Decisive Battle



「………み…水…」
ベッドの中から手をだし、直ぐ横にある水差しに手を伸ばすのだがうまく届かない。
危なっかしい手つきに、急いで水差しを取りグラスに水を入れると、アリューシャを抱き起した。
「ほら、水・・・取ってやるから遠慮なく言え」
「………すみません、貴方に迷惑をかけてしまって」
擦れた声で青白い顔しながら申し訳なさそうにこちらを見る。
「身内だろ気にすんな、ったくその生真面目な所誰に似たんだか…」
頭を撫で、ついでに額の熱を測りベッドに再び寝かせた。
「まだ…熱下がらないな…」
氷水で絞ったタオルを額の上に乗せてやると、発汗して体力を消耗しているのか眠りに落ちそうになる。
(奴の事だ…前の…足を怪我した時の一件もあるし、止めてもくるから…眠る前に頼まないと…)
「おじいさま……ダグリスに…うつしたく無いので、部屋に来るのを……止めてもらえますか?」
眠る間際にアリューシャがかすれた声で頼んだ。
(ダグリスって……ああ、ダグダの曾孫か)
「ん、わかった…心配しないでいい止めてやるから、今は何も考えず寝てろ」
何度かタオルを乗せ換え、汗を拭うと多少楽になったのか、先程よりは安定しているように見える。
「氷…溶けてきたな……換えに行くか」
アリューシャが目を覚まさないよう静かに部屋を出て、氷を求め食堂に向かった。



(アリューシャ大丈夫かな…)
酷い風邪を引いたらしく、もう3日も休んでいた。
初日に部屋に送るとき、絶対来るなと言い含められた。
流石に3日目になると心配になって、授業のノートと僅かばかりのお見舞いを持ってアリューシャの部屋に向かった。
ドアの前でノックをしようとしたその時、後ろから声が掛かった。
「その部屋は本人たっての希望で面会謝絶中だ」
振り向くと、器に氷水を入れた銀髪緑眼の若者がそこに居る。
「ええと…貴方は…誰ですか?」
自分の知らない人物がアリューシャの部屋に出入りしている事も気に入らない。
それよりなにより、相手の品定めのような目線を上から貰い何とも気分が悪い。
「おーおー、嫉妬心丸出しだなダグリス、そういうのは顔にださない方がいい」
言外に子供だと言われているようで、更に腹が立つ。
「余計なお世話です。見ず知らずの方に呼び捨て去れるいわれはありませんが」
巧妙に隠したつもりだった態度をあっさり見破られ、素の態度で相手に睨む。
「スマンスマン…茶化すつもりはねーよ、ブレストだ。」
「貴方が…随分と若作りですね、一寸予想外なので吃驚しました。」
確かに、パーツの所々は似ているのだが口調は粗雑で、アリューシャと血縁続きなのかと疑いたい。
「どう予想外なんだか…まあ、いいや」
「で、アリューシャの容態はどうなんですか?」
「熱が引かない…まあ弱ってるところに誰かさんが気づかず無理させたみたいだしー?そこに風邪がくりゃ下がるもんも下がらんわな」
ニヤニヤしながらこちらをみる。
(この…クソジジイ……)
殴りたい気持ちを抑えて当初の目的を果たすべく、ブレストに願い出た。
「アリューシャに会いたいのですが」
「駄目だ、うちの可愛い孫はお前に風邪をうつしたくないんだと、健気だよなぁ……という訳で断る」
そんなアリューシャの発言を聞いてしまったら、是が非でも会いたかった。
必死に食い下がる事5分、根負けしたブレストが一つ提案した。
「しょうがねーな、俺から1本取ったら会わしてやるよ、腕に自信あるなら簡単だろう?流石にここじゃ狭いから外で勝負かな」
「望むところです」
「一寸待ってろアリューシャの、タオル交換してくるから」

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