USS Akron ( ZRS-4 ) , USS Macon ( ZRS-5 )
(United States Ship) (name of a city) (Zeppelin,Rigid,Scout,number-4/5)

USS 「アクロン号」 ( ZRS-4 )、 USS 「メイコン号」 ( ZRS-5 )

the United States build

米国で建造された軍用飛行船


工事中

月刊ヤングマガジン 「タチコマなヒビ」 に 関する間違い指摘
 第67話「空中空母を思考する」
 第74話「戦艦の名前を思考する」
 第77話「リフティングボディを思考する」


The post-Shenandoah-crash birthplace airship , Anti-Sagging structure

 

USS Akron ( ZRS-4 ) , First flight : 8 Aug. 1931


中央に近い4つの トラス構造 Transverse Ring の 内部空間には 上部竜骨へ通じる通路があり、
明り取りのための窓が 船体に開けられていたが 外側には 防護格子が取り付けられていた
(上部竜骨内の通路は ガス放出弁の点検に使用されていた、
USS Shenandoah では船外に乗員が出て、船体上部を歩いて点検していたので 作業安全性は飛躍的に高まった)

英文の文献では "three-keel system" と 説明されていますが、 野暮ったいので ここでは "Triple Keel" と 言っています。

 

Truss Framework of  the Transverse Rings  &  Triple Keel

USS Akron ( ZRS-4 )


USS Macon ( ZRS-5 )

設計と建造は 米独の合弁会社、グッドイヤー・ツェッペリン社 Goodyear-Zeppelin Corp., による。 3本の竜骨と トラス構造の肋材 Transverse Ring が 本船 構造上、最大の特徴と されています。 これらの新機軸は USS Shenandoah ( ZR-1 ) の 空中分解事故を 教訓に 船体強度の向上を目指したと 文献類で伝えられています。

 


The flying aircraft carrier

工事中

 

USS Akron ( ZRS-4 )

closed the access way window (to top keel), in the last stages

Consolidated N2Y-1 training airplane

Curtiss F9C-2  "Sparrowhawk"  (Airship-based Fighter)

搭載機の カーチス F9C 改 「スパローホーク」 (和名:亜米利加長元坊という鷹の一種)

工事中

LZ10 "Schwaben" , the parasite-plane experimental flights 1911

工事中

USS Los Angeles ( ZR-3 ) , the experimental stage , Dec. 1929

USS Los Angeles ( ZR-3 ) , 20 May 1930

 

工事中

月刊ヤングマガジン10 (2012年)の 「タチコマなヒビ」 第67話で 「アクロン号」が 紹介されました。
作画上、「アクロン号」の ディテールが間違ってるとか指摘するのは野暮なので その辺は スルーしますが…
記事内容的に 間違っている部分があり、 知識として定着すると実害がある所だけを 指摘しておきます。


↑この 赤く囲んだ部分が 間違いです

こんな事件なんて 起こしていません

そもそも、シチュエーション (situation) として 考えてみてください。 係留中に太陽で熱せられて浮力が増大する事は ありますが、 急激な変化ではないので 浮揚ガスを放出するなり、地上から水バラストを給水補充するなりの 時間的余裕が充分ありますから、こんなバカな事件なんて 米軍の練度なら起こしません (文系トップの日本ならあるかも…)。

しかし、 この後に記載されている 「地上要員(グラウンド・クルー)を 宙吊りにした事件」は 起きています。
その経緯は 就航間もない「アクロン号」が サン・ディエゴに 着陸する際に、 係留塔の ウィンチ ( winch / 巻上機 )の 出力不足で 巨船を 手繰り寄せる事ができず、 着陸/係留作業を断念して ウィンチの 係留索を 切り離したのです。 この時 同時に 地上要員に対しても ロープを 放すように 号令が 出されたわけですが…、 経験の浅い 3人の地上要員が 手を 放しそこねて 宙に浮いてしまったのです。 このような係留作業中の地上要員の宙吊り事故は 過去に多発しており、要注意事項だったわけですが、 「アクロン号」の宙吊り事故だけ 動画映像が現存している為に 一般認知度が 特に高いようです。

補足 : 『係留塔の ウィンチの 出力不足で 巨船を 手繰り寄せる事ができず』
漫画のセリフ普通の飛行船にしか見えないけど?」と 語っていますが、 「アクロン」(ガス容積18万m3級)は それ以前に 米海軍が 運用していた 「シェナンドア」 (ガス容積6万m3級)や「ロサンゼルス」(ガス容積7万m3級)と比べ、 3倍近い巨船であり、漫画作者の勉強不足が 良く解ります。


次に 雑誌の柱部分の注釈間違いについて…、

※2 偵察させようという試み…(中略)…このアイディアはテストだけで終った。
現実には 既に 第一次大戦中のドイツで 実用化されており、 飛行船本体は 雲の中に隠したまま、スパイ・バスケットだけを 雲の下に降ろして誘導、 英国本土を 爆撃しています。 「テストだけで終った」のは米国に限った事なので この文章では 全般での事柄と混同して 誤解が生じます。

※3 嵐で海に墜落…(中略)…荒波に尾翼をもぎ取られ、操縦不能になり、そのまま海に墜落した。
正しくは このページで後記する「事故の経緯」や「事故原因の考察」で 詳しく説明していますが、 急激な上げ舵を超低空飛行中に行った為に 昇降舵の反動 (Elevator-kick) による船尾沈下が起こり、 下部垂直安定板を 海面下へ 沈めてしまった。 この時に 下部垂直安定板へ浸水した海水の重量増により、「アクロン号」は 荒れた海上に釘付けになって 身動きがとれなくなったまま海没したのです。上部垂直安定板がもぎ取れて遭難した「メイコン号」と 混同しているのではないかと推測できる間違いですね。

で、漫画は この後 戦略爆撃機「B36」と パラサイト・ファイターの 「XF85」ゴブリンの 話しになるのだけれど…
現実は この漫画のような 笑い話ではなくて、第二次大戦中の戦略爆撃機「B29」の経験から来ている切実な要望からの開発です。

「B29」 スーパー・フォートレス(Super-Fortress)
航続距離、爆弾4t搭載時で 5600q

「P51」 ムスタング
D型、航続距離 3700q
H型、航続距離 3860q

「F6F」 ヘルキャット
3型、標準 1750q、増槽使用時 2980q
5型、標準 1520q、増槽使用時 2460q

「F4U」 コルセア
1型、標準 1630q、増槽使用時 3570q

米軍は 日本近海での 制空権/制海権を得るまでは 「B29」へ 護衛用には 航続距離の短い戦闘機を 随伴させられず、 日本本土からの迎撃機による反撃で、数は少ないですが「B29」を 失っていますので、爆撃機乗員の生死を分かつ用心棒、長距離爆撃機用の直衛機が 欲しかったのです。


(追伸1)
月刊ヤングマガジン1 (2013年)の 「タチコマなヒビ」第74話で 今度は 艦船の命名規則のウンチク(薀蓄)・ミスがあり、 正規空母とは別に ベースが 巡洋戦艦や戦艦からの 改造空母も存在する事実を 認知していなかったようです。 (溜息)

第74話 「戦艦の名前を思考する」 (語句で 戦艦と軍艦を混同してるけど…スルー)

伊-四○○」は 「イ-400」という 「A-400」的な意味(イロハ/ABC)の 艦番号なんだけど… スルー

漫画は この上のコマで、 空母「飛龍」を 「飛竜」と 記載しているが、 変換ミスか 誤植と 判断して スルー

(それっぽくは見えるけど、この絵、「加賀」の煙突が無くて 艦橋の位置が変で、「赤城」は 左右逆だね)
(資料は後端部の飛行甲板が 二重になっている最終状態の写真だね、「赤城」は この改装で 飛行甲板後部を 水平にした)

そうか、この漫画の作者は 空母「赤城」「加賀」って 変な名前に感じるのか…

巡洋戦艦は 防御が 自艦搭載砲に見合ったものではないので 巡洋艦扱いであり、戦艦の格付に 入れません。 ですから 八八艦隊計画で、 建造中だった 巡洋戦艦「赤城」と「天城」は 山の名から命名されました。
(巡洋戦艦「金剛」型は 大改装により防御を強化して 戦艦へ変身しました、 このような例もあり 専門書では 巡洋戦艦と戦艦を 一纏めに紹介します)

しかし、軍縮条約で 日本は 「赤城/天城」ほか(加賀/土佐など)の保有が認められず、 速力の有る巡洋戦艦だけは 航空母艦へ改造される事になりました。 でも、「天城」が 関東大震災で壊れてしまい、戦艦「加賀」が 代役となりました。

米国は ダニエル・プラン艦中の 巡洋戦艦「レキシントン」と 「サラトガ」が 同様に 巡洋戦艦 としての保有を 認められずに 航空母艦へ改造される事になりました。

まぁ…、空母「赤城」「加賀」の 命名基準が 変なのは こんな歴史からですね。 (因みに G14は 計画番号で 正式艦名ではない)

(改造空母:本来は「改装空母」と呼ぶが 素人が「店内改装」とか連想すると思い、導入部だけ使った)
(正規空母:漫画では「制式空母」という語を使っているけど、艦船の人達は「正規空母」と 呼んでいる)

ついでに…
雲龍」型空母の同型艦、戦時補充計画(改D計画)の
天城」「葛城」などは 戦争末期であり、日本は 劣勢、暗号通信も 米軍に 傍受解読されて 空母は 真っ先に 狙い撃ちされるから、
「偽装( Camouflage or Disguise )の為に 敢えて 米軍の感覚だと 空母らしくない艦名にしたのでは?」 と 推理するのが 大人の思考。

(大日本帝国海軍の場合、口径 61p 九三式酸素魚雷を 機密保持の為、「酸素」を 「第二空気」と 呼ばせてみたり、
 戦艦「大和」の主砲 「46p砲」も 機密保持の為、「特40p砲」だったかな?… みたいな呼称させたらしいからなぁ…、
 戦時補充計画で 航空母艦の量産を 秘密にするには 艦名で欺く作戦 とか 如何にも ありそうな話だと、私は思うぞ)


(補足「第二空気」 : たぶん、空気の成分 体積比 @「窒素」 78.03%A「酸素」 20.99%B「二酸化炭素」 0.04% からだと思う)
(補足「特40糎砲」 : これが 「超40糎砲」だと 「46p砲」の意味になるし、「長40糎砲」だと 「50口径砲」の意味に なるから連想出来る)
(補足「改D計画」 : 改大和型 797号艦(改110号艦)、超大和型 798/799号艦の「D計画」を 戦況に合わせて 空母の量産に変更したもの)


この「タチコマなヒビ」第74話の草案は 意外と 次のような感じで出来たのかも?…
命名規則から外れる 空母「」の話を 漫画関係者の誰かから聞き、空母「」と 勘違いした。
(この作者は たぶん 空母「天城」の存在を知らない…、でも 「赤城」と 「加賀」で 1セット なのは 知っていた)
しかも各艦の竣工順や履歴の概略も知らない うすっぺらな知識なのに 知ったかぶりしてしまった。

(竣工順は 「赤城2番目、「加賀3番目名前のシバリが次第に煩わしくなった」 というセリフは 当てはまらない)
(このセリフが 当てはまるのは 最後の方で 竣工した 「天城」と 「葛城」と 「信濃」や 「千代田」と 「千歳」という事になるが…)
(もしも、艦船に詳しいなら 「赤城/加賀」の 前例により、「信濃」や 「千歳/千代田」の 改装空母は 除外して、天城/葛城」を 思い浮かべる)
(しかも、空母「赤城/加賀」の裏話を知っているなら、地震で壊れた 幻の空母「天城の艦名 であり、続く「葛城」は 語呂合わせに なっている)

