13 ロッテリーおじさん
バハルダールからアジスへ帰るバスの中で、おじさんに声をかけられた。
外国人と話ができるのが楽しくて仕方がないといったふうで、ニコニコしながらいろいろ話かけてくる。
バスは混んでいて、助手席や運転手後ろのエンジンカバーの上にも何人か座っていて、にぎやか&なごやかムード。金持ち風の夫婦と子供がいたり、見るからに貧ししそうな人達がいたり。
エチオピアの人達は貧乏人も金持ちも、差別なくお互いに和やかに会話するのだ。いい国だよね。
おじさんが話しかけてくるいろんな質問に他のみんなも興味津々。
おじさん 「エチオピアは好き?」
のこのこ 「う〜ん、よくわからない。バスはのろいし、すごく大変〜。」
(一同、うなずく)
おじさん 「なぜ一人なの?」
のこのこ 「だってだれも一緒に来てくれる人がいないんだもん」
おじさん 「結婚してるの?」
のこのこ 「え〜?やだなぁ。独身です。」
おじさん 「なぜ?」
のこのこ 「なぜだろう〜。だって誰ももらってくれないんだもん(笑)。私も早く結婚したいです〜。」
(一同、笑い)
おじさん 「何歳?」
のこのこ 「32。」
(一同、固まる)
おじさん 「そりゃ〜君、限界終わってるよ。」
のこのこ 「・・・・・・・・・。」
おじさん 「この人をみてみろ。彼女は35歳だけどこんなに大きい子供が2人もいるんだぞ。
だいたい君のお父さんは何をやってるんだ?」
(一同、沈黙。子もちの金持ち女性、困りはてた笑顔)
会話終了。しばし沈黙。
おじさん 「君の住所をこの紙に書いてくれるか?」
のこのこ 「はい、書いたよ。おじさんも住所書いて。」
おじさん 「私は来年アメリカに行くんだ。まだ住所は決まってないけど」
のこのこ 「本当に? すごいじゃないですか。家族も一緒に?」
おじさん 「たぶん最初は私だけ。でもやがて家族も呼ぼうと思ってるんだ」
「私にはチャンスがある。英語ももっと勉強しなくちゃね。アメリカから手紙を書くよ。」
のこのこ (エチオピア人でアメリカに移住だなんて、このおじさん、すご〜い・・・・。)
・・・・その後、休憩中、売店にて。 おじさんがあるチラシを指差して、
おじさん 「私はこれに申し込んだんだ」
のこのこ 「へ?」
おじさん 「言ったろう?僕はアメリカに行くって。」
チラシ <夢のビザロッテリー!当たればアメリカビザ獲得!>
おじさん 「ほら、ここに職業とか家族とか書き入れて・・・・・」
のこのこ 「・・・・・・・・・・・。」
エチオピア人は宝くじが大好き。宝くじは、くじ売り屋や売店で買えるのだが、
政府でやってる宝くじ商品に「アメリカ居住ビザ」があるだなんて・・・・!
どうでもいいけど確率、超低いんだろうな。
アジスまではバスで2日行程。一日バスに揺られて見知らぬ町で一泊する。
金持ち夫婦が「このホテルはきれいでいいよ。20ブル」と紹介してくれるのをさえぎり、
ロッテリーおじさんといっしょに宿探しするとに。
おじさんは小さな子供からばあちゃんまで家族8人引き連れている。それなら安心。とみんなで移動。
おじさんこそ身なりはしっかりしているが、連れてる女子供、ばあちゃん・・・・けっこうかなりエチオピアンって感じで、とても金持ちとはいえないご一行様。
泊まった町はデブレマルコス。観光地もある歴史の町だ。宿も多い。だが、なぜかどこも一杯らしい。
しかもおじさん、あきらかに安い宿を探している。
真っ暗になった道をみんなでてくてく歩いて、おじさんが2件目にして「ここにしよう」と決めた宿は、一部屋8ブル(120円)。
「・・・・・・・・・・・。」
部屋を見て、沈黙。なんか、すっごくキタナイんですけど。
おじさん 「あんまりきれいじゃないけど、ここでいいかい?」
のこのこ 「みんながここにするなら、いいですよ」
おじさん 「じゃ、あとでみんなで食事に行こう。15分後でいいかい?」
「きれいじゃないけど・・・」ってあんた、汚いよ〜!!!
