2学期の授業録


第22回 夜の盧溝橋での銃声@〜日中全面戦争〜
1937年7月7日、夜の盧溝橋で銃声が鳴り響いた。盧溝橋事件の始まりである。これをきっかけにして宣戦布告もないまま日中全面戦争に発展する。8月からは上海で日中両軍が衝突し、そこには静岡34連隊も投入された。そして首都・南京をめざす。ここでは凄惨な殺りくがくりかえされた。南京を陥落した日本軍はさらに中国奥地をめざすが、中国の人びとによる抵抗運動が盛り上がる。結局日本軍は「点と線」しか支配できなかった。今回は地図をもとにして、作業中心で授業を行なった。

江口圭一『十五年戦争小史・新版』(青木書店)、江口圭一『体系日本の歴史M二つの大戦』(小学館ライブラリー)、『週刊朝日百科日本の歴史116 中国との戦争』(朝日新聞社)

第23回 夜の盧溝橋での銃声A〜日中全面戦争〜
前半は前回の内容を年表形式で振り返った(J科では、第22回の内容を夏休み前に行なっているので、復習の意味で)。後半は、「静岡の兵士も見た南京大虐殺」というテーマで話をする。内容は第24回にまとめて記す。
江口圭一『十五年戦争小史・新版』(青木書店)、江口圭一『体系日本の歴史M二つの大戦』(小学館ライブラリー)、『週刊朝日百科日本の歴史116 中国との戦争』(朝日新聞社)
第24回 静岡の兵士も見た南京大虐殺〜人間から「兵士」へ〜

「鶏でも殺すような」、「銃剣で突き刺したが面白い」と表現したのは静岡県出身の兵士が書いた手紙の一部である。この人たちが特別な人間であったのかというとそうではない。まったく普通の農民であり、日本では「良き父」「良ききょうだい」であった人物である。中国に行って、なぜこのような「兵士」になってしまったのだろうか?その原因を探る。なお南京大虐殺については、世界中に報道され日本は国際的非難を受けたものの、日本では報道規制が行なわれ、日本人が本格的にこれを知るのは戦後になってからである。この手紙の存在は、南京大虐殺が否定しようのない事実であることを証明するものである。

小池善之「南京事件を追う〜軍事郵便の中の日中戦争〜」(『静岡県近代史研究 第24号』静岡県近代史研究会)、江口圭一「中国戦線の日本軍」『日本帝国主義史研究』(青木書店)、早乙女勝元『戦争を語りつぐ―女たちの証言―』(岩波新書)、南京事件調査研究会編『南京大虐殺否定論13のナゾ』(柏書房)、『新聞に見る静岡県の100年』(静岡新聞社)

第25回 「有事立法」の正体をみた〜戦争経済と国民生活〜
アメリカでの同時多発テロから1年がたった。「被害者」の顔をするアメリカ大統領は「アメリカにつくか、テロの側につくか」と世界の国々をおどし、日本政府はヒョエ〜と右往左往している。そして「有事立法」の審議が再開されようとしている。「有事」となったら、国民にはどのような生活が待っているのだろうか?戦前の日本社会にそのヒントが隠されている。戦時中、ヒト・モノ・ココロのすべてが戦争に動員させられたのである。
山中恒『暮らしの中の太平洋戦争〜欲シガリマセン勝ツマデハ〜』(岩波新書)、中山恒『子どもたちの太平洋戦争〜国民学校の時代〜』(岩波新書)、
第26回 戦争か?撤退か?@〜第二次世界大戦の開始〜
日本には資源がないので、輸入に頼らざるを得ない。石油などの軍需物資はアメリカからの輸入に頼っていたので、極力アメリカとの対立は避けたいという志向はあった。しかし日中戦争の長期化、「東亜新秩序」建設の提唱などにより、現実はアメリカとの対立へと向かっていた。その中で日中戦争打開のために、日本にはどのような道が選択肢としてあったのだろうか?

