14 口説かれる日本人


エチオピアでは日本の女の子はモテる。ついでに言えば、男の子も間違いなくモテる。金持ってるんだもん。
日本人は欧米人みたいに人に食って掛かったり、エチオピア人を下に見るようなこともなく、思いやりがあってとても人柄がいいからね。

いくら伝統文化を重んじ、崇高なまでの信仰心を持ち、自国に誇りをもっていたって、なにせGNP130ドルの世界の最貧国のひとつであることは変わりないからして、機会あらば、外国人と恋に落ち、結婚できれば、と思っているのはしごく当然のことなのである。

んなわけで、私もよくぞまぁ、いろんな人に口説かれたもんですわ。子供からおじさんまで・・・・・。
でもさぁ、昼間とても良くしてくれたガイドが夜になると口説いてくる、ってのは結構怖いです。たまたま宿で会ったオトコなんかに口説かれるのはまだふざけんな!って断りやすいけど、一日一緒に過ごすとねぇ、一応会話は成立する間柄なわけでして・・・・・


<JAPONの意味>

たまたま宿で会ってしつこく私に声をかけてきた兄ちゃん。宿で一緒にビールを飲んでいるときの一コマである。最初は国際情勢のハナシや、エチオピアの話だったのだが・・・・。

「JAPONの本当の意味って知ってるかい?」
「本当の意味?わかるけど・・・どういうこと?」
「ジャンピング・ポンピング・オールオーバー・ザ・ナイト」(ニヤニヤ)
「・・・・!?」
「ねぇ、もうちょっと一緒にいようよ・・・・・」
誘ってるのだ。10も若いオトコがどの面下げて・・・!
「もう部屋に帰るから。」
だんだんむかついてきた。
「そうじゃなくて、君に行ってほしい言葉があるんだ・・・」
「あんた、若すぎ!オトコなんて考えてることみんな一緒なんだから!青い青い。あんたも大人になればわかるわよ!」
年齢のことを言われ、オトコも面目を保とうと必死。
「帰らないでよ。ねぇ、アイラブユーって言って・・・。」
ついにキレた。
「Help Me! He is crazy!」

立ち上がって大声でみんなに言って、部屋に戻った。
驚く他の客。笑う娼婦。

おいかけて来る男。なだめる宿のオーナー。
「とにかく年のことは言うな!」 
捨て台詞をはいて帰っていく男。
ま〜だそんなこと言ってるよ。ホントにオトコってどこでも同じ。
「私がちゃんと見張っているから。安心しなさい」
とオーナー。

5分後、部屋をノックされる。
なんなんだよ!ドアを開けると他のオトコ。
「君、もう安心だよ。もし君が怖かったら、僕が一緒に寝てあげる。」

あ〜〜〜〜〜、疲れる国だ。


<夢見る大学生>

ラリベラで雇ったガイド、アブラハム君は大学生。なんと、サイコロジスト(精神科医)志望。
この子はすごくいい子でねぇ。気も利くし、礼儀正しいし、一生懸命。
ランチも私のを一緒に半分こしよう、と言うと最初、「僕はいいです。」とか言っちゃってね。食べるときも「ありがとうございます」って。
精神科医ってアフリカに必要なのかなぁ。先進国や都会ではストレスで精神を病んだりして精神科医ってとても必要とされてるけど。って聞いてみたら、やはり、貧しさゆえにいろんな心の問題が発生するそうなのだ。ふぅん。

アブラハム君のおかげで一日気分良く観光して、その夜はエチオピア正教の夜通し行われるセレモニーを見に行くことに。真夜中の帰り道。人気のないくらい夜道。襲われても仕方ないのだが・・・・

「僕には夢があるんだ。」
「ふうん。」
「外国に行きたいんだ。」
「・・・・・・。」
「もし・・・もし君が良かったら・・・・・僕の恋人になってくれないか?」
(うわ〜、やっぱりきた。)
「無理。」 (きっぱり)
「なぜ?僕じゃダメかな?」
「あなたがどうってわけじゃないけど、ダメだよ。」
「僕がエチオピア人だから?」
「私は日本人がいいの。」
「今からすこしお茶しない?」
「ダメ。」

エチオピア人にしては純粋系の若者、撃沈。
ナイーブに詩的に話を持っていったのにねぇ。海千山千の三十路オンナには通用しなかったらしい。 
次に会う日本人の子はもっと若いといいねぇ。
「暗い夜道を男と歩かないように」って人には言うんだけどね。あはははは。とりあえず、何事もなくてよかったぁ。


<天然おやじ>

次の日、遺跡で先生をやってるという太っちょのおじさんに会った。
やはり外国人をガイドしていて、明るくてテンション高くて・・・・・ギラギラしてるというか。あははは。
「夜、ブルーナイルレストランにおいで!一緒に食事しよう!みんなもくるし 、楽しいよ!」
何度も言われる。でも、私は夜は一人でホテルから出ないようにしているのだ。とりあえず、断った。

その夜、宿のトイレの前で、そのおじさんと遭遇。
「お!今から出ておいでよ。約束しただろう?」
(約束してないよ〜。)
「でも・・・・疲れてるし、行きたくないの。」
「リラックスできるよ。ゆっくりさぁ。」
「私、夜は外に出ないようにしているの。危ないでしょ。」
「僕がいるから大丈夫だよ!」
(あんたがあぶないんじゃ〜!)
「じゃぁ、もしあなたの娘さんが同じ状況で男に誘われてたら、娘が男についていっていいの?」
「僕は独身なんだ。子供いないし。」

