2学期の授業録


使用教科書/『高等学校 新現代社会 改訂版』清水書院(清水・現社517)

授業の方法
3単位の授業。授業を2本立てで行なう。
理論編=基本的に教科書の内容を学習する。テーマとしては「人間らしく(自分らしく)豊かに生きることを考える」。内容的には「労働と経済」→「憲法と人権」→「国際協力」で1年間授業を行なう。
実態分析編=週の最後の授業は、「新聞を読み、分析し、発信する」というテーマで行なう。1学期は、主に「新聞を読み、分析する」。2学期は「新聞を分析し、発信する」ことを主眼に置き、「新聞切り貼り作品コンクール」(中日新聞社主催)に応募する作品を作成する。

第32回 ≪実態分析編≫『新聞切り抜き作品コンクール』に向けて@
2学期は、中日新聞社主催の「新聞切り抜き作品コンクール」に向けて作品をつくる。夏休み前にグループをつくり、テーマを決めてもらいましたが、夏休みを経て、新聞記事の集まり具合をみて、もう一度、テーマを再検討してください。そして、まだまだ新聞記事を収集し、重要なところにマーカーでチェックしましょう。
第33回 格差社会とたたかう〜2007年夏・復習をかねて〜
1学期、「格差社会」について話してきましたが、「格差社会」克服のための対策についてもう少し話していく。今回は、復習もかねて、この夏休みにあった「格差社会とのたたかい」について話した。例えば、8月23日には、派遣最大手のグッドウィルに対して天引きされた給与の返還を求めて集団提訴をおこなったり(8月21日には浜松の男性も22万円の返還を求め裁判をおこした)、グッドウィルに次ぐ派遣大手のフルキャストに対しても、8月3日、厚生労働省が事業停止命令を出したりしている。そういう点で、「格差社会とのたたかい」は始まり、世の中は少しずつだが動いているのである。これらの動きを支えているのが、日本国憲法やそれに基づくさまざまな労働法制である。

雨宮処凜が行く!(マガジン9条WEB)、雨宮処凜『生きさせろ! 難民化する若者たち』(太田出版)、二宮厚美『格差社会の克服 さらば新自由主義』(山吹書店)、首都圏青年ユニオンWEB

第34回 村上さん、金もうけだけでいいんですか?〜企業の社会的責任〜
「国際競争力」をつけるためには、労働者の人権を無視ししてよいという「企業の論理」について2回にわたって考える1回目。日本の大企業は、「国際競争力」をつけるために、正社員を非正社員に切り替えてきた。このために格差が拡大してきた。ただ、それと時を同じくして、大企業がつくった製品による事件・事故が相次いでいる。なぜか?それを考えるにあたって、非正社員の方々がどのような思いで働いているのかを資料に基づいて考えた。「頭のいいオランウータンでもできる仕事」。そんな仕事にやりがいや意欲はわいてくるだろうか?「国際競争力」をつけるために正社員を非正社員に切り替えてきたが、意欲も技能もない非正社員がつくった不良品が事件・事故を引き起こし、逆に企業の信用を落とし、「国際競争力」を失っているのである。本当の意味で、「国際競争力」をつけるために、いま、注目されているのが、CSR(企業の社会的責任)である。

雨宮処凛『生きさせろ!難民化する若者たち』(太田出版)、松宮健一『フリーター漂流』(旬報社)、日本経団連WEB、『NHKスペシャル 日本の、これから 納得してますか?あなたの働き方』

