第 二 章 マンションの基礎知識 |
B 建 物
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1. 建物のしくみ |
建築物の原則は土地の上に定着していなければならない。(建築基準法より)建物は構造、仕上、建築設備等で構成される。マンションの構造は区分法上の性質から鉄筋コンクリート造、鉄骨鉄筋コンクリート造、鉄骨造が基本になる。仕上は、外部と内部に分けられ、外部(に接する部分の)仕上は構造体を保護するために防火、耐火性があり自然環境条件に耐えられる材質と同時に快適な生活を営める意匠的美観が要求される。内部仕上は「良好な住環境の確保」の基本部分である。建築設備はライフライン等日常生活に不可欠な電気、水道、ガス、冷暖房、情報設備等が含まれ、供給元とは電線、管類で繋がれている。こうした要素が合理的に配備されマンションが構成される。 |
1.1 構 造
建築構造は建物の骨組みにあたり基礎部分と上部躯体部分に分類される。基礎部分は杭基礎と構造基礎とに分けられ、杭は基礎から伝わった荷重を支持地盤に伝え、基礎は上部躯体の全荷重を支え杭に伝える役割をする。上部躯体はそれぞれ柱・梁・壁・床等に区分され各々の役割により建物を支え、各部材から基礎に荷重を伝える役割を持っている。マンションの場合構造体を構成する代表的な構造物が鉄筋コンクリート造、鉄骨鉄筋コンクリート造、鉄骨造である。 ● 鉄筋コンクリート造 鉄筋とコンクリートを一体化し結合した材料で骨組を形成する建物の総称を鉄筋コンクリート造(RC造)という。コンクリートは強アルカリ性(PH12.5)で圧縮強度に強い反面、引っ張り、曲げ強度が劣り圧縮強度の約10分の1程度しかない。一方、鉄筋は圧縮、引っ張り、曲げ強度共に強いが耐火性、耐酸性に劣る。そこで両者を一体化して強度、耐火性に優れた構造体になる。主な構造耐力形式は、ラーメン構造、壁式構造、プレキャスト構造である。一般には6〜7階建てだが、近年30〜40階建ての超高層鉄筋コンクリート造マンションも建築されている。 ● 鉄骨鉄筋コンクリート造 鉄筋コンクリート造に鉄骨を併用した複合構造体で骨組み(主に柱、梁)を形成した建物を鉄骨鉄筋コンクリート造(SRC造)という。高層建築(14〜20階建程度)に採用される強硬な鋼造体をいう。 ● 鉄骨造 主要構造部(柱、梁)に鉄鋼材を使用して構成する建物を鉄骨造(S造)という。鉄筋コンクリート造等に比べて軽量で粘りがある反面耐火性、耐酸性に弱いので鉄骨材は耐酸性塗装と一定時間耐火性の有る耐火被服材で覆う必要がある。鉄骨造は構造の性格から超高層建築物に適している。 ● 免震構造(工法) 近年、免震構造の高層分譲マンションが売り出されている。構造上の基本概念は建物の基礎部分に免震装置を設置し建物への地震力の伝達を抑えようとする工法である。長所としては、地震発生時に建物の揺れが非常に少ないことによる精神的安定感があることで、当然耐震力にも優れている。問題点は耐用年数の算定が不確定なこと、維持管理費が高額になる可能性があること、不測の事態への対応方法等未知の分野が多く、処置方法に問題があることが挙げられる。 1.2 仕 上 げ 構造体が骨格ならば仕上げは骨格のまわりを形成する造形に該当し、外部仕上と内部仕上に分類される。仕上材は各々の役割によって使用場所が異なる。 ● 外部仕上げ 外部仕上の目的は建物全体の美観と自然環境を含む外的要因から構造体を保護する両面がある。外部仕上には屋根等の平面部分の雨水保護と垂直壁面の構造体保護及び外部の美観的要求を満たす面がある。又、防錆対策上外部仕上に鉄材の使用を最小限に抑えている例が多い。その他の仕上には、採光・出入りの為のサッシ、バルコニー、外廊下、等の共用部分がある。 ● 内部仕上げ 分譲部分の室内仕上には、床、壁、天井、内部建具、家具類等があり、住む人が最も注意をはらう部分である。最大の目的は良好な住環境の保持にあるので各人の希望に合わせた内容が要求される。共用部分の内部仕上は、維持管理が容易な事が望まれる。 1.3 建築設備 建築設備には、情報を含む電気設備、給排水衛生設備、ガス設備、冷暖房(空調)換気設備、昇降機設備、等があり立体式駐車場設備とか情報関連設備のような新しい設備機器類も開発されている。日常生活に欠かせないものからより便利に活用する設備機器まで日常生活上の利便性と将来を考慮した内容が望まれる。 1.4 新しい工法の対応 このようにマンションの問題点から次世代への改善点は幾つか見出せる。改善、改装の為には技術開発に備えたスペース的余裕を確保する事が大切と考える。又免震工法のような今迄の概念を超えたマンションが建築されているがメンテナンス、維持管理、想定を超えた事態処理等の問題にどう対応するのか確認をしておく必要がある。マンション技術には危機管理への充分な対応が望まれる。 |
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