(・・・・・・・・ぎゃふん。)

そのビールっ腹じゃモテないだろうね・・・・・


<知能派ガイドの作戦>

ラリベラのホテルは外人宿。同世代の日本人の男と「ガイド兼旅の友」として一緒に旅をしているエチオピア人の青年、ウェンドセンに会った。
彼は頭が良く、気は利くし英語もぺらぺらで、その日本人にとても気に入られて、旅費すべて彼(日本人)持ちで雇われているのだった。
金持ちなんだよな〜その日本人。 先述のバーで2万円ぼったくられたのもその男。あとで話を聞くと、6日間の同行で彼がウェンドセンのために払った費用が400ドルだもんな。(GNPの3倍?苦笑)

今思えば、ウェンドセンは一流のガイドなのだ。彼の動きは完璧。
私より先にラリベラから彼の地元、バハルダールに戻った彼は、まだラリベラにいる私に電話をかけてきて
「なんでも助けてあげるから、必ずバハルダールにつく前の日に電話してくれ。」って。
「タカシは本当に自分に良くしてくれた。大切なタカシの友達なら君も大切な友達だ。必ず僕が案内するから。僕には責任があるんだ。」
彼は私の旅のおおよその予定を聞いた。

それでも連絡もせずに予定より一日遅れてバハルダールについたとき、彼はバスターミナルで私を待っていたのだ!

ウェンドセンは私を清潔で快適な宿に案内し、仲間も合流して一緒にお昼ご飯。
彼の仲間がうれしそうに日本人の女の子の写真を見せる。
「僕の恋人なんだ。こっちの子はこいつの彼女。」かわいいだろう?

イズミとトモミ。
確かに、かわいい。

とても長期旅行者とは思えないほどきれいにしてる。なにせ、若いし。
二人はこの町に2ヶ月間滞在し、彼らと一緒に過ごしたそうだ。
写真を見ても、その関係が深いことがわかる。
「僕は彼女と結婚するんだ。僕が日本に行く。」

ほんとかよ・・・・。
こ〜ゆ〜オンナがいるから後に来る私達がカモられるんだよな。
しかも、オンナ二人して現地で男作って・・・・
私だってもし自分がエチオピア人だったら思うもん。「日本の女はやれる!」って。

エチオピア人は、セックスに対してはやたらにおおらかだ。
他に娯楽がない、というのもあるだろうが、イスラム世界に慣れた私にはびっくりするほどあからさまに誘ってくる。
娼婦が多くて、しかも彼女達が楽しそうに華やかにしてるのも、貞操観念が薄いからだろう。
エイズも増えるわけだわよ。

食後、タナ湖の島巡り。観光は、船一隻あたりの値段。一人だとやたらに高い。彼が交渉して約半額の30ドルに。彼の友達と3人で観光。
「イズミとトモミは湖で泳いだんだよ。君も泳ごうよ!」
「やだ。」
(私やイズミやトモミじゃないっつーの。)

船を下りたらコーヒーセレモニーをやってくれる行きつけのカフェや、楽しい仲間と夕食や、民族音楽と踊りの店や、そのあとさらにバーとか・・・・。
これでもか!というくらい、私に対して金を使って大盤振る舞い。
私が払おうとすると、説教するんだよね。「俺が出す!」って。

タダより怖いものはない、とは思うけど、
楽しくて、はしゃいだわね〜。
彼の友達も気持ちのいい人ばかりだったし、すべてが濃かったラリベラや、ジャンピング男の被害にあったバハルダールを抜けてきて、たどり着いたこの町は都会で、やっと、普通の国に来たようでうれしかったし。
でも、さすがに夜も9時を過ぎると怖くなってきた。
これ以上飲むと本格的に酔っ払う・・・と思う前に彼に宿まで送ってもらった。

帰ってきた宿にて・・・・・
ロビーに座り、話をする。

「今日は私の為にたくさんお金を使ったよね。私、自分の分、払うから。」
「もちろん。気味にかなりのお金を使ったよ。タカシは本当に僕にすごく良くしてくれた。彼は100%僕を信頼してくれた。だから、僕は君に良くしなくちゃ。」
「でも・・・・」
「僕は君が喜んでくれさえすればいいんだ。 僕ももう、タクシーもないし、政府系のホテルに泊まらなきゃ。もし、気味がよければ君の部屋で一緒に寝られればありがたいな。」
(ふえ〜ん。だから、ヤダってばぁ〜〜〜っ!!!)
「キスもセックスもしない。いっしょに寝るだけ。・・・・・でも、君はそれを望まないだろう?僕は他の男とは違う。」
(だったら言うな〜!)
「お願いだからそういう話はやめて!私はそういう話が一番怖いの。嫌なのよ!」
「もし、君とセックスできれば僕は夢のようだけど。君が望まないのなら、僕は帰るよ。ありがとう。また明日、9時に迎えに来るよ。」

帰っていった・・・・・・・。

ふぅ。

結局、アジス以外の地方では、毎日、こんな調子なのだ。
もちろん、私にスキがあるといわれれば、その通りだろう。

だけど、私は言いたい!
年の数くらいいろんな国に行ったけど、こういう国は初めてだ。
なぜ、こんなに簡単に「やろうよ!」って言える?
なぜ、お決まりのようにこういう話が出てくる?

だから、この国は大変なのだ。とくに女性にとっては。


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