生きている、死んでいる。


インドの駅、広場、道ばたで、時々つまづきそうになる存在。

それは、布にくるまってゴロンと寝ている人間である。
なんでこんな所に!と思うようなところに、頭まですっぽり布にくるまって寝ている姿は、体に厚みがないから、存在感が夢のように薄い。
薄っぺらの体。
バラナシ(ベナレス)に火葬場がある。聖地で焼かれ、ガンガーに流される人は幸福である。ひっきりなしに到着し、焼かれる死体は、白い布にくるまれ顔が見えたりするが、それを見てると生きてる人も死んでる人も全然変わらないなあ、と思ってしまう。
自然の火で焼かれていくのはうらやましくもある。3時間の焼いている間、家族がずっと見守っているし、天寿を全うした老人にはお祝いの楽隊まで引き連れている。

インドに行くと、生とか死とか混じり合ったなかにポンと連れて行かれて、誰もがいろいろと考えるようである。
とにかく、薄汚い布にくるまった、布袋ともゴミとも区別の付かない路上に「落ちている」人間たち、(ひょっとして死んでいるのかも)インドでは日常のありふれた光景である。
 
  <上手な死体の焼き方>
1 死体は白い布でくるみ、さらに金糸の豪華な布で包んで竹のタンカにのせて火葬場まで運ぶ。
2 天寿を全うした老人にはお祝いの楽隊をつけて、にぎやかに葬列行進する。
3 薪を組んだ上に死体をのせ、黄色いスパイスをふりかけ、(着火が良くなる)さらに薪を積んで着火。
4 一人三時間、300キロの薪を使い、じっくり焼く。家族はずっとその焼けていく様を見守る。
5 頭や足先など、燃え残りやすい部分は、棒でひしゃげてよく焼く。
6 焼き上がったらガンガーに流す。
 
 

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