルサレムをイスラーム勢力から奪い返すために派遣された十字軍。これはキリスト教の側から見た論理である。しかしイスラームにとってもイェルサレムは聖地である。イスラームの側から十字軍を見るとどううつるのか?資料を読んだ。「聖戦」「正義のための戦い」ということばはいつの時代も疑わなくてはならないことばである。最近、ひしひしとそのことを感じる。
橋口倫介『十字軍〜その非神話化〜』(岩波新書)
第34回 孤立から接触へ〜大航海時代前夜のアメリカ大陸〜
「コロンブスがアメリカ大陸を発見した」という言い方は正確だろうか?大航海時代以前のアメリカ大陸の文明について、アステカ帝国を中心にみた。それにしても、なぜアステカ帝国は最盛期にわずかな数のスペイン人たちによって滅亡したのか?アステカの人びとの考え方に触れた。その後、先住民は激減するが、かれらの文化が征服によってすべて消滅したのではなく、一部はイベリア半島の文化と融合しながら現在にまで残っている。
畑恵子「孤立から接触へ〜ラテンアメリカの古代文明〜」(『歴史でみる世界』2001年度)、『世界史B・新訂版』(一橋出版)
第35回 忘れられた歴史〜大航海時代前夜のアフリカ大陸〜
「暗黒大陸」といわれたアフリカ。アフリカには本当に歴史がないのか?マリ王国をとりあげた。後半は、アフリカが「世界史」の外に置かれた理由を概観した。モンテスキューも『法の精神』のなかで、黒人に対する差別意識を披露した。
松田素二「アフリカの光と影〜忘れられた歴史〜」(『歴史でみる世界』2001年度)
第36回 マゼランが来た〜大航海時代〜
ヨーロッパの人々が東方世界に興味を示し、まずスペインとポルトガルの支援を受けて、コロンブスやマゼランらが海に出た。ここでは、特にマゼランを取り上げる。マゼラン自身は、実は世界一周を成し遂げていない。彼の部下が成し遂げた。マゼラン自身は、フィリピンで現地の人びととの戦いの中で、ラプラプ王に殺害された。なぜ殺害されたのか?マゼランに「来られた側」にとって、「マゼラン」とは一体なんだったのかを考えた。

安井俊夫『歴史の授業108時間(上)』(地歴社)、本多勝一『マゼランが来た』(朝日文庫)、大久保桂子「黄金郷を求めて〜大航海時代の異文化幻想〜」(『歴史でみる世界』2002年度)

第37回 砂糖にかくされた悲しい歴史〜世界の一体化のはじまり〜
前回の話が少し残ったので、それを片付ける。先住民にとってマゼランたちヨーロッパ人は「悪魔」(本多勝一)だった。それはどういうことか?具体的にこの時間で検討する。
砂糖を通じてヨーロッパ・アフリカ大陸・アメリカ大陸が一つになった。これはどういうことか?アメリカ大陸でインディオが砂糖生産などにこき使われてどんどん減っていく中で、スペイン人宣教師ラス・カサスは国王にこの状況を訴えた。しかし、このラス・カサスの告発によって、アフリカ大陸から黒人奴隷がアメリカ大陸に連れてこられるようになったのだ。

川北稔『砂糖の歴史』(岩波ジュニア新書)、安田喜憲『NHK人間大学 森と文明〜環境考古学の視点〜』(日本放送出版協会)、『高等学校 世界史A』(清水書院)

第38回 それでも地球は動く〜ルネサンス〜
ルネサンス。取り上げるべき事項は多いが、科学技術の発達に注目した。古代ギリシア・ローマ時代から地球が動くのか、それとも天が動くのか議論がなされてきた。しかし、キリスト教の拡大とともに、聖書に書かれていることが絶対視されるようになり、異を唱えることができなかった。その中でガリレオ・ガリレイは地動説を唱え、キリスト教に挑戦状を突きつけるが…。ガリレイの死去の年にニュートンが誕生する。何か運命的なものを感じる。

安井俊夫『歴史の授業108時間(上)』(地歴社)、樺山紘一『世界の歴史16 ルネサンスと地中海』(中央公論社)

第39回 聖書か、免罪符か〜宗教改革〜
ガリレイはキリスト教に屈した。ドイツではルターがキリスト教に挑戦状を突きつける。宗教改革である。活版印刷の技術が改良されたことにより、ルターを支持する勢力が急速に拡大していく。ルターのもとには教皇から破門宣告状が届くが、ルターは大勢の人の前でそれを燃やし、キリスト教との対決姿勢を鮮明にする。かつては破門された皇帝が教皇に謝罪するという事件までおこったのに。キリスト教に対する見方がここで大きく変わっていった。さらにヨーロッパ各国に宗教改革の影響が及んでいく。

安井俊夫『歴史の授業108時間(上)』(地歴社)、樺山紘一『世界の歴史16 ルネサンスと地中海』(中央公論社)、成瀬治『世界の歴史15 近代ヨーロッパへの道』(講談社)

期末テスト

1学期へ】  【戻る】  【3学期へ