江口圭一『十五年戦争小史・新版』(青木書店)、江口圭一『日本の歴史M二つの大戦』(小学館ライブラリー)、木坂順一郎『昭和の歴史F太平洋戦争』(小学館ライブラリー)

第27回 戦争か?撤退か?A〜第二次世界大戦の開始〜
ヨーロッパでは第二次世界大戦がはじまった。1940年4月からの、ドイツの「電撃作戦」が成功し、日本はうかれた。今こそ、南進のチャンス!近衛内閣はすぐさま、フランス領インドシナに進駐し、南進を実行。さらに日独伊三国同盟を結び、快進撃のドイツとも手を結んだ。しかし、日本のこのような行動が、アメリカ・イギリスなどとの対立を深めていく。戦争を避ける道もあったのに、日本は最悪の選択肢を選んだのだった。
江口圭一『十五年戦争小史・新版』(青木書店)、江口圭一『日本の歴史M二つの大戦』(小学館ライブラリー)、木坂順一郎『昭和の歴史F太平洋戦争』(小学館ライブラリー)
第28回 J科は進度がはやいので(月曜日課が水・木曜日にくると、A科での授業がつぶれ、進度に差が出るのだ)、これまでの復習としてVTR(NHKスペシャル「映像の20世紀」)を見て調整をした。
第29回 勝つ見込みはあったのか?@〜戦争責任論U〜
日本とアメリカの資源の産出量、工業生産高などを比較すると、圧倒的にアメリカが日本をしのいでいた。日本政府は、アメリカとの戦争の道を選択した。しかし、それは勝てる見込みがあってのことだったのだろうか?今回と次回、御前会議の前に行なわれる内奏等での昭和天皇や近衛文麿首相ら権力中枢にいた人びとの発言に注目する。

江口圭一『十五年戦争小史・新版』(青木書店)、藤原彰他『天皇の昭和史』(新日本新書)、藤原彰「天皇の戦争責任」『十五年戦争と天皇』(あずみの書房)、藤原彰『昭和天皇の十五年戦争』(青木書店)、山田朗『大元帥 昭和天皇』(新日本出版社)

第30回 勝つ見込みはあったのか?A〜戦争責任論U〜
昭和天皇は不安を示し(直前になっても)、近衛首相は「自信ない」、木戸幸一内大臣は「悲観的に考えておった」、永野軍令部長は「絶対(に勝てる)とは申しかねる」と発言。誰も、アメリカとの戦争に勝てるとは思っていないのだ。いったい何がアメリカとの戦争へとかりたてたのだろうか?「NO!」といえない雰囲気、何だろうか?しかも、帝国憲法には何の規定もない機関である御前会議が日本の人びとをはじめ、アジア全域の人びとの運命を決めていったのである。「責任者、出てこい!」といっても、戦後「オレは戦争を望んではいなかった」と、だれもでてこない。あぁ、無責任!現代社会にも通じる。
江口圭一『十五年戦争小史・新版』(青木書店)、藤原彰他『天皇の昭和史』(新日本新書)、藤原彰「天皇の戦争責任」『十五年戦争と天皇』(あずみの書房)、藤原彰『昭和天皇の十五年戦争』(青木書店)、山田朗『大元帥 昭和天皇』(新日本出版社)
第31回 開戦〜アジア太平洋戦争のはじまり〜
陸軍のマレー半島上陸、それに続く海軍の真珠湾攻撃によってアジア太平洋戦争は開始される。関連のVTR(NHKスペシャル「映像の20世紀・第5集・世界は地獄を見た」、「映像記録史・太平洋戦争(前編)」、各5−6分)を視聴した。
江口圭一『十五年戦争小史・新版』(青木書店)、江口圭一『体系日本の歴史M二つの大戦』(小学館ライブラリー)
第32回 《特論》消えかけたアイヌ文化〜北海道開拓とアイヌ民族〜

