XCOMBによる解析 [XCOMB画面へ]
−図示仕事割合による燃焼診断−
ガソリンエンジンの連続100サイクルの燃焼圧データを元にATDC30degでのMFBが0.9(90%)となる2つのサイクル#64と#91を抽出し
XCOMBの燃焼圧解析より両サイクルの発熱量、図示仕事、および熱から仕事への変換率を求めると表−1のようになります。
表−1 両サイクルの熱発生量と図示仕事
サイクル# |
熱発生量(J) |
図示仕事(J) |
変換率(図示仕事/熱発生量 %) |
#64 |
631.54 |
238.65 |
37.79 |
#91 |
659.50 |
242.96 |
36.84
(#64比△2.5%) |
◆質量燃焼割合からわかること
図−1は両サイクルの質量燃焼割合(MFB)カーブを比較したものです。
▼黒色で示す#91サイクルは点火(BTDC30deg)後のMFBの立ち上がりが早く、これに対し赤色で示す#64サイクルは#91に比べMFBの立ち上がりは遅くなっていますが
両者はATDC30degで交差しその時のMFB=0.9になっています。
▼ATDC30deg以降は逆に#64が早く燃焼しATDC60degでMFB=1.0に達しているのに対し#91は排気バルブが開くATDC100degまで緩慢に燃焼しています。
▼経験的にはMFB=0.5となるクランク角がATDC7deg前後の場合に熱効率がベストになることが知られています。MFB=0.5となるクランク角は#91でATDC11deg、#64ではATDC15degと
両サイクルとも燃焼が比較的遅いサイクルと判断されますが、そんな中で発熱量−仕事変換率ではMFB=0.5となるクランク角が遅い#64サイクルの方が大きくなっています。
▼このようにMFBカーブだけで図示仕事まで含めた解析、診断を行うのは難しいといえます。
図−1 MFB比較
◆図示仕事割合からわかること
図−2は両サイクルの図示仕事の絶対量および図示仕事割合(XCOMB6.1のWebサイトを参照ください。)を比較したものです。
▼図示仕事割合は#91ではATDC30degで既に1.0近くに達しており、その後の燃焼は図示仕事の増加にほとんど寄与していないことが分かります。
▼これに対し#64では図示仕事割合はATDC30degで0.9であり、その後MFBがATDC60degまでに0.1増えるとともに図示仕事割合も0.1増えていることが分かります。
▼これより#91サイクルではATDC30deg以降の燃焼が図示仕事の増加に寄与しないのに対し#64サイクルではATDC30deg以降の燃焼がそれによる発熱に見合うだけの
仕事をしており、その結果1サイクルでみた発熱量から仕事への変換率は#64の方が大きくなっていることが分かります。
両サイクルの燃焼効率(発熱量/燃料低位発熱量)が同じと仮定するならば#64サイクルの方が図示熱効率(図示仕事/燃料低位発熱量)も大きいことになります。
図−2 図示仕事割合比較
◆燃焼診断
▼#91サイクルは#64サイクルに比べPmax,Tmaxともに高いことから、ピストン、クランク等に対する機械的負荷も熱負荷も大きくしかも熱効率は#64サイクルに比べ低いサイクルになっており
このような後期緩慢燃焼サイクルの存在を少なくすることで燃費向上が得られると考えられます。
図−3 P-θ線図比較 図−4 T-θ線図比較
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