2 イスファハン
 

<懐かしいイスファハンへ>

朝6時。薄暗いうちにテヘラン西ターミナルに到着、お茶を飲んで休憩。
タクシーでホテルに向かう。
タクシーはバスターミナルを出たところにある白いタクシーのオフィスで配車してもらう。20000リアル。白いタクシーは高いのだ。乗合タクシーなら安いのだが、とにかくパスポートをもらうまでは気が落ち着かない。
ホテルまですんなり到着。
私を見るなりすぐにわかってくれて(そりゃーそうだろ)無事、パスポートは私のもとへ。

ほっと一息して乗合タクシーで南行きの長距離バスが出る南バスターミナルへ。
今日は私が世界で一番好きな街、イスファハンに行くのだ。

緑の屋根が目印の懐かしい丸いバスターミナルについたら、適当にバス会社に声をかける。
イスファハン行きは一番便が多いのだ。どこのバス会社でもすぐにバスが出る。

それにしても、たまたま声をかけたこのバス会社、チケットを買うことなくそのまま私をバスに乗せる。
おいおい、食事もトイレもなにもしてないのに〜。
バスの中はガラガラ。いつ出発するの?と聞いても「すぐだよ。」っていう感じで答えてくれない。
すぐにガラガラのままバスは出発、なんじゃなんじゃ、これでいいんかい?と思ったら、バスはターミナルの外にいる客に声をかける「イスファハーン!」「イスファハーン!」。どんどん人が乗ってきて、ターミナルの外を2周もしたらバスはほぼ満席。
そうなのだ。 巨大なバスターミナルまで歩いていくと、けっこう時間がかかるしすぐにバスが出るわけではないので、乗る側も外でバスを拾ったほうが楽なのだ。お客のほうも慣れたもの、そのつもりでバスターミナルまで行かずに待機しているのだ。なるほど、これはよい。
でも、これでは、バスターミナルの周囲の混雑が解消されることはないな・・・・と。

イスファハンまで7時間。(14000リアル)
さっき9時間のバスを降りたばかり。イランは広いのだ。移動ばかりしている。
途中、コムの近郊で懐かしいドライブインで休憩。

6年前に寄った時と品揃えもおんなじ!
「ソハーン」という聖地コムの名物お菓子を売っているお店。
山と積み上げて売っているソハーンの缶。かぼちゃのクッキーというか、うすいカルメラ焼きのような感じのものなのだが、パリッとして私は好き。京都に寄ったら八橋を買うように、イラン人はとりあえずソハーンは買わなくっちゃでしょう、ってな具合で買い求めるのだ。私もほしかったけどかさばるから買わなかった。

イランのドライブインのおトイレはとってもキレイ。水が流れない、なんてことは皆無。どこに行ってもトイレで不潔なところはないのがうれしい。イランは道もいいし、バスも大抵ベンツだし、なかなか国としては豊かな印象をうける。
周りのアラブやパキスタンとは大違いなのだ。

4時頃、イスファハン着。タクシーでメインストリートのチャハルバーグバーグへ。(8000R)
あぁ、懐かしい!!!!ちっとも変わってないわ。この町は。

過去2回訪れたときに泊まった、サーディーホテルに行く。
シオセポル(橋)から150mくらいのところにあるやたらに派手なハンバーガー屋さんの角を曲がってちょっと行ったところのホテル。静かで居心地のよいホテルは当時3人で1500円(一人500円)くらいだったのだ。
以前泊まったときにエジプトのナセル大統領に似た顔をしたおじさんがいろいろ親切にしてくれ、2回目に行ったときも覚えてくれてたんだ。

フロントには懐かしいナセルおじさんはもういなかったけど、白い壁がきれいで静かだし、こんなにキレイだっけ?
でも値段が上がっていて一人100000リアル(15ドル。実際には12ドル)。うひゃ〜!高い!高くなってる・・・・。

部屋をでてお散歩。

まずはシオセポルのチャイハネに。
シオセポルというのはザーヤンデ河に架けられた、400年前に作られたハージュ橋と並んでイスファハン名物の美しい橋。33のアーチを持つ2階建てのこの橋は、車両通行止めになっており、市民の集う憩いの場ともなっている。
この橋の一階部分には昔ながらのチャイハネがあって、河の流れを眺めながら、とても気持ちよくお茶が飲めるので大好きな場所なのだ。

ウキウキしながら河まで来ると、なんと!