(念の為 補足すると、読み方は 「天城/あまぎ」〜「葛城/かつらぎ」〜「笠置/かさぎ(未完成)」 と なっています)

(つまり、日本海軍艦艇に極めて詳しい筈の海軍関係者なら、この空母命名規則変更が 単なる気紛れではなく 意図的と察して
 事前の通達無しに暗黙の了解が成立するが、詳しくない者=米軍 には解らない裏話に詳しくない この漫画関係者も嵌ったって事です)
(要するに、空母「天城」の艦名を 「変だと思うか?/思わないか?」 が 日本海軍艦艇に 「詳しくないか?/詳しいか?」 の 試金石 に なっている)
(それにしても、戦争中を生きた 我日本の先輩達は 何とも難儀な事に、不発弾みたいに 後世になっても働く を 残してくれたものです)

(このように考察して行くと、偽装1号は 本来なら補給艦からの改装空母を示す名の「大鳳」ですね、新型正規空母 である事を 隠したのでしょう…)

(後もう 一つ、「似たような 名前ばかりになり 紛らわしく なったんだろうな」というセリフについて…、
 日本空母の命名規則を 真に理解すると、改装空母なら その母体が 解るし、正規空母なら その規模も 解る、理解し易い名なのですが、
 詳しくない人から見ると 「似たような名前/紛らわしい」 と言うので 戦術として良く思えるけど、解読されると 艦の素性が バレるのは ヤバいよね)
(だから、この「日本空母命名規則」は 戦略的に見て、何れ 改定される運命 にあったとも 考えられます、決して 煩わしいなんて 理由ではなく)

航空母艦 (順列は ネームシップの竣工順)
大正11年(1922年)竣工「鳳翔」、小型正規空母、試作艦的な位置付
昭和2年(1927年)竣工「赤城」、建造中の巡洋戦艦を改装
昭和3年(1928年)竣工「加賀」、建造中の戦艦を改装、天城」が地震で大破した代替
昭和8年(1933年)竣工「龍驤」、小型正規空母、実験艦的な位置付
昭和12年(1937年)竣工「」、中型正規空母、実用艦
昭和14年(1922年)竣工「」、中型正規空母、改正「蒼龍」型
昭和16年(1941年)竣工「」、大型正規空母、拡大「蒼龍」型(配置)/拡大「飛龍」型(構造)
昭和16年(1941年)竣工「」、大型正規空母、空母「翔鶴」型2番艦
昭和16年(1941年)竣工「」、客船春日丸」を改装/改名
昭和17年(1942年)竣工「」、客船八幡丸」を改装/改名
昭和17年(1942年)竣工「」、客船新田丸」を改装/改名
昭和17年(1942年)竣工「」、補給艦に含まれる高速給油艦/潜水母艦「剣埼」を改装/改名
昭和15年(1940年)竣工「」、補給艦に含まれる高速給油艦/潜水母艦「高崎」を改装/改名
昭和17年(1942年)竣工「」、補給艦に含まれる潜水母艦「大鯨」を改装/改名
昭和17年(1942年)竣工「」、客船出雲丸」を改装/改名
昭和17年(1942年)竣工「」、客船橿原丸」を改装/改名
昭和18年(1943年)竣工「」、客船あるぜんちな丸」を改装/改名
昭和18年(1943年)竣工「」、客船シャルンホルスト」を改装/改名
昭和19年(1944年)竣工「」、新型正規空母、飛行甲板を装甲防御(日本初)、艦名偽装1号
昭和19年(1944年)竣工「」、中型正規空母、改正「飛龍」型
昭和19年(1944年)竣工「天城」、空母「雲龍」型2番艦、偽装の為 幻の空母「天城の艦名にしたと 推理、艦名偽装2号
昭和19年(1944年)竣工「葛城」、空母「雲龍」型3番艦、同型艦「笠置/阿蘇/生駒」の3隻は未完成で敗戦、艦名偽装3号
昭和19年(1944年)竣工「信濃」、建造中の戦艦を改装、飛行甲板を装甲防御

水上機母艦 (商船改装は含まず)
昭和13年(1938年)竣工「千歳」、 昭和18年 航空母艦へ改装昭和19年竣工の 改装空母「千歳」となる
昭和13年(1938年)竣工「千代田」、昭和18年 航空母艦へ改装昭和18年竣工の 改装空母「千代田」となる
昭和14年(1939年)竣工「瑞穂
昭和17年(1942年)竣工「日進
昭和17年(1942年)竣工「秋津洲

なお、文献によると 航空母艦は 大枠で 巡洋艦に含まれる艦種(特殊巡洋艦)とされている。 随って、巡洋艦の名に相応しくない 艦名/船名からの改装空母は 改名されている事に 注目せよ。 では、旧国名の「加賀」は 如何なのか?… 前例で 明治20〜21年竣工の 帆装汽船3檣型スループ(Sloop)巡洋艦大和/武蔵」が 存在するので たぶん OK なのだろう。(帆装型は 3檣バーク/Bark なのだが 帆装軍艦としては スループに分類するらしい)
因みに、防護巡洋艦「千代田」(明治24年竣工)と 防護巡洋艦「千歳」(明治29年竣工)という前例もある。
そして、「春日丸/出雲丸」については 昭和17年時で 旧装甲巡洋艦「春日/出雲」が 未だ海防艦として現役だったので NG なのだろう。

「知ったかぶり」
例えば、第62話「かわいそうな空母を思考する」の 英空母「フューリアス」の話とか、 その道の人には 有名で、話ネタとしては 2番煎じどころか 語り尽くされた 古典の領域なのであり、 その他の メカや兵器関係の話も「あぁ…あの話ね」と 私のような年輩者が読むと感じるモノばかりであった。 別に 古典の領域が 何度も語られるのは それを知らない若い世代も居る事だし、悪い事じゃない。 でも、今回の第74話「戦艦の名前を思考する」は 私の知る限り新規ネタであり、その意味では 賞賛に値する。 しかし、残念だったのは 勉強不足と その考察の幼稚さだろう。
(これが作者の実力なのか?…反省して精進しろ!)


ここは 飛行船のページなので この手の話題は 蛇足になるのですが…。

戦艦「薩摩」と 戦艦「安芸」は 日露戦争中の特別予算で建造開始されて、
ポーツマス講和条約締結(明治38年)後の 明治43年と44年に竣工しています

ですから、この2隻が 日露戦争(明治37年〜38年)で 活躍していたら時空跳躍SFです
タイムトラベルしないと在りえない設定で なんとも壮大な間違いですねぇ〜♪

たぶん、「戦艦の命名基準が 旧国名からだ」という話を より解り易くする為、 西郷隆盛がらみで 日本人なら誰もが知っている「薩摩」の藩名を  引き合いに出したかったのでしょうが… ちゃんと確認しなくちゃあ 駄目だよね。 (戦艦「加賀」の同型艦「土佐」は 未完成艦だから… 坂本竜馬がらみには振れないしね)

この間違いが発生した経緯を推理すると
作者大和/武蔵以外に 如何にも 旧国って名の戦艦は あるの?」
知人第二次大戦より前の戦争で活躍した薩摩/安芸 ならあるよ!」
(第一次大戦で「薩摩/安芸」は 英米連合軍側に属し、東支那/黄海で作戦行動をしている)
作者第二次大戦より前に 日本が戦った戦争は… (たぶん日露戦争だな)」
(もしかして、作者は 日本が 第一次大戦 にも参加していたのを 知らなかった?)
と、云う感じだったりして…。 (この条件なら この間違いも起きるという考察)

IJN Satsuma 1910

戦艦「薩摩」明治43年(西暦1910年)竣工、主機:蒸気式レシプロ(往復機関)、2本煙突
建造は 横須賀工廠の 国産1号戦艦、第一次大戦で英米連合軍側に参加

IJN Aki 1911

戦艦「安芸」明治44年(西暦1911年)竣工、主機:蒸気式タービン(回転機関)、3本煙突
建造は 呉工廠の 国産2号戦艦、第一次大戦で英米連合軍側に参加


漫画では 2本煙突で 描かれているが↑ これは間違い

戦艦「薩摩」と 戦艦「安芸」は (準)同型艦ですが 主機が異なり、 「薩摩」が 2本煙突で 「安芸」は 3本煙突です。
(月刊ヤングマガジン1 (2013年)の 「タチコマなヒビ」第74話の作画にも難ありなので 煙突の本数を数えてみてね)
この漫画の作者には 同型艦で 煙突の本数が異なる外観の軍艦も存在するという観念が欠如していたみたいです。
(自動車に例えるなら、同じ車種でも エンジンからの排気管/マフラーが 2本のタイプと 1本のが あるみたいな事だよ)

やはり、 日露戦争(西暦1904年〜1905年)で 活躍したと言えば 聯合艦隊旗艦を務めた戦艦「三笠でしょう。
(戦艦「三笠」:日本海海戦で バルチック艦隊と決戦して勝った、東郷平八郎司令長官の坐乗艦)

IJN Mikasa 1902

戦艦「三笠」明治35年(西暦1902年)竣工、主機:蒸気式レシプロ(往復機関)、2本煙突
英国製の輸入戦艦、全長 : 131.7m

IJN Shikishima 1900

戦艦「敷島」明治33年(西暦1900年)竣工、主機:蒸気式レシプロ(往復機関)、3本煙突
敷島」(テームズ鉄工所製/3本煙突)の同型艦は 「朝日」(ジョン・ブラウン社製/2本煙突)、
初瀬」(アームストロング社製/3本煙突)、「三笠」(ヴィッカース社製/2本煙突)の4隻

はい、この例で もうお解りかと思いますが 「三笠」は 旧国名(藩名)ではありません。 「三笠」は 戦艦の命名基準を 旧国名と 定める前の戦艦です。 でも、「三笠」は 単なる「山」の名でもありません。 「三笠」には 天皇の警衛にあたる近衛(このえ)の意味があります。 なお、日露戦争に参加した日本戦艦と装甲巡洋艦は以下のとおり。

大型巡洋艦よりも小さな戦艦、装甲艦
装甲艦「扶桑」(初代)、 「扶桑」とは 中国から見て「日いずる国」で 日本の異称(日露戦争では二等戦艦に類別)
装甲艦「鎮遠」、 ドイツ製の清国戦艦で 日清戦争での戦利艦。(日露戦争では二等戦艦に類別)

六六艦隊計画の基準戦艦 6隻
 戦 艦 「富士」、 英国製の本格的な戦艦で 名称の「富士山」は 日本の象徴てもあり、浅間(せんげん)神社、ご神体。
 戦 艦 「八島」、 「富士」の同型艦で 名称の「八島」は 「八洲国」とも言い 日本の異称
 戦 艦 「敷島」、 英国製の戦艦で 「敷島」とは 崇神天皇及び 欽明天皇が 都を置いた大和国で 「敷島≒大和≒日本」。
 戦 艦 「朝日」、 「敷島」の準同型艦で 「朝日」とは 「旭」とも書き、日いずる国 日本や日章旗の意味合いを含む。
 戦 艦 「初瀬」、 「敷島」の準同型艦で 「初瀬」とは 「泊瀬」とも書き、雄略天皇の泊瀬朝倉宮、武烈天皇の泊瀬列城宮。
 戦 艦 「三笠」、 「敷島」の準同型艦で 「富士」「初瀬」「三笠」の3つは 香木の名の意味を持つ事でも共通する。

六六艦隊計画の装甲巡洋艦 6隻 (装甲巡洋艦とは 後に巡洋戦艦へ発展する系譜で、後の重巡とは血筋が異なる)
装甲巡「八雲」、ドイツ製の装甲巡洋艦、3本煙突/2檣
装甲巡「吾妻」、フランス製の装甲巡洋艦、3本煙突/2檣
装甲巡「浅間」、英国製の装甲巡洋艦、2本煙突/2檣、「浅間」型 1番艦
装甲巡「常盤」、英国製の装甲巡洋艦、2本煙突/2檣、「浅間」型 2番艦
装甲巡「出雲」、英国製の装甲巡洋艦、3本煙突/2檣、「出雲」型 1番艦
装甲巡「磐手」、英国製の装甲巡洋艦、3本煙突/2檣、「出雲」型 2番艦
(艦名の由来に関する文献記述を見た事は無いが、この装甲巡6隻に 共通するのは 古事記万葉集関係か神宮関係?… それとも山なのか?)

