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Index
  
 Customer Satisfaction (2003/11)
 自分用コーパスの作成 (2002/8)
 翻訳者は
黒衣(くろこ)
(2001/11)
 翻訳者の「ザ・プロフェッショナル」とは....
(2001/9)
 品質とスピードと納期のこと
(2001/1)
 正確で効率の良い翻訳をするために.....
(1999/9)


 Customer Satisfaction

長い不況が続いて、翻訳者にとっても厳しい世の中です。翻訳料金が上昇することは先ずないのに、依頼される案件は難解なものが多くなり、成果物にはより高い品質が要求されます。お客さんの立場からすれば、この厳しいときにお金を払って翻訳を頼むのですから(特に英語の場合は大抵の人が大抵のことを理解できるのですから)、並の出来では満足できないでしょう。翻訳者であり続けようとする限りはそれらしい仕事をしないと生き残れません。翻訳者は、そのとき、そのときの訳文がすべてです。その人の専門性や経験年数などではなく、その訳文で評価は決まります。過去によい訳文を生み出したからといって、ずっとそうである保証はありません。結果はいつも歴然としているのです。頑張ってみる価値はありそうです。語学力を磨くとともに、ターゲット文書のあるべき姿や特定の問題について効率的に調査し、それらを集中的に理解し、鋭い勘で適切な情報を選択できれば良いのだと思います。さまざまなことを常に正確に何もかも覚えておく必要がないのは助かります。心のどこかにあるお客さんを喜ばせたいと思う気持を大切にして、もうしばらく翻訳者として頑張ってみようと思います。どうせ仕事をするのなら、お客さんを満足させたいと思うこの頃です。 (2003/11)




 自分用コーパスの作成


もともと、私は自分の仕事の中では、論文の翻訳が好きです。数多くの論文に接していると、技術論文といえどもその表現はさまざまであることに気づきます。どことなく格調の高いもの、どこか威張った調子のもの、自然でわかりやすいもの、なんとなくひっかかり読みにくいもの、ギクシャクしたものなどです。翻訳した文章に不自然で読みにくいものが多いとしたら、母国語で書かれた優れた表現を集めたくなるのは自然の成り行きです。これまでも英文表現は少しは集めてきました。でも、日本語表現を集めようと思い立ったのは最近のことです。最初は、これはと思う表現を書きとめておいて、冒頭句、接続句、結語、...などと分類して、表にしてみました。でも、それはちっとも使いものになりませんでした。

せっかくコンピュータを使っているのですから、それも近頃は大容量のメモリーがあるのですから、例文はそっくり集めるのが得策というものです。論文まるごと、評論まるごと、学術誌の記事まるごと、集めてしまえばよいのです。後のことを考えると、有用であり表現も優れていると自分が判断する文書をWebやCDから集めるのが良いようです。それも自分の仕事の分野にとても近いもので、過去2、3年ぐらいのものに特化するとすばらしい情報源となることがわかりました。このとっておきのコーパスをKWIC(Key Word in Context)形式の検索ツール(フリーウエアのTextFinderをありがたく使わせていただいています)で検索すると、これがとても具合が良いのです。

自分の考えつく表現は意外と限られているように思います。それらの中に埋もれて訳文をひねり出そうともがいているよりは、人様の優れた表現を取り入れることは良いことだと思います。翻訳のターゲット言語の良い文章や自然な表現に、日常的に自分を曝そうとする努力をしなくてはと思っています。そうでないと、普段の仕事の慣れの中で、自分の訳文の表現の貧しさが目立ってくるような恐れを感じます。(2002/8)




 翻訳者は黒衣(くろこ)

翻訳したということを全く感じさせないような翻訳ができるようになるのが夢です。殊更うまい表現というより、原文をそのまま自然に表現できればいいと思います。翻訳者の存在を感じさせないようにしたいと思います。翻訳者は自己主張があまり強い人だとやっていられません。毎日、パソコンに向かって孤独な仕事を続けます。時には調子の悪いパソコンをなだめつつ、だましつつ、めざすことはあくまで正確で、自然で、わかりやすい表現を作り出すことです。技術文や実務の翻訳者の場合は特に、人をびっくりさせたり、感動させたり、新しい表現を創造したりすることに心を砕く必要はないのです。それでも、わからないことを調べて新しい知識を人よりも早く得たとき、難解な文章をやっと理解できたとき、著者の言いたいことをうまく表現できたと自分自身でそっと感じるとき、依頼者に心から感謝されたときなど、それなりの感慨を味わうことは少なくありません。翻訳支援ソフトがいかに発達しても、今のところ、最終的には人間による丁寧な表現と、人間による辛抱強い作業も不可欠であると信じています。一方でパソコンを駆使した効率の高い翻訳を目指しながらも、馬鹿正直さを合わせ持つ地味な一翻訳者でいたいと、この頃特に思います。雑な翻訳文に出会うと悲しくなるからです。先ずは自分が雑な文章を生み出すことを避けようと、肝に銘じています。

(2001/11)

 翻訳者の「ザ・プロフェッショナル」とは....

