2学期の授業録


使用教科書/『明解 新世界史A・新訂版』帝国書院 (帝国・世A015)
副教材/『地歴高等地図・最新版』帝国書院 (帝国・地図011)

第20回 オオカミと人間との出会い〜ヨーロッパ世界の形成〜
『赤ずきん』『3匹の子ぶた』に共通する動物は?といえば、オオカミ。オオカミはほとんどの場合、悪役として登場する。そして、最後には、そのしっぺ返しを食うと言う形で終わる。今回は、オオカミを通して、西ヨーロッパの社会のしくみについて、みていく。「戦う人(騎士・諸侯・国王・皇帝)」や「祈る人(聖職者・教皇)」がもつ所領で働く「働く人(耕す人、農奴)」は、この当時、土地を広げるために深いヨーロッパの森林を次々と伐採していく。その森林の王者として君臨していたのが、オオカミであった。伐採するにつれて、当然恐ろしいオオカミとの出会いも多くなり、なかにはケガをさせられた人もいただろう。そういうなかで物語の原型が作られていったのである。また、森林伐採に伴って、オオカミの生息範囲がずいぶんと狭くなり、オオカミの個体数は減っていった。逆に増えたのが、オオカミの主食であったネズミである。ネズミの増加は、ヨーロッパ社会にペストという伝染病を流行させ、ヨーロッパの人口の1/3が亡くなったという(14世紀)。森林伐採は、現代の私たちに、何を語るのであろうか?

樺山紘一『新装版 世界史の知88』(新書館)、佐藤彰一・池上俊一『世界の歴史I 西ヨーロッパ世界の形成』(中央公論社)、堀米庸三編『生活の世界歴史6 中世の森の中で』(河出書房新社)、石弘之・安田喜憲・湯浅赳男『環境と文明の世界史』(洋泉社新書)

第21回 「正義の戦い」の名の下に〜11・12世紀のヨーロッパ〜
2003年の「イラク戦争」において、アメリカのブッシュ大統領は、自軍を「十字軍」と表現した。しかし、イスラーム圏からの反発によって、すぐに撤回した。なぜ反発したのか?1095年、ローマ教皇は「正義の戦い」と称して十字軍を派遣することを決めた。しかしイスラームからの視点から見るとそれはとても「正義の戦い」とは言えないものであった。結局、目的を果たすことができず、ローマ教皇の権威は落ちていった。「正義の戦い」という思想は、「イラク戦争」でもみられた。

大江一道・山崎利男『物語世界史への旅』(山川出版社)、橋口倫介『十字軍〜その非神話化〜』(岩波新書)、佐藤彰一・池上俊一『世界の歴史I 西ヨーロッパ世界の形成』(中央公論社)、『NHKスペシャル 文明への道・第7集 エルサレム・和平・若き皇帝の決断』

第22回 ミイラと生きるインカの人びと〜アメリカの古代文明〜
1492年10月12日、コロンブスが現在のバハマ諸島の一角に上陸した。これをもって、アメリカ大陸「発見」としている。その後、その「新大陸」にはスペイン人やポルトガル人、遅れてイギリス人やフランス人が植民地を建設していくことになったが、さて、考えておきたいことは、アメリカ大陸には人はいなかったのか、ということ。当然そうではない。アメリカ大陸では、マヤ文明・アステカ文明をはじめとしたいくつかの優れた文明が築かれていた。そこで今回は、南米で展開したインカ文明を見、これらアメリカの文明を築いた人びとが、いつごろどこからやってきたのかを考えた。2万年前〜1万5000年前の氷河期に、アフリカ→インド→中国→シベリア→アラスカへという従来の定説に加えて、新しい見解も紹介した。海が人をつなぐこともあるのである。

高橋均・網野徹哉『世界の歴史Q ラテンアメリカ文明の興亡』(中央公論社)、『インカ・マヤ・アステカ展』、『NHKスペシャル 失われし文明インカ・マヤ』、網野義彦『NHK人間大学 日本史再考』日本放送出版協会