開戦直後の喪失艦(八島/初瀬)を補充する結果となった、追加取得艦 2隻
装甲巡「春日」、イタリア製の装甲巡洋艦、2本煙突/1檣
装甲巡「日進」、イタリア製の装甲巡洋艦、2本煙突/1檣、「春日」の準同型艦だが備砲口径が異なる
(艦名の由来に関する文献記述を見た事が無いので、この装甲巡2隻については 山っぽいけど… 日進が 不明です)

注1.装甲艦「扶桑」(初代)、日本初の近代的装甲艦、建造当初は 装甲フリゲイト(Frigate)と 呼ばれていたが 実質は 装甲コルベット(Corvette)
注2.甲鉄艦「鎮遠」、姉妹艦「定遠」と供に 清国の主力艦だった、 チタデル(Citadel)砲塔艦で 中央砲塔艦とも呼ばれた装甲艦
注3.戦艦「富士」〜「三笠」、 近代戦艦の元祖の英戦艦「ロイアル・サブリン」級の流れを汲む基準戦艦


そして、日露戦争勃発前に 英国へ発注されていて、戦争終結後に納入された戦艦は以下のとおり。

 戦 艦 「香取」、 艦名の由来は 香取神宮、中間砲を備えた 超基準戦艦にして 前弩級戦艦(ヴィッカース社製)。
 戦 艦 「鹿島」、 艦名の由来は 鹿島神宮、「香取」の姉妹艦(アームストロング社製)。
(中間砲とは 主砲と 副砲の 中間値口径の大砲で 戦艦が 自艦より小型艦を 相手に戦う場合、 主砲では 発射間隔に間が開くので 装備したもの)
(副砲は 戦艦が 圧倒的な小艦艇相手に 使う大砲、だから… 中間砲は 対装甲巡洋艦専用の武器)


で、この後に 初の国産戦艦として 中間砲を備えた 前弩級戦艦の 「薩摩」と「安芸」が 登場して 以降、 艦名に 旧国名が 使われるようになる。 (弩級戦艦基準戦艦弩級戦艦=英戦艦「ドレッドノート」級 相当の戦艦という意味です)
(厳密には 基準戦艦&超基準戦艦=前弩級戦艦 で、 広義には 超弩級戦艦へ 新戦艦「大和」なども含まれる場合があるのと同じような理屈です)
(但し、素人がよく使う表現「超弩級戦艦 大和」と言うのを 艦船マニアは 馬鹿にしますので ご注意)
(厳密には 「薩摩/安芸」竣工前に 日露戦争での戦利艦が 改名されて旧国の名で 就役しているが、国産戦艦の計画/起工が 先に進行している)



その後も含む 主力艦の全体補足(説明を解り易くするため、日清戦争/日露戦争での戦利艦は含まず)
河内」と「摂津」が 準弩級戦艦で、 2代目「扶桑」と「山城」以後が 超弩級戦艦です。
超弩級戦艦という特別性や別格感を示す為に敢えて1番艦「扶桑」は 命名規則から外れている事に注意。
(初の国産戦艦の完成前に弩級戦艦が出現し、遅れをとっていた日本は超弩級巡洋戦艦を英国へ発注して学び超弩級戦艦を国産化した)

黎明期の戦艦 (旧型装甲艦)
扶桑(英国製)」 (日本初の近代的装甲艦)

基準戦艦
富士(英国製)」「八島(英国製)」「敷島(英国製)」「朝日(英国製)」「初瀬(英国製)」「三笠(英国製)」

装甲巡洋艦
八雲(独逸製)」「吾妻(仏国製)」「浅間(英国製)」「常盤(英国製)」「出雲(英国製)」「磐手(英国製)」「春日(伊国製)」「日進(伊国製)」

前弩級戦艦
香取(英国製)」「鹿島(英国製)」「薩摩(国産)」「安芸(国産)」

大口径砲装甲巡洋艦 (同時期の基準戦艦と同等の主砲を採用、後に 巡洋戦艦へ種別変更)
筑波(国産)」「生駒(国産)」

混載砲型装甲巡洋艦 (中間砲を備えた大口径砲装甲巡洋艦、後に 巡洋戦艦へ種別変更)
鞍馬(国産)」「伊吹(国産)」

準弩級戦艦
河内(国産)」「摂津(国産)」

超弩級巡洋戦艦 (英巡戦「インビンシブル」超えの意味だが 「超イ級巡洋戦艦」とは言わない)
金剛(英国ヴィッカース社製)」「比叡(国産)」「榛名(国産)」「霧島(国産)」
(後に 4隻共 防御力を強化する大改装で 戦艦へ変身している)

超弩級戦艦
扶桑(国産)」「山城(国産)」「伊勢(国産)」「日向(国産)」

ジュットランド沖海戦 対策型(ポスト・ジュットランド型)戦艦 (八八艦隊計画艦)
長門」「陸奥」「加賀(空母へ改装)」「土佐(未完成)」「紀伊(未完成)」

ジュットランド沖海戦 対策型(ポスト・ジュットランド型)巡洋戦艦 (八八艦隊計画艦)
赤城(空母へ改装)」「天城(関東大震災で大破)」「高雄(未完成)」「愛宕(未完成)」

新戦艦
大和」「武蔵」「信濃(空母へ改装)」

(現実の歴史で、「大和/武蔵」時代の 主力は 既に 戦艦ではなく、それまで 補助艦扱いだった 航空母艦になっていますので 注意)
Postscript : 「 宇宙戦艦 ヤマト 2199 」見ました、
沖田艦の艦名が戦艦格の「敷島」かと思い感動したら… 巡戦格の「霧島」でガッカリ… 「敷島≒大和」という 日本の基本文化を 知らないのか…。


それにしても この漫画、 突っ込み所が 有り過ぎて… 出雲」は 重巡(条約型)じゃなくて、 装甲巡洋艦だから 巡洋戦艦へ発展する系譜なんだけど… そもそも 艦のサイズで 区分けしてるんじゃなくて、 戦艦とか巡洋艦とかって言うのは 用途の違いから来る構造差で 分類しているわけで… (頭痛)。

出雲」は 重巡洋艦じゃなくて、 装甲巡洋艦

戦艦の用途は 洋上要塞、海に浮かぶ砦だから防御を重視している。 これに対して 巡洋艦の用途は 守りなら交易路警備、攻撃に使うなら通商破壊、 重視しているのは 機動力であり、戦艦と真っ向勝負で戦う事は 本来なら考えていない。 (装甲巡洋艦や 巡洋戦艦でも 戦艦と戦って惨敗する歴史) (戦艦と巡洋艦で艦隊を組む場合、巡洋艦は その機動力を生かして 強行偵察/Scout や 追撃戦での追跡/Chase を 行ったりするのが 役目)
随って 装甲で重い戦艦の船体構造は ずんぐりとした太く短い船型で、 機動力を発揮する為に軽い巡洋艦は スリムな細く長い船型となる。

因みに、駆逐艦のパラメーターは 攻撃力重視、防御力皆無、機動力は限定的で、 穏やかな海なら速力を発揮するが 荒れた海だと使い物にならないし、航続距離も短い。 また、「駆逐艦」<「巡洋艦」<「戦艦」の順に強力だが、 湾内や海峡部など狭い海域での戦いでは「戦艦」より「駆逐艦」が有利となる。 起源は 「水雷艇を駆逐する艦」、水雷艇よりも 航洋性があるので 艦隊随伴水雷艦化 した。

なお、大東亜戦争/太平洋戦争で 日本の駆逐艦は 戦艦の主砲並の射程 30,000mの 61p 酸素魚雷を搭載したのが特徴だった。
但し、主力 甲型駆逐艦への魚雷兵装は有力だったが、乙型駆逐艦への魚雷兵装は防空用駆逐艦に誘爆の危険を胎む弱点となる。
丙型駆逐艦は 「島風」1隻のみなので 説明を 割愛する。
丁型駆逐艦は 対潜/対空戦闘能力を持ち 実質 護衛艦とも言える存在で 缶室と機械室の 分離配置で 残存性を高めた防御を持つ。

IJN Asama 1899

装甲巡洋艦「浅間」明治32年(西暦1899年)竣工、主機:蒸気式レシプロ(往復機関)、2本煙突
英国製の輸入装甲巡、 構造や姿形は スリムな通常巡洋艦とは異なり 同時期の基準戦艦に類似

IJN Izumo 1900

装甲巡洋艦「出雲」明治33年(西暦1900年)竣工、主機:蒸気式レシプロ(往復機関)、3本煙突
英国製の輸入装甲巡、 構造や姿形は スリムな通常巡洋艦とは異なり 同時期の基準戦艦に類似
漫画 「タチコマなヒビ」第74話の作画では この戦艦に匹敵する威厳と重厚さが描けていない

これは 作画のデッサン力や ディテールの問題ではない (それなら スルーする)
舷側へ ケースメイト(Casemate:砲郭)式に 装備されているはずの 副砲が 無いから変なのだ
漫画用語で言えば、「キャラクターの特徴を示す記号の欠落」である


装甲巡洋艦「出雲」、 装甲巡洋艦巡洋戦艦 へ発展する系譜なので
基本的な船体構造基準戦艦に類似する重巡洋艦のように スリムではない

装甲巡洋艦巡洋戦艦とは 基本的な船体構造が 戦艦に類似するものの、 装甲を薄くして機関重量へ充填した配分のパラメーター(Parameter)の艦で、 装甲巡洋艦の場合は 主砲口径が その時代の戦艦と通常巡洋艦の中間値で、 巡洋戦艦の場合は 主砲口径が 戦艦と同等という差がある。
(但し、最後期の装甲巡洋艦筑波」型や「鞍馬」型は 戦艦と同じ主砲口径へ強化して建造された為、 後に 新艦種の巡洋戦艦へ変更された例です)

重巡洋艦とは 日本が建造した 重武装巡洋艦古鷹」「加古」を 規制する為に出来た条約制定枠の新しい艦種、 別称で 条約型巡洋艦 と言う。
姑息にも欧米は この条約で「古鷹」型を 劣勢にする新基準を採用した。 その新基準に基づいて建造されたのが重巡 「妙高」型と 「高雄」型です。
この取り決め以降、巡洋艦種は 新たに 二分されて、重巡洋艦は 甲巡(一等巡洋艦)、 軽巡洋艦は 乙巡(二等巡洋艦) とも 呼ばれるようになる。
因みに、軽巡洋艦とは それ以前の防護巡洋艦から発達し、 タービン機関を搭載して 快な運動性能と 装甲の艦種で 重巡よりも歴史が古い。

(なお「妙高」型の設計草案には「10000噸級 20糎砲 軽巡洋艦」と 注意書きされているという資料もあり 、重巡は 軽巡から派生した事が良く解る)
(防護巡洋艦とは 石炭庫を 舷側防御に使い、甲板防御方式を 採用した レシプロ蒸気機関の 巡洋艦、 但し 最後期の 「筑摩」型は 蒸気タービン)

