第 三 章  マンション管理のホイント
3. 管理規約

● 管理規約とは何か
   管理組合が結成されると組織を維持する為にルール作りが必要になる。管理及び運営の決り事をまとめたのが管理規約である。マンション管理規約の基本が住宅宅地審議会答申の標準管理規約である。規約は全部で3編(単棟型・団地型・複合型)あり、マンションの敷地及建物全体の管理を行う為に管理組合が共有部分及び専有部分の管理及び使用について基本的ルールを定めている。規約の原点は区分所有者の共同の利益増進と良好な住環境の確保にある。下記は単棟型の例である。

         第一章 総則
         第二章 専有部分、共用部分の範囲
         第三章 共有
         第四章 用法
         第五章 管理
         第六章 管理組合
         第七章 会計
         第八章 雑則

● 標準管理規約の問題点
   多くのマンション管理規約の雛型になっているのが住宅宅地審議会答申による標準管理規約である。しかし規約の内容にはかなり曖昧な表現が多く、トラブルの原因にもなっている。トラブルのもう一つの原因はマンション販売業者が原始規約を作成する事にある。一旦出来た管理規約を改正するには管理組合員の4分の3以上の賛成が必要であり、改正によって特別な影響を及ぼす規約の変更には当事者の同意が必要な場合も有り、改正は困難なのが実情だ。区分所有者本位の規約を作成するとか標準管理規約との相違点を説明するのが本筋である。管理規約を販売業者が作成する事自体問題があり、規約の作成者は区分所有者に限定されている事を認識する必要がある。特定な人(会社)に有利な条文を付加する規約は認められないのは当然といえる。

● 規約、規則の曖昧表現例
   表3-1は標準管理規約及び使用細則から曖昧表現、語句の例である。やや重箱的指摘かも知れないが実際に裁判で争われた例もある。曖昧表現は各々の実情に合わせ具体的表現に改める基準が必要になる。ただし基準を総て厳格に運用する事は組合の管理が円滑に行かない可能性があるから、運用は慎重でなければいけない。重要な事は問題が発生したら管理組合は何処まで対応するのか、しないのか、を明確にする事である。

表 3-1 標準管理規約及び使用細則の曖昧表現
条   文 問 題 点
円滑な(共同生活)・・・・・・・  円滑の基準は何か?
・・専ら住宅として ・・・・・・   会社の本店表示は許されるか?
(共用部分等を)通常の用法に・・・ 何処までが通常の範囲か?
・・に立ち入り必要な調査・・・   立ち入る範囲と調査項目は何か?
・・常に適正な管理・・・・・・   適正の定義は何か?
・・・正当な理由・・・・・・・   正当な理由の根拠が不明確。
・風紀、秩序及び安全の維持・・ 風紀、秩序の基準はなにか?
・・・共同の利益・・・・・・・   共同の利益範囲とは何処まで?
・・・良好な住環境・・・・・・   良好な環境とは何か?
業務の全部・・第三者に委託・・ 委託の範囲が不明確。
活動・・必要経費・・・・・・・   活動か業務の区分け、必要経費の明細が不明。
(義務違反者に)必要な措置・・ 具体的な措置方法の表示が無い。
・ ・秩序を乱す・・勧告・・・    秩序を乱す範囲が不明であり勧告内容も不明。
警告を行う事が出来る・・・ 「出来る」と「実行」は異なる。この場合「しなくても良い」とも解釈できる。
(生活の本拠)・必要な平穏さ・ 平穏の基準はなにか?
公序良俗(に反する行為)・・・   公序良俗の基準はなにか?
振動、騒音、臭気、電波等・ これ等の基準及び程度が不明。 
(階下に)十分注意・・・・・・  十分の度合いとは何か?
(トラブルに)自己の責任と負担・ 管理組合の業務責任と自己責任範囲が不明確。
他の居住者に迷惑・・・・・・   迷惑の基準はなにか?
動植物を飼育、研究すること・ 動植物及び飼育、研究の定義が不明確。
・・(楽器等を)長時間・・・・    長時間の基準はなにか?
・・音量を著しくあげる・・・   騒音の基準が不明確。
・・類する・・ 類する基準はなにか?

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