里山仕事・しょんた塾

しょんただより Vol.31



寒い夏が終わり残暑も遠のいてススキが穂を出しています。秋蒔き野菜の間引菜がおいしい季節。山栗が落ちて空の蒼さと鰯雲の輝きの対照が映え、里山仕事のシーズンが開幕。隣の田んぼのヨシはすっかり刈られて塚になりました。

もくじ

■ 10月4日5日 樵の会中川根間伐合宿
■ 10月12日(日) 正しい草刈りと束ね方
■ 11月09日(日) 諏訪原城址間伐大作戦
■ 12月14日(日) 牧ノ原公園のササ刈り
■ 正月から向こうは陽だまりで除伐など


■ 10月4日5日 樵の会中川根間伐合宿 ■■■■■■■■■■■■■■■■■■■

協同企画も多い盟友団体「樵の会」シーズン幕開けの恒例(今年は第3回)の間伐作業合宿(日帰り参加・通い参加も可)が行われます。雨天決行の由。例年しょんた塾のチェンソーも大活躍します。

場所は中川根町文沢。集合9時下泉八千代橋を渡ってすぐ右折の町道脇で点呼。初日午前はチェンソー実技研修、午後から選木、伐倒作業。宿泊は文沢公民館寝袋持参必須。こだわりの酒、こだわりの食材、キャンプ用品持参歓迎。

大石さん(TEL/FAX:054-644-2046 e-mail:o-yukio@thn.ne.jp) に9月26日までに申込む。宿泊の有無明記のこと。宿泊参加の場合3千円の参加費。

樵の会は9月14日静岡ツインメッセで行われた静岡森づくりの祭典にて「静岡森づくり大賞・森を愛する人部門」の知事褒賞を受けました。植樹祭に代えて「祭典」になり昨年から設けられた「森を愛する人部門」。しょんた塾もいただいた褒賞受賞にエールを送ります。


■ 10月12日(日) 正しい草刈りと束ね方 ■■■■■■■■■■■■■■■■■■■

ただの草刈りではあまり人気がなさそうで、少し「里山仕事」らしいヒネリをということから題して「正しい草刈りと束ね方の講習会」の企画です。

「榛原」は実は「灰原」ではないか、という説があるそうです。つまり焼畑農法がかなりの期間続いていたことを表している、水の得られない牧ノ原ではそのような粗放的な耕作が主流だった、というのです。牧ノ原の何処からも見える粟ヶ岳の名も焼畑の作物と考えると自然なのです。牧ノ原の「黒ボク」の組成をプラントオパール分析すると、ススキがその主要部分を構成する、という話を聞いたことがあります。草刈りは、縄文時代から続いた人びとの営為、焼畑跡が何時からか刈草の入会地に転換してゆき、刈草が田と畑とその土そして人びとを支えた象徴的な技術体系である、という訳です。

隣の田んぼの塚もそうですが畑に入れる草はどんなものでもいいわけではありません。ススキを筆頭にランクがあり、駄草とでも言うべきセイタカアワダチソウだのトビツキだのママコノシリヌグイだのが紛れ込まないように取り分けなければなりません。草刈り仕事の第一はこれらの駄草を見分け正しい敷込み草だけを束ねることなのです。

きちんと塚立ちにされた刈草を良く見ると三重構造になっていることが分かります。塚を構成する草束は概ね「軽くひと抱え」直径30cm20kg位のサイズで縄かヒモ時には何かの蔓で結束されています。このひと抱えの束はそれぞれ10cmくらいの「ひと握り」サイズを数束たばねられたもので、小束の結束は刈草そのものか数本の藁です。束(タバと読まないでツカと読む)のサイズや結束材の材質は後の利用法も含めていくつかの意味があります。これらを知って「正しい」束ね方を技術として伝承する、これが企画の二つ目の中身です。