「・・・・・水がない。」

渇水で河には水がなく、カラカラに干からびている。上流にダムがあって、降雨量にあわせて放水量をコントロールしているのだ。地元の人の話によると、ここ3年も水が流れない日々ばかりなのだそうだ。

うわぁ〜。。。。しょぼん。
やはり水が流れていないと魅力半減。
チャイハネ自体は相変わらずふっと時が止まったようなくつろぎ空間である。
だけど・・・・・イスファハンでもとりわけ好きな場所なだけに寂しい。

でも、仕方がない。お茶を飲んで(1000R)また歩き始める。

橋を渡ったところにある高級ホテル、コウサルホテルに、ポストカードを買いに行く。
ここのポストカードはクオリティが高くてキレイなのだ。
相変わらずキレイなホテル。。。。だが売店が休憩中とやらで閉まっている。残念。
仕方がないのでホテル内にインターネット屋があったので利用してみることに。

お!のこのこ旅の情報ノート、出てきた出てきた!文字化けしてるけど。
自分の掲示板に海外から書き込むのは初めて。ちょっとうれしい。(1時間50000R 10分単位)

すっかり日が沈み、ぶらぶらと400年も昔のキャラバンサライ(隊商宿)をそのままホテルにしている、アバシホテルへ。
フロント、中庭、隣の神学校のモスクの屋根・・・・・・相変わらずすばらしくキレイ。しばしうっとり。

6年前に奮発して一泊だけしたけど、このホテル、とくにスイートはすばらしい!4部屋しかないスイートは部屋に美しいドームがあって、美しいモスクのイスラム建築そのまんま!(っていうか、そのまま使ってるからそうなんだけどさ)しかもスイートとあって、内のタイルも彩色もしっかりと修復してあるから見事なこと。
6年前に偶然昔シリアであった旅好きなご夫婦にイスファハンの王のモスクで再会し(世界って狭い!)その人たちが泊まっていたので見せてもらったのだ。

中庭で写真など撮っていたら、カーペット屋のお兄さんに声をかけられる。
「是非見ていかれませんか?」
「見るだけですが・・・」
と中に入る。

アバシのカーペット屋だし、となんとなく安心して絨毯を眺める。
私は実は就職活動で絨毯屋に内定していたくらい絨毯好き。だからといって絨毯はトルコで買った一枚しかもっていないけど、見るだけでも幸せになれる。

おじさんといろんな話をするうちに、なんだか
「せっかくだし買ってもいいかなぁ・・・」
という気になっちゃって、ご購入!してしまった。550ドル。今は旅行者が少なくて絨毯屋も大変だろうし、10年くらい前ならもっと高かっただろうし。
なんと言ってもあこがれのイスファハンデザイン。きっちり折りたたんでくれて、持ち帰ることに。カメラも買ったばかりなのに・・・・・ま、いいか。それにしてもしつこくはないけれど熱心。散々迷う私を辛抱強く待ち、選ばせてくれる。

夕飯は食堂でシシカバブとザムザムコーラ。(11000R) この街、相変わらず居心地がよい。
 
 

<アルメニア教会でマンダナさんと出会う>

イスファハン2日目。今日はすでに1月4日。あさって帰国か。イスファハンには実質2日間しかいられないのだ。
金曜日だったので、午前中はモスクには行かず、アルメニア教会のあるジョルファ地区へ。

ベツレヘム教会はなにやらセレモニーをやっていてダメ。裏のアルメニア美術館&アルメニア教会へ。

アルメニア正教というのは、キリスト教でも古い一派で、なんといってもその芸術が美しい。
ちょうどイスラム芸術の建築やコーランの装飾などで見られるテキスタイルの構成美と、キリスト教芸術の絵画や華やかさをミックスしたような女の子ならキャ〜!とだれでも喜びそうな美しい芸術である。とくに教会のキレイさは圧巻!何度いっても感動する。あぁもう〜。見せてあげたい!

そしてアルメニア文字がまたキュート。小さな美術館であるが、美しい手書きのアルメニア文字の聖書などがたくさん並んでいて楽しい。

アルメニア国外のアルメニア教のコミュニティーというと、代表的なものにイスファハン、エルサレム、モロッコがあり
偶然にも私はその3箇所とも行ったことがある。美術館もあって、それぞれにかわいらしく、楽しいアルメニア文化を楽しむことができる。
アルメニア教徒はある時迫害を受け、祖国を追われ、多数が虐殺された。20世紀にも大規模な虐殺があり館内ではその時の映像ビデオを流しつづけていた。

「あ”、痛〜っ!」
こじんまりした美術館。2階に上がる階段をの最後の段で、私はいきなり思いっきりコケてしまった!
びっくりしてスタッフの美人のお姉さんが駆け寄ってきてくれる。
「大丈夫!?ここに座って! ・・・ね。落ち着いて。お茶を持ってきてあげるから。待っててね。」
目がうつろになってたのでびっくりしたのだろう、お姉さんは思いやり最上級!の対応。

