ひとつは、急造されたスギ、ヒノキの人工林の荒廃。たったひと世代かふた世代まえに植えられた緑の森も、遠目にはともかく、わけいってみれば真っ暗なモヤシ、陰鬱な森はひとたびの風か雪かで潰滅する危うさです。
いまひとつは、放置されたタケの侵入、照葉樹林への急速な遷移。
落葉樹林が原始・極相の森、照葉樹林に還っていくとともに、明るい林内でゆたかな相を見せていた氷期、縄文以来の生態系は、おそらく覚めることのない眠りに就きつつあるのでしょう。もはやカタクリやギフチョウなどは幻のスプリングエフェメラルです。イネとともにやってきて整備された水路、田に張られるた水でアジアの湿地帯の生活を謳歌し、干された田でつかのまの大陸の環境に息づいていたものたちも、ただ農薬からだけでなく、その生きる場を奪われつつあります。カエルもドジョウもトンボも、生活史のなかにウェットランドを必要とするものたちの姿を眼にすることは希になりました。
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