東京芝浦電気株式会社 総合研究所 電子部品研究所
水野秀一様
手紙拝見しました。返事が遅くなりました。どうも文面から問題点がはっきりしませんが(特に“ロスが多い”の意味が分からない)多分波長分散がとれなくて十分な波長分解能がとれないという意味と思い意見をのべてみます。
実験1
1000本/cmの回析格子では4000Åから7000Åまでの範囲が1mの距離をとってほぼ3cmひろがると思われます。従って貴君のような方法で分解能をとるには検出器(PTr)の前にスリット(幅は可変が望ましい。)をとりつけてはいかがでしょうか。例えば1mの距離で測定するとして100Åの分解能をとるには1mmのスリットを、50Åの分解能が必要なら0.5mmのスリットをつける必要があります。
実験2.
プリズムでは貴君がのべているように波長分散が波長によってことなります。市販の分光器でも通常この点はそのままにして使っています。つまり、分散曲線を別にとり、必要なら測定したデータをこれで補正するわけです。従って、貴君の実験は“一応むり”と思います。
実験1.の方法で解決できるものと思います。なお実験1の際PTrの出力が十分でない場合は必要な増幅を行なうなり、光源を強いものにするなりの工夫が必要になるかも知れません。
筆末ながら実験の進展を祈っています。
飯田 誠之
単にスリットの実像をレンズで結ばせる場合に比べて、中間にプリズムを置いた場合にはスペクトル線すなわちスリットの実像の鮮明度が劣る。特に非点収差(astigmatism)という縦方向のピントと横方向のピントの位置のずれが目立ってくるのでこれを軽減するためにプリズム分光器では次のようにしてある。
(1)プリズムを通る光は平行光線とする。
(2)スリットはプリズムの稜に平行におく。
(3)プリズムを通る光はプリズムの稜に直角な面に平行にする。