安宿もここまで安いとシーツ汚いんだなぁ。洗ってないぞ。
この枕なんか・・・ベタベタしてるぞ〜。
意を決してベッドメイク作業に。
床にバックパック置くのもためらわれるような部屋で、「防虫グッズ」をセットし始める。
これで、最後!明日はアジスなんだから!と自分を励まして。
しかし昨晩ついに殺虫剤を使いきってしまったのだ。こんな汚い宿で殺虫剤がないなんて。 うぅ。(涙)
おそるおそる毛布をめくると、なんとくたばったゴキブリが毛布とシーツの間に・・・・!
絶望感に襲われながらそのゴキブリを紙でつまんで取り、作業続行。
あ〜ぁ。
最後に枕もとにロウソクとライターを置き、セット完了。
おじさんが呼んでるそ。さあ・・・・・・・食事食事!!!
おじさんの家族8人と私、ぞろぞろと食堂へ。
大テーブルを囲む女性達と一緒に座ったら、おじさんが
「君はこっちにすわりなさい。」
と、みんなから離れさせ、おじさんと一緒に小テーブルに座る。おじさんのうしろの席には若い男。
女の人たちと一緒に食べたかったのになぁ。
生ビールとインジェラ&ワットを頼んで食べる。旅も終盤、この味も慣れたぞ。ビールもウマイ。
食事が終わった。
おじさん 「君、15ブルね。」
のこのこ 「はい、15ブル。」(お金を渡す)
のこのこ 「・・・ん?なんで? ビールとインジェラで7ブルでしょ?」
おじさん 「俺達の分も君が払うんだよ。」
のこのこ 「なんでよ?」
おじさん 「ホテルを紹介して、食堂にもつれてきてあげただろう?だからだよ。」
のこのこ 「そんなの頼んでないじゃん!だいたい、奢ってもらいたかったら私が払う前に「すまないけどご馳走してくるかな?」 とか「ありがとう」とか言うべきでしょう?!!!」
おじさん 「ほう。それは失礼したね。 君は正しいよ。 だけど君、細かいこと言うねぇ〜。」(ニヤニヤ・オヤジ笑い)
のこのこ 「3人分払うわけ?だいたいその子はなんなのよ!」
おじさん 「こいつは俺の息子。だから君が払うんだよ。」 (笑いながら私の肩をポンポン)
のこのこ 「・・・!!!」 (完全にキレる)
おじさ〜ん。あんたといると疲れるよぉ〜。
まぁ、このおじさんは「天然」だとしても、とにかくエチオピア人ってどうしてこう当たり前のように外国人旅行者にたかってくるんだろうね〜。屈託なさすぎ。(トホホ)
宿に戻ってきれいな星空を見上げて、
ミネラルウォーターで洗顔と歯磨きをし、
おそるおそるベッドに入って仕方なく寝たのであった。
朝は早い。5時すぎ、約束の時間より15分も早くおじさんが部屋をノック。
のこのこ 「なんでこんな早く?約束は5時20分ですよね?」
おじさん 「早めのほうが安心だろう?」
はいはい。早めに出発ね。気温はなんと10度・・・・・(さぶぅ。)
早すぎ〜。おじさん達といるおかげで外国人特権の「門破り」ができず、バスターミナルのゲートの前で40分も待ったのであった。
しかも、座席は全員昨日と同じ・・・・・
そして今日もバスはいちだんとゆっくり走るのであった。
アジスは遠い・・・・・。
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