某氏の説によると「近頃は茶畑にいれる草もカッターで刻んでしまうことが多くて、長いままを塚立ちにして、そのまま敷き込むやり方を続けているのは神谷城くらいになってきた」そうで、伝統的な手法が途絶える前にやり方を教えといてもらお、という狙いもあるのです。そんなこともあって講師は地元の神谷城から、謝礼は実習結果の刈草を講師所有の茶畑で使っていただくことにしようかな、と考えています。

2年ほど前から休耕田の植生をササからススキに転換させる試みを行って来ました。専ら刈るタイミングと残す植生の選択だけで試行してきたのですが、うまく行ったところと駄草ばっかりになってしまったところとがモザイク状態。見かねて教えて下さる人も出てきましたが、10月という時期はススキを刈るにも「正しい」か「ちょっと遅い」くらいのタイミングのようです。刈ったススキの株を利用してササ土手を「草種転換」する手法も今回初挑戦してみようと思います。

機械でばさばさ刈ってると、たいがい切り裂いた後から発見、というパターンになるのですが、手刈りでススキを刈る愉しみのひとつが「カヤネズミの巣」。さて今年は何コ見つかるか。連中こともあろうにしょんたの貴婦人ノハナショウブの群落のすぐ脇にも巣を掛けてくれています。こいつは「保存版」にすることにしますので、見たことのない人には、ササっ原に無くてススキっ原か田んぼにだけ巣がける理由も併せてご案内いたしましょう。

鎌は手持ちのものがあれば持参下さい。手持ちが無い人は事前に購入するのは止めたほうが良いでしょう。当日は鎌の選び方、研ぎ方から解説します。しょんた塾の備品10丁でやってみて、その上で目的に合わせて買ったほうが無駄がありません。

 


■ 11月09日(日) 諏訪原城址間伐大作戦 ■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■

今年で4回目になります。今年から始まった「秋の森づくり県民大作戦」協賛事業として登録しました。静岡県建築士協会静岡市支部青年部から20数名の助っ人の申出もあり盛会になりそうです。概要は以下。

主   催:特定非営利活動法人 里山仕事・しょんた塾
共催・協力:樵の会(技術指導)
後   援:金谷町、金谷町教育委員会(予定)

実施 時期:11月9日(日)午前9時から午後3時
行事の概要;諏訪原城址の「馬場跡」「乾曲輪」の約30年生の杉と檜林の間伐作業。諏訪原城は戦国末期に武田氏が築いた遠州を押さえる野戦城砦。学術的に貴重で国定史蹟に指定され、金谷町が順次買い上げて町有地になっています。買い上げ以前に植えられた植林地が放置され間伐適期を過ぎつつあります。密生した檜で林床は真っ暗な状態。間伐の斧を入れて成育環境を改善し、城址
を訪れる人びとに心地よい空間を創りだすことが目的です。未経験者も指導しますので遠慮は無用です。9時の集合場所は城址入口の駐車場。作業のできる服装しっかりした足ごしらえで、昼食と飲料水、手持ちの道具を持参下さい。道具は貸し出しもします。

 募集期間:11月7日(金)まで
 応募方法:ハガキまたはFAXで以下まで申し込む
      姓名、年齢、住所、電話番号、林業作業経験の有無を記入のこと
〒428-0026 榛原郡金谷町本町2020−1 里山仕事・しょんた塾
  FAX:0547−47−0051 e-mail:pop01298@mail.wbs.ne.jp

以上の内容でチラシを制作し、金谷町内には、新聞折り込みで全戸配付予定。しょんたの会員も、班編成の都合上、あらかじめ申込みをお願いいたします。

町有地への買い上げが着々と進み、町有地となった林地、農地のいずれも、どのように管理していくかが今後の課題になってくると思われます。遺構を保存するために地面以下には手を付けられないまとまった公有地、というわけですから、整備も管理もそれなりの慎重さが望まれます。おかしな「整備」は見識が疑われ、顰蹙を買うことにもなりかねません。ブンカ程度が問われます。