第23回 モンゴルの平和〜13・14世紀のユーラシア〜
13世紀末の1297年、ジェノヴァの地下牢に、一人のヴェネツィア人が閉じ込められていた。その人物は、年は40を越えており、前年、ジェノヴァとの戦いで打ち負かされたヴェネツィア艦隊の乗組員の一人だった。その牢屋のなかには、ジェノヴァに敗れて捕虜になった外国人が大勢いた。しかし、そのヴェネツィアの男は、次から次へと珍しい話をしたので、囚人仲間の人気者に。その男の名前は、マルコ・ポーロ。彼は、17年間にわたって中国、元の皇帝フビライのもとにとどまった経験をもっていました。そして、そのときの話をまとめた『東方見聞録(世界の記述)』は、あのコロンブスの心を揺り動かすことになります。さて、日本人のモンゴル帝国イメージは「恐ろしい」というものであるが、では、なぜマルコ・ポーロは元の皇帝フビライのもとに行ったのだろうか?そこから皇帝フビライの構想について考えた。すると従来とは違ったモンゴル帝国イメージがつくられるだろう。なお、マルコ・ポーロはいなかったという説についても触れた。

杉山正明『中国の歴史08 疾駆する草原の征服者』(講談社)、大江一道・山崎利男『物語世界史への旅』(山川出版社)、宮崎正勝『世界史の海へ』(小学館)、網野善彦『東と西の語る日本の歴史』(そしえて文庫)、網野善彦『日本社会の歴史(中)』(岩波新書)、『NHKスペシャル 文明の道・第8集 クビライの夢・ユーラシア帝国の完成』

第24回 「歴史なき大陸」の歴史〜サハラの交易〜
アフリカは「暗黒大陸」とか「歴史なき大陸」と言われてきた。しかし、14世紀や16世紀にアフリカを訪れた人たちの記録によると、そこには豊かな世界が描かれていた。その中でも今回は、塩金交易で栄えていたマリ王国をとりあげた。しかし、モンテスキューのような優れた啓蒙思想家たちがアフリカの人びとを自分たちと同じ人間ではないことを説いたため、そうした見方が広がり、奴隷貿易が行なわれることになった。日本の人びともヨーロッパ人の目を通してアフリカの人びとを見ているのではないか。

松田素二「アフリカのイスラーム化と諸王国の興隆」『NHK教育 世界史』(2005年度放送)、松田素二「アフリカの光と影〜忘れられた歴史〜」『NHK教育 歴史でみる世界』(2001年度放送)、宮本正興・松田素二編『新書アフリカ史』(講談社現代新書)、福井勝義・赤阪賢・大塚和夫『世界の歴史24 アフリカの民族と社会』(中央公論社)、『世界史B・新訂版』(一橋出版)、ジェレミー・シーブルック『世界の貧困 1日1ドルで暮らす人びと』(青土社)

第25回 2人のカリカット訪問者〜15世紀のユーラシア〜
イブン・バトゥータがカリカットを訪れてから60年後、中国から一人の人物がやってくる。返り咲いた漢民族帝国・明の第3代皇帝永楽帝が派遣した鄭和である。鄭和はカリカットの人びとから受け入れられた。それから100年後、西ヨーロッパ世界から一人の人物がやってくる。ヴァスコ・ダ・ガマである。ガマはカリカットの人びとからは受け入れられない。この違いは一体何なのだろうか。2つの「大航海時代」をみた。

上田信『中国の歴史09 海と帝国 明清時代』(講談社)、宮崎正勝『世界史の海へ』(小学館)、宮崎正勝『海からの世界史』(角川選書)、福井勝義・赤阪賢・大塚和夫『世界の歴史24 アフリカの民族と社会』(中央公論社)

第26回 それでも地球は動く!〜ルネサンス〜
14世紀から16世紀にかけて、イタリアをはじめとした西ヨーロッパ各地において、力強い文化創造の展開がみられた。ルネサンスである。今回は、地動説をめぐる動きを中心に学習した。ガリレイらの動きというのは、中世を通じて権威を確立してきたローマ・カトリック教会に対する異議申し立てとみることができるだろう。しかし、ガリレイらはローマ・カトリック教会の強力な弾圧のもとに敗れ去ってしまう。ちなみに、ガリレイの死後350年目の1992年になってようやくローマ教皇はガリレイに謝罪し、名誉回復が行なわれた。

