第 三 章  マンション管理のホイント
2. 管理組合

● 管理組合の役割
   昭和57年改正区分所有法第3条では「区分所有者全員で管理組合を構成できる」。即ち、マンション管理は「区分所有者で構成される管理組合が中心になる」と条文を追加し、共同管理の仕組みに関する基本構想を示している。何故管理組合が必要かといえば、「構造上分割することができない建物を共有し、共同使用して」いて、敷地及び建物を個人管理する事は現実的でなく、全員で共同管理せざるを得ないからである。共有部分の建築費の割合は全体の過半を超えていて数字のうえからも管理組合の役割の重要性が理解できる。反面区分所有者の多様化と法律の改正よりもマンション利用の変化がはやい為に問題を早期に解決する必要性に迫られる。その為には区分所有者の理解と合意不可欠で、組合員の協力が得られがなければ管理組合の健全な運営は困難になる。

● 管理組合の組織
   区分所有法第4・5節ではマンションの共同管理の方法として管理者・規約・及集会(総会)について概要を規定し、標準管理規約では第6・7章で管理組合の役割・総会・会計等について比較的詳細に定めている。しかしこれだけでは問題が発生した場合の管理組合業務の具体策が少なく、特に危機管理対策に乏しい。また業務委託の項目では「これら業務の全部又は一部を第三者に委託できる」としている。これでは管理組合の責任の実態が明確でなく組合運営そのものが不透明になりかねない。原因は「標準管理規約」誕生の背景ではないかと思う。業務委任と責任は同一なのかを明確する為には組合の業務責任と委託の範囲を具体的に表示する必要がある。管理組合の業務責任と管理会社に業務を委任する事とは異なる次元の問題と考えるべきである。

● 管理組合とのつきあい方
   管理組合役員選出方法は概ね順送りであり、役職をくじ引きで決める管理組合の例もある。区分所有法が役員に選出された場合の心構えとしては引受けられない場合は理由を具体的に説明して明確に辞退する事が必要であり、選ばれて役員に就任したら他の役員と協力して組合運営に努めるのが責務になる。役員でない組合員も組合の行事(殆どは年一回の総会)にはできる限り参加する様に心がける事が望ましい。何れの場合でも参加、不参加の意思表示は明確にする事がコミュニケーションの確保と健全な組合運営につながる。
   区分所有者同士の場合のつきあい方は最小限の意見交換が出来る知人を持つ事が必要と考える。理由は問題が発生した場合、或いは組合役員として決断する場合に自分の意見や主張がマンションとか、地域社会で常識的か最善であるかを参考意見として検討し合う事が大切だからである。
   我国では会議などの場で自己主張を明確にしない傾向が見受けられるが、敷地や建物が共有である以上「ある程度の根回し型」で相互に意見を交換し合う事必要ではないかと考える。組合活動や近所付合いに無関心で問題が生じた時だけ自己主張するよりは必要に応じて議論と協力し合う方がマンション運営は活性化される筈だ。区分所有者や住人がマンション内で生じる問題を処理する相談窓口は管理会社ではなく管理組合であり、組合を良好な状態で運営していくには組合員の自覚が大切になる。必要以上の付き合いや、プライバシー保護にこだわらず良好な住環境を維持する為の「団体生活での近所づきあい」は案外難しいかも知れない。

● 管理組合と管理組合法人
   改正区分所有法では「一般の管理組合」と、「法人としての管理組合法人」の二種類の管理組合を認めている。「一般の管理組合」(以下一般組合という)は任意団体であり「権利なき社団」ともいわれている。管理組合法人(以下法人という)になると法律上の規制があり権限と責任が一般組合に比べてかなり明確である。法人の長所は「法人所有の不動産登記、電話加入債権の取得、預貯金等の行為が法人名で出来る。金融機関からの修繕費借り入れに便宜で、法律行為がやり易い。法人の情報開示により第三者の危惧が取り除かれる」としているが別の解釈では、「(管理組合が)法人で有る無しは登記以外に実務上大きな違いはない。」という意見もある。一方法人の方には破産法が準用され、「管理組合法人として存立中は(他の)法人一般と異なり債務超過は破産原因にはならず、債務は各区分所有権者が分割的個人責任を負う(区分法53条)」。即ち法人理事行為に対して区分所有者の持分に応じた債務を負担し終わるまで責任を回避できない点が他の法人組織と大きく異なる。標準管理規約では一般組合役員の業務は限定され、決裁権は原則として認めていないが法人の理事は、民法上の代表権を有し決裁権があり、役員権限にかなりの差が生じる。管理組合運営上の事故を防ぐには規約で組合役員の責任と区分所有者の負担範囲を明確にする必要がある。

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