それに、このままほったらかすのは何か心残りで、いやなんだよ。」
藤田氏も向山氏も最初は全く乗り気でなかった。が、悲しい性(さが)とでも言うのか、元来の野次馬根性の為と言うか、何時の間にか彼らも遠藤氏と一緒に理論を考えるのでした。この理論の形式は遠藤氏と向山氏が議論をし、それを訳が分からず聞いているのが藤田氏、という形で連日連夜(夜は夢の中ですが)喧喧囂々と激論が展開されるのでした。この議論の結果も何かやっと出て来た様です。(この結論は論文で見て下さい)理論も完成されたので彼らはもう一度波長を測定する事にしたのであります。又もや正確を期す為の工夫をいろいろと考えるのでした。以前使っていたスクリーンは木の枠をつくってそれにトレーシングペーパーを貼りつけていたものだったのですがそれだと波長測定の際、印をつける時に鉛筆を押す力によって少しずれが生じてしまうのです。ですから鉛筆で押しても動かない様な工夫をしなくてはならなかったのです。そこで考えた方法はセルロイドの板をスクリーン面に取り付けるというもの。遠藤氏と藤田氏はある日曜日、セルロイド板を買おうと文房具店へと行きましたが置いてないと言う話。
“ひょっとしたら向かいの店にあるんじゃないかなぁ。”
という店の人の話に従って向かいの店へと行くのでした。向かいの店で聞いてみますとアクリル板を使えばとの話。それで工場の方へ行けば彼らの欲しい大きさの寸法に切ってくれると言うので彼らは工場の方へと向かって行きました。
「あの……アクリル板ってありますか?それが欲いんですけれど。」
「どれ位の大きさなの。」
「え……と、20cmの30cm位の奴が10枚もあれば。」
「20cmの30cmって言うと1枚いくらだい?」