リビアの印象


チュニジアから入るとまず驚かされるのは、
アラブの割には万事スマートなチュニジアとうって変わって、国境を一歩超えた途端、リビア人のなめるような好奇の目にさらされることだ。
特に女性は「ここは本当にイミグレーションか!」と思うほど、仕事そっちのけにした係官に囲まれ、しつこく言い寄られることになる。空港の係官も同じだった。
概してこの国の玄関口にいる人たちは好奇心が強いらしい。
街中ではそうでもない。一般のリビア人は外国のことなどほとんど知らないが、玄関口にいる人たちはなまじ日々外国人の姿を目にしているだけに、うらやましくなって脱出願望が強くなるらしい。
 
脱出願望が強くなるのは何もリビア人だけではない。
入国して3日で私も脱出したくなった。
しかしチュニジアに戻るのにも数日を要するので、仕方がないから耐えた。耐えているうちに慣れ、慣れたら少し楽しめるようなった。

1999年、リビアは革命30周年をむかえた。
テロリストを保護し、国連の経済封鎖を招いたカダフィ大佐の独裁政権のもとで、国はほとんど鎖国状態だ。
産油国なのだから多少は潤っている豊かな国を想像していたが、期待は裏切られてしまった。
古びて時代遅れの建物、貧しげな人々、食料品の乏しさ…。
オイルマネーはほとんどカダフィとその側近の懐に入ってしまう。
ただ病院や学校は無料なので、基本的な生活の保証はされているらしいが。
 
もうひとつ驚いたのは、外国人労働者の多さだ。
モロッコ、チュニジア、アルジェリア、エジプト、シリア、イラク等、近隣のアラブ諸国から大勢の外国人が出稼ぎに来ている。
街で話しかけてきてつきまとうのは、主にこの外国人たちだ。
彼らは英語を話すし、観光国の人間は外国人に慣れているからだろう。
一般のリビア人はシャイでまじめなので、つきまとわれることはあまりない。
 
以前にリビアを1ヶ月ほど旅行した知人によれば、リビア人は「今まで行ったどのアラブ諸国の人々よりも親切だった」そうだが、私の印象では「?」。
確かにリビア人は外国ずれしていなくて素朴だし、信じられないくらい親切な人にも何人か出会った。
しかし怖い目にも随分あったので、手放しでお勧めできるところではない。
特に女性が一人で旅をするには世界一向かないところかもしれない。一人で行くほうが悪いのだが。

ホテルでは外国人女性が一人で泊まっていると、あまりの珍しさに部屋を訪れる(?)人があとをたたない。
どんなに激しくノックされても絶対に開けてはいけないし、いかにも悪気はなさそうな誘いを受けても断るほうが無難だろう。
リビアの遺跡はとにかく広いが、遺跡の中に長時間一人きりというのも、できれば避けたほうがいい。
ガイドと二人きりというのもいただけない。
ではどうしたらいいの!といってもあまり解決策は思いつかないが、いやな目に会うのを覚悟の上、細心の注意を払う、としか言いようがない。とにかくあまりにも外国人が珍しすぎるのだ。
 
独裁政権のもとで暮らす人々というのは、定められた生活に一生を縛られてしまい、鬱屈したものをたくさん抱えているのだろうか。
私が接した人々のほとんどに、現状に満足できない焦燥のようなものを感じた。
一般の人々は決して口にしないが、みんなカダフィを嫌っていて、早く世の中が変われば言いと切に願っているようだ。
でも革命後30年もたっているのに、カダフィはまだ57歳!あと20?30年はしぶとく生きていそうだ。リビアの将来に暗澹たるものを感じる。
 
 

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