そして、この条約重巡枠の規制で 劣勢に立たされた日本は 再び 新たな 重武装巡洋艦最上」型を 建造する。 この「最上」型は 主砲に 15.5cm 3連装砲塔を 採用した大型艦で、 後に 20.3cm 2連装砲塔へ換装して 重巡へ変身する事となる。 なお、「最上」型の 5番艦と 6番艦として予定されていた「利根」「筑摩」は 起工前に 設計が 変更されて 20.3cm 2連装砲塔4基の 重巡として竣工した。 従って この漫画で描かれているような条件の 軽巡「利根は 存在しない。 (防護巡洋艦「利根」、明治43年/西暦1910年竣工の 3本煙突艦なら存在したが… 防護巡洋艦を 軽巡とは言わない)

でも、第一次大戦の通商破壊艦として活躍した 小型巡洋艦「エムデン」(ドレスデン級) は 実質 防護巡洋艦ではあるが、日本で 軽巡「エムデン」と 紹介する一般本もあったので 、大目に見て 防護巡洋艦「利根」を 軽巡「利根」と 呼ぶのを許すとしても、 外観は漫画に描かれている姿ではない

IJN Tone 1910

防護巡洋艦「利根」明治43年(西暦1910年)竣工、主機:蒸気式レシプロ(往復機関)、3本煙突
建造は 佐世保工廠の 国産巡洋艦

(現実問題として、防護巡洋艦と 軽巡洋艦の 境界に グレーゾーンも 有るし…)
大目に見て 防護巡洋艦「利根」を 軽巡「利根」と 呼ぶのを許すとしても、

この絵のような姿の「利根」は 竣工時から既に 重巡洋艦なんだけど…
最上/三隈/鈴谷/熊野」の何れかなら、 軽巡時代と重巡時代があるので 間違いにはならなかったのにね

豆知識「重巡/軽巡」という語句を 「一等/二等巡洋艦」に 替えると話が変る

装甲巡洋艦「出雲

一等巡洋艦

重巡洋艦「妙高

一等巡洋艦

重巡洋艦「高雄

一等巡洋艦

軽巡洋艦「長良

二等巡洋艦

軽巡洋艦「夕張

二等巡洋艦

重巡洋艦「利根

二等巡洋艦

重巡洋艦「利根」型は 重巡だけど 二等巡洋艦です
同様に、「最上」型は 主砲換装後も 二等巡洋艦でした

時代別、主な艦種区分け
(主要戦闘艦艇のみ、通報艦/敷設艦/補給艦などの補助艦艇と 仮装巡洋艦/海防艦/砲艦類は含まず)

日露戦争時 (戦艦には 旧型装甲艦を含む)
「戦艦」・「装甲巡洋艦」・「防護巡洋艦」・「駆逐艦」・「水雷艇」

第一次大戦時
「戦艦」・「巡洋戦艦」・「防護巡洋艦(大型〜小型まで多種)」・「駆逐艦」・「水雷艇」・「潜水艦」

第二次大戦時 (戦艦には 新型装甲艦を含む)
「戦艦」・「巡洋戦艦」・「重巡洋艦/軽巡洋艦/航空母艦/水上機母艦」・「駆逐艦」・「駆潜艇/魚雷艇など」・「潜水艦」

注1.新型装甲艦:ドイツの豆戦艦(ポケット戦艦)「ドイッチュラント」級 (但し、設計思想と実戦での用法は通商破壊艦だった)
注2.航空母艦:正規空母/改装空母/護衛空母/但し日本陸軍の空母型揚陸支援船(後の強襲揚陸艦)は含まない


系譜@ : 「装甲巡洋艦」⇒「巡洋戦艦≒「戦艦に匹敵する戦闘艦/水上打撃戦-艦隊決戦用主力艦」
系譜A : 「防護巡洋艦」⇒「軽巡洋艦」⇒「(条約型)重巡洋艦/(条約型)軽巡洋艦≒「植民地警備艦/通商破壊艦」
(日本だけは 主力戦艦の数的劣勢を補う為、重巡を 戦艦代わりに考えていたが、
 第一次ソロモン海戦で 警備艦の敵重巡を 奇襲で討ち負かしたような 実戦成功例しか無い)
(因みに、軽巡「阿賀野」型は 水雷戦隊旗艦用巡洋艦、軽巡「大淀」は 潜水戦隊旗艦用巡洋艦なので 条約型軽巡ではない)


だから、第一次大戦前の時代に
装甲巡洋艦」は 「巡洋戦艦」へ 発展/変貌し、 「防護巡洋艦」から進化した
軽巡/重巡」ってのが 活躍したのは 第二次大戦時だけの艦種なんです。

(補足:英国だけは 1914年に 軽巡の元祖「アリシューザ」が竣工しているので、 第一次大戦時に 軽巡が 何隻か活躍していました)
(なお、日本と 米国と ドイツと フランスの資料では 第一次大戦時に 軽巡が 未だありませんので 注意)

(英国では 1906年竣工の戦艦「ドレッドノート」で 既に 蒸気タービンを採用しているとか革新的な艦が この時期多いが、
 英国以外は 軽量/高出力であっても 初期の蒸気タービンの燃費の悪さから、航続距離も重視する 巡洋艦への採用を躊躇ったのだろうな…)
(革新的な艦 : まぁ 総て フィシャー提督 関連の艦だけれど… この漫画では キテレツ奇人扱いで…)

次に、
「アメリカ海軍の 戦艦は 州名から…」というセリフですが、 何故か作画は 飛行甲板が斜めの 現用空母っぽい絵です。
この絵の感じだと 原子力空母「ニミッツ」級 の 「ジョージ・ワシントン」(CVN-73) でしょうか?…。

原子力空母「ジョージ・ワシントン」(CVN-73) なら
艦名の由来は 初代大統領の名からだけど…

空母「ニューヨーク」なんて 存在しないはずなんだけどなぁ〜
輸送揚陸艦「サン・アントニオ」級の 「ニューヨーク」(LPD-21)を 空母型 の 強襲揚陸艦と 間違いでもしたのか?

なお、
「アメリカ海軍の 戦艦は 州名から…」という セリフだけ検証すると…、
米国に 戦艦「ワシントン」(BB-56)戦艦「ニュー・ヨーク」(BB-34) は 共に実在する 。(以下の米国戦艦全一覧参照)

この漫画の原作者は 士郎正宗(氏)と 云う事になるので…
プロット/櫻井圭記(氏)
漫画/山本マサユキ(氏)
と 記載されている 2人の間で 連絡ミスでも あったのだろう…。

(作画の山本氏の認識は 「戦艦=主力軍艦=(米国なら)原子力空母」 なのかも知れない)

(敢えて作者を擁護するなら、「戦艦/Battleship」 と 「軍艦/Warship or War-Vessel」 は 日本語でも英語でも 言葉の意味的には 同義語で、
 文系的な知識(語義)では分類出来ない、理系的な定義を専門書から学ばないと 区別できない単語だという事… だから専門書も読みなさい)

(いや…、先ずは 各分野で 子供向けの入門書を 読み、基本からちゃんと勉強し直した方が良い かもしれない、
 変なモノ大好きで あちこち摘み食いしただけのような雑学博士 から 早く卒業しないと 各分野の人へ迷惑が及ぶと思うぞ…)

更に後のセリフ、

「はい 米空 ホーネット そして ワスプ」 は 「米空」の文字 間違いだろう… スルー

ついでに… 米空母の命名規則について…。

USS Langley (CV-1) 「ラングレー」、給炭艦からの改装空母、日本の正規空母「鳳翔」に 対応する クラス
USS Lexington (CV-2) 「レキシントン」、巡洋戦艦からの改装空母、日本の「赤城」「加賀」に 対応する クラス
USS Saratoga (CV-3) 「サラトガ」、同上
USS Ranger (CV-4) 「レンジャー」、米国初の正規空母、日本の正規空母「龍驤」に 対応する クラス
USS Yorktown (CV-5) 「ヨークタウン」、日本の正規空母「蒼龍」「飛龍」に 対応する クラス
USS Enterprise (CV-6) 「エンタープライズ」、同上
USS Wasp (CV-7) 「ワスプ」、上記「ヨークタウン」級の縮小型 (条約による規制枠の影響)
USS Hornet (CV-8) 「ホーネット」、改正「ヨークタウン」級 (条約失効後に起工)
USS Essex (CV-9) 「エセックス」、日本の「翔鶴」型に 対応する クラス、第二次大戦開戦後の竣工の為 戦時下で 同型艦の大量生産
(この「エセックス」級は 凄く多い…24隻…なので 同型艦の記載は パス、この下に 残り23隻並んでいる状態を想像してください)
(同様に 「インデペンデンス(CVL-22)」級 9隻、「サイパン(CLV-48)」級 2隻、100隻超えで 数えるのも面倒な護衛空母と 練習空母 2隻も パス)


この一覧から言える事、米空母の命名規則が確立したのは 「エセックス」級以降なので 混沌としていて当然
(しかも、戦没艦の名を新造艦へ即座に使うなど 日本側を 欺く作戦も感じるし、武勲艦の名も 再利用するから 結構迷走しているように見える)

さて、
「アメリカ海軍の 戦艦は 州名から…」という セリフについて再考…、
確かに 98%そうなんだけど… 戦艦「キアサージ」(BB-5)だけ、謎です。 「 Kearsarge 」で 検索すると 地名と 山名があるようですが 私には よく解りません。 米国文化に 詳しい人、教えてください です。

米戦艦「キアサージ」、西暦1900年(明治33年) 竣工

USS Kearsarge (BB-5)  1900

基準戦艦
USS Indiana (BB-1) 「インディアナ」、基準戦艦/棒マスト
USS Massachusetts (BB-2) 「マサチューセッツ
USS Oregon (BB-3) 「オレゴン
USS Iowa (BB-4) 「アイオワ

規格外、基準戦艦?
USS Kearsarge (BB-5) 「キアサージ」、中間砲を主砲塔上に乗せた 変な基準戦艦?/棒マスト
USS Kentucky (BB-6) 「ケンタッキー」、「キアサージ」の同型艦

基準戦艦
USS Illinois (BB-7) 「イリノイ」、基準戦艦/棒マスト
USS Alabama (BB-8) 「アラバマ
USS Wisconsin (BB-9) 「ウィスコンシン
USS Maine (BB-10) 「メイン
USS Missouri (BB-11) 「ミズーリ
USS Ohio (BB-12) 「オハイオ

前弩級戦艦
USS Virginia (BB-13) 「ヴァージニア」、中間砲を備えた 前弩級戦艦/棒マスト
USS Nebraska (BB-14) 「ネブラスカ
USS Georgia (BB-15) 「ジョージア
USS New Jersey (BB-16) 「ニュー・ジャージー
USS Rhode Island (BB-17) 「ロード・アイランド
USS Connecticut (BB-18) 「コネティカット
USS Louisiana (BB-19) 「ルイジアナ
USS Vermont (BB-20) 「ヴァーモント
USS Kansas (BB-21) 「カンザス
USS Minnesota (BB-22) 「ミネソタ
USS Mississippi (BB-23) 「ミシシッピ
USS Idaho (BB-24) 「アイダホ
USS New Hampshire (BB-25) 「ニュー・ハンプシャー

弩級戦艦
USS South Carolina (BB-26) 「サウス・カロライナ」 米国初の 弩級戦艦/籠マスト
USS Michigan (BB-27) 「ミシガン
USS Delaware (BB-28) 「デラウェア
USS North Dakota (BB-29) 「ノース・ダコタ
USS Florida (BB-30) 「フロリダ
USS Utah (BB-31) 「ユタ
USS Wyoming (BB-32) 「ワイオミング
USS Arkansas (BB-33) 「アーカンソー