第35回 ≪実態分析編≫『新聞切り抜き作品コンクール』に向けてA
引き続き新聞記事を収集すると共に、第2次企画書を書いてもらいました。これで、テーマは確定してください。
第36回 競争を超えて〜給与のあり方〜
「国際競争力」をつけるためには、労働者の人権を無視ししてよいという「企業の論理」について2回にわたって考える2回目。日本の大企業は、「国際競争力」をつけるために、正社員を非正社員に切り替えるとともに、給与については正社員・非正社員ともに、能力給制(成果主義)を導入してきた。若者は、年功序列型賃金制度への不満から、能力給制を支持する声は強い。企業も、その声に押されて、「社員同士のやる気を促し、業績向上を図る」ために能力給制を導入するという。たしかに能力給制によって企業の業績は伸びた。しかし、社員の給与は「頭打ち」だという。増えた分はどこへ?能力給制のねらいが透けて見えてくる。一方、能力給制を導入したことで、会社では、「同僚」が「ライバル」となり、職場がきしみつつある。また、「成果」をあげるために長時間労働している若者も少なくない。実際、能力給制で意欲が向上したという従業員は23%にとどまる(人事部は52%)。いま、能力給制は曲がり角を迎えている。

橘木俊詔『格差社会 何が問題なのか』(岩波新書)、『NHKスペシャル 納得してますか?あなたの働き方』

第37回 「公平」な税制とは?〜政府の政策を見直す@〜
「企業の論理」を支えるために政府の政策が進められ、それがまた格差社会を招いている。今回は、税制に注目し、どのような税のあり方が「公平」なのかを考えた。いま、日本には2つの議論がある。一つは、「努力した結果が報われることが公平だ」という議論。もう一つは、「いや、豊かな人から貧しい人へ富を移すことこそが公平だ」という議論。このまま放置すると、親の経済力で人生のスタートラインに大きな差がつくような格差の固定化が生じかねない。お金持ちからもっと税金を集めて、行政サービスや社会保障などを通じて広く国民に還元し、所得の格差をならす必要がある、というわけ。どういう税のあり方が「公平」なのか、外国の事例を含めて、考えてみた。日本国憲法25条を見れば、国が社会福祉、社会保障、公衆衛生を整えることになっているので、「スウェーデン」的な社会を目指しているように思うが…。

二宮厚美『格差社会の克服』(山吹書店)、二宮厚美『憲法25条+9条の新福祉国家』(かもがわ出版)、後藤道夫ら『現代のテキスト 格差社会とたたかう』(青木書店)、神野直彦・宮本太郎編『脱「格差社会」への戦略』(岩波書店)、神野直彦『財政のしくみがわかる本』(岩波ジュニア新書)

第38回 ≪実態分析編≫『新聞切り抜き作品コンクール』に向けてB
引き続き新聞記事を収集すると共に、第2次企画書が未完成の班には企画書を書いてもらいました。
第39回 ≪特論≫「ボクちゃん、総理、辞める!」〜安倍政権のあわれな結末〜
2007年9月12日、安倍首相が辞意を表明した。安倍改造内閣が発足し、民主党の鳩山幹事長は「サプライズがないのがサプライズ」と評したが、臨時国会が召集され、所信表明をし終わった直後の辞意表明。ここで「サプライズ」だった。生放送で、辞意表明会見を見たが、その表情はまさに心の病に冒されたという朝青龍以上に病的であった。来週、格差社会のまとめとして「安倍政権の末路」と題した授業をする予定であったが、それも飛んでしまった。そこで、安倍首相が辞任したことで、内閣はどうなるのか。次の首相が決まるまで、憲法ではどう規定されているのかを確認し、自民党はだれを次の総裁に選ぶのかを、戦後の歴史に見た。これまでの例に従えば、窮地に追い込まれた場合、自民党は政策の大きく異なる人物を総裁に選び、危機を乗り切ってきた。例えば、岸から池田のときとか、田中から三木のときなど。そうすると、福田の名前が挙がるのも、わかる。

