1学期の授業録


使用教科書/『高等学校 新現代社会』第一学習社 (183・第一・現社013)

第1回 自分らしい未来に向けて〜オリエンテーション〜
今回はオリエンテーションとして、この1年間、何を学習するのかを話した。テーマは、「人間らしく(自分らしく)”豊か”に生きることを考える」である。それを、「青年期」→「憲法・政治」→「経済・労働」の順で考えていきたい。また、成績のつけ方も紹介した。今年度からはじめる新企画として「授業ノート」の説明もした。
第2回 高校生はもう大人?まだ子ども?〜青年期とは〜
キミたちは、もう大人なのだろうか?まだ子どもなのだろうか?からだの面から見れば、ほとんどの人が大人と言えるだろう。じゃあ、こころの面から見たら?この時期は心が不安定になりがちで、大人とはいえない。だから,心理学者は、「境界人」とよんだり、「モラトリアム」と言ったりした。大人になるっていうのは、実はたいへんなのだ。大人になるための準備をしっかりしよう。

八重島建二他『現代心理学』(培風館)、NHK放送文化研究所編『NHK中学生・高校生の生活と意識調査』(NHK出版)、朝日新聞学芸部編『ティーンズメール』(教育資料出版会)

第3回 悩み多き青年期〜こころの構造を読み解く〜
今回と次回フロイトの考えを紹介する。フロイトは、こころを意識・前意識・無意識に分けた。そのなかで海に浮かぶ氷山のように「無意識」の部分の占める割合がたいへん大きく、これが私たちの人格に大きな影響を与えている。私たちが自分の無意識を探る方法として、@錯誤行為、A夢、Bこころの病があるといいます。単純な言い間違えや度忘れにも意味があるのです。

八重島建二他『現代心理学』(培風館)、鎌原雅彦・竹綱誠一郎『やさしい教育心理学』(有斐閣アルマ)、NHK教育「知への旅・20世紀の伝導者・フロイト」、大坊郁夫編著『わたしそしてわれわれ ミレニアムバージョン』(北大路書房)、小此木啓吾『フロイト思想のキーワード』(講談社現代新書)

第4回 ココロを動かすエネルギーは性欲〜フロイトの場合〜
どのようにこころは発達し、人格が形成されるのだろうか? フロイトの考えを紹介した。フロイトは幼少期の経験が人格形成の上で重要であることを主張した。口唇期、肛門期、男根期、潜伏期、性器期と発達段階を分けたが、それぞれの段階で問題があると、その人の人格に大きな影響を与えるのである。

菅佐和子・高石浩一・名取琢自・高月玲子・橋本やよい『臨床心理学の世界』(有斐閣アルマ)、大坊郁夫編著『わたしそしてわれわれ ミレニアムバージョン』(北大路書房)、鈴木晶『図解雑学 フロイトの精神分析』(ナツメ社)、小此木啓吾『フロイト思想のキーワード』(講談社現代新書)

第5回 やらねばならないことがある〜エリクソンの場合〜
今の日本は非常に「豊か」である。しかし「生き辛さ」を感じ、自殺する若者も少なくない。なぜか?こころの発達という観点から、人格がどのように形作られるのか考えた。今回は、エリクソンという精神分析学者を例に取り上げた。エリクソンは、フロイトの考えをベースにし、人生最初の時期を重視しているが、幼児期の経験をのちにどのように受け取り直し、組み直すのかという視点を取り入れている。

大坊郁夫編著『わたしそしてわれわれ ミレニアムバージョン』(北大路書房)、谷冬彦・宮下一博編著『さまよえる青少年の心』(北大路書房)、斎藤環『NHK人間講座 若者の心のSOS』(日本放送出版協会)

第6回 つながりたいココロ〜青年期の友人関係〜
青年期に入ると親から離れ、その代わりに友人、とくに同性同年輩の仲間集団が力になる。またニューモデルが大きな意味をもつ。彼らの中に自分の理想像を見つけたり相談に乗ってもらったりすることは、キミたちの年代の人びとには大きな心理的意味がある。仲間集団をつくり、そこに所属し、対人関係をつくるとこはアイデンティティの確立にたいへん有益なことである。

斎藤環『NHK人間講座 若者の心のSOS』(日本放送出版協会)、斎藤環『若者のすべて ひきこもり系VSじぶん探し系』(PHP)、NHK放送文化研究所編『NHK中学生・高校生の生活と意識調査』(NHK出版)

