4 宿


エチオピアで宿に困ることはない。どんな田舎の町にも絶対に安宿がある。
安宿はブンナベットといい、ブンナは「コーヒー」、ベットは「屋」を意味する。つまり、喫茶店。
町の喫茶店だから小さな町なら町の中央にあって、気軽にお茶や食事、夜は酒が飲め、その奥に中庭を囲むように10室くらい並んでいて、気持ちよく酔っ払ったらお姉ちゃんも部屋つきで気軽に買えちゃったりする。
宿代も安く、一部屋150円くらいから。ちょっといい宿にとまって600円くらい。

問題は「そこそこの宿」が少ないことだ。
個人旅行者が考える「そこそこの宿」とは
ダニ南京虫に食われないことは当然として、部屋とトイレが清潔でしっかりと鍵がかかり、外部の人間が入ってこないこと。そして共同でもホットシャワーが使えれば・・・・・
人によっては一匹のゴキブリでも大騒ぎして宿を変えるだろう。

結論を言おう。
エチオピアでこのような快適な宿はない。
ない、といってはウソになるが、非常に少ない。かなりの金額を出さないといけない。基本的な生活レベルと「宿の定義」が違うのだ。

私が高い金を出して泊まったラリベラの外国人宿は、結局お湯は使えず(もっと高い部屋に泊まってる人にシャワーを借りた)、部屋の前では地元おじさんに口説かれ、夜はねずみが走り回った。
同じ高い金を出したアジスで一番有名な外人宿はお湯は使えたが、夜中の3時まで下のバーの騒音がひどく、生まれて初めて耳栓をして寝た。
高い宿でも快適ではないし、安い宿が意外に快適だったり。

エチオピアで「宿」とは、まずはコーヒーと酒と食事を出すところなのだ。
食事をした客はトイレに行きたければ、店の奥に入り我々の部屋の前を通り過ぎてトイレにいくわけだ。
外部の人間が入ってくるのは当たり前。
酒も出すから酔っ払いがいるのも当たり前。
娼婦がいるのも当たり前。
そんなところでひとりビール飲んでる私が口説かれるのも当然なのかも。

エチオピアでは、外国人旅行者には必ず誰かが寄ってきて、何もかも案内しようとする。 
目の前にあるホテルに行くにも勝手について来て宿のフロントを我が物顔で通り、部屋を勝手に案内して好きな部屋を選ばせ、トイレやシャワーの位置も確認させてくれる。最初はてっきり宿のスタッフかと信じ込む。
部屋を決めたらチップを要求される。
ただの外部の人間なのだ。
これはどんな宿でも変わらなかった。(アジスのBAROHOTELだけは別。ここは良かった!)
当然私がどの部屋に泊まったかしっかりわかっているわけで・・・・・。
出入り自由の宿システムにはあきらめるしかなかったが、なんともかんとも・・・・。

安宿では夜間は電気がつくが、朝方は電気がまだつかなかったりするから、ろうそくを枕もとに用意してから寝る。
エチオピア人はシャワーを浴びる習慣がないから(2週間に一度体を洗うらしい)ホットシャワーなど夢のまた夢。 
毎日バケツにお湯をわかしてもらい、体を洗う。そのお湯も七輪みたいなもので炭火で沸かすのだ。
 
雨がふると大急ぎで雨といにタライを置き、水を集める。洗濯やシャワーなどに使うのだ。
蛇口をひねれば出る水も、上部にとりつけられたポリタンクから出てたりするからいったいどんな水なのやら・・・。小さな町では不気味なので顔を洗うのもためらわれる。

エチオピアはけっこうシーツは上下についていて、たいていしっかり洗ってあるのだが(毛布めくったらシーツにゴキブリがしがみついてたことがあったけど・・・(涙)問題はマットレス!
当然ベッドに住む虫(ダニや南京虫)との対決にも気合が入り・・・ あぁ、しんど。

私は恐がりではない。バケツシャワーも慣れている。ゴキブリやねずみが恐くもない。
ひとつひとつの問題はどうってことはないのだが、毎晩、だんだんストレスがたまっていった。


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