『逐条点検 日本国憲法≪中≫』(中日新聞社)、渡辺治『安倍政権論』(旬報社)、首相官邸WEB

第40回 反・構造改革〜政府の政策を見直すA〜
自民党総裁選で福田康夫も、麻生太郎も、構造改革を進めつつ、これによる影の部分に対する手当てをするという。その財源として、消費税アップも視野に入れているという(参院選も終わったことだし)。いま一度、この問題点を考えた。消費税は、収入が低いほど負担が大きいという特徴をもつ。その意味で、消費税は、「反福祉税」ということができる。その「反福祉税」である消費税で、福祉を行なうというのは明らかに論理矛盾である。だから、福祉や教育を充実させるために本来すべきことは、累進税率である所得税や法人税を引き上げることである。そもそも累進税制は実質的な平等を求めるための制度だからである。でも、これまで引き下げられてきた所得税や法人税を再び上げることは、政府・自民党は考えていない。なぜか。その構造を断ち切ることも求められる。

二宮厚美『格差社会の克服』(山吹書店)、後藤道夫ら『現代のテキスト 格差社会とたたかう』(青木書店)、福祉倶楽部・福井典子編『どうする日本の福祉』(青木書店)、『日本の、これから どう思います?格差社会』

第41回 「規制」する?しない?〜政府の政策を見直すB〜
小泉内閣以来、「規制緩和」をし競争原理を導入することで構造改革を推し進めている。その結果、労働者一人ひとりには何がもたらされているのか。タクシー業界を例に見た。タクシー運転手の収入は減ったものの、タクシー会社は増車によって収入はほとんど変化なし。これをどう見るか?規制緩和でタクシーが増車され、@失業者が減ったのでよいのではないかという意見。A一人ひとりの運転手の労働条件が悪くなったのでよくないのではないかという意見。どうでしょう?ボクは、「規制緩和」は、プラスの効果が働く場所とマイナスの副作用が現れる場所が異なる点に大きな問題があると考えています。タクシー運転手一人ひとりの過酷な労働によって、大きな事故が相次いでいます。何もタクシー業界に限らず、バス業界、トラック業界も同様。だから、海外では規制(再規制)している。それは、「生きる権利」のためである。「生きる権利」のためには必要な規制もあるのである。ところでいま、労働時間規制の撤廃が検討され始めています(ホワイトカラーエグゼンプション)。さて、これは?

二宮厚美『格差社会の克服』(山吹書店)、内橋克人『悪夢のサイクル ネオリベラリズム循環』(文藝春秋)、毎日新聞社社会部『縦並び社会 貧富はこうして作られる』(毎日新聞社)、NHKクローズアップ現代・誰のため?タクシー値上げ

第42回 ≪実態分析編≫『新聞切り抜き作品コンクール』に向けてC
新聞記事の収集、マーカーでのチェックを引き続き行いました。また、そろそろレイアウトを考え始めましょう。そうすれば、集める新聞記事の方向性も見えてきます。
第43回 私たちの1票が政策を変える!〜安倍政権の末路〜
1学期以来長く話してきた「格差社会」も最終回。「格差社会」を克服するために、ここ数回、政府の政策を見直すことが大事だという話をしてきた。@税金については、よく言われているように、消費税アップを目指すのではなく、累進税率の所得税や法人税こそ上げ、教育や福祉を充実させることが重要であること。A何でもかんでも「規制緩和」し、「民間にできることは民間に」任せる「構造改革」を進めることがいいのではなく、必要な規制もあり、「構造改革」にはストップをかけることが重要であること。Bその意味で、日本国憲法25条に示された理念=教育や福祉については国が責任をもつことが重要である。そんな話をしてきた。ただ、政府の政策を見直すといっても、そんなことは可能なのか。ぼくらと関係ないところで、政治は進んでいるじゃないかといわれる。いま一度、その点を考えてみた。2007年夏の参院選が、実は参考になる。

平和憲法のメッセージ(水島朝穂さんのWEB)

第44回 憲法って、なあに?〜立憲主義〜
憲法は何のためにあるのか?憲法はみんなが守るルールかというと、それは違う。逆に、憲法はみんなが「権力」に守らせるきまりである。それは、人びとの人権を保障するためである。これを立憲主義という。これは市民革命の成果であり、憲法は人類の歴史の英知であるといってよい。権力は暴走しがちであることは、歴史が教えてくれる。その権力に枠をあてはめたり、縛りをかけたりするのが憲法である。だから、権力にある人びとにとっては、憲法は常に「邪魔な存在」なのである。日本における改憲の大合唱は権力の側からしかきこえてこない。

