第 四 章  マンションえらびのコツ 
10. 契 約

● 重要事項説明書と広告の違い
   マンション購入をする決心をするといよいよ「契約」のはこびになる。しかし我国では契約の前に「ある儀式」をする。宅地建物取引業法では「契約の前迄に取引物件の重要事項を文書(重要事項説明書の事)で説明しなければいけない」からである。「契約の前」だから契約しない人には説明の義務はなく、罰則もない。厳密にいえば「契約前の重要事項説明」なので「儀式」の状態になる。だから「重要事項説明を受けた時、契約を中止するのは難しい状態」ともいえる。新築マンション等では販売時に似たような「物件概要書」を広告するがこれは広告であり、両者は本質が違う。
   広告とは法律の範囲内で販売意欲を促進するために最善の方法で消費者にアピールすることである。そのため消費者にとってもっとも重要な法律で定められた物件概要の表示はスペース全体の数10%にも満たないうえ、文字が極端に小さく読みにくいのが現状である。消費者自身が賢くなるには購入前に重要事項説明書の写しを入手するくらいの努力が必要になる。表4-13の注意点以外に疑問があれば文書で説明を受けるよう心がけたい。 

表 4 - 13 重要事項説明書の注意点
No.注 意 点 No. 注 意 点
売主・仲介業者の免許番号 11 区分所有者に不利益な原始規約
説明者の宅建主任者証 12 物件概要と重説の相違点
建物名称・所在地 13 第三者損害保険加入の有無
専有面積・専用使用権等の場所・面積等14数期分譲の場合の価格変動
敷地の権利(所有権等)・持分 15 新築売れ残り物件の価格変動
敷地に関するその他の内容記述 16 その他宅建業法に基づく項目説明
法令による許認可・制限の番号 17 過去20年の所有者と譲渡確認
法令・行政指導で負担する項目、明細18 前任者の債務処理の確認
分譲敷地内、将来増築有無 19 口頭説明の文書化
10 建物に事件・事故・災害等の記述 20 その他

● 契約書の注意点
   契約書は会社によって形式が異なるが、基本的に下記事項が主内容になる。
  • 売買の目的
  • 売買代金の支払い方法
  • 土地建物の面積
  • 手付等代金以外に授受される金銭内容
  • 物件の引渡しと登記
  • 権利・負担の除去等
  • 所有権等の移転
  • 損害保険
  • 危険負担
  • 契約解除の条件等
  • 住宅ローン特約の特例
  • 特約条項
    • (当事者間で取決めた約束事で、将来問題が発生した時点で 重要な意味を持つ。口頭約束ではなく文書化が大切である。)
    • 資金調達に関する前金の取り扱い等の方法・処置   
    • 内覧会の指摘事項が是正されない場合の処置方法   
    • 区分所有者に不利益な特約のある契約書内容の是正
  • その他、契約内容で書面にする事が適切と思われる項目

表 4 - 14 契約書項目例
No.項  目内 容 No. 項  目内 容
売買
物件
表示
名    称  23契約
条文
所有権等移転 
所  在  地  24 目的物の引渡  
土地地  籍  25 瑕疵担保責任  
権  利  26 アフターサービス  
共有持分  27 費用負担帰属日 公共料金等
建物規模・構造  28 危険負担  
建築面積  29 共有持分処分 単独処分禁止
述床面積  30 管理規約遵守  
専有面積   31 継承義務 債権・債務等
10 専用使用権部分等  32 契約の解除  
11 専有・共有持分   33 違約金・損害賠償 
12 規約共用部分   34 譲渡禁止 権利義務等
13売買

引渡
売買代金総額   35 住宅ローン特約  
14 支払条件・支払日   36 買換えの特例  
15 物件引渡日予定日は不可 37 従前の特約 建設以前を含
16 売買代金以外の負担金別紙参照 38 連帯債務 買主複数例
17 住宅ローン等特約  39 紛争解決 裁判所指定
18添付書類 別紙参照 40 特記事項 文書化
19条文売買目的、成立、価格   41 その他  
20 物件面積算定基準   42    
21 登記申請書類   43    
22 登記等費用負担   44特約条項  
  
● 契約書
   契約書の契約内容に疑問が生じた場合は不動産相談所とか不動産業、法律の専門家に相談したほうが良いだろう。必要であれば契約書を公正証書にする事も検討すべきである。契約には煩雑な手続や確認すべき事項が多い(読売新聞新マイホーム入門講座より)ので注意しなくてはいけない。要約すると
  1. どんな金銭であれ支払う時は何の為の金でどういう性格のものかを文書で確認してから支払う。
  2. 前金保証の保証書は必ず受け取る。
  3. 書類に記名押印する場合はどういう性格の書類か自分に不利にならないかを文書で確認してからにする。
  4. 重要事項説明書のコピーを事前に入手して検討してから説明を受ける。特約事項がある場合については内容を確認する。
  5. 売買契約書のコピーも事前に専門家に検討しもらう。
  6. 契約書内容に不安点がある場合には、契約書を公正証書にする方法を検討させる。
等が注意点として書かれているが、ここでもやはり信用のある買主側の不動産仲介業者を選択する事が重要だといえる。

● 契約書の取り交わし
   契約に関する全てが整うといよいよ契約になる。契約によってはじめて権利の移動が可能になり、購入者は代償として金銭を支払う。
   契約を行う場所は一般的に不動産業者事務所、取り扱い金融機関事務所が多い。これは契約業務遂行上ふさわしい場所であるからで、逆にこうした場所以外での契約書の取り交わしは例外と考えてよいだろう。新築マンション以外の契約で重要なことは、購入者側の不動産仲介業者が同席していることが絶対条件であり、担当者の指図以外ではいかなる書類にも記名、押印してはいけない事を遵守する必要がある。購入者側の不動産仲介業者がいかに購入者にとって重要かは契約が順調でないときに初めて実感し、そして消費者の唯一の見方である仲介業者の重要性に気づいたときには全てが遅いのが通例である。

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