日は旺文社模擬試験の数学のテストが行なわれる日なので彼らは困ってしまいました。そして相談の結果、遠藤氏一人が発表会に臨む事になりました。発表にはスライドを沢山使って説明をやるとのこと。2〜3日かけて実験器具や説明用の図の撮影などをやりました。そして現像の早く出来るのを祈っているのでした。又、藤田氏は論文を書いているのでしたが、彼の書く文章は余分な修飾が多くてやたら長くなってしまうので他の二人に短くしろ、と言われ憤慨しながらも一生懸命原稿を削っているのでした。その彼の苦労の結晶もなんとか出来上がりました。そしてそれを遠藤氏に渡したのです。けれども藤田氏が一生懸命削ったのですが、遠藤氏にはまだ満足が行かない。それで遠藤氏は藤田氏の論文を見ては手直しをするのでした。そんな日が幾日か経ったある日の事。彼らにとっては高校生活最後の楽しい遠足があったのでした。確かに遠足は遠藤氏、向山氏にとっては楽しかった。ところが最愛なる気違いの遠藤氏にとっては非常に“血の池地獄”“針山地獄”にも匹敵する様な苦しみ以外の何ものでもなかった。と言うのは発表会がもう間近かなのにまだ論文が完成していない。だから遠足どころの騒ぎじゃない。そこで彼は遠足に行きながら論文の製作をする事にした。ところが座った座席が偶然と言うか、わざとと言うか遠藤氏と藤田氏は前後になった。そこで遠藤氏
「藤田、お前どうせ暇だろう。この論文もう少し削れや。」
「えぇ……でも俺、この本(『技巧的生活』吉行淳之介)読みたいんだけどなぁ……」
「まぁ、そんなもんいいじゃないか。こっちはすごく焦っているんだぜ。」
やはり遠藤氏一人に任せ切りでいたので若干の負目があったのでやる事になってしまったのであっ