浦部法穂『憲法学教室 全訂第2版』(日本評論社)、水島朝穂『憲法「私」論』(小学館)、平和憲法のメッセージ(水島朝穂さんのWEB)、長谷部恭男『憲法とは何か』(岩波新書)、首相官邸WEB

第45回 ≪実態分析編≫『新聞切り抜き作品コンクール』に向けてD
新聞記事の収集、マーカーでのチェックを引き続き行いました。また、レイアウト用紙を配りました。どこに、どんな記事をはって構成すれば、見る人にとってグループの意見が分かりやすく伝わるのか、それを考えてください。
第46回 権利のための闘争〜権利・人権とは?〜
憲法を変えたいという人のなかに、「日本国憲法には権利ばかりで義務がない。だから、若者はワガママで自己チューなんだ。だから、権利を制限し、義務を課さねば」なんて議論がある。立憲主義の視点に立てば、全くおかしな議論である。立憲主義の立場に立てば、憲法とは人権を保障するために、「権力」に守らせるきまりなのである。だから、人権/権利ばかり書いてあるのは当然なのである。人権を保障するのが憲法なんだから。しかし人権/権利は、与えられるものではない。自ら闘いとっていくものである。闘うといっても、武器をもつのではない。基本は話し合いである。その実例として、探偵!ナイトスクープを見た。中学校の生徒会が交渉をして権利を勝ち取っていく様子が示されていた。

浦部法穂『憲法学教室 全訂第2版』(日本評論社)、イェーリング『権利のための闘争』(岩波書店)、高木八尺・末延三次・宮沢俊義編『人権宣言集』(岩波文庫)、自民党・憲法調査会WEB

第47回 「自由獲得の努力」〜近代憲法の誕生〜
憲法97条の文言はとても熱い。「基本的人権は人類の多年のわたる自由獲得の努力の成果」といってみたり、「過去幾多の試練に堪へ」といってみたり。いったいどのような「努力」や「試練」があったというのか?世界の歴史を振り返りながら確認した。そもそも人権は17・18世紀の近代市民革命を通じて確立していった。その近代市民革命は、絶対主義の時代に、「不自由」を強制された人びとの怒りであり、その怒りに対するたたかいであった。まさに、イギリス・アメリカ植民地・フランスの人びとは「権利」を求めて「闘争」し、人権を勝ち取ったのである。その過程において、多くの人びとが命を落としていった。97条の背景にはこうした歴史の重みがあるのである。

高木八尺・末延三次・宮沢俊義『人権宣言集』(岩波文庫)、高橋和之編『[新版]世界憲法集』(岩波文庫)、森英樹『新版主権者はきみだ』(岩波ジュニア新書)、水島朝穂「平和憲法のメッセージ」(水島朝穂WEB)、伊藤真「伊藤真の憲法手習い塾」(マガジン9条WEB)

第48回 ≪実態分析編≫『新聞切り抜き作品コンクール』に向けてE
新聞記事の収集、マーカーでのチェックを引き続き行いました。また、レイアウト用紙を配りました。どこに、どんな記事をはって構成すれば、見る人にとってグループの意見が分かりやすく伝わるのか、それを考えてください。完成したら、伊藤まで説明に来ること。
第49回 制限された「自由権」〜現代憲法への発展〜
日本国憲法には4ヵ所、「公共の福祉」ということばが出てくる。それは、「公共の福祉に反しない限り」人権を認めるという文脈であるので、逆に言えば、「公共の福祉」に反したら人権は認めないということである。なぜ「公共の福祉」で人権を制限するのか?そして、制限されているのは、なぜ経済活動の自由だけなのか?この点を、19世紀末から20世紀の歴史を踏まえて考えた。「公共の福祉」ということばは、歴史的文脈からとらえ、「弱者への配慮を!」ととらえなければならない。間違っても、某政党のように「公益及び公の秩序」ととらえてはならない。