超弩級戦艦
USS New York (BB-34) 「ニュー・ヨーク」、米国初の 超弩級戦艦/籠マスト
USS Texas (BB-35) 「テキサス
USS Nevada (BB-36) 「ネバダ
USS Oklahoma (BB-37) 「オクラホマ
USS Pennsylvania (BB-38) 「ペンシルヴェニア
USS Arizona (BB-39) 「アリゾナ
USS New Mexico (BB-40) 「ニュー・メキシコ
USS Mississippi (BB-41) 「ミシシッピ
USS Idaho (BB-42) 「アイダホ
USS Tennessee (BB-43) 「テネシー
USS California (BB-44) 「カリフォルニア

ダニエル・プラン艦、「コロラド」級は 「長門」型対抗艦
USS Colorado (BB-45) 「コロラド」、米国初の 口径 40.6p 主砲/籠マスト
USS Maryland (BB-46) 「メリーランド
USS Washington (BB-47) 「ワシントン」、未完成艦/条約で廃棄
USS West Virginia (BB-48) 「ウエスト・ヴァージニア

ダニエル・プラン艦、旧「サウス・ダコタ」級は 「土佐」型対抗艦 (新「サウス・ダコタ」級は 新戦艦なので 注意)
USS South Dakota (BB-49) 「サウス・ダコタ」、未完成艦/条約で廃棄
USS Indiana (BB-50) 「インディアナ」、未完成艦/条約で廃棄
USS Montana (BB-51) 「モンタナ」 未完成艦/条約で廃棄
USS North Carolina (BB-52) 「ノース・カロライナ」、未完成艦/条約で廃棄
USS Iowa (BB-53) 「アイオワ」、未完成艦/条約で廃棄
USS Massachusetts (BB-54) 「マサチューセッツ」、未完成艦/条約で廃棄


新戦艦
USS North Carolina (BB-55) 「ノース・カロライナ」、これ以降は 新戦艦/塔マスト
USS Washington (BB-56) 「ワシントン」、新戦艦「ノース・カロライナ」級の 2番艦
USS South Dakota (BB-57) 「サウス・ダコタ
USS Indiana (BB-58) 「インディアナ
USS Massachusetts (BB-59) 「マサチューセッツ
USS Alabama (BB-60) 「アラバマ
USS Iowa (BB-61) 「アイオワ
USS New Jersey (BB-62) 「ニュージャージー
USS Missouri (BB-63) 「ミズーリ
USS Wisconsin (BB 64) 「ウィスコンシン
USS Illinois (BB-65) 「イリノイ」、未完成艦/建造中止
USS Kentucky (BB-66) 「ケンタッキー」、未完成艦/建造中止


注意:「棒マスト」「籠マスト」「塔マスト」の表記は 新造時の状態で、 真珠湾攻撃時には 「籠マスト」から「三脚マスト」へ改装されていた艦もあります


(追伸2)
月刊ヤングマガジン2 (2013年) 「タチコマなヒビ」

第75話「タンケットを思考する」
日本の九七式の解説が何となく微妙〜な感じ?
戦車は 専門外なので コメントを 控えるけど…。
なお、
世間一般の認識では些細な事なので
特に問題視されないと思う。

第76話「全翼機を思考する」
ステルス爆撃機「B-2」は 厳密に云うと
Tail Assembly」の無い「Blended Wing & Body」機
(翼胴融合/完全無尾翼機) なのであり、
機体の中央に胴体の膨らみがあるから
定義が尾翼と胴体の無い全翼機/Flying-Wing」
B-2」と 同一視するのは 定義に合致しなくて 微妙〜!
(少なくとも「B-2」は 「全翼機の典型」ではない)
でも、
世間一般の認識では 混同しているので…
(全翼機は 無尾翼機に 含まれる為、
 「全翼機⊂無尾翼機⊃B-2」 の 関係式となり、
 「全翼機≠B-2」 なのに 「全翼機≒B-2」 と 錯覚してしまうから)

気付いた人が居ても 半信半疑のまま 問題視は されないだろう。

第77話「リフティングボディを思考する」
漫画の内容は 「リフティングボディ/Lifting-body」 を
文系的観念で拡大解釈した為に 間違った解説になっています。

(文系的観念語意語義で考えて混乱するのが特徴)
(理系的観念語意定義で定めて整理するのが特徴)

理系的観念で「リフティングボディ」を 定義すると…
アポロソユーズなどの
再突入カプセルを空力的に操縦する試みに始まり、
大気圏再突入時などで起きる 極超音速状態
誘導抗力/Induced Drag」が無視できる特殊条件下なので、
負荷の掛かる翼幅を極限まで狭めた機体であり、
主翼を 矮小化/皆無化して 胴体の揚力で 飛行するもの

(誘導抗力について、他人へ解説する程は 教養が無いので ググって)
(本音は 面倒だからパス)
随って、特殊条件下ではない 地上付近での飛行では
空力的に不安定となる弱点を持ちその克服が開発の鍵となった
(漫画に描かれている NASA の 実験機
 通常状態で空力的に不安定な機体を作って 操縦試験した時の物)


この漫画では 第76話第77話を 続けて読んだ場合、
ブルネリRB-1」を 黎明期の「リフティングボディ」として誤って解説している為、
この説明では 機体全体で揚力を発生させる 境界不明瞭な翼胴融合/無尾翼機
全翼機≒リフティングボディ」の 関係式で成立してしまい 一般認識に 混乱が 起きる。

機体全体で揚力を発生させる 境界不明瞭な翼胴融合/無尾翼機

無線誘導式無人実験機 X-48B
(無尾翼機とは 水平尾翼が無い飛行機の事、更に 垂直尾翼も無い例が ステルス爆撃機「B-2」です)

(特殊条件下で 翼幅を極限まで狭めて胴体だけになった「リフティングボディに対して、
 通常条件下で 翼幅を極限まで広げて主翼だけになった「全翼機と考えた方が良いと思う)

↓まるで 揚力という名の 「魔法の力で 空中に浮いているような描かれ方だなぁ…

…(中略)…

左側の トリマラン/Trimaran みたいな機体が 実在するなら「変形翼機」だよね (右の双発複葉機は「RB-1」)
(変形翼機 : この場合、機体全体としては 円盤翼機に スリットが入った 空力特性を示すと思う)

因みに、漫画では 「揚力の説明方法」が 変なので、
系統的な勉強 (基礎教育式学習/教科書) で 空力を学んでいない事が 解る。

(まるで 揚力という名の 「魔法の力」で 空中に浮いているような描かれ方なので笑った)

タチコマなヒビ」の作者は「揚力」の基本原理を理解していないので勘違いしている。
(たぶん、この作者の脳裏では 揚力という名の「魔法の力」程度の理解 であろうから間違った解説になった)

揚力とは 板のような物体が 気体や液体中で 迎角を持って進むと 板の表と裏に 圧力差が生じ、
この圧力差を 進行方向を基準に ベクトル分解すると 揚力と抗力に 成分を分ける事ができる。
通常は この揚力と抗力の比率(揚抗比)で 揚力が勝るように形状を工夫して設計されている。

(逆に言うと、常に揚力抗力共に発生し、揚力のみが 単独発生する事はない)
(そもそも、飛行船の浮力とは異なり、飛行機の場合 揚力という単独の力は 存在しない
 主翼などへ及ぼす圧力差の成分の内で 特に有益な部分を 便宜上 揚力と 呼んでいるに過ぎない)


但し、通常の翼型キャンバー/Camber という反りが付けられているので、
迎角0度でも 抗力と共に 多少の揚力が発生するが、
若干の俯角になると 揚力は発生せずに 抗力だけが生ずる状態になる、
更に深い角度になれば 負の揚力が発生するので 背面飛行も可能となる。

この図では 「表と裏の圧力差空気合力」 と 説明されている
この表と裏の圧力差(空気合力)を 進行方向を基準に ベクトル分解する揚力抗力に 成分を分ける事ができる
(因みに、進行方向を基準にベクトル分解する理由は 進行方向への推力を相殺する抗力を 全体の力から抽出するため)



通常は この揚力と抗力の比率(揚抗比)で 揚力が勝るように翼型形状を工夫して設計されている
この揚抗比 (Lift-Drag Ratio) 基本原理を 理解しないと 「誘導抗力」も 理解できない
(誘導抗力について、他人へ解説する程は 教養が無いので ググって)
(本音は 翼端渦発生後の説明が長くなりそうで、面倒だからパス)

だから、漫画で語られている ブルネリRB-1」を 揚抗比で考えると…
普通、音速未満でしか複葉機は飛べないから「誘導抗力」が無視できない通常条件下なので、
胴体揚力発生揚力に比べ抗力(空気抵抗)が大きく エネルギー効率が悪くて損なだけ
(効率が悪い : 燃料消費量が多くて航続距離が短くなる、同じエンジン出力でもスピードが出ない)
あの扁平な胴体でなければ収まらない特殊な物を運搬する用途だったなら兎も角、
そうでなければ やはり変な失敗作の飛行機でしかない。(アイディア倒れ賞モノ)

この漫画のセリフ「飛行機というのは 翼で揚力を得ないといけないという先入観があった…」と ある。
これは 勉強不足の的外れ発言で 「飛行機というのは 翼で揚力を得た方が 効率的なのが 航空学の常識
(この漫画の作者は「常に揚力は抗力と共に発生するから揚抗比の優劣も問われる」という認識が欠落してる)

漫画では その後のセリフ「あまりに特異な形状の飛行機は偏見を持たれ…」とあり、
ブルネリの不当評価を主張しているが、揚抗比で性能の劣る飛行機が 好評なわけないだろ
(特異な形状の飛行機でも 高性能とか、原理的に将来性があれば 妥当な評価を受ける)

では、揚抗比で性能の劣る リフティングボディ」の存在意味は?…。

ここで SF的な話をしよう… 外観は ブルネリRB-1」そっくりの機体で 離着陸を行う。
飛行中に 主翼を折り畳み、ロケット推進で 極超音速飛行する 空想上の飛行機だったら、
離着陸時に 揚抗比の優れない性能でも 存在価値のある意味を持つ事になる。

つまり、「リフティングボディ」とは そういう意味合いの特殊な機体なのです。
(何故、SF設定上で 「主翼を折り畳む」必要があるのか?…
 極超音速状態では 負荷が物凄く 華奢な翼は 壊れてしまうから、極超音速とは そういう環境)


作者は漫画のセリフリフティングボディ というのは 翼を持たないタイプの飛行機 のことさ」
語らせているのに 複葉機ブルネリRB-1」を「リフティングボディ」と語る矛盾に自ら気付け

次のセリフ「機体が高速になれば 胴体のみで 揚力を得られたって 不思議じゃないな」も そう、
リフティングボディ」とは 極超音速飛行が 前提の機体だから 低速の複葉機は範疇に入らない

なお、フリー百科事典 『ウィキペディア (Wikipedia) 』日本語版で
リフティングボディ」の 説明文を 読むと… 「広義/狭義」なんて表現を用い、
文系解説者の拡大解釈を 理系解説者が打ち消すような文脈で 支離滅裂でした。
(『ウィキペディア』広義 : 文系解説者の語義だけから考え出された出鱈目珍説)
(『ウィキペディア』狭義 : 理系解説者の定義を踏まえた 従来通りの正当な定説)


またスペース・シャトル/Space Shuttle」とは システムの総称であり、
漫画に描かれているのは 地上へ帰還する「オービター/Orbiter」部分。
蘊蓄(ウンチク)を 垂れるなら 先ず、理(ことわり)を入れる 定番文句が コレ。
(極自然に この一文が 漫画へ入らないのは 正式文献を 読んでいない証拠)