安井俊夫『歴史の授業108時間(上)』(地歴社)、樺山紘一『世界の歴史O ルネサンスと地中海』(中央公論社)、福井憲彦「ミケランジェロとルター〜ルネサンスと宗教改革〜」『NHK高校講座 世界史』(2005年放送)、『週刊朝日百科 日本の歴史22 1500年の世界』(朝日新聞社)

第27回 教皇なんてコワくない!〜宗教改革〜
1549年、宣教師ザビエルが来日した。ザビエルは来日する前、インドや東南アジアで布教活動をしており、東南アジアにいた日本人に出会って来日したのである。では、なぜザビエルは海外で布教活動をしていたのだろうか。当時ヨーロッパでおこっていた、中世を通じて権威を確立してきたローマ・カトリック教会に対する異議申し立ての動き、宗教改革と関連がある。ルターは、ローマ・カトリック教会の強力な弾圧にも屈せず、批判を続けた。そのなかで、ローマ・カトリック教会のなかから建て直しの動きがでて、その中心となったのがザビエルが所属するイエズス会であった。イエズス会は海外布教に力を入れた。

福井憲彦「ミケランジェロとルター〜ルネサンスと宗教改革〜」『NHK高校講座 世界史』(2004年放送)、樺山紘一『世界の歴史O ルネサンスと地中海』(中央公論社)、J.M.ロバーツ『図説世界の歴史E 近代ヨーロッパ文明の成立』(創元社)、『週刊朝日百科 日本の歴史22 1500年の世界』(朝日新聞社)

第28回 胡椒狂騒曲〜「大航海」時代がはじまる〜
「大航海」時代の航海者たちが、苦難の末に異郷に達したいきさつはよく知られています。ではなぜ、彼らは危険を承知で大海原に船出したのか。未知の世界をめざした彼らは、そこに何をもとめていたのだろうか。その点を考えた。かれらは、十字軍以来の東宝の富、具体的には香辛料や黄金郷(エル・ドラード)への関心から未知の世界を目指したのである。コロンブスが到達した“インディアス”からは、ジャガイモ、トマト、カカオ、トウガラシなど多彩な食べ物がもたらされた。今では、これらのないヨーロッパの料理は考えられないほどだ。その他、タバコ、梅毒などの性病ももたらされた。これらは、ものすごいスピードで日本にももたらされた。その意味で、日本も「大航海」時代の荒波にのまれていく。

大久保桂子「黄金郷を求めて〜大航海時代の異文化幻想〜」『歴史で見る世界』(2003年度放送)、『インカ・マヤ・アステカ展』、樺山紘一『世界の歴史O ルネサンスと地中海』(中央公論社)、長谷川輝夫・大久保桂子・土肥恒之『世界の歴史P ヨーロッパ近世の開花』(中央公論社)、大江一道・山崎利男『物語世界史への旅』(山川出版社)

第29回 ラス・カサスの訴え〜古代アメリカ文明の崩壊〜
スペイン出身の聖職者であったラス・カサスという人物は、1550年に行われた討論の中で次のことを断言した。「アメリカ大陸の発見以来このかた、そこで行われた、また、現在進行中の征服と戦争はことごとく、常に不正で暴虐的で、極悪非道なものであり、キリスト教徒を攻撃するトルコ人やムーア人の戦いよりも邪悪で、しかも、アメリカ大陸では数多くの大罪が犯されてきたのである」と。この報告は、スペインに大きな衝撃を与えた。ラス・カサスが言う「不正で暴虐的で、極悪非道なもの」「大罪」とは何か?それを考えた。今回は特に、インカ帝国滅亡後の南アメリカ地域に注目した。南アメリカのボリビアでは、ポトシ銀山が発見され、そこで多くのインディオが酷使され、亡くなっていく。ポトシの銀は、根こそぎスペインにもっていかれ、スペインは潤っていくが、地元ボリビアは現在では世界でもっとも貧しい国の一つに数えられている。また、貧困層の多くはポトシなどの鉱山労働者の子孫である。「大航海」時代の「遺産」は、今にまでつながる問題となっている。なお、今年世界遺産に登録された石見銀山(日本、島根県)の銀も、このころ世界を駆け巡った。