ただ転んだだけなので普通ならすぐに起き上がるのだが、痛い・・・・・・・・ほんとに。
実はタカブの田舎町でやっぱりよそ見をしていてコケてひざ小僧の同じところを打ったのだ。
まったく私はいつでも足元をみてない。おばあさんになったらぜ〜ったい骨折って寝たきりになっちゃいそう。

お姉さんがお茶とチョコレートを持ってきてくれた。「ゆっくりしてね。」と。
優しい。でも、ちょっと恥ずかしい。(笑)

隣の教会に入るとあぁ、キレイ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。
全面余すところなく美しくデザインされた絵画で彩られている。天使が飛び交い、天井は美しいタイル。行ってみてほしいなぁ。

外に出て歩き始めようとしたら、
「あなたは日本人ですか?」
いきなりかわいいイラン人女性に日本語で話し掛けられる。
上手な日本語。

え?!なんで?と思って話を聞いてみると
一年くらい前に一年間、ご主人が研究の関係で熊本にいて、一生懸命日本語を勉強したのだそう。
「私、日本の方とお話できてすごいうれしいです〜!熊本にいたときにとてもみなさん親切にしてくれて。私日本大好きです。」
と、本当に心からうれしそうにしている。なんとも魅力的な女性。
「よかったら今日、息子の1歳のバースデイパーティーやるんですけど、一緒にいかがですか?是非きてください。主人も喜びます。」

って誘われるから、あなたがそんなに喜ぶならば・・・・・と、お言葉に甘えることに。
「パーティーは夜9時ですけど、私の家教えますから、すぐそこなんで来てください。」
というわけでついていくと、豪華なマンションの一室。
広い家!大きい絨毯!豪華だわぁ。

マンダナさんはスカーフを取ると、めちゃめちゃかわいい。ショートカットにメッシュなんかいれちゃって。
一才のマーシー君はかわいいし、なんだか楽しくなりそうな予感。

「それでは夜9時に」、と約束して再び街へ。
 
 

<王の広場>

昼過ぎ。
金曜の午前中は礼拝のため王の広場は閉鎖になる。
イスラム建築の最高傑作といわれる王のモスクをはじめ、美しいモスクや宮殿がある王の広場はまだ礼拝中で人々が導師の言葉に合わせ一斉にお祈りをしている。
そこは触れてはいけない聖域。

しばらく眺め、ご飯を食べにいったん外へ。
戻ると礼拝の人も散り、青い空の下、みんな広場の芝生でお弁当を食べたり、思い思いに過ごしている。
今日は天気もよく、キレイな写真が撮れそう!イラン行きを前に、カメラを買い換えたのだ。

噴水のある池に移ったモスクの屋根。逆光にやわらかく浮かぶ王のモスク。
そこは私の一番好きな場所。
そこにいるだけで心がすぅーっとする。

さぁて、どこに入ろうか!
まずは6年前に改修中で入れなかったアリーガプ宮殿に10年ぶりに入る。

うっわ〜かっわいー!!!アリーガプ宮殿ってこんなにかわいかったっけ?!
ピンク色の鍾乳石飾りのドームや、かわいく壺の形に穴をあけた音楽堂。見晴らしもよくって最高!

次はロトフォラーモスク。
黄色い屋根の上品なモスクは静かでこじんまりしていて、私も大好き。
中に入ってモザイクの屋根を見上げる。
「キレイ・・・・・・・・どうしてこんなにキレイなんだろう。」座り込んでしばし天井を眺める。

そして王のモスク。

全面青の、でもちょっとずつ違うデザインのタイルに彩られた特別な空間。
私が高校生のとき、偶然本で写真をみて、言い表せないような感動を受けた。
そしてどうしようもなく惹かれてイスラム世界の勉強をしようと決めた。私のオリジンがこの場所である。

以来私の中での「最高の美」が常にこのモスクであり、世界で一番好きな場所、心のふるさとである。私が「青」が好きなのも、このモスクの色が青だからなのだ。

「キレイ・・・・・・。」
涙がでてくるほどキレイ。ホントにキレイ。
私はここに来ると神がかっちゃうのか、もうふっと吸い込まれてふわっと気持ちよくなってしまうのだ。

そのまましばらくそこにいた。写真を撮ったり絵葉書書いたりしながら。

出てくると、絨毯屋さんに
「ずいぶん長くいたね。2時間もいる人はそういないよ」
とにこっと笑われた。

「え、2時間もいたの?そんなにいた気はしないけどな。」
私も笑う。

この四角い広場は民芸品屋さんが取り囲んでいて、日本人の私はモテモテ。何人にも声をかけられる。
これがなかなか上手なのだ。
すぐに「見ていって!」とか「絨毯買って!」とは切り出さず、さりげなく雑談。最後に「僕は絨毯屋なんだけど、良かったら見に来て。」とくる。断ってもすっと引き下がる。「あなたのくつろいだ時間を邪魔しちゃったね。よい旅を。またあとで寄ってね。」 と。

