第 三 章  マンション管理のポイント
4. 管理組合の管理方法

● 施設管理、運営管理と時間管理
   「ゴミ問題をどうするか・・共用部分の掃除は? 外壁が汚れている・・下水が漏れている・・大規模修繕が必要・・」と年数が経てばマンション内に問題が山積してくるが、それでは「どうマンション管理をするか」となるとあまり明確でなく管理する側も方法や考え方が各々異なる。そこでマンション管理を「施設管理(ハード)」と「運営管理(ソフト)」に分類して問題点を分析してはどうかと考える。ある問題に対して「施設」「運営」に分類するか、或いは一つの問題を「施設・運営」の両面から検討し、問題点を整理し、絞る事で解決策を導く方法である。表3-2は管理組合が行う管理業務例で、この項目から更に内容を細分化し、その上で時間的な管理についての管理業務を検討していく。「日常業務」が良いのか「週・月・年」等の定期業務が適当なのかを決める。このように問題点が何かを細かく煮詰めて、管理組合の実情に合った業務内容を決める方がより良い組合管理方法につながる。

表 3 - 2  管理業務区分例
No.項   目  全体  運営  施設   備  考  
A 事務管理    
1管理組合の組織・集会     
2財務・会計・予算     
3委託管理     
4規約・秩序維持     
B 生活管理     
1ごみ処理     
2共用部分清掃     
3受付・立会・交渉     
4管理記録     
C 土地建物管理     
1施設・設備点検     
2修繕計画     
3駐車場等     
4その他共用部分     
D 防犯・防災管理     
1防犯対策・実施計画     
2防火対策     
3災害時避難計画・連絡等           
4共用部分安全対策     


● 紛争処理対応と管理組合業務
表 3 - 3 トラブルの内訳(重複回答)
標準管理規約では管理組合業務に 「風紀・秩序及安全の維持、良好な 住環境を確保するために必要な業 務を行う」と定めている。しかし (財)マンション管理センターの アンケートでは80%以上のマンシ ョンで生活マナー等のトラブルが発 生している。重複回答では当事者間での 話し合いは5分の2に達し管理会 社に相談した例は5分の2になる。 管理組合が業務上紛争処理した比率 は少ない。又、表面化しない問題にマンション内での痴 呆及び心身に障害がある人たちの他の住民に対する迷 惑行為の防止がある。管理組合は、 (紛争処理に)必要な業務を行うので あれば具体策を示し、限定して業務を行うのであれば範囲を決め、その為の組織を作るべきである。もし業務を行わないなら条文を削除するのが妥当である。そうしなければ「被害者」が「加害者」に逆恨みされてしまう可能性がある。

● 生活騒音基準例
   表3-4は住宅(集合住宅を含む)の騒音基準例である。表をもとにマンション内トラブルの最大原因になる音の問題を例にとってみよう。表3-4は住宅(集合住宅を含む)の騒音基準例である。
   生活音及び作業音を測定するのが騒音計で、東京都内では騒音計を貸与している自治体もある。機会があれば騒音計で部屋から出る音、外部から入ってくる音を測定してみる事をお奨めする。目的は「自分が被害者」だという反面「加害者」かもしれないという感覚を身に付け普段自分が出す生活音を認識する必要からである。被害感、加害感の認識の相違はデータからも加害者意識が欠如している事が明白に表れている。マンションの場合、下記の行為が注意事項になるので今後の生活マナーとして近隣に配慮すべきである。
  • 床の上で飛び跳ねたり走ったりする。
  • 椅子を引きずる、飛び跳ねる。
  • ドアの開閉で騒音を出す。
  • 掃除機、洗濯機及び排水の使用時間帯。
  • 楽器、音響機器の使用方法。 
  • その他近隣に迷惑をかける行為

図 3 - 1 騒音レベル例 (画 豊島区資料より転載)
騒  音 測  定 評  価
ガード下
DBA

100




非常にやかましい
自動車騒音 90

80

どなり・さけび声
テレビ・オーディオ 70

60

電話が聞こえない

大声の会話
一般事務所
50



40


普通の会話

静かな状態(夜、睡眠の妨げ)
静かな住宅街
30
 

20



非常に静かな状態


表 3 - 4 東京都公害防止条例:日常生活に適用する騒音基準値
区 域 の 区 分 時 間 の 区 分 境界の音量(フォン)
第1種

区 域
第1種住居専用地域
第1種 文 京 地 区
AA  地   域
午前6時〜午前8時 40
昼間 午前8時〜午後7時 45
午後7時〜午後11時 40
夜間 午後11時〜翌朝6時 40
第2種

区 域
第2種住居専用地域
住  居  地  域
無 指 定 地 域     
午前6時〜午前8時 45
昼間 午前8時〜午後7時 50
午後7時〜午後11時 45
夜間 午後11時〜翌朝6時 45
第3種

区 域
近 隣 商 業 地 域
商  業  地  域
準 工 業 地 域
工  業  地  域         
午前6時〜午前8時 55
昼間 午前8時〜午後7時 60
午後7時〜午後11時 55
夜間 午後11時〜翌朝6時 50


● 管理組合が作る管理規準
   標準管理規約では管理組合の管理業務を義務づけ、標準管理委託契約書で具体的業務内容が委託されているが、現実は管理会社の作成した委託内容で契約されている例がほとんどである。しかし委託管理基準は管理組合が作成して管理会社に委託するのが本来の道筋といえる。どこかの国のように政治家が法案作成を怠れば作成者の都合の良い法律が作られる結果と同じになる。区分所有者は自分達の管理基準を作成する必要があり、管理組合イコール管理会社では無い事を改めて認識するべきである。

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