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「まぁ、そりゃそうだろうな。ただ顕微鏡の外側眺めに来る奴はいないよな。」
──二人ちょっとムッとなるがあまり気にしない──
「あの〜実は線がどんな風に引けているか見てみたいんです。」
「線?何の?」
「え〜とですね、スライドガラスをスプレーで黒く塗ってそれをカミソリで傷をつけてみたんです。で、それがどんなになっているかを見てみたいんです。」
「それだったらルーペでいいじゃないかなぁ。ちょっと貸してごらん。」

この会話の相手が他ならぬ後藤純一先生(ジュンちゃん)だったのでした。生物科へ行く前は谷田沢先生と話をするつもりだったのですが 谷田沢先生は何かお仕事を一生懸命されていらっしゃった。それで暇な後藤先生が彼らの応対をして下さったのでした。ここでジュンちゃん、何も言わずに顕微鏡を貸せばそれで済んだのに彼らの線があまりにもひどいので、つい言わなくてもいい事まで言ってしまった。

「全然駄目だね。全くお話にならないよ。」
「……」
「本当によくまぁ、こんな線を引いたもんだよ。」
「……」
「これで一体何をしようって言うの?」
「あの〜、ヤングの干渉実験を…」
「実験?こんなものを実験に使おうっていうの?」
「ええ、だって干渉はちゃんとみえんるんですよ。」
「いくら見えたってこんなもの使って出て来るデーターなんて どう仕様もないんじゃないの。」
「……」
「いいかい、実験の成功、不成功は実験準備にほとんど かかっているんだよ。」
「……」

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