高橋均・網野徹哉『世界の歴史Q ラテンアメリカ文明の興亡』(中央公論社)、樺山紘一『世界の歴史O ルネサンスと地中海』(中央公論社)、増田義郎『ビジュアル版世界の歴史L 大航海時代』(講談社)、『週刊朝日百科・日本の歴史33 1600年の世界』(朝日新聞社)、『インカ・マヤ・アステカ展』

中間テスト
第30回 テスト返却
第31回 赤いキムチの登場〜朝鮮王朝の成立〜
キムチは、漬物の一種で、冬の厳しい朝鮮半島で工夫された保存食であり、ずいぶん昔から存在する。しかし、登場したころのキムチは赤くはなかった。簡単な塩漬けであったり、山椒や生姜などを香辛料として使っていた。キムチにトウガラシが使われ始めたのは、18世紀のころだといわれている。トウガラシは、いつ、どのようにして朝鮮半島に伝わってきたのだろうか。朝鮮半島にも「大航海時代」の影響が及ぶ。韓国のトウガラシ入りのかっぱえびせんを食べてもらいながら、日本と朝鮮半島との歴史を考えた。

千葉県歴教協世界史部会編『世界史のなかの物』(地歴社)、シルヴィア・ジョンソン『世界を変えた野菜読本』(晶文社)

第32回 国王・貴族の優雅な生活〜西ヨーロッパの絶対主義〜
16世紀から17世紀にかけて、西ヨーロッパには個性的な国王が現れた。例えば、イギリスのヘンリ8世やエリザベス1世。かれらのファッションは非常にユニークだ。かれらのファッションを次に貴族たちがまねをする。さらにジェントリがそれをまねる。さらにジェントリになりたいと思っている人びとがそれをまねる。イギリス国中にそれはファッションは流行として広がっていった。そうすると国王は外国から新しいファッションをとりいれ、次の流行が生まれた。また、かれらは、くり返し戦争をおこなった。その結果、見た目の派手さとは異なり、莫大な借金を残した。このような絶対主義を支えたのは、いったい誰だったのか?借金の穴埋めのための増税、そして戦争をすることになれば、駆り出され、死の恐怖を味わうことになるのはもちろんふつうの人びとである。さまざまな負担がのしかかる。あれ?現在の日本もよくみれば一緒?

川北稔『洒落者たちのイギリス史 騎士の国から紳士の国へ』(平凡社)、長谷川輝夫・大久保桂子・土肥恒之『世界の歴史P ヨーロッパ近世の開花』(中央公論社)、マルタン・モネスティエ『【図説】毛全書』(原書房)、菅原珠子・佐々井啓『西洋服飾史』(朝倉書店)

第33回 「暴走」する国王を抑え込め!〜イギリスの市民革命@〜
いま、日本国憲法を変えようという論議がなされている。ところで、ここで問題。憲法は、誰が守るものなのだろうか?私たちが守らねばならない大切な決まり?ちがう。憲法は、いわば、権力を持つ人びとが守らねばならないものである。なぜ憲法は、権力を持つ者が守らなければならないのだろうか?今回は、その歴史を、イギリスを例に探った。王権神授説にしたがってやりたい放題してきたジェームズ1世。そしてその息子チャールズ1世。チャールズ1世の時代、イギリスの人びとは国王に対して「権利の請願」をつきつけた。「アンタ、ここに書いてあることしっかり守ってくださいよ」と。でも、チャールズ1世はそれを無視。内乱の中で、チャールズ1世は処刑された(清教徒革命、ピューリタン革命)。権力者のあわれな最期である。イギリスには「憲法典」は存在しないが、国王に突きつけた「権利の請願」が憲法の役割を、いまも果たしている。そんなできごとが憲法の始まり。だからこそ憲法ってのは権力が守らねばならないのである。

