真理2_4_05 | 次頁 | 前頁 | 索引 | ホーム |
る程のもので、もし、心して洞察の視力を集中するならばそれは、部活動という制度そのものが持つ培養基としての優れた性質と生徒達がその若さの中に本来的に持っている新鮮な生命力であることに気付く筈である。少しオーバーな表現を許されるならば、新教育制度の中にあって部活動は、敗戦によって日本が得た最良のものの一つである。たしかに旧教育制度では生徒の自発性を育てるこのような重要な場が欠落していたと思う。部活動は授業と表裏をなすものとして並立させるべきものであると思う。
私は十年の物理部の歩みの中に生まれ、脈々と生きつづけている伝統を明らかに読みとることができる。それは要約すれば、次のように言えよう。
1.真理の探求 2.創造 3.協力
私見を許されるならば、教育の場というものは、単に現態勢への後継者を養成する機関ではなく、次代の全く新しい芽の苗床であると思う。であるからこの物理部の伝統には抵抗の色彩が、即ち、つめこみ主義や模倣や競争主義に対する抵抗の姿勢が見えるのである。このような精神に基いて、物理部の諸君や大学や社会にいる多数のOB諸君のいきいきとした活動が、いま次代をつくりつつあると私は見ている。
富士山麓に生まれた、この小さい若い芽が重い土を排して、すくすくと逞しく伸びることを、私は固く信じている。
昭和50年6月5日 於 物理室