XCOMBの上死点(TDC)と圧力零点補正機能  [XCOMB画面へ]

 −計測された筒内圧の上死点(TDC)位置および零点補正−

1.燃焼圧計測・実験現場での問題

 エンジン燃焼診断のために燃焼圧計測データから熱発生率カーブ、質量燃焼割合等を求めるためにはTDC位置と圧力零点が正しく設定されている必要があります. 

TDC割り出しのためにはロータリエンコーダのTDCパルス発生クランク角位置が正しくTDCに一致するよう’位置合わせ’を行い、更に正確を期すために駆動運転を行い

最大圧力発生のクランク角位置を求めてその位置をもってTDCとするなど多くの作業を必要とします.

 しかし自動車やモータサイクルなどクランク軸端にロータリエンコーダを比較的簡単に後付けできる構造のエンジンでは問題ないのですが, エンジン構造によってはTDC位置合わせを

正確に行うことは困難なものがあります. (例えば強制空冷で空冷用ファンがフライホイルを兼ねておりしかも冷却風ダクト内に収まっている場合など)

またエンジンを駆動することができないタイプの動力計を使用している場合は駆動運転時の圧力からTDC位置を割り出すことができません.このような場合は発火運転時の

筒内圧力カーブのみを元に正しいTDCや圧力零点を求める必要があります.

2. 発火運転時の筒内圧力カーブからTDCと圧力零点を求める方法

筒内圧力カーブが正しく計測されているならその圧力データを元に求めた熱発生率の値は以下の2つの条件を満たしているはずです.

@圧縮時熱発生はゼロ

 エンジン燃焼を考えるとまず、ガソリンエンジンなら過早着火現象が生じていない限り圧縮開始から点火時期までの間に燃焼が始まることはなく

またディーゼルエンジンなら燃料噴射時期よりも前に燃焼が始まることはない.

A燃焼終了後の熱発生はゼロ

 燃焼終了時点を予め予測することはできないものの、少なくとも排気弁が開く時期(シリンダのクローズドサイクル終了)よりも数10度前クランク角までには燃焼は終了している

ことが一般的でありしたがって排気開より数10度前クランク角から排気開までの区間の熱発生はゼロのはず.

実際に計測された筒内圧データを用いて熱発生率を求め2つの要件を満たすようTDC位置と圧力零点を補正します.

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【解析条件】

<エンジン>

  4サイクル ガソリン吸気管噴射エンジン

<運転条件>

  1000rpm スロットル部分開度 点火時期30degBTDC   空燃比14:1

<筒内圧力データ>

連続109サイクル

クランク角間隔 1deg

クランク角オフセット 筒内圧データのクランク角値に対し±10degの範囲(正しいTDC位置と計測データにおけるTDC位置の誤差は±10deg以内)

            TDC割り出し作業をレビューすると大まかにこの程度の誤差内には入っていると推測される

【解析結果】

1)       計測データを元に求めた熱発生率と熱発生量

クランク角オフセットはゼロ、圧力零点も元の電圧から求めたままの値(圧力オフセットはゼロ)とした場合、点火時期BTDC30degより前の熱発生率は負であり、

したがって積算した熱発生量は負となっている. また熱発生率が正から負に転じるATDC40deg付近が熱発生量のピークであり、その後は熱発生量は

減少している. したがってこの熱発生率カーブは要件@、Aを満たしておらずTDC位置、圧力零点のどちらか一方または両方を補正しなければならない.

2)TDC位置と圧力零点を同時補正して求めた熱発生率と熱発生量

  TDC置(オフセット)探索範囲:±10deg    

圧力零点(オフセット)探索範囲: ±50kPa

また燃焼終了は排気開より40deg以上前

として@、Aの誤差を最も小さくするこれら2つの値をExcelソルバを用いて求める.

Excelソルバによる探索方法の詳細はXCOMB正規ユーザ用使用マニュアルに記載)

  結果得られたTDCオフセット量は6deg、圧力零点オフセット量は-28.17kPaであり熱発生率と熱発生量は直上2図のように

熱発生率の要件@、Aをほぼ満たしており正しく補正されたことが分かる.

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