『世界史B・新訂版』(一橋出版)、樋口陽一・吉田善明編『解説世界憲法集 第4版』(三省堂)、樋口陽一『自由と国家―いま「憲法」のもつ意味―』(岩波新書)

第34回 懲りない面々〜イギリスの市民革命A〜
処刑されたチャールズ1世の子どもたちはフランスに亡命していた。イギリスでクロムウェルの死後、フランスから国王がやってきて王政が復活した。チャールズ2世である。その後、弟ジェームズ2世が王位を継いだ。かれらは当初、処刑されたチャールズ1世のようにならないようにと努めていたが、亡命先のフランスではルイ14世が絶対主義の絶頂にあったためか、次第に本性をあらわしていく。これに対し、イギリスの人びとはだまっていたが、ジェームズ2世に男子が誕生すると、怒りが爆発した。フランスにいたオレンジ公ウィレムと連携をとりジェームズ2世の追放を図ろうとした。その寸前にジェームズ2世はフランスに亡命し、新しくオレンジ公ウィレムとその妃を国王に迎えた。これを名誉革命というが、その際、イギリスの人びとは国王夫妻に「権利の章典」を約束させる。これもイギリスにおいては、「憲法」の役割を果たしていく。こうした革命を理論化したのが、同時代に生きたジョン・ロックであった。彼の考えは、その後、アメリカ独立革命、フランス革命に影響を与えていく。

樋口陽一・吉田善明編『解説世界憲法集 第4版』(三省堂)、樋口陽一『自由と国家―いま「憲法」のもつ意味―』(岩波新書)、杉原泰雄『人権の歴史』(岩波書店)、浜林正夫『人権の思想史』(吉川弘文館)

第35回 権力への深い疑い〜アメリカ独立革命の光〜
アメリカ植民地に対して、イギリス本国政府は財政難の穴埋めをするために課税した。イギリス本国政府の「暴走」に対して、植民地の人びとは「代表なければ、課税なし」として立ち上がった。結果として、独立宣言、合衆国憲法をつくってイギリスから独立し、アメリカ合衆国が成立した。独立宣言はイギリスのロックの思想を下敷きにし、「(生命、自由および幸福の追求という)権利を確保するために人類のあいだに政府が組織され」、「もしこれらの目的を侵害する場合には、人びとは」「新たな政府を組織する権利がある」とする。これを起草したジェファソン(第3代大統領)は、「われわれが権力をたくさなければならない人びとを制約的な憲法によって拘束するのは、信頼ではなく、猜疑に由来する」と言う。含蓄のあることばである。

五十嵐武士・福井憲彦『世界の歴史21 アメリカとフランスの革命』(中央公論社)、本田創造『アメリカ黒人の歴史 新版』(岩波新書)、浜林正夫『人権の思想史』(吉川弘文館)、高木八尺・末延三次・宮沢俊義編『人権宣言集』(岩波文庫)、樋口陽一・吉田善明編『解説世界憲法集 第4版』(三省堂)

第36回 アメリカの土地はだれのものか?〜アメリカ独立革命の影〜
「すべての人は平等に造られ」と高らかに宣言した独立宣言。しかし、現実のアメリカ社会はそうではなかった。例えば、アメリカ大陸にもともと住んでいた人びとは、アメリカ合衆国に土地と生活と命を奪い取られていった。また、アメリカ大陸に無理やり連れてこられた黒人奴隷も同様であった。そして、人の半数を占める女性たちも。しかし、アメリカ合衆国のすごいところは、差別されたネイティヴ・アメリカンや黒人、女性たちがその後、権利を求めて立ち上がり、長い時間をかけて、独立宣言や合衆国憲法の理念を実現させようとすることだ。どこかの国は、たった60年しか経っていない憲法を、現実にそぐわないということで、変えようとしている。

紀平英作・亀井俊介『世界の歴史23 アメリカ合衆国の膨張』(中央公論社)、樋口陽一・吉田善明編『解説世界憲法集 第4版』(三省堂)、杉原泰雄『人権の歴史』(岩波書店)、清水知久『ビジュアル版世界の歴史N 近代のアメリカ大陸』(講談社)、奥平康弘『憲法の想像力』(日本評論社)