ま、私が構えずにおしゃべりするからってのもあるとは思うけど。普通の日本人観光客ならシッシッとばかりに嫌な顔をするか、怖がってあまり話をしないか、逆にすごく盛り上がっちゃうか、ってところだろうから。

ある一人の絨毯屋のおじさんに会う。名前はイラジさん。
顔ははっきりいって田舎くさいけど、結構話は面白い。彼の絨毯屋でお茶を飲みながら彼が載った日本の雑誌をみせてもらったり、ご自慢のHPをみせてもらったり。
ついでに私のHPもチェック。なんと日本語ソフトが入っているので(いまどきの商売人は違うね)またしても「今、絨毯屋さんで〜す!」などと自分の掲示板に書き込み。しかも日本語で。
時代はもう、途方もなくススンデイルのだよ。

さぁ、パーティーの時間に間に合わない!と宿に急ぐと、若い学生さんにナンパ(?)される。日本語で「こんにちは。」って言って、そのあと、一生懸命私をお茶に誘う。若くてまじめそうでかわいいからムゲにもできず、一緒にマーシー君の誕生日プレゼントを選んでもらい、Eメールを聞いて別れる。
がんばれ!若者!私に年を聞くんじゃない!!!(笑)

マーシー君に買ったのはウサギのおもちゃ。ぜんまいを巻くとカタカタ跳ねるの。かわいー。
男の子だから車とかがいいんじゃない?といわれたけど、1歳だし、と思って。
そして身支度してマンダナさんの家へ。
 
 

<バースデイパーティー>

ピンポーン!とやって出てきたのは、なんだか一瞬誰か判らなかったくらいおしゃれしたマンダナさん。きっれーぃ!
さすがハイソなお宅のパーティーね。親戚方も上品でハイソだわぁ。

部屋もきれいに片づいて、それぞれ椅子に座ってみんなとゆっくりといろんな話をする。マンダナさんは忙しくてあまり話はできないけど。

ご主人のザイイドさんは小児科のお医者さん。半年間イラン政府の奨学金で薬学の博士号を取るため熊本大学に。そしてその後半年間は熊本県の奨学金で研究を続行したエリート。 でもそうは見えないくらい普通に明るくて楽しい人。
奥さんのマンダナさんは私と同じ年。なんと熊本にいるときに妊娠して帰ってきてマーシー君が生まれた。誕生日はなんと2001年1月1日!新世紀ベイビーなのだ!

みんなでご飯食べてからしばらくすると、ケーキ入刀!のお時間。
かわいいミッキーの絵のついたケーキに「1」という形の大きなろうそくを立て、1歳の子は吹き消せないのでいとこの子供たちが代わりに吹き消す。それから親子3人でケーキに入刀してみんなでケーキを食べる。

それから、プレゼントお披露目!
順番にみんなが持ち寄ったプレゼントをあけて、あげた人と記念撮影するんだけど、これがすごい!
首も腰も腕も動いてががががーーーっ!と攻撃しちゃったりする、見たこともないようなハイテクなロボットのおもちゃや、走りながら自動的に屋根が閉じたり開いたりするオープンカー、かっこいいリモコン自動車、などなど。。。
日本だってこんなすごいおもちゃ見たことないよ。だいたいまだ1歳じゃ遊べないっつーの。

マーシー君はいろんなおもちゃが飛び出すたびに興味しんしん。それより5歳前後の子供たちが喜んじゃって!
私のぴょんぴょこウサギ君も、けっこう興味を示してくれました。
よかったー。ダサいぬいぐるみとか安っぽいミニカーじゃ恥かくところだったわ。私的には奮発したつもりなんで。

ついでに出た出た!!!!イラン人お決まりダンス!!!
もう、プレゼント開ける度に贈った人がみんなの前で踊らなきゃいけないの!
私もじいちゃんに引っ張り出されて踊らされて・・・・・・。もう、どうにでもしてくれいっ!

みんな音楽が鳴り出すとハイソな方々でも踊りの虫がむずむずするらしく、そりゃぁ楽しそうに踊るわけさ。
なんだかめちゃめちゃ盛り上がって時計は11時半・・・・・・・。
楽しいねー。これだから「お宅訪問」はやめられない。

みんなが引けて、私だけが最後に残ってまた少しアルバムをみたり、話をする。
お世話になった大学の教授にお土産をもっていって。と頼まれたり。
結局ホテルに戻ったのは1時すぎ。電話連絡はしていたとはいえ、ホテルの人寝てるところ起こされてかわいそうだったな・・・・。

今度来る時は、ここにこよう。みんなも来年またおいで!と言ってくれてるし・・・・
やっぱり私の前世はイラン人・・・・・・。
 
 

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