第 三 章  マンション管理のポイント
8. マンション管理のまとめ

● マンション管理は誰でも出来る!?
   管理組合・維持管理・危機管理等「管理」という言葉が多用されているが、「管理」についての具体的内容はあまり明確ではなく範囲が広くて漠然としているからだろう。
   昨今、官・民を問わず不祥事が多発しているが、共通点は危機管理と情報公開等の対応が不足している事で、何れの場合も初歩的ミスが原因で大事故、事件につながっている。ある食品製造業社長は安全管理等の対応を理解していなかったと報じられた。ところが同じような経営者でも在任期間中に事件、事故をおこさず任期満了となれば管理者として無事任務を果たした事になるのである。責任者が全てを把握するのは無理だから、責任分野を決めてどうカバーさせるかも経営手段の一つになるといえる。
   マンション管理も同様に知識の乏しい管理組合役員の場合は管理会社への依存度が増え、無事役員の任期を終えたいと願うのは当然である。反面、消極的姿勢が永く続くとマニュアルの省略化等で管理委託会社に間隙をつかれる結果になり易くやがて事件、事故に発展する可能性がある。不祥事を無くすには絶えず基本に戻る姿勢とマンション管理の知識を組合が少しずつ蓄積して次の役員に引き継ぐ事だろう。

● 高齢社会対応の管理を
   近い将来、我国は高齢化社会から高齢社会に突入し、それにともなってマンション内住民の平均年齢も上昇してくる。高齢者は働き盛りの年代に比べ収入が限られ、新しい環境に馴染み難い「弱者」といえる。しかし管理規約上は年代の如何に関らず総てが平等であり管理費等は総会の過半数で変更でき、建替決議も5分4以上の賛成があれば可決できるとして平等の中の不公平さが生じ「弱者切り捨て」が正当化されてしまっている。平等の中の不公平(或いは公平の中の不平等)が発生しようとしている。管理費等の遅延利息に年18%の利息を課す管理組合も有る。区分所有法では「共同生活上の障害が著しければ競売できる」ともしている。管理費等管理組合の負担をどうするか?総てが平等であれば良いのか?はこうした点は再検討が必要な重大問題である。
   組合の運営にはバリアフリー対策費を組み込む等、高齢者への配慮が望まれる。

● 仲良し倶楽部
   マンション内でトラブルが発生し、問題が全体に及ぶと組合員の中に団結する集団が出来る傾向がある。問題解決にかかわる人達は夜間、休日に作業をし、やがて無関心層まで足並みが揃うと必然的に結束が強化され団結力が組合全体に及ぶ。
   区分所有者の中には「管理委託費及び公共料金等が管理費」という考え方が根強いが、マンション管理が複雑・多様化している中で組合役員だけがボランテイア型活動で苦労しているのは矛盾を感じる。標準管理規約にも役員の必要経費と報酬の規定があるのだが、厳密に実施される例は少ない。原因の一つには役員業務内容とか役員報酬基準を特定できない事にある。しかし何時までも先送りは出来ないし、「仲良し倶楽部」的管理組合運営方法ではやがて行き詰まってくる可能性が強い。

● 主役は区分所有者
   区分所有法では「区分所有者は、全員で、・・団体を構成し・・集会を開き、規約を定め・・」として区分所有者が集会で規約を定める事を明確にしているにもかかわらず、現実は法律の理念に程遠い。規約の問題を解決しなければ区分所有法の課題は区分所有者だけにのしかかり、資産価値の高揚は困難と考える。又、分譲マンションの賃貸化が進むと区分所有者だけではなく賃貸人の協力なくしては円満な運営、管理が困難になる。賃借人を組合運営に参画して協力してもらう決断も区分所有者の役目であり、区分所有者だけで何事も決定される時代が変わる可能性がある。

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