杉原泰雄『人権の歴史』(岩波書店)、浜林正夫『民主主義の世界史 「殺しあい」から「話しあい」へ』(地歴社)、浦部法穂『憲法学教室 全訂第2版』(日本評論社)、森英樹「いま、憲法の魂を守るために」

中間テスト
第50回 明治人の憲法にかけた熱い思い〜日本国憲法の源流〜
安倍前首相は、日本国憲法について「今の憲法は占領下でつくられたもので占領軍が深く関与している」。だから、「私たち自身の手で新しい憲法を書いていこうではないか」と党員に呼びかけた。日本国憲法の理念は、「私たち自身の手」によるものではないのだろうか?この点を、明治時代の自由民権運動のときにできた2つの憲法草案をみることによって考えた。植木枝盛の「日本国国権案」も、千葉卓三郎らの「五日市憲法」も、いまの日本国憲法の理念と相通ずるものがみてとれる。そうした成果を無視してできたのが、大日本帝国憲法である。しかしながら、その大日本帝国憲法のもとでも、それを読み直そうと試みた人物もいた。それが、吉野作造であり、美濃部達吉である。ただ、時代は一気に戦争の時代に突入し、そうした大正デモクラシーの雰囲気はなくなっていく。無視された自由民権のスピリットがようやく日の目を見たのが、日本国憲法だったのである。

水島朝穂『憲法「私」論』(小学館)、樋口陽一『先人たちの「憲法」観』(岩波ブックレット)、樋口陽一『個人と国家―今なぜ立憲主義か』(集英社新書)、戦中生まれの女たちによる「九条の会」WEB、五日市憲法草案顕彰碑建設委員会『「五日市憲法草案の碑」建碑誌』、鹿野政直『近代国家を構想した思想家たち』岩波ジュニア新書

第51回 「押し付けられた」憲法?〜日本国憲法の制定@〜
安倍前首相は、日本国憲法について「今の憲法は占領下でつくられたもので占領軍が深く関与している」といった。たしかにそうである。1946年2月4日から9日間にわたってGHQの民政局内でGHQ草案の作成が行われたからである。それにしても、なぜ「占領軍が深く関与」することになったのだろうか?その点を考えた。実は、当初、GHQは日本政府に期待をかけていたのである。もちろんあれだけの戦争被害をこうむったのだから、戦争を支えた仕組みを大転換させるだろうと。だから、マッカーサーは当時の幣原喜重郎首相にConstitutionのliberalizationを指示した。しかし、幣原首相は憲法をほんのちょっと手直しするに止めようとした。それが、毎日新聞にすっぱ抜かれる。1946年2月1日のことである。それをみたマッカーサーは愕然とし、それは日本政府に対する失望へと変わっていく。2月3日、マッカーサーはGHQの民政局に対しノートを手交し、翌日から民政局で作業が行われたのである。

水島朝穂『憲法「私」論』(小学館)、樋口陽一『憲法 改訂版』(創文社)、小西豊治『憲法「押しつけ」論の幻』(講談社現代新書)、鈴木昭典『日本国憲法を生んだ密室の九日間』(創元社)、浦部法補・大久保史郎・森英樹『現代憲法講義T』(法律文化社)、日本国憲法の誕生WEB(国立国会図書館WEBより)