「天守閣のあるお城」などというバカげた構想は論外としても、三島市の山中城址のように、ブルかユンボを振るったアトであるかのような直線的な土工仕上、ゴルフ場並の芝生、というのも随分妙なモノ。「ホントに遺構の復元?」という疑問に加えて管理コストに思いおよび、如何にも「ハコモノ行政」。造園業者に払う管理費を削減するために「市民ボランティアで城址の整備を」なんて言われてもソッポを向きたくなろうというもの。

静岡県植樹祭で大きく整備された大代地区のわっぱ沢は、家族連れのバーベキュー客などには好適でも「水辺環境」の整備としては少々「やり過ぎ」もしくは「半端過ぎ」という批判があります。「お庭みたい」「砂防堰堤を自然石で覆えばイイという発想が貧しい」など結構シンラツ。加えて、植樹された木々が地域の植生や育林思想と全く無関係に「好み」で選ばれており、植樹跡の林内には所々に奇妙な樹種が植わっていて、マンネリイベントの植樹祭の象徴などと酷評する向きもある。

ところで、この植樹祭の関連整備で、金谷町のお宝とでも言うべき「誇るべき無類の遺産」が残されていることを知る人は少ない。通常のわっぱ沢への入り込みルートからはいちばん奥に位置し、急な斜面を20分ほど掛けて登らなければならないために、ここまで来る人はほとんどいないという尾根沿いの数町歩。実はクルマでのアクセスルートもあるのだが随分遠回りのため知られていないのとノコノコ入り込むとスレ違えなくて茶畑にいく農耕車両の迷惑でもある。ここに、牧ノ原公園整備の項に後述する「金木山(カネギヤマ)」の典型というべき「雑木林」「落葉広葉樹林」正確にはコナラ林が整備されている。多少継続的な手が入っていて、春の芽吹きの候、どこまでも明るい黄葉の季節、林床に落ち葉が散り敷き林冠が完全に抜けた小春日和、などそれぞれに涙が出るくらい美しい山です。

お寺の山だったこともあって拡大造林の波も届かなかった、という事情なのかもしれませんが、ともかく遷移が進んで照葉樹林化するか、植林された針葉樹林かしかない県中部の植生からは非常に珍しい存在。潜在的には適切な「更新」つまり伐り出しをどのように行っていくか、という問題がありますが、エネルギー革命(燃料の石油化)の遺産、見本林としてもっと知られてよいモノと思われます。

閑話休題、があまりに長くなりましたが、諏訪原城址も、アクセスに優れている点、地形、逆の意味で都合のいい開発への制約などを考慮すると、全体をある程度ゾーニングした上で、主要部分を雑木林や草原として整備することが望ましいものと思われます。

かつての「里山」つまり薪炭林だった明るい落葉広葉樹林、ワラビ、若菜摘みの野であり緑肥の供給源だった草刈り場の草原、に遷移・保全していくこと。部分には意識的に整備を遅らせアケビやフジの蔓の採取も可能、山芋掘りも許可されるゾーン、北向き斜面にはカタクリもあってよい、南向き斜面にはショウジョウバカマも、カンアオイ(ギフチョウの食草)向きの環境もしつらえる、といった具合。整備するプロセスと整備後の人びとの「入り込み」の両面でリクリエーションの「場」としていくことが最も適切ではないでしょうか。

今年で4回目という実績も踏まえ、自治体合併前にということも意識して、そろそろ諏訪原城址整備計画の提言などもしていこうか、というタイミングでもあるのです。


■ 12月14日(日) 牧ノ原公園のササ刈り ■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■

昨年から始めて今年で2回目。諏訪原城址の間伐と共に町財政から「謝礼」をいただく事業になりました。以前からカタクリの開花時に案内をなさっていた「野の花の会」の会員さんたちとの共同作業です。

そもそも金谷のような温暖の地にカタクリが自生しているのは極めて「奇妙」なことです。カタクリは本来寒冷地の植物で、静岡県内でも他の自生地は長野県に接する水窪町のみ。公園のフェンス内の群落のほかにもいくつか秘密の自生地がありますが、どれも全て北向き斜面にあるのは偶然ではありません。天然記念物に指定されて保護されるようになる以前に、地域的な気候と植生からするならとっくに照葉樹林に移行し、消え去っているはずの存在なのです。

