第 三 章  マンション管理のポイント
7. 委託管理
   マンション管理業務を管理組合が総て行う事は無理であり、管理業務の一部を管理会社等第三者へ委託する事は避けられない。平成12年建設省(国土交通省)調査では管理組合の85%以上が管理会社に何らかの業務委託をしており、その比率は年々高まる傾向にある。管理会社と組合役員、区分所有者、住民の間に多くの問題が山積していて原因の殆どが管理会社側に帰する場合が多い。こうした問題を解決するためには管理会社の体質改善が急がれる。

● 住宅宅地審議会
   管理委託契約の雛型が住宅宅地審議会答申の「中高層共同住宅標準管理委託契約書」(以下委託契約書という)である。審議会は建設(国土交通)大臣の諮問期間でありメンバーは不動産・建設関係者、元官僚、学者等であり、消費者側は国民生活センター参与が参画する程度で一般の消費者代表は何故か含まれていない。この前提で委託契約書を読むとかなり公平さに欠けることがよく理解できるはずだ。審議会のメンバーにマンション管理組合関係者が選ばれない理由は不明だが、偏った審議会構成は改善される必要がある。

● 標準管理委託契約
   標準委託契約書は、昭和57年に答申され改正されず今日に至っているが、答申内容のうち管理会社が行う業務責任の部分にはかなり曖昧な点が多い。問題点を改善しようとして平成13年8月からマンション管理の適正化推進に関する法律(「適正化法」)が施行されることになった。とはいえ、まだ改善されなければならない点は多。
   委託管理問題は管理会社だけでなく、管理組合或いは管理規約にも問題があるのかもしれない。良い例がいまだに預金通帳等の名義を「○○マンション管理組合代行△△管理会社名義に出来る」と合法化している。国土交通省(建設省)も代理名義の場合は「裁判で、管理会社の所有物と解釈され敗訴もありうる」と注意の通達を出しているが満足に守らていないのが実情である。管理組合の口座が「○○マンション管理組合代行△△管理会社名義」の通帳名義例は今も見受けられると聞く。管理組合は管理会社への依存度を根本的に改める必要がある。

● 標準管理委託契約の見直し
   標準管理委託契約書改善の解決策は何か。まず住宅宅地審議会の主旨及構成を消費者保護に向ける事であり、公平な「新標準管理委託契約書」の作成と法制化が必要になる。問題解決には審議会のあり方を再検討する事だろう。次に管理組合と管理会社の責任範囲をより一層明確にする事である。問題を抜本的に改善しなければ管理会社への不信感は増すばかりで、管理組合と管理会社が共生するというマンション管理の基本原則には戻れない。

● 管理会社
   マンション管理会社には売主の別会社系と独立系とがあり、併せて約500社あるが数の上では零細企業が多い。別会社系とは売主の子会社で資金は殆ど親会社が出資している。子会社系の体質は一般的に重要案件の決裁などは限定され、閉鎖的で、出費には極めて敏感になり易い立場に置かれている。又別会社系の中には「○○会社グループ」と宣伝する会社が今でも見受けられるが、商法上は出資金の範囲でしか責任を取らない事を消費者は認識する必要がある。
   一方独立系は零細企業が多く、平均年齢も高い。かってマンション管理に携わった知識を基に管理業務を開業している事が多く信用面とか価格面では子会社系に比べ厳しく、大変な努力を必要とする。両者の共通点は「利益を目標にしている」事であるが、経営姿勢にはかなり差がある。管理組合が管理会社を選択する場合、会社の特性を充分考慮にいれ管理組合に一番良い方法を協議して選択すべきである。

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