第52回 ≪実態分析編≫『新聞切り抜き作品コンクール』に向けてF
レイアウト用紙の完成に向けて作業をしました。伊藤への説明でOKをもらったグループは、模造紙の裏打ち作業に入ります。
第53回 静岡でくらした鈴木安蔵〜日本国憲法の制定A〜
安倍前首相は、日本国憲法について「GHQによって一週間余りでつくられたものです」と述べた。その「一週間余り」の間に、GHQはさまざまな国の憲法を研究していた。さらに日本でつくられていた憲法草案も研究していた。そのなかでGHQが評価したのが、憲法研究会の「憲法草案要綱」である。それをまとめた中心的人物が、映画『日本の青空』の主人公ともなった鈴木安蔵である。彼は戦後、静岡大学教授となったので、静岡ともかかわりの深い人物である。その鈴木安蔵は、なぜ「憲法草案要綱」のような自由主義的、民主主義的な憲法草案をつくり上げることができたのだろうか。それは、彼の戦前における経歴にヒントがある。鈴木安蔵は、戦前、治安維持法によって捕まり刑務所にいた経験をもち、さらに自らの著書も即日発禁処分を受けた経験をもつ。また、彼はあることをきっかけにして自由民権期の植木枝盛に注目した。そういう経歴が彼に「憲法草案要綱」を書かせたのである。

水島朝穂『憲法「私」論』(小学館)、樋口陽一『個人と国家―今なぜ立憲主義か』(集英社新書)、小西豊治『憲法「押しつけ」論の幻』(講談社現代新書)、鈴木昭典『日本国憲法を生んだ密室の九日間』(創元社)、浦部法補・大久保史郎・森英樹『現代憲法講義T』(法律文化社)、日本国憲法の誕生WEB(国立国会図書館WEBより)

第54回 憲法の「改正」?「制定」?〜憲法改正〜
日本国憲法には、改正のための手続きが述べられている。しかし、その手続きを具体的に定めた法は、これまで存在しなかった。自民党の人びとは「立法の不作為」だとして、2007年5月14日、強引な形で「国民投票法(憲法改正手続き法)」を成立させてしまった。安倍首相だったからできたことである。今回成立した「国民投票法」が審議された際、次の点が議論された。@投票権はだれにあるのか?、A「過半数」をどうとらえるのか?、B改正項目が複数ある場合は、一括方式でやるのか、逐条方式でやるのか、などなど。しかし、さらに18もの付帯決議があるなかで成立した「国民投票法」には、まだ課題が山積している。落ち着いた状況のなかで、なぜ変える必要があるのかを十分に説明した上で、十分に時間をかけて思考・討論したうえで、憲法は変えられなければならない。最後に、しかし、なんでもかんでも「改正」できるのだろうか、という点を考えた。お化粧・整形程度ならば、まだ、その人といえるだろうが、心まで変わってしまったら、同一の人とは言えない。

芦部信喜『憲法 新版 補訂版』(岩波書店)、浦部法穂『憲法学教室 全訂第2版』(日本評論社)、森英樹『新版 主権者はきみだ』(岩波ジュニア新書)、水島朝穂『憲法「私」論』(小学館)

第55回 ≪実態分析編≫『新聞切り抜き作品コンクール』に向けてG
レイアウト用紙の完成に向けて作業をしました。伊藤への説明でOKをもらったグループは、模造紙の裏打ち作業に入ります。裏打ちの終わったところは、下書きに入ってください。
第56回 「悪質リフォーム」にご注意を!〜憲法「改正」〜
2005年に自民党は「新憲法草案」を発表した。それには、「新しい人権」として「環境権」「プライバシー権」「知る権利」「犯罪被害者の権利」を盛り込み、国民に宣伝している。これらの「新しい人権」を認めるために、いまの日本国憲法は有効ではないのかを考えた。たとえば、いまの日本国憲法には「環境権」は明記されていない。しかしながら、1960年代の四大公害裁判を通じて、環境庁が設置され、公害対策基本法が制定された。そしていま、地球環境が問題となるなかで、環境庁は環境省に、公害対策基本法は環境基本法にレベルアップされ、実質的に「環境権」は認められている。これは、憲法13条や25条を根拠として認められているのである。その意味で、「新しい人権」を認めるために、いまの日本国憲法は有効なのである。数年後、憲法改正国民投票の有権者となるキミたちは、憲法を変えようとする人たちに、なぜ憲法を変える必要があるのか、変わったらどうなるのか、説明を求め、そもそも憲法とは何かということを、一人ひとりがじっくり考えて投票してほしい。

