なくなった彼らはもっと実験の精度を高めようと考えた。まず改良をしようとしたのが単スリット。彼らは何故かフィルムのネガを使うのが満足できなかった。(といっても藤田氏は別。彼は元来、なまけ者なのです。)そこでいろいろ考えて‘竹を割ったような性格’などと言うので竹は真直ぐに割れるのではないかと思い出した。そしてそれが真直ぐに割れたら単スリットに使えるのでは?と思う様になり出した。思い出したらやってみるのが彼らの性分。そこでさっそく竹を割ってみたところがその割れ方、遠くから見れば真直ぐであろうけれども、近くから見ればギーザギザ。それでこれは使い物にならないだろうと思ったが、ところがこれが中々役に立ったから不思議。でも実験の精度を高めるには何の役に立たない。そこで遠藤氏、カミソリの刃を使う事を考えた。これは非常に良いやり方であった為、後の実験の祭、この単スリットを使う事になったのであります。次に改良を試みたのは複スリット。これは改良というよりもいろいろな試作品を考えだした。
「ねェねェ、複スリットで干渉が出来るんでしょう。だったら複スリットを二つ並べたら干渉の干渉が見えないかなぁ。」──と藤田氏の提案──
「干渉の干渉か……ひょっとしたら見えるかもしれないなぁ。そうだ、これを複々スリットと命名しよう。」──と他の二人の賛成を得る──
「複スリットひとつで縦の干渉縞でしょう。これに横に複スリットをつけ加えたら横の干渉も見えて十字の干渉縞が見えるようにならないかなぁ。」──と今度は向山氏──
「うん、これも何か出来そうだなぁ。十字スリットだなぁ、よし、やってみよう。」