明治以後、「北海道」のアイヌの人びとの生活は一変した。「日本」式の名前の使用、アイヌ語の使用禁止など、同化政策がとられたからだ。このようにアイヌの生活・文化が崩壊する中ではじまった、アイヌ文化を記録しようとする知里幸恵さんや萱野茂さんの活動は注目に値する。北海道や沖縄での日本政府の「実験」は、のちに日本の植民地でも実行された。NHK教育・10minボックス「20世紀・日本の姿I北海道・アイヌ民族」、「世界の先住民・アイヌ」、『日本映像の20世紀・北海道(前)』の3本のVTRをそれぞれ5分程度視聴。今年の2年生は北海道へ修学旅行に行くので、この授業を設定した。

桑原真人「北海道の経営」『岩波講座・日本通史・第16巻』(岩波書店)、名古屋市博物館『馬場・児玉コレクションにみる北の民アイヌの世界』

中間テスト
第33回 悪魔の飽食@〜日本の加害T〜
テスト返却。その後、少々授業。1941年12月8日から始まった戦争には、いくつかの名称がある。戦争中は「大東亜戦争」、戦後は「太平洋戦争」、1980年代半ばからは「アジア太平洋戦争」という名称が提唱された。なぜいろいろな名称が登場したのか?「大東亜戦争」という名称は、侵略を美化しているので使うべきではない。

江口圭一『十五年戦争小史・新版』(青木書店)、江口圭一『日本帝国主義史研究』(青木書店)、家永三郎『太平洋戦争・第2版』(岩波書店)、木坂順一郎『昭和の歴史F太平洋戦争』(小学館ライブラリー)

第34回 悪魔の飽食A〜日本の加害T〜
中国における日本の加害、とくに731部隊に注目して授業を行なった。細菌の感染実験と生体解剖、凍傷実験、毒ガス実験などなど、「平常ならばアイデアそのものすら外道の思考として忌避されることが、ここ第731部隊では平然と実行に移された」(森村誠一の『悪魔の飽食』より)。その後の731部隊の隊員たちについても触れる。
江口圭一『十五年戦争小史・新版』(青木書店)、江口圭一『日本帝国主義史研究』(青木書店)、日本軍による細菌戦の歴史事実を明らかにする会『731部隊の細菌戦〜いまアジアが問う日本の戦争責任〜』、森村誠一『新版・悪魔の飽食』『新版・続悪魔の飽食』『第三部・悪魔の飽食』(角川文庫)、『毒ガスの島 大久野島 悪夢の傷跡』(中国新聞社)
第35回 拉致問題を歴史から考える@〜日本の加害U〜
日本の植民地であった朝鮮・台湾と「満州国」における日本の加害について、2回にわたって概観し、現在話題になっている北朝鮮による拉致問題を考えた。「満州国」や朝鮮・台湾は日本の戦争を支える兵站基地としての役割が与えられ、人や資源が戦争への動員された。「満州国」の万人坑と朝鮮での皇民化政策について資料を読んだ。日本は「解放のための戦争」といいながら、なぜ朝鮮・台湾と「満州国」を「解放」しなかったのだろうか?

家永三郎『太平洋戦争・第2版』(岩波書店)、木坂順一郎『昭和の歴史F太平洋戦争』(小学館ライブラリー)、本多勝一『中国の旅』(朝日文庫)、水野直樹・藤永壮・駒込武編『日本の植民地支配 肯定・賛美論を検証する』(岩波ブックレット552)

第36回 拉致問題を歴史から考えるA〜日本の加害U〜
今回は、朝鮮半島の人びとの戦争への動員についてみた。とくに静岡県下への強制連行・強制労働と「慰安婦(日本軍性奴隷)」の問題について、資料を読んだ。朝鮮の人びとの強制連行は、全国では70万人以上、県下では1万5000人以上といわれ、死者も多数でた。地元・清水市にも強制連行された。このような強制連行の問題と拉致の問題は本質的には変わらない。歴史の問題の解決なしに、拉致問題の解決はないだろう。