第7回 ≪特論≫憲法って、なあに?〜憲法記念日を考える〜
憲法は何のためにあるのか?憲法はみんなが守るルールかというと、それは違う。逆に、憲法はみんなが「権力」に守らせるきまりである。それは、人びとの人権を保障するためである。これを立憲主義という。これは市民革命の成果であり、憲法は人類の歴史の英知であるといってよい。権力は暴走しがちであることは、歴史が教えてくれる。その権力に枠をあてはめたり、縛りをかけたりするのが憲法である。だから、権力にある人びとにとっては、憲法は常に「邪魔な存在」なのである。日本における改憲の大合唱は権力の側からしかきこえてこない。

浦部法穂『全訂 憲法学教室』(日本評論社)、平和憲法のメッセージ(水島朝穂さん(早大)のweb)

第8回 好きになる気持ち〜青年期の男女関係〜
異性にしても、同性にしても誰かを好きになるということは、青年期の人たちにとって人格形成の上で重大な問題である。青年(女性ももちろん含んでいます)の恋愛行動について、社会心理学的な立場からしばらく考えたい。今回は、「からくりテレビ」の昌平くんとミハヤちゃんの事例を見ながら、なぜ好きということが大事なのかを考えた。

長田雅喜「対人魅力の研究と愛の問題」『心理学評論』Vol.33、No.3、八重島建二他『現代心理学』(培風館)、松井豊『恋ごころの科学』サイエンス社

第9回 「呪縛を解いて、離陸せよ!」〜男女共同参画社会へ〜
ミスチルの曲に、「跳べ」という曲がある。この曲には自己暗示や自分を縛っている綱を解いて、離陸し、自由を掴み取れという強烈なメッセージが込められている。私たちは「女/男らしさ」という自己暗示や縛りがある。学校社会では、男の子は「女の子に勝てない」(『中日新聞』)。会社に行けば、過労死・過労自殺。定年後は、熟年離婚、離婚しなくても「産業廃棄物」とよばれる毎日。これまでの性別役割分担というのは、女性も、男性も不幸にしてきた。だからこそ、「女/男らしさ」の縛りを解いて、男女共同参画社会へと離陸しようじゃないか。

伊藤公雄『NHK人間講座 「男らしさ」という神話』(日本放送出版協会)、清水博子『新装版・夫は定年妻はストレス』(青木書店)、鹿嶋敬『男女共同参画の時代』(岩波新書)、綾小路きみまろ『有効期限の過ぎた亭主・賞味期限の切れた女房 綾小路きみまろ独演会』(PHP)、山藤章二・尾藤三柳・第一生命選『平成サラリーマン川柳傑作選@』(講談社+α文庫)

第10回 つくられた「女/男らしさ」〜「女/男らしさ」の神話〜
私たちを縛る「女/男らしさ」とは一体何なのか?それは生まれつき備わっているものなのか?これについて考えた。日本以外の社会では、男が「女性的」であったり、その逆であったりする社会もある。また同じ日本でも、中世という時代をかえりみれば、女性が生産活動や商業活動を担っている例もゴロゴロころがっていたり、男性が来客のために料理し、もてなすということもよくあった。結局、「女/男らしさ」は、その社会、文化、歴史によってつくられるのである。ボーヴォワールはこう言った。「人は女に生まれない。女になるのだ」

伊藤公雄『NHK人間講座 「男らしさ」という神話』(日本放送出版協会)、伊藤公雄『男性学入門』(作品社)、網野善彦『日本の歴史00「日本」とは何か』(講談社)、網野善彦・宮田登『歴史の中で語られてこなかったこと おんな・子供・老人からの「日本史」』(洋泉社)、網野善彦『女性の社会的地位再考』(御茶の水書房)、網野善彦『古典講読シリーズ 職人歌合』(岩波書店)、安川寿之輔『女性差別はなぜ存続するのか』(明石書店)

中間テスト
第11回 テスト返却・答え合わせ
テストの返却をしました。平均点は、26.3点(50点満点)でした。
第12回 グレー・ゾーンの<女/男>〜多様な性〜
赤ちゃんが誕生すると、「おめでとうございます!女/男の子が生まれました」と言われる。しかし中には、外性器のようすから性別の判断しにくい子どもたちが2000人に1人くらいの割合で生まれる。かれらをインターセックスという。また、身体の性とココロの性とのあいだにズレがあるトランスジェンダーと呼ばれる人びとも存在する。女と男しか性がないといわれる、この社会では、かれらは極めて生きにくい。彼らが「自分らしく」生きにくいと感じるのであれば、この社会の仕組み・あり方を見直していかねばならない。