愛敬浩二「『新しい人権』って必要なの?」(『い・ま・こ・そ・憲法』愛知憲法会議)、浦部法穂『憲法学教室 全訂第2版』(日本評論社)、水島朝穂『憲法「私」論』(小学館)、自由民主党WEB

第57回 「ゆりかご」にゆれる日本社会〜男女の平等@〜
いま子どもを巡る事件が相次いでいる。親が子どもを殺す事件。反対に子どもが親を殺す事件。子どもが他の子どもを殺す事件。近い将来、キミたちの中には子どもを持ち親になる人もいるだろう。そんなことから、今回からしばらく出産・子育ての問題を、憲法とかかわらせながら考えていく。で、とりあえず、「赤ちゃんポスト」といわれた「こうのとりのゆりかご」を取り上げたい。ちょうど設置されてから半年たった。この半年間に障がい者を含む8名の赤ちゃん(赤ちゃんとはいえない子どももいたようだが)が預け入れられた。キミたちは、この「赤ちゃんポスト」についてどう考える?設置した側の意見、そしてそれに反対した人の意見を読み、アンケートを取った。そこから出発しよう。

医療法人聖粒会慈恵病院WEB、岩志和一郎「『赤ちゃんポスト』によせて」(WASEDA.com)、熊本日日新聞WEB、歴史教育者協議会編『歴史地理教育713』(2007年4月)

第58回 家庭は子どもをいかに育てるか?〜男女の平等A〜
「専業主夫」になる人もいる。その中で主夫体験記を記すものもいる。が、それを読むと、ほんの数ヵ月で「かごの鳥の憂鬱」が襲ってくることが記される。自分が社会から疎外されているという悩みを抱くようになる。実は、専業主婦である女性たちも、そんな思いはかねてからしている。結婚・出産を契機に専業主婦となった女性たちも、潜在的には働きたいと考えているからだ。やはりもう性別役割分担はダメだ。だからといって、単純に男女を入れ替えただけでもダメである。男性も、女性も、広い意味での社会参加の場がなければ、息が詰まってしまう。

伊藤公雄『「できない男」から「できる男」へ』(小学館)、伊藤公雄『男性学入門』(作品社)、伊藤公雄『「男女共同参画」が問いかけるもの』(インパクト出版会)、伊藤公雄『NHK人間講座 「男らしさ」という神話』(日本放送出版協会)

第59回 国は子どもをいかに育てるか?〜男女の平等B〜
前回、「男性も、女性も、広い意味での社会参加の場がなければ」と話した。しかし、こうした考えもあろう。つまり、「女性が社会進出したら、ますます少子化が進行してしまう」と。しかし、果たしてそうだろうか。データをもとに検討した。すると、女性が社会進出した社会こそ、少子化に歯止めがかかっていることが分かる。その意味で、@男性の家事・育児への参加が求められるし、A企業やB国のサポートも必要だ。だから、子育ては家庭が責任を持つべきという論があるが、それもそうだが、企業や国も子育てには責任を持たなければならない。それは、憲法24条や25条にも明記されている。ちなみに、憲法24条については、その発案者が知られている。GHQの民政局にいたベアテ・シロタ・ゴードンという女性である。憲法24条は、彼女の贈り物である。

伊藤公雄『男性学入門』(作品社)、中里見博『憲法24条+9条 なぜ男女平等がねらわれるのか』(かもがわブックレット)、土井たか子/B・シロタ・ゴードン『憲法に男女平等起草秘話』(岩波ブックレット)、『少子化社会白書』WEB、『男女共同参画白書』WEB

第60回 夫は定年、妻はストレス〜高齢社会・ニッポン〜
「仕事人間」であった夫がいよいよ定年退職。夫には10余年の「余生」が待っている。これまで仕事、仕事で必死だったから、定年後は家族と旅行でもしてみるかな、と思ったら、とんでもない仕打ちが待っていた…。2007年から数年、大量の退職者が出る。かれらは「男は仕事、女は家庭」という性別役割分担を背景に高度経済成長を引っ張ってきた世代である。ある意味、仕事を生きがいとし、地域とは切り離されて生きてきた男は、長い「定年後」をどのように生きていったらよいのか?