静岡県地域史教育研究会『静岡県民衆の歴史を掘る〜人びとの生きたくらしと歩み〜』(静岡新聞社)、静岡県近代史研究会『史跡が語る静岡の十五年戦争』(青木書店)、伊藤孝司『平壌からの告発』(風媒社ブックレット11)、内海愛子『戦後補償から考える日本とアジア』(日本史リブレット68、山川出版社)、田中伸尚・田中宏・波田永実『遺族と戦後』(岩波新書)

第37回 アジア太平洋戦争は「解放」のための戦争だったのか?〜日本の加害V〜
今回は、東南アジアにおける日本の加害について概観した。当初、「大東亜共栄圏」「アジア人のアジア」というスローガンは、植民地支配に苦しんでいた東南アジアの人々に日本軍を「解放」軍として歓迎させた。しかし日本軍の支配の実態が明らかになってくると、次第にその気持ちは幻滅していく。果たしてあの戦争は「解放」のための戦争であったのか?使用VTRはNHKで放送された『映像の世紀』第5集と第11集である。それぞれ4分程度視聴した。
家永三郎『太平洋戦争・第2版』(岩波書店)、木坂順一郎『昭和の歴史F太平洋戦争』(小学館ライブラリー)、内海愛子『戦後補償から考える日本とアジア』(日本史リブレット68、山川出版社)
第38回 ハガキ1枚=兵士の命の値段です〜国民の戦争動員T〜
柳田芙美夫さんの『静岡連隊写真集』に、のどに剣を突き刺して自殺した若い兵士の写真が載っている。なぜこの若い兵士は自殺したのだろうか?学徒兵を中心に「1銭5厘」といわれた兵士の境遇をさぐる。またこのようにして容易く集められたからこそ、「特攻」という思想がでてくる。そして将来の日本を支えるはずであった優秀な学生たちが、国家によって無駄に死んで(殺されて)いった。使用VTRはNHKスペシャル『学徒出陣』、同『映像の世紀』第5集と上原良司について扱った『特攻に散ったある学徒兵』という番組である。

柳田芙美夫『静岡連隊写真集』(静岡連隊写真集刊行会)、日本戦没学生記念会編『新版 きけわだつみのこえ』(岩波文庫)、日本戦没学生記念会『平和への遺書・遺品展〜戦没青年との対話〜』(江戸東京博物館ホールでの展示パンフレット、2002年)

第39回 軍需工場で働いた清水の高校生〜国民の戦争動員U〜
男たちは戦場に行った。残った女性たち、中学生(現在の高校生に相当する人びと)はどのように戦争に協力させられたのか。学徒勤労動員のようすを、清水地区を例に資料を読みながら考えた。個人的にぼんやりと考えていることだが、今、「はやり」のインターンシップ。清工でも来年度から2年生の2-3クラスを目標として(最終的には2年生全部)行なうそうだが、どうも私にはインターンシップが学徒勤労動員に重なって見える。話題の「奉仕活動」は言うまでもないが。学校教育はどこまでやればいいのだろう?付記。この授業は、J科では映画『きけ、わだつみの声』を見終わった後に行なった。

枝村三郎「静岡県における学徒勤労動員〜アジア・太平洋戦争下の生徒達〜」(『静岡県近代史研究・第19号』静岡県近代史研究会)、静岡県地域史教育研究会『静岡県民衆の歴史を掘る〜人びとの生きたくらしと歩み〜』(静岡新聞社)

第40回 映画『きけ、わだつみの声』を見る@
2学期中間テスト後の総まとめとして、1995年に封切された『きけ、わだつみの声』を3回にわたって視聴した。
第41回 映画『きけ、わだつみの声』を見るA
2学期中間テスト後の総まとめとして、1995年に封切された『きけ、わだつみの声』を3回にわたって視聴する第2回目である。
第42回 映画『きけ、わだつみの声』を見るB
2学期中間テスト後の総まとめとして、1995年に封切された『きけ、わだつみの声』を3回にわたって視聴する第3回目である。
第43回 きけ わだつみのこえ〜国民の戦争動員V〜
前任校でお世話になった真田清之助さんをお迎えして、学徒出陣・軍隊体験を語ってもらう。時間の余ったA2で行なった授業。
期末テスト

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