宇宙開発関係のちゃんとした文献によれば…
@直線翼 オービター案 (1969年〜)
Aリフティングボディ・オービター案 (1970年〜)
Bデルタ翼 オービター案 (1971年〜)

最終的には この内の技術的に無難な B案が採用されたので、
現実のスペース・シャトル「オービター」は 「デルタ翼」であり、
リフティングボディでないとされるのが 常識
なのだけれど…、
三文雑誌などでは「リフティングボディ」のように 吹聴していたので、
作者は そちらからの知識みたいです。

(どこから見ても 胴体の太い デルタ翼機 だろ目が腐ってるのか?)
(セリフで 「X-24Bスペース・シャトルに近づいた」 と
 言わせてるので 大事な着眼点を 全く知らないのは 明白なんだけど…)

(大事な着眼点 とは どこを見るのか?… X-24B
 衣類の皺取りに使う アイロンみたいな形状で 主翼が無い、主翼の有無を見る)

(なお、漫画に描かれていた NASA の 実験機が 何の役に立ったのかというと…、
 帰還時は 無動力滑空飛行の方が 着陸速度が低くて安全というデータを得た事)


宇宙開発関係の情報を 見聞きするのが趣味の人達は
「次こそは リフティングボディオービターが 実用化されないかなぁ〜」
夢見ているんですけれどねぇ〜。
しかし残念ながら、
世間一般の認識は 低いので (そっち関係の人は この手の無学漫画は無視する)
明らかに有害情報だけど 問題視は されないでしょうね。

総括
昔の文献によると…
定義が尾翼と胴体の無い全翼機」の 基本原理から来る 利点欠点(将来的に ソフトウェアで克服できる項目は除く)

利点 : ペイロードは 翼内に収納する事になるので、
      翼という 揚力発生源へ積荷を分散配置できる事から 構造重量を減らせる (軽量化)。
欠点 : ペイロードは 翼内に収納する事になるので、
      積荷の 空間を確保するには厚翼と 成らざるを得ず、空気抵抗が増える (抗力増大)。
(仮に、空気抵抗を減らす為、薄翼にして ペイロードを 一部へ集中させ 機体に膨らみを作ると… それは胴体になる、1例 :「B-2」)

漫画で説明されていた「利点/欠点」は…
フリー百科事典 『ウィキペディア (Wikipedia) 』日本語版の内容そのままに 間違い箇所も継承していた。
漫画のネタ元は『ウィキ』と見て間違いない、やはり この作者は 基本からちゃんと勉強し直した方が良い かもしれない。
(蘊蓄(ウンチク)を 垂れるなら 使う資料の間違い箇所も見抜けないと 自分の言葉で 説明はできない)

『ウィキ』は 素人が 編集しているので 間違いもある前提で利用するべき、世間一般の認識で 間違いや混同が多ければ それが 反映される情報源
(間違いや混同が反映される情報源 : 『ウィキ』の システムは クイズ番組で オーディエンス/Audience へ 正解を訊ねるのに等しい仕組み)

豆知識 : 其れなりに詳しい人は 解説に使われている単語で その解説者が本物か解ります、詳しくないと出て来ない キーワードが あるのです、
『ウィキ』の場合なら… 「誘導抗力」のように 素人が使わない単語は 詳しい者しか書き込まないので 正解率が高いくて 比較的に 信用できる内容。

補足 : 私は文系を馬鹿にしているのではない、文系で メカ物をやりたいなら 素晴らしい SF作品を 目指せば良いのだ。
      (この「タチコマなヒビ」が掲載されてる 月刊ヤングマガジン内なら、井上智徳氏の 「コッペリオン」が 卓越の出来だと思う)
      理工系薀蓄(ウンチク)ネタで 理系観念から外れた文系の解説は 良くないと思っているだけ… 獣肉鍋ネタや 早口言葉ネタは 批判しない
      それら第52話「獣肉食」や 第68話「早口言葉」は 要するに 文系薀蓄(ウンチク)ネタだから 文系の解説で 何の問題も無いわけです。
      とは言え、専門用語と数式しか語れない 理系馬鹿に 薀蓄(ウンチク)を 垂れられても 一般人は 困るんだけれどね…。

(長々と 脱線しましたが… 以上で 蛇足終り)
 

 


Economize on the total cost of the Helium Gas

 

USS Akron ( ZRS-4 ) , the Tilt Propeller to keep the Helium Gas


ティルト (首振) 機構の採用で プロペラの向きが 変えられるようになった。
しかし、多くの文献類等の解説で 「上 (または後) に向けられる」 と 解説されている事があるが 誤り である。
構造上支柱と干渉するため、 プロペラの向きは 前方から真下までの 90º の範囲にしか向けられないのです。
この プロペラの ティルト機構は 離陸/上昇用ではなく、 浮力過剰でも ヘリウムを放出せずに 降下するため。
(このティルト機構は 高機動スラスターと勘違いされているが、 ヘリウムの価格が 極めて高いので、 経費節約のための 倹約メカなのが 真相)

 

 

 


The Auxiliary Control Station

工事中

Schütte-Lanz   S.L.II. (the right side picture of  the Engine Car , Auxiliary Control Station)

第一次大戦初期の シュッテ・ランツ軍用飛行船では 上の右の写真で確認できるように
エンジン・ゴンドラにも 方向舵と昇降舵の操舵輪が有り、 補助操縦室の役目を果たしていたと解る

 

Zeppelin "P" Class ( L10 type ) , the rear Engine Car ; Auxiliary Control Station
Zeppelin "R" Class ( L30 type ) , the rear Engine Car ; Auxiliary Control Station

Zeppelin "V" Class ( L53 type )   ,   the Auxiliary Control StationNothing ?

Height-Climber

ツェッペリン飛行船でも 後部エンジン・ゴンドラが大型なので、 補助操縦室の役目を兼ねていたと思われますが、
R級に続く後期の Height-Climber からは 軽量化のために 補助操縦室が 廃止された可能性(*注1)も考えられ、
それを真似た「シェナンドア」(USS Shenandoah)にも 補助操縦室は 無かったと推測(*注2)できます。

(*注1: Height-Climber の 小型化された後部ゴンドラでも それなりに 大きいので、 限定的な機能が残されていた可能性も捨て切れません)
(*注2: USS Shenandoah は 後部ゴンドラが 両舷ゴンドラと 変わらないサイズなので、 補助操縦室の機能は ほぼ確実に 無いと思われます)

(尚、当Webでは USS Shenandoah の船体構造は Height-Climber ではないと 結論付けしていますが…
操縦ゴンドラだけは 比較すれば 写真からも解るように Height-Climber に 付いていた 小型軽量タイプの デッド・コピーと 思われます)

USS Shenandoah ( ZR-1 )

敵からの攻撃を受けて 主操舵室が 使用不能になる事も 想定できうる軍用飛行船では 操縦系統の冗長性から 補助操縦室は 不可欠と考えられ「アクロン級」に 採用されたのでしょう。 (文献類では この件に関する情報を 見た事が無いので 推測です)

Auxiliary Control Station (underside Vertical Stabilizer of  the USS Akron)

another name ; Emergency Control Cabin


下部垂直安定板に有る、補助操縦室に 人が集まっている (写真は事故で壊れた場面)
下の写真は 補助操縦室の 内部 (メイコン)


Auxiliary Control Station ( USS Macon )


米海軍 大西洋艦隊に 配属された「アクロン号」は 米国北部大西洋海岸沿いに設置された 無線方位測定の無線標識施設(NDB:nondirectional radio beacon)の機能を検査するため、 悪天候が予測されていたにも関わらず 非公式な圧力により 1933年4月3日の晩に離陸、 予定では夜明け頃に ニューイングランド(New England)の海岸に到着するはずだった。
内陸の フィラデルフィア(Philadelphia: ペンシルベニア州南東端の大都市)に向かっていた 「アクロン号」は 8時過ぎ 南方に 雷雲を見付け、内陸で雷雨が発生しているという無線連絡も受け、 進路を東に変えた。 しかし「アクロン号」は 濃い霧に包まれ 有視界飛行(VFR:visual flight rules)が 困難な状況で、 頼みの綱の無線方位測定器は ループ・アンテナを回しても雷による空電(static electricity)で機能せず、 今 何処を飛んでいるのかも解らなくなってしまっていた。 進路前方に稲妻の光を見た「アクロン号」は 進路を 北へ少し変えた。 そして真夜中には「アクロン号」は 陸から大きく離れて、嵐で荒れる 大西洋上を 飛行していた。

1933年の当時は 完璧な計器飛行 (IFR:instrument flight rules) など望むべくも無く、 気圧高度計 (barometric altimeter) は 低気圧のため変動し、当てにならなかった。 洋上を飛行していた「アクロン号」は 上空に昇ると 乱気流が 有ると予想、 低空飛行していた。 突然、下降気流に捕まり「アクロン号」は 海面に向かって 降下したので、 「全速前進」が 命ぜられ、同時に 水バラストが 緊急投棄(*注3)された。 「アクロン号」は ゆっくりと上昇し始めたが また降下しだしたので、昇降舵を 急角度で効かせた。 突然、船体に衝撃が走り、方向舵が 効かなくなった。 船尾の垂直安定板が 海面に衝突し、内部へ大量の海水が 雪崩込むように 浸水したらしい…。
海面に錨を降ろしたような状態で、嵐の洋上へ釘付けとなった「アクロン号」は やがて海中に引き擦り込まれ 沈没した。

(*注3: 文献には 「非常バラスト・レヴァーを引いた」 と記されていたが 非常バラストとは 燃料タンクや 繋留索巻上機を 切り離して落とす仕組みであるから、 著者の間違いと思われ、重量調節に用いる 水バラストの投棄が 動作時間で 水量調節するので、 排水水量が絞られていて 緊急時には 時間的に 間に合わない事もあり、 これの 大排水型弁が 水バラストの緊急投棄用に 有ったのではないか?と考えています)

「アクロン号」の乗員 76人の内、救助されたのは 水兵2人と 副長の 僅か3人、 救命胴衣が 未搭載だったのが 災いしたと 伝えられています。 (この死亡者数 73人は 飛行船事故における 史上最多記録となり、今日に 至ります)
(尚、事故現場から数km離れた位置に ドイツの油槽船 Tanker 「フェブス」が 墜落する飛行船の 灯火を目撃したので 駆け付けて救難活動した)

The wreckage of  the USS Akron ( ZRS-4 )

海中から サルベージ船の クレーンで 引き揚げられた 「アクロン号」 の 残骸
(写真からも判るように コレは 下部垂直安定板の 補助操縦室部分です)


事故原因の考察

 

USS Akron ( ZRS-4 ) , the sequence of  events ( operating error ! )

生存者が少なくて 謎の多い 「アクロン号」 の 墜落?遭難事故
» Comparison with Rudder-kick

 

フリー百科事典『ウィキペディア (Wikipedia) 』日本語版では 以下のような簡単な解説…

1931年 就航開始
1933年3月 同型船のメイコン(ZRS-5)が就航 (注:メイコン号の初飛行が 同年4月21日なので この就航日は 間違い)
1933年4月3日 ニューイングランド沖合にて墜落。
乗員73名が死亡(生存者3名)する、飛行船史上最悪の死亡事故となっている。
天候を無視した過酷な訓練が原因とされる。 アメリカ海軍航空隊の父であるウィリアム・A・モフェット海軍少将も殉職した。

 