NHKの衛星第二放送で「ザ・プロフェッショナル」という番組を何回か見ました。さまざまな分野の凄腕の人たちが紹介され、インタビューに答えるのです。その方たちの言葉が胸に残りました。例えば、「好き勝手にやるのがプロではない」「素人がこうやって欲しいというところに何とか近づけるのがプロ魂」、「自分が納得したところまでやるのがプロ」、「妥協したらおしまい」、....などです。

フリーランスの翻訳者の「ザ・プロフェッショナル」をイメージしてみました。先ずは、翻訳の仕事の依頼主の欲しい翻訳、そして社会的にも望ましい翻訳ができることが前提であると思います。誤訳がないのは当然であり、文体やスタイルもその文書として適格なものに仕上げ、さらに、最終的な文書に限りなく近く、直すところがなければ依頼主を深く満足させられるでしょう。喜ばれる仕事ができるかどうかは大切なポイントであるに違いありません。そして常に他人に管理されることなく仕事を切れ目なく受注し、望ましい姿で納品するためには、相当な自己管理が必要であると思います。鋭い洞察力、すばやい検索能力、作業の効率化、時間の管理、コミュニケーション、気力や体力の充実などが必要であるように思えます
道は遥かでも、「ザ・プロフェッショナル」をめざしたいものだなと思います。

(2001/9)


 品質とスピードと納期のこと

特に技術翻訳者なら、きっと誰でも多かれ少なかれ、品質とスピードの兼ね合いに心を砕いていることと思います。

もちろん、納期に遅れるのは問題外です。納期までの限られた自分の時間の中で、いかにスピードを上げるかという問題です。そしてもちろん、誤訳は問題外です。間違いなく、的確な用語を使い分け、いかに読みやすい文章に仕上げるかという問題です。

現在の世の中のように、情報化が驚くほどの速さで進み、それに伴い寿命の短い翻訳の必要性が高まるにつれて、技術翻訳者には以前にもまして翻訳スピードが求められているように思います。けれど、ひと通りの訳が終わってから、納期までしばしの余裕の時間があるかないかによって、品質に大きな違いが出るのは確かです。全体を把握してこそ、的確な用語を選べるのであり、分かりやすい表現も可能になります。その原文に向かい合った時間が誰よりも長い翻訳者こそが、最も深く原文を理解しているべきであり、チェックの作業も細かくできるはずであり、より完全に仕上げるべきだと思うのです。

翻訳者としての私は、できれば寿命の長いものの翻訳を、十分時間をかけて悔いのないように行いたいという欲求が心の底にありますが、そうも言っていられません。いただいた納期の少し前にとにかくひと通りの翻訳を済ませ、品質を高めるために、最後の数時間をこのときとばかりに集中力を高めてチェックをします。この集中力は納期があるからこそ生まれると言えます。そして納期のずっと前に、余裕を持って納品できない言い訳をしています。
(2001/1)
 正確で効率の良い翻訳をするために.....

技術翻訳の領域においても、洗練された訳文をめざそうとすれば、翻訳者自身の才能と地道な努力や経験が必要なようで、なかなかおいそれといきません。しかし、翻訳内容の正確さと翻訳効率の良さを求める場合には、パソコンを強い味方として翻訳環境を整えれば、常にある程度のレベルを達成することができます。
なるべくたくさんの優れた電子辞書(DDwinJamming、Pdicなどのようなすばらしいソフトウエアを利用し)同時に瞬時に引けるようにしておくこと、自分の辞書を作成し簡単に参照できるようにしておくこと、インターネットで調べ物をすばやくできるようにしておくことなどはどんな種類の翻訳をする場合にも必ず役に立ちます。これらは私が翻訳をする場合に絶対に欠かせない環境となっています。
翻訳支援ソフト(Trados、Transitなどは同一の文章や類似した文章が何度も出てくるマニュアルや試験報告書などを訳すときに頼りになります。一度翻訳した文は翻訳メモリーに記憶され、同じ文や類似した文が出てくると提示してくれます。さらに最初に文書の解析をして翻訳メモリーを使用するべきかどうかを判断することもできます。上手に使えば作業効率は確実にアップします。
翻訳するべき原文が電子ファイルであれば機械翻訳(PCtranser、LogoVistaなど)を使わない手はありません。専門辞書を使用して一通り翻訳をしてもらうと、そのままでは使えなくても全体の把握に役立ちます。そして最近の機械翻訳ソフトには翻訳メモリー機能がついているので、使いこなして鍛えていけば可能性はさらに広がります。

最近は翻訳の元原稿を電子ファイルで受け取ることが多くなりましたが、たとえ紙の原稿をもらったとしても、それを自分で簡単に電子ファイル化できるようにしておくことはとても大切なことだと思っています。翻訳支援ソフトも機械翻訳も、元原稿が電子ファイルでなければ使用できません。電子辞書を使う場合も入力の手間が省けます。
パソコンの力を大いに借りながら、楽しく地道に経験を積んで、正確でありながら美しくも簡潔な文を苦もなく書けるようになりたいといつも思っています。
翻訳するべき文書の種類と各種手段の有効性(私の場合)
翻訳する
文書の種類
翻訳する
文書の特性
電子ファイル化 電子辞書 インターネット 翻訳支援ソフト 機械翻訳
論文 同一(類似)文の繰り返しがない。 +++++ +++++ +++ ++
解説書 +++++ +++++ +++ ++
雑誌 +++++ +++++ +++ ++
マニュアル

同一(類似)文の繰り返しがある。

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試験報告書 +++++ +++++ +++ ++++ +++
特許明細書 +++++ +++++ +++ ++++ +++
(1999/9 )
Copyright 2003 翻訳者K

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