ステップ

 ライデイングポジションで一番大切なのは、バイクにおけるライダーの足場を決めるステップです。ステップは、元がフレームに溶接されているので、おいそれと変更はできません。しかし、やるべき方法はあるのです。

 近年、アメリカンモトクロスライディングの変化がステップ形状に現われてワイドステップ化しています。なぜでしょう?じつは、モトクロスのスタンディングで足の親指の付け根で乗るつまさき立ちが普及してきたからです。従来の土踏まず乗り用に作られた幅の細いステップでは、つまさき立ちが安定しません。そこでワイドステップ化されています。もし、土踏まずでステップに立ち、ペダル類を操作するなら、ワイドステップほど操作しにくいステップはありません。事実、コーナーリング時に土踏まず乗りが基本のロードバイクでは、ステップは、驚くほど細く、ワイドステップ化の兆しも見られません。土踏まず乗りが基本ならば、ステップのワイド化は、ありえないのです。

 オフロードバイクでのライダーによる前後の体重移動によるバランスは、ステップを中心として行われます。そこで、さあ、実験です。バイクを前後輪の上がるスタンドに乗せます。そのとき、土踏まずでステップに立つ時とつまさき立ちの時でどちらが前後移動しやすいか比べてみてください。自分の場合、実際にやってはるかにつまさき立ちの方が、楽にスムーズに大きく移動できました。そして特に足の短い私でさえ、土踏まず立ちの時よりかなり大きくリアに加重をかけることができるのに気付きました。そうです、つまさき立ちで、重心位置が後ろに移りステップより踵が下に降ろせるので遥かに強力にリア加重がかけられるようになったのです。このことは、ジャンプに非常に関係してきます。ジャンプの説明で詳しく書いてありますが、ジャンプ時、特に重要なのはリアサスの離陸瞬間の確実な圧縮です。それが、つまさき乗りでリアサスへの体重移動がより「楽」にできることになります。

 ヤマハ4ストのモトクロッサーが出現しました。4ストは、アクセルを開けての急激なトルク変動によるリアサスの圧縮が確実に行えないので、2スト以上につまさき立ちは重要になって来ました。4ストの名手ダグヘンリーは、完全につまさき乗りをしています。ジャンプ時の写真は、つまさき立ちにより踵がステップの下に位置しています。このようにステップは、ワイドステップにより確実につまさきで乗ることが出来て、ジャンプを考慮入れた乗車ではつまさき立ちが遥かに優れていると思われます。

 ママチャリをこぐ時、土踏まずでペダルをこぎません。(ヤンキー乗りなら別ですけど)爪先の親指の付け根、英語でボールと言われるところでこぎます。なぜなら、人は足の筋肉を使う歩行時に、爪先を蹴り出して前に進みます。スプリントランナーは、踵を地面にほとんど付けること無く爪先のみで走り抜けます。爪先立ちは、土踏まず立ちより運動能力に優れ、人の本来の機能を十分に発揮できるのです。このことはとても重要で、この違いは才能以上に道具の使い方として決定的な差を生みだしてしまいます。

 さらに足の筋肉は、第二の心臓と言われ、筋肉の収縮により静脈弁を使い血液を循環しています。爪先立ちは、ふくらはぎを有効に使い、血液の循環さえも良くするのです。持久力を必要とするモトクロスでは、非常に重要なことです。

 テクニックリフォームでは、爪先乗りを推薦します。ワイドステップも市販されています。ぜひ、どうぞ。