第 二 章 マンションの基礎知識
B 建 物
4. 建築材料
   近代建築の三要素は、鉄・セメント(コンクリート)・ガラスである。建築材料には有機質と無機質があり無機質は有機質に比べて安定した性質を持っている。殆どの建築材料は化学反応を起こしてしてガスや熱を放出し人体に少なからず影響を与える。建築材料は「建築のしくみ」同様に構造材、仕上げ材に分けて検討すると理解しやすくなる。

● コンクリート
   19世紀後半、フランスの植木職人がモルタルと針金を組み合わせて植木鉢を作ったのが鉄筋コンクリートの始まりといわれる。コンクリートは耐火性に優れ、圧縮強度(上から押し潰す力)に強いが反面、引っ張り、曲げ(ねじれ)強度は劣り圧縮強度の1/10程度の強度しかない。コンクリートの主材料は、セメント・細骨材(砂)・粗骨材(砂利、砕石)・と水及び混和材を練り上げて出来る。セメント・砂・砂利の構成比は概略で重量比、1:3:4〜5であり、水とセメントの割合(これを水セメント比という)は概ね0.6:1である。コンクリートの比重は一般的に2.3でありこれを普通コンクリートという。

● 鉄筋・鉄鋼
   建築工事に使用される鋼材は炭素鋼である。鉄筋工事に使用される鋼材を異形棒鋼と呼ぶ。鉄の物理的性質は、比重が7.85、融点(溶出す温度)は約1500℃であるが、鉄骨構造材の場合は350℃鉄筋材の場合550℃を耐火基準としている。鉄の強度は引っ張り強度、圧縮強度、曲げ強度共はほぼ等しく約70〜80Kg/mm2である。

● 外部仕上げ材
○ 屋 根
   屋根防水工事に使用する材料はアスファルト防水系、シート防水系、塗膜防水系等があり材質は有機質である。何れも10年(塗膜防水は5年)程度の品質保証をしている。防水に付随する断熱には外断熱と内断熱とがあり、最上階に住む人には保温力の良否が快適生活に影響を与える。日本の気候は多雨の為に各々の特性と目的に即した工法、材料の選択が望まれる。
○ 外壁類
   外壁仕上げはコンクリート面等を処理し、吹付けるか、石タイル等を貼付ける例が多く、吹付け材は有機質弾性系、タイル類は無機質磁気質系が多用される。尚、躯体に付着する仕上材は躯体の伸縮に大きく左右されるので躯体にひび割れが生じない事が大切である。
○ 外部その他
   今までの建物ではバルコニー、外廊下に使用する金物類はコスト面から鉄が多く使用されたが、最近はサッシ同様アルミ、ステンレス製が多い。手摺は恐怖感が無い適度な厚み、通風、プライバシー保護が求められ、屋外物干し場は適切な用法の基で、健康上乾燥設備より優れている。尚長期修繕計画案では8〜14年後にバルコニー防水工事を計画しているが、新築時に防水処理を施さない例もある。

● 内部仕上げ材
   内部仕上げは床・壁・天井等に分類され、仕上げには仕上材を取り付ける下地が施してある場合と構造体に直接付着させる場合とがある。下地を設け躯体の間に空間がある場合を二重工法といい、コンクリート面に直接仕上材を付着させる工法を直付けという。二重床(天井)の利点は下地空間である程度防音効果が期待できること、直床(天井)の利点は天井の高さ(天井高)が高く確保できることで、欠点は各々その逆になる。防音、防振対策が万全かは設計図の矩計図等を見る必要がある。その他の仕上げには内部建具、住宅設備機器類、家具類等がある。木材の特徴として下地材を除けば合板類が多い。合板に使用される接着剤からはガスが放出され人体に影響を与える場合がある。
○ 下地材
   下地材は木材が多く用いられたが近年コストダウン、工期短縮によりシステム化、簡略化される例が多い。コンクリートと表面仕上げの間に断熱、結露防止、防音等の目的で断熱材、吹付け材を施工している場合があるが、材料が人体に与える影響を考慮し、どのような材質が生活に支障がないか検討する必要がある。
○ 床
   床仕上げには畳・フローリング等の木質類、ジュータン類、クッションフロア等のシート類の有機質系、石・タイル等の無機質類等がある。床材選択のポイントは荷重に耐えられる材料であることと、部屋で発生する音や振動を下階に伝えにくい材質が要求される。
○ 壁、天井
   壁、天井表面仕上げはクロス類が最も普及している。クロス材には有機質系、無機質系両方があり下地材とあわせて法律、環境条件に適合した方法で使用される。壁材には他に木質系、石・タイル系、土壁等左官系があり、天井材には木質系、無機質系吹付け・ボード類がある。壁、天井材に要求されるのは第一が美観であり、その他に防音性、感触性等を考慮する必要がある。
○ 接着剤
   仕上げ工事には隙間、接合部に接着剤やシーリング材が使用される。殆どが石油製品であり、個人差があるが人体にかなり影響を与える。接着剤は家具類も含め総量を検討すべきである。そして出来れば接着性が多少劣っても出来るだけ人体に影響の少ない接着剤類を選択したほうが良いだろう。

● 建具類
○ 玄関戸類
   玄関扉は火災に耐えられる構造で鉄扉が使用される(甲種防火戸という)。最近では耐震補強建具、防犯対策上、扉には新聞受け等の開口が無く、異なる二種類の鍵をつける玄関戸が普及している。
○ アルミサッシ・ガラス
   アルミサッシはアルミ枠とガラスとを併せて使用して採光・換気、バルコニーへの出入りの役割としている。アルミサッシは建物の高さに適合した強度が使用され、ガラスと併用して防音対策が施される。サッシの役割の中に外部の眺望があり、使用するガラスの種類をめぐって売主と購入者間でトラブルになった例もある。窓が少ないマンションではサッシの有効利用について検討も必要になる。

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