森永康子『女らしさ・男らしさ ジェンダーを考える』(北大路書房)、山内俊雄『性の境界 からだの性とこころの性』(岩波書店)、伊藤公雄『男性学入門』(作品社)、虎井まさ衛『トランスジェンダーの時代 性同一性障害の現在』(十月舎)、日本インターセックス・イニシアティヴWEB

第13回 どうなる人口減少社会〜少子高齢社会・前編〜
先日、新聞で「出生率1.25、最低更新」ということが話題になった。2005年には初めて人口が減った。今後もこの傾向は変わらないであろう。少子高齢社会、人口減少社会の到来である。ところで、少子化が進行することは、一体何が悪いのだろうか?そして、その原因は一体何であろうか?「育児・教育コストの負担増」「仕事と育児の両立が困難」「夫の育児不参加、妻の負担増大」などという原因をみてみると、「男は仕事、女は家庭」という性別役割分担が大いに関係しているように見える。

伊藤公雄『男性学入門』(作品社)、小倉千加子『結婚の条件』(朝日新聞社)、『少子化社会白書』 WEB、『国民生活白書』WEB

第14回 どうする人口減少社会〜少子高齢社会・後編〜
前回は、「どうなる」を考えた。今回は、では「どうする」を考えたい。少子高齢社会が進めば、年金や医療、介護などの面において、人的・財政的負担が増大する。それをどのようにして埋めるのか?例えば、高齢者や外国人の活用も当然検討されるだろう。そして、最も検討されてよいのは最も数の多い女性の活用であろう。少子高齢社会への対応という面でも男女共同参画社会がいま、求められているのである。しかし、「女性の社会進出は少子化をますます進める」という思い込みがあったりして、今の日本の現状は厳しい。ますます少子化が進むであろう、という悲観的な予想を立てざるをえない。

伊藤公雄『男性学入門』(作品社)、伊藤公雄『「できない男」から「できる男」へ』(小学館)、伊藤公雄『「男女共同参画」が問いかけるもの』(インパクト出版会)、『少子化社会白書』WEB、『男女共同参画白書』WEB

第15回 村上さん、金もうけだけでいいんですか?〜企業の社会的責任〜
男女共同参画社会を進め、少子化に歯止めをかける鍵は、企業にある。次世代育成支援対策推進法の制定や育児・介護休業法の改正など、法は整備されつつある。しかし、いまだに男性の育休がマイナス査定に結びつくなど、企業の重い腰は動きそうにない。どうしたら企業を動かすことができるのだろうか?その一つの例として、CSR(企業の社会的責任)が最近注目されていることを紹介した。企業活動の基本は利益追求であるが、それはさまざまな問題をおこしてきた。そこで企業が責任ある行動をするために、CSRに取り組むことが求められている。CSRに取り組んでいる企業こそ、優秀な人材が集まり成長する。男女共同参画に取り組んでいるかどうかも、CSRの一つの観点となりつつある。いまや、金もうけだけでは企業はダメなのである。

伊藤公雄『「できない男」から「できる男」へ』(小学館)、伊藤公雄『NHK人間講座 「男らしさ」という神話』(日本放送出版協会)、『国民生活白書』WEB、日本経団連WEB、CSR Archives WEB

第16回 「専業主夫」の誕生〜男性にとっての家事労働〜
「専業主夫」になる人もいる。その中で主夫体験記を記すものもいる。が、それを読むと、ほんの数ヵ月で「かごの鳥の憂鬱」が襲ってくることが記される。自分が社会から疎外されているという悩みを抱くようになる。実は、専業主婦である女性たちも、そんな思いはかねてからしている。結婚・出産を契機に専業主婦となった女性たちも、潜在的には働きたいと考えているからだ。やはりもう性別役割分担はダメだ。だからといって、単純に男女を入れ替えただけでもダメである。男性も、女性も、広い意味での社会参加の場がなければ、息が詰まってしまう。

伊藤公雄『「できない男」から「できる男」へ』(小学館)、伊藤公雄『男性学入門』(作品社)、伊藤公雄『「男女共同参画」が問いかけるもの』(インパクト出版会)、伊藤公雄『NHK人間講座 「男らしさ」という神話』(日本放送出版協会)