「飛行船の再発見」講談社 (飯沼和正著) では 「飛行船が 大気の擾乱に 対応しきれなかった場合に 事故が起こる」と 説明していて、 「飛行船は 大きな図体を コントロールできる運動性/操縦性を 備えていない」と 問題視している。 一例として 1921年に バージニア州 ラングレー基地で起きた 米陸軍 半硬式飛行船「ローマ号」の事故を 挙げているけれども アレは 離陸直後に 操縦系統の故障で風に流され鉄塔の高圧線へ触れたために起きた爆発事故であり、 ヘリコプターだって 操縦系の故障状態なら 高圧線に 引っ掛かる。 「アクロン号」の事故も 下降気流で 海面に落ちたような扱いなのだけれど、 現実には違う!… 「アクロン号」は 低空飛行で 急激な昇降舵操作をしたために 昇降舵キックで 船尾が沈下して 海面へ 接触させてしまったのであり、操縦ミスと 思われる。 (飯沼和正:科学ジャーナリスト、ブイヤント航空懇談会事務局長)
( 昇降舵キック ⇒ 方向舵キックは 「ボーデンゼー号」の項に 解説図 が あります、 縦横で 90°働く向きが異なりますが 基本は同様の原理です)

同書が問題視している指摘、 「飛行船は 大きな図体を コントロールできる運動性/操縦性を 備えていない」 ???…
それは「無い物強請り」だろう、これは 相対的な比較の問題で スポーツカーと 同等の 運動性/操縦性を 大型トラックに 求められない、内海用 カーフェリーと 同等の 運動性/操縦性は 外洋を航行する 超大型タンカーに 求められない、 その現実を 理解した上で 運動特性/操縦特性を 確りと把握して 安全に 運用しなければならないのだと、私は 思う。

ある意味、現実には 未だに使い辛い物を 如何役立てて使うかが 運用者の 腕の見せ所であり…、 今まで 使い難かった物を 如何使い易く 次に 改良するかが 製作者の 腕の見せ所である。 ジャーナリストは その辺が 理解できていない…。
(ジャーナリストの観点からすれば 理想を追い求めた結果だろうと思うが、 現代最新の安全対策も 22世紀には 原始的で 危険極まりなく見えるだろう)

完成後の「アクロン号」は 熟練の C・E・ローゼンダール海軍少佐の手によって、 一連の試験飛行が繰り返され、 試験飛行が終わり 大西洋艦隊へ配属されて 船長が交代した後に 遭難した。 と 言う事は…
この操縦ミスは 船長の フランク・C・マコード海軍少佐に 水上艦艇しか経験が無かった事で 起きたのだろうか?…。
(遺影を拝見すると… 如何にも秀才風で 凛々しい 利発そうな顔立/容貌だが、青年みたいに若そうだなぁ〜)
まぁ〜死者を 咎めるのも何だし…、優秀な成績だったらしいのに 何故 判断を 誤ったのか? 考えてみる事とします。

(C・E・ローゼンダール海軍少佐は 「シェナンドア」の生存者で 空中分解した船体を コントロールして 軟着陸させた人物)

USS Akron ( ZRS-4 )

外観から、その巨大な船体に不釣合いな程 小振りの操縦ゴンドラのようすが 良く解る写真

The Control-Car of  the USS Macon

左の写真(the left side)は 従来 "Akron or Macon" と されていたが… 緩衝器 (buffer) の デテール (detail) から "Macon" と した
また 右の写真(the right side)で解るように 搭載機の発着に悪影響を及ぼす 気流の乱れを抑えるため
全長が同規模の水上艦船と比較すると、操舵室は意外と狭い
(尚、水上艦船に準えて、ここを ブリッジ または 艦橋と 呼ぶ場合もあったと、 文献に記されている)

 


Visibility was so bad because of the rain... ( If up trim 5º )
All or Nothing , the downward visibility

 

工事中

激しい雨のため視界が悪く、「アクロン号」は 安全な高度で飛行できなかった…何故なら
その操縦ゴンドラには「シェナンドア」のように 真下に迫る海面の見える窓が無かったのです。

Visibility was so bad because of the rain
that the "Akron" could not fly at an altitude for safety.

 

激しい雨のため視界が悪くても「シェナンドア」だったら 安全な高度で飛行できたかも…何故なら
爆撃用 操縦ゴンドラには「アクロン号」とは異なり、 真下に迫る海面の見える窓が有ったのです。

If  visibility was so bad because of the rain
but the "Shenandoah" can do flight at an altitude for safety.

The Control-Car of  the USS Shenandoah ( ZR-1 )

手本が ドイツ製の爆撃用飛行船なので、 操舵室の構造が 「アクロン級」 と 異なる 「シェナンドア」
( USS Shenandoah ≒ 爆撃機 bomber plane 、 USS Akron/Macon ≒ 哨戒機 patrol plane )

Height-Climber , Controlr-Car , the Deutsches Reich ( the German Empire ) era build

「シェナンドア」の手本となった ドイツ製 ハイトクライマーの 操縦ゴンドラ
操舵室前面の突き出た風防に注目!、直下の爆撃目標が見える窓構造となっていた

 


Up trim gives an illusion of the altitude for safety. ( If up trim 10º )
All or Nothing , the rearward visibility

 

工事中

In case of  the USS Shenandoah ( ZR-1 )

もしも、低空飛行で 迎角  10°に達する船体の傾斜により動的に揚力を得ようとしていた場合…
爆撃用なので 操舵室から真下の見える「シェナンドア」であっても後方は見えず、
船尾の低下に気付かずに 安全な飛行高度を錯覚する可能性があります。

In case of  the USS Akron ( ZRS-4 )

船体が「シェナンドア」よりも 更に大型になった「アクロン号」では この問題は 深刻です。
尤も、常に補助操縦室に人員が配置されていて、乗員が見張りに付き、
緊急対応ができる状態ならば 何とか成ったかもしれませんが…。

In case of  the LZ129 "Hindenburg"  (secure the rearward visibility)

「ヒンデンブルク号」の場合、乗客を不快にさせないための措置として、 trim ±3°の運行規則が 規定されていますが  trim 10°の傾斜で飛行する事も可能だったと思われます。
随って、大傾斜の迎角でも この錯覚に陥らない配慮で 後方視界が 与えられたと推理します。

工事中

 

凝った構造の 格納式 搭乗タラップ (trap: landing steps) のために 後方視界が妨げられる「アクロン級」(写真は ZRS-4)
後方視界を得るため、遂に 全周が窓になった「ヒンデンブルク級」(写真は LZ130)

全周パノラマ窓は「アクロン号」の遭難時に ほぼ完成していた「メイコン号」には 取り入れられなかった改良だろう、
これで船体を傾斜させる up trim 状態で飛行していても、 船尾が 地上や海面に接触しないか視認できる。
(但し、船尾そのものは 船体中央部の膨らみに邪魔されて見えません、 下部垂直安定板の下端部が ぎりぎり見えるかどうか?微妙なところ)

LZ129 "Hindenburg" , Control-Car

歴史的に見ても、 LZ120 / LZ121 / LZ126 / LZ127 と 操舵室からの後方視界を 重視していなかった ドイツが
突如、「ヒンデンブルク級」に 全周窓を 採用したのは 「アクロン号」の事故に起因すると 私は考えています。

"Akron" class , ZRS-4

"Hindenburg" class , LZ130

LZ126 , LZ127

Nothing , the rearward visibility , the pre-Akron-crash airships

 

USS Akron ( ZRS-4 ) , Crashed : 4 Apr. 1933

フリー百科事典『ウィキペディア (Wikipedia) 』日本語版では
アクロン墜落前に メイコンが就役していると記載されていたが 間違いなので注意


USS Macon ( ZRS-5 ) , First flight : 21 Apr. 1933


「アクロン号」 に有った船体上面ガス放出口 hood の凸部が無いので 「すっきり/さっぱり」した印象

工事中

 

[ The Propeller Blade ]
    The two-bladed propeller of  the Akron , The three-bladed propeller of  the Macon


二翅プロペラ の 「アクロン号」 と 三翅プロペラ の 「メイコン号」

因みに この三翅プロペラは 1933〜4年という時代背景と 米国という立地条件から、
米国ハミルトン・スタンダード・プロペラ社の 可変ピッチ・プロペラ (Variable-pitch Propeller) ではないか? と考えています


「アクロン号」 と 「メイコン号」 の 識別点は 船体上面ガス放出口 hood の有無、 推進器直前の Air Scoop ? の有無
(この 「メイコン号」 の Air Scoop ? は Radiator 用と 思われ、 「アクロン号」 の 推進器支柱に有った剥き出しの Radiator が 「メイコン号」 には無い)
(余談ですが… Air Scoop は エア・スクープ と カタカナ表記 [発音] します、 スコープ だと scope で 光学装置の 意味に なってしまいます)

USS Macon ( the two-bladed propeller in the early stages )

初期状態と思われる 二翅プロペラ 装備 「メイコン号」 の 写真

工事中

 


Engine & Propeller , Propulsive-Vector & Center of  Gravity
(推力ベクトルが 重心を 貫く話)

 

工事中

 

USS Shenandoah (ZR-1)

USS Los Angeles (ZR-3)

USS Macon (ZRS-5)

[ 300 HP x6 ] & [ 400 HP x5 ] echelon formation , [ 570 HP x8 ] line formation
推進器の 梯形配置 と 縦列配置

工事中

LZ10 "Schwaben" , long shaft drive propeller


ゴンドラに積んだ エンジンから の字に分かれて、 両舷 アウトリガーの プロペラを 延長軸で回す仕組み
(理想は 船体内に エンジンを 収納する事だが、 水素ガスへの引火防止で 船体から エンジンを 隔離した)

L10 type , the outrigger ; the Propulsive-Vector went through that Center of Gravity
L30 type , the outrigger ; the Propulsive-Vector went through that Center of Gravity

L42 type  Height-Climber , the outrigger ; Nothing

軽量化が 最優先されて、 「推力ベクトルが 重心を 貫く」推進器 が 廃止された 高高度飛行船

工事中

LZ120 "Bodensee" [ 250 HP x4 ] echelon formation

工事中

The moment of  rotation; torque


始動時には 風圧の影響が 無視できるため、 逆に 昇降舵で 補正もできない
随って、 推力ベクトルが 重心を 貫いていない場合 には 特に 始動時の加速を 制限される

工事中

LZ126 (ZR-3) [ 400 HP x5 ] echelon formation



工事中

工事中

USS Akron (ZRS-4) [ 560 HP x8 ] line formation


工事中

工事中

LZ129 "Hindenburg" [ 1,200 HP x4 ] echelon formation


工事中

工事中

 


USS Macon ( ZRS-5 )

Lakehurst airship hangar , in New Jersey

Moffett Field airship hangar , in California

USS Macon in the last stages , at San Diego , 9 Feb. 1934
Crashed : 12 Feb. 1935

1934年初頭、カリブ海での 海軍演習に参加する命を受けた「メイコン号」は 南テキサスの山岳地帯を 飛行中に、船尾の定期点検を行っていた。 この時に 主任整備員が異常音を聞き付けて、左舷水平安定板の斜桁部分で損傷を発見した。 「メイコン号」は 即座に 速力を 微速前進に落して、 破損箇所は 木材で補強する緊急処置が施された。
フロリダに到着して着陸後に入念な調査を行ったところ、 船尾の「17.5番リング」と呼ばれる骨組みに ダメージがあり、これが原因で 左舷水平安定板の斜桁部分が曲がったと結論付けられた。 しかし この「17.5番リング」は 4枚の安定板を支える要であり、 本格的なオーバーホールを実施すると 「メイコン号」は 何週間も飛行できない事態となるため、簡単な応急修理で済ます事にした。 この判断は 損傷箇所の状態が あまり深刻ではないという楽観視によるものであった。 応急修理で済ました「メイコン号」は カリブ海での 海軍演習を 成功裏に終らせ、 本拠地の カリフォルニア州 モフェット基地へ 帰投した。
モフェット基地に帰った「メイコン号」は 船長が交替した。 新任の船長は「アクロン号」の生存者の一人で 元副長だった、 ハーバート・V・ウィリー海軍少佐であった。 ウィリー少佐は 「17.5番リング」を 完全に 作り直す修繕の必要性を 感じていたが、 「メイコン号」の稼働率を 大幅に低下させてまでの決断に至れず、 全員一致の意見で 簡易措置で済ます事になった。