綾小路きみまろ『有効期限の過ぎた亭主 賞味期限の切れた女房 綾小路きみまろ独演会』(PHP)、伊藤公雄『「できない男」から「できる男」へ』(小学館)、伊藤公雄『NHK人間講座 「男らしさ」という神話』(日本放送出版協会)、清水博子『新装版 夫は定年妻はストレス』(青木書店)、厚生労働省WEB

第61回 炸裂する老人パワー〜高齢社会を生きる〜
前回課題とした「長い『定年後』をどのように生きていったらよいか?」に対するボクなりの回答を示したい。NHKスペシャル『世紀を越えて 老人パワー』を見ると、アメリカの事例であるが、たいへん生き生きとした高齢者が映し出されていた。例えば、80歳の「おばあちゃん」たちはチアガールをしていた。また、大学教授を定年退職した男性は、地域で防犯ボランティアをしていた。2007年、団塊世代が大量に定年退職をしはじめる。そういう人たちが地域で、社会参加する生き方が、これから求められているのである。それは自分自身のためにもなるし、地域社会のためにもなる。

伊藤公雄『「できない男」から「できる男」へ』(小学館)、伊藤公雄『NHK人間講座 「男らしさ」という神話』(日本放送出版協会)、岡村清子・長谷川倫子編『テキストブック エイジングの社会学』(日本評論社)、総務省統計局WEB、『国民生活白書』WEB、『高齢社会白書』WEB、NHKスペシャル『世紀を越えて 老人パワー』

第62回 ≪実態分析編≫『新聞切り抜き作品コンクール』に向けてH
模造紙を渡されたらまず裏打ちをします。そのあと記事を貼る位置をきめて、下書きをします。あまり時間がないので、放課後も利用してね。
第63回 生きがいが日常に彩りを加える〜21世紀を生きる〜
1997年に結ばれた対人地雷全面禁止条約は、NGOであるICBL(地雷禁止国際キャンペーン)が各国に働きかけた結果として結ばれた条約である。そのICBLをつくるきっかけとなったのは、たった一人の女性であった。一人の女性の行動が世界を動かしたのである。日本でも、対人地雷廃止に向けた動きはあった。例えば、ボクが最近注目しているミスチルの櫻井和寿さんは、坂本龍一さんがよびかけた「地雷ZERO」キャンペーンに参加した。また彼は、その他、環境問題、貧困問題といった問題に積極的にコミットし、多くの人びとの共感を得ている。それさておき、こういうNGOやNPOというのがこれからの社会の鍵である。NGOやNPOの担い手として、団塊世代そしてキミたちのような若い人たちが期待されている。それがアイデンティティの確立につながっていくのである。

静岡平和資料館をつくる会『子どもたちに知ってほしい悪魔の兵器「対人地雷」』、伊藤公雄『NHK人間講座 「男らしさ」という神話』(日本放送出版協会)、田中優『戦争って、環境問題と関係ないと思ってた』(岩波ブックレット)、Bank Band『沿志奏逢』、『SWITCH』2005 VOL.231、2005 VOL.239

第64回 ≪特論≫百恵ちゃんから聖子ちゃんへ〜女性の時代〜
第65回 ≪実態分析編≫『新聞切り抜き作品コンクール』に向けてI
模造紙を渡されたらまず裏打ちをします。そのあと記事を貼る位置をきめて、下書きをします。あまり時間がないので、放課後も利用してね。
期末テスト

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