第37回 憲法の「原点」と「現点」〜フランス革命の光〜
いま日本国憲法を変えようという声が、権力者側から提案されている(「現点」)。そこにはそもそも憲法とは何かという視点があいまいにされている。今回はフランス革命を素材に、その点を考えていく。フランス革命も、これまで見てきたイギリス革命、アメリカ独立革命と同様に、権力による「暴走」があって、バスティーユ牢獄襲撃事件を発端としたフランス革命がおこる。そして、「人権宣言」を国王はしぶしぶ認めさせられ、91年憲法を国王は受け取った。つまり、国民の側から「あんたたち権力者は、これを守ってくれよ」と権力者を規制するものが、憲法なのである(「原点」)。その意味で、いま、権力側が自らの「規制緩和」のために改憲案をだすのは、あらたな「暴走」のはじまりなのかもしれない。

五十嵐武士・福井憲彦『世界の歴史21 アメリカとフランスの革命』(中央公論社)、樋口陽一『自由と国家―いま「憲法」のもつ意味―』(岩波新書)、杉原泰雄『人権の歴史』(岩波書店)、高木八尺・末延三次・宮沢俊義編『人権宣言集』(岩波文庫)、樋口陽一・吉田善明編『解説世界憲法集 第4版』(三省堂)、多木浩二『絵で見るフランス革命―イメージの政治学―』(岩波新書)、『NHKその時歴史が動いた・フランス革命 自由よ汝の名のもとに』

第38回 裏切りの「人権宣言」〜フランス革命の影〜
フランス人権宣言では、すべての人が自由であり、平等であるということが高らかに宣言された。しかしルイ16世はそれを認めようとしない。ここでたちあがったのが、女性たちである。パリの女性たちが国王のいるヴェルサイユに押しかけ、「パンをよこせ!」「人権宣言を認めろ!」と要求。その迫力に負け、ルイ16世は人権宣言をやむなく認めた。これだけの女性たちの活躍がありながら、人権宣言がいう「すべての人」は白人の成人男性に限定され、女性たちを裏切ったのである。

五十嵐武士・福井憲彦『世界の歴史21 アメリカとフランスの革命』(中央公論社)、高木八尺・末延三次・宮沢俊義編『人権宣言集』(岩波文庫)、浜林正夫『人権の思想史』(吉川弘文館)、杉原泰雄『人権の歴史』(岩波書店)、オリヴィエ・ブラン(辻村みよ子訳)『女の人権宣言』(岩波書店)、二谷貞夫・笠原十九司・油井大三郎ら『世界史B新訂版』(一橋出版)、池田理代子『ベルサイユのばら』(集英社文庫)、『NHKその時歴史が動いた・フランス革命 自由よ汝の名のもとに』

第39回 ヨーロッパ大陸帝国の挫折〜ナポレオンの時代〜
ルイ16世らの処刑は、国内外に衝撃、混乱をもたらした。その混乱を収拾し、軍事力を背景に台頭したのがナポレオンである。ナポレオンは国民の圧倒的支持を受けて、1804年に皇帝となった。フランス革命の理念に共鳴していた、同時代の大作曲家ベートーベンは、ナポレオンの皇帝就任を冷ややかなまなざしで見抜く。ナポレオンは、フランス革命の理念を外国に「輸出」しようとするが、それは外国の人びとにとってみれば、侵略行為にすぎなく、ロシア遠征をきっかけにナポレオンの栄光の時代は終結する。

五十嵐武士・福井憲彦『世界の歴史21 アメリカとフランスの革命』(中央公論社)、樺山紘一『エロイカの世紀 近代をつくった英雄たち』(講談社現代新書)、二谷貞夫・笠原十九司・油井大三郎ら『世界史B新訂版』(一橋出版)、『NHKその時歴史が動いた・ナポレオン皇帝への野望』

第40回 夏期課題コンテスト
夏休みに取り組んでもらった課題をクラスのみんなで評価しあってみよう。
期末テスト

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