牧ノ原が今のような「全面茶畑」状態になり、牧ノ原のいわゆる「肩」にあたる河岸段丘崖の斜面が今のようなスギ、ヒノキの人工林になったのは戦後、つまりこの4,50年間のことです。何人かの年寄りに伺うと戦前の「原」は茶畑とそれ以外の畑作作物や養蚕用の桑畑の混在状態で「肩」の山は茶揉み用の燃料炭を焼く材料にする「カナギ(金木)山」だったといいます。金谷駅に下ろされた石炭を「原」を越えて背負って運んだこと、「これでやっと炭焼きの苦労から解放される」と思ったこと、それがすぐに重油に代わりトラックで運ばれるようになったこと、みいーんな戦争から帰ってきてからのことだっけ、と昔の炭焼窯の跡で話してくれたのは85歳になる相談役。煮炊きの焚き付け
には、おなご衆がしょんたまで篭を背負って「ゴカキ(松葉を掻いて集めること)」に来たもの、秋にはマツタケもいっぱい出た、そうです。

常葉大学の山田辰美教授の指摘では、浮世絵に描かれた沿道の山の姿から、東海道を往来する旅客人口を含めた燃料需要を賄うための薪炭の伐り出し量が膨大で周辺はほとんどハゲ山状態だったと推定されています。江戸の薪炭を賄ったのは武蔵野も八王子周辺まで拡がり、名古屋でも木曾のすぐ手前から中馬街道を通って供給されていたことを考えると、森林収奪の激しさが想像できるというものです。

森林収奪は、木質部分だけではなく、林床から草を刈り出し、落ち葉を掻きだし農地に供給する、つまりありとあらゆる有機物を林外に持ち出す形で行われてきました。あまりに貧栄養状態の林地から、周期的な薪炭向けの伐り出しを行う場合には、生産力、萌芽力の高い落葉広葉樹が優越することになっていたはずで、落葉期には林床に燦々と陽が入ったでしょう。短い期間に集中的に光合成した養分を地下茎に貯えて地上部を枯れ隠してしまう山芋とカタクリだけが、人間どもの地上の収奪から身を守って来ることができた、という訳。逆に人間の側からするとカタクリとヒガンバナは、ドングリや栃の実と同様に縄文以来の「水晒し」技法でアク(渋)抜きできる最後の救荒作物。飢饉に備えてむしろ積極的に残してきた時代もあったかと思われます。


「天然記念物」の指定理由が単に「珍しい」からではあまりにお粗末。ここにカタクリが残っている理由そのもの、篤実に労働を重ねてきた人びとの営為にこそ価値があること、こんなふうに考えると、このササ刈りはとっても名誉なことに思えてくるのです。

集合は9時牧ノ原公園。資材搬送車以外は「お茶の郷」駐車場にお願いします。
8時半に集合可能な篤志には、刈笹を刻むためのカッターを取りに行っていただきます。

 


■ 正月から向こうは陽だまりで除伐など ■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■

1月11日(日) しょんた:草刈り・除間伐・枝打ち
2月08日(日) しょんた:草刈り・除間伐・枝打ち
3月14日(日) しょんた:草刈り・除間伐・枝打ち
4月04日(日) しょんた塾 第7回 惣寄合

1月の予定は、前二つの間伐・笹刈の雨天順延時の予備日にもなります。

第二日曜を定例活動日に設定しています。いずれも、基本的に9時現地集合。
*印の外部活動以外は参加確認なし、来る人拒まず。やることはその場の都合や天候から山の状態で臨機に変ります。他の日に何かやりたい、活動日にやって欲しいことがある、などは遠慮なく申し出て下さい。ただ山を眺めてぼーっとしたい、なんてのも歓迎です。

編集 特定非営利活動法人 里山仕事・しょんた塾

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