第17回 ≪特論≫暴力におびえる日々…〜女性に対する暴力〜(M科、F科のみ実施)
夫や恋人など親密な関係にある、又はあった男性から女性に対して振るわれる暴力をDVという(とくに恋人関係の場合は、デートDVという)。まずは、NNNドキュメント’06「暴力におびえる日々…」から被害の実態をみた。なぜ女性は逃げないのか?なぜ男性は女性に暴力をふるうのか?「女/男らしさ」の観点から考えた。加害男性の「達成感」ということばは象徴的である。そして、最後に対策を考えた。

伊藤公雄『NHK人間講座 「男らしさ」という神話』(日本放送出版協会)、伊藤公雄『男性学入門』(作品社)、内閣府編『平成15年版 男女共同参画白書』(国立印刷局)、伊藤公雄・樹村みのり・国信潤子『女性学・男性学 ジェンダー論入門』(有斐閣アルマ)、鹿嶋敬『男女共同参画の時代』(岩波新書)、メンズセンター編『「男らしさ」から「自分らしさ」へ』かもがわブックレット

第18回 夫は定年、妻はストレス〜高齢社会・ニッポン〜
「仕事人間」であった夫がいよいよ定年退職。夫には10余年の「余生」が待っている。これまで仕事、仕事で必死だったから、定年後は家族と旅行でもしてみるかな、と思ったら、とんでもない仕打ちが待っていた…。2007年から数年、大量の退職者が出る。かれらは「男は仕事、女は家庭」という性別役割分担を背景に高度経済成長を引っ張ってきた世代である。ある意味、仕事を生きがいとし、地域とは切り離されて生きてきた男は、長い「定年後」をどのように生きていったらよいのか?

綾小路きみまろ『有効期限の過ぎた亭主 賞味期限の切れた女房 綾小路きみまろ独演会』(PHP)、伊藤公雄『「できない男」から「できる男」へ』(小学館)、伊藤公雄『NHK人間講座 「男らしさ」という神話』(日本放送出版協会)、清水博子『新装版 夫は定年妻はストレス』(青木書店)、厚生労働省WEB

第19回 炸裂する老人パワー〜高齢社会を生きる〜
前回課題とした「長い『定年後』をどのように生きていったらよいか?」に対するボクなりの回答を示したい。NHKスペシャル『世紀を越えて 老人パワー』を見ると、アメリカの事例であるが、たいへん生き生きとした高齢者が映し出されていた。例えば、80歳の「おばあちゃん」たちはチアガールをしていた。また、大学教授を定年退職した男性は、地域で防犯ボランティアをしていた。2007年、団塊世代が大量に定年退職をしはじめる。そういう人たちが地域で、社会参加する生き方が、これから求められているのである。それは自分自身のためにもなるし、地域社会のためにもなる。

伊藤公雄『「できない男」から「できる男」へ』(小学館)、伊藤公雄『NHK人間講座 「男らしさ」という神話』(日本放送出版協会)、岡村清子・長谷川倫子編『テキストブック エイジングの社会学』(日本評論社)、総務省統計局WEB、『国民生活白書』WEB、『高齢社会白書』WEB、NHKスペシャル『世紀を越えて 老人パワー』

第20回 21世紀の歩き方〜私たちの生きがい〜
1997年に結ばれた対人地雷全面禁止条約は、NGOであるICBL(地雷禁止国際キャンペーン)が各国に働きかけた結果として結ばれた条約である。そのICBLをつくるきっかけとなったのは、たった一人の女性であった。一人の女性の行動が世界を動かしたのである。日本でも、対人地雷廃止に向けた動きはあった。例えば、ボクが最近注目しているミスチルの櫻井和寿さんは、坂本龍一さんがよびかけた「地雷ZERO」キャンペーンに参加した。また彼は、その他、環境問題、貧困問題といった問題に積極的にコミットし、多くの人びとの共感を得ている。それさておき、こういうNGOやNPOというのがこれからの社会の鍵である。NGOやNPOの担い手として、団塊世代そしてキミたちのような若い人たちが期待されている。それがアイデンティティの確立につながっていくのである。

静岡平和資料館をつくる会『子どもたちに知ってほしい悪魔の兵器「対人地雷」』、.伊藤公雄『NHK人間講座 「男らしさ」という神話』(日本放送出版協会)、田中優『戦争って、環境問題と関係ないと思ってた』(岩波ブックレット)、Bank Band『沿志奏逢』、『SWITCH』2005 VOL.231、2005 VOL.239

第21回 夏期課題について
夏期課題について説明をしました。保護者の方もかかわる課題なので、計画的にこなしていこう。詳細はこちら
期末テスト

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