その後も 根本的な修理が成されぬまま 「メイコン号」は 飛び続けた。 1935年2月11日、「メイコン号」は 基地を飛び立ち 南カリフォルニアでの演習に参加した。 この演習で「メイコン号」は 雲の中に隠れて搭載機を発進させ、 水上の艦隊を探す広範囲の偵察活動を行って その能力を 遺憾なく発揮した。 翌 12日、「メイコン号」は 基地に向けて帰途についた。

12日の天候は 時々雨が降る時化(しけ)模様であったが、 「メイコン号」は 海岸沿いに散開した戦艦や巡洋艦や駆逐艦を追い越して沖合いを飛んだ。 午後5時頃、「メイコン号」は ビッグ・サー Big Sur 沖を 飛んでいた。 (ビッグ・サー Big Sur / スペイン語で [ El pais grande del sur Grande ] The big country to the south に由来、サンフランシスコの南東 240km ) 海岸沿いの山が 濃い霧に包まれ、前方の視界が悪化し、空が暗くなって来ていた。 再び強い雨が迫り、「メイコン号」の周りに 乱気流が渦巻いた時、操縦ゴンドラを当惑が支配した。 舵輪の手応えが 無くなったのだ。

上部の垂直安定板と方向舵が もぎ取られてしまっていた事に 当初は 誰も気付かなかった。 やがて船尾が沈下しだした。 船尾の整備員が操縦ゴンドラへ電話し、最後尾の気嚢が 破片で3つも破れ、 船尾の上部が 大きく引裂かれて 雨が吹き込んでいると報告してきた。 「メイコン号」の傾斜は 次第に増し、船長の ウィリー少佐は 船尾の非常バラストを 全て投棄する命令を下した。しかし 傾斜は 止まらなかった。 引き続き ウィリー少佐は 船首部の ヘリウムを 放出する命令を下した。 それでも傾斜は増し、遂に エンジンが 停止した。 傾斜が 運用想定値を超えて、燃料が エンジンへ流れなくなったのだ。

事態の重大さを直ぐに理解した乗員は少なかったが、傾斜が増すにつれ 「メイコン号」が 困難に陥っていると 誰の目にも明らかとなった。 整備員は傾いた通路を通り 船体後部へ辿り着き、船尾を軽くする為に 落とせる物は 何でも切り離した。そして船体の釣り合いを取る為に 非番の者は 船首へ集合した。 この乗員の奮闘により、船体の傾きは 次第に少なくなり、一時は 水平近くまで戻った。 しかし 破損した船尾の気嚢は 手の施しようが無く、萎んでゆくのを 止められなかった…。

「メイコン号」は 12の気嚢の内、2つまでなら 完全に萎んでも飛行できる設計になっていたが、 それが 3つもの数となり 船尾へ集中したのでは 絶望的な状況だった。 再び船尾の沈下が始まり、船体を傾斜させたまま「メイコン号」は 海面へ向かって落ち始めた。 「メイコン号」は 救援を求める SOS 発信し、艦隊が 現場へ集まって来た。

「メイコン号」の乗員は 沈着に対応し、救命胴衣を着け始めた。 「メイコン号」は 傾斜したまま海面へ着水した。 冷静に対処した乗員は 船体が 水平になるまで 海へ飛び込むのを待った。 乗員 76人の内、この事故で 死亡したのは 僅か 2人、 「アクロン号」遭難の反省から装備した救命具が 功を奏したと 判断して良いだろう。 しかし 米国内の世論は 飛行船反対を示し、海軍は 硬式飛行船計画を破棄し、 小型の軟式飛行船に限定することにした。 長寿で頑丈だった「ロサンゼルス号」も レイクハースト Lakehurst の格納庫で 解体されることとなった。 (注:メイコン号 就役時、ロサンゼルス号は予算の都合で予備役)

"Big Sur" in California

「メイコン号」が 事故を起こして失われた 「ビッグ・サー」と呼ばれる地域は 風光明媚な場所で、 観光地にもなっているらしい


事故原因の考察

 

USS Macon ( ZRS-5 ) , the sequence of  events

諸説ある 「メイコン号」 の 構造破壊事故

 

フリー百科事典『ウィキペディア (Wikipedia) 』日本語版では 以下…

初期の運航歴
メイコンは1933年10月12日に東海岸を出発し、 カリフォルニア州サンタクララ郡サニーヴェール海軍航空基地 (現モフェット連邦飛行場(モフェット・フィールド))に母港を移した。 メイコンは姉妹船アクロンよりはるかに生産的な経歴を残すことができた。 メイコンの指揮官は、飛行船が行動中の敵の察知できない距離に留まったまま、 搭載した飛行機を使って敵の偵察を行う技術と方法論を編み出した。 メイコンは何度か艦隊の演習に参加したが、 演習を計画し実行したものたちには「ZRS」の能力と弱点への理解が欠如していた。 飛行船に搭載されたF9C-2戦闘機の降着装置を取り外して、 代わりに燃料タンクを装備することが標準的に行われるようになり、 それによって飛行機の航続距離は30%増大した。 1934年後半、ハーバート・ワイリー少佐はメイコンによって、 ハワイから戻ってくる途中のフランクリン・ルーズベルト大統領を乗せた重巡洋艦ヒューストンを捜索し、 位置を突き止めることによって大統領(と海軍)を驚かせた。 新聞が船上の大統領に投下され、そして次の通信が飛行船に送り返された。 『「ヒューストン」発:大統領は貴官とその飛行船に対し、 その優秀な航法術と見事な行動に関して敬意を表する。 新聞をありがとう、よくやってくれた。大統領』 艦隊司令長官のジョゼフ・M・リーヴズ提督は、この出来事に狼狽したが、 海軍の航空局長官だったアーネスト・キング提督はそうではなかった。 ワイリーは直ちに中佐に昇進した。
破局への序章
大陸を横断するにあたって、 メイコンはアリゾナ州の山地を通過するために最高1,800 mまで上昇しなければならなかった。 船の圧力高度は900 m未満だったため、 ガス嚢を破裂させることなくこの高度に達するために大量のヘリウムが排出された。 そしてそれによって生じる浮力の損失を補うために、 4トンのバラストと3トンの燃料を投棄しなければならなかった。 メイコンは15,000ポンドの「重量」で飛んでいて、十分な浮力を動的に得るばかりでなく、 テキサス州ヴァン・ホーン近くの山地を通過する際のひどい乱気流に耐えるために、 フルパワーで飛行した。 激しい降下の後、尾翼の前部取り付けポイントを支えていた リング17.5の斜桁を損傷したが、 損傷が拡大する前に先任掌帆手のロバート・デイヴィスが応急処置を行い桁を修理した。 メイコンは無事に移動を終えたが締め付けリングと全4枚の尾翼は強化の必要があるとされた。 左右および下部の尾翼を支える桁は直ちに修理されたが、上部尾翼の両側の桁の修理は、 隣接するガス嚢のガスが抜かれる次回のオーバーホール時まで延期された。
事故
1935年2月12日、艦隊演習からサニーヴェールに戻る途中のカリフォルニア州サー岬沖で メイコンが嵐に遭遇したとき、その修理作業はまだ行われていなかった。嵐の間、 メイコンは乱気流に翻弄され、そのため上部尾翼に取り付けられた強化未了のリング17.5が損傷した。 尾翼は横にずれ、引きはがされた。構造の一部が後部ガス嚢に穴をあけ、ガス洩れが発生した。 断片的な情報により、直ちにバラストの即時で大量投棄が命じられた。 制御が失われ、尾部が下がり、 かつエンジンはフルスピードで前進を続けたため、メイコンは圧力高度を超えて上昇してしまい、 大量のヘリウムが排出されて浮力が消滅した。 メイコンは4,850フィートから20分かけて降下し、カリフォルニア海岸沖に穏やかに着水すると、 そのまま沈没した。暖かい気候と、 アクロン号の悲劇の後に導入された救命胴着と膨張式救命いかだのおかげで、 76名の乗組員中、死者は2名だけだった。その2名の死も、防げたはずのものであった。 一等無線士のアーネスト・エドウィン・デイリーは、飛行船がその高度の大半を失ったが、 まだ水面のはるか上にあったときに飛び降りてしまった。 一等給仕のフロレンティーノ・エドキーバは私物を取り戻そうと残骸に泳ぎ寄り、 沈没に巻き込まれた。 遭難の原因は、構造の破壊と尾翼の損失の後の操作ミスであった。 圧力高度を超えて上昇し(それによってガス嚢が 限界まで膨張しガスが放出されてしまった) さえしなければ、メイコンはモフェットフィールドに引き返すことができたはずであった。 メイコンは就役期間中50回の飛行を行い、1935年2月26日に海軍リストから抹消された。 以後、海軍の使用する飛行船は軟式飛行船のみとなった。

…と 以上のように解説されているが、この解説の指摘は 特に赤く示した部分において 的を射ていない
何故なら、 私の説明文にも記されているように 「メイコン号」は 12の気嚢の内、3つまでも 損傷した時点で 命運は尽きており、 「圧力高度を超えて上昇した事」の真偽に関わらず設計上の想定を超えたダメージなので 墜落は免れなかった。

 

USS Macon , the Gas Cell 1.2.3. lost

上部垂直安定板が脱落する際に 船体後部の気嚢3つも 破片で切り裂かれた

気嚢で内圧の高い上部を切り裂かれたら 浮揚ガスは 総て抜けて無しなってしまう
これが もしも 気嚢下部や側面だったならば 飛行中の緊急処置で 穴を塞ぐ事も可能だった
(正確には 気嚢への緊急処置 程度で ヘリウム・ガスの漏洩を 完全に止める事は 不可能です)
(ヘリウム・ガスの漏洩量を減らし、 基地へ帰投するまでの 時間稼ぎする程度に 穴を塞ぐ事が 可能 という意味)

次に 件(くだん)の 「リング17.5( = 17.5番リング ) の 損傷原因について…
私の説明文にも記されているように 「山岳地帯越えの飛行中、船内定期点検で損傷が発見された」… までが 事実
この山岳地帯越えの飛行で 「リング17.5」が 損傷したのか如何かは 従来の定説を唱えてきた解説者想像に過ぎない
( 「リング17.5」という表記は 日常的日本語ではないので、 以後 「17.5番リング」と 記載する事とします、 但し 英文箇所は "RING 17.5" とします)

0.25 ¼
0.5 ½
0.75 ¾

小数点以下の端数を示す、 米国の常用数値は 上の表の3つだけ
(これ以外の端数は 無理矢理 これへ当て嵌めますから、 米国文化の基本知識として憶えておいてください)

下の表は 「アクロン級」の Transverse Ring の リング番号正式な Cell 番号/記号表記
( - I , I , II , III ~ IX , X , XI )
(正式な Cell 番号/記号だと ローマ数字で 解り辛いので 当Webでは アラビア数字で Cell 番号を 後から 1.2.3.4. ... 10.11.12. と 設定しています)

Transverse Ring の リング番号は 舵軸からの距離を メートル法数値で示したものです
(設計は 米国式に インチ/フィート (ヤード‐ポンド法) で行い、 呼称だけ ドイツ式に メートル法の近似値を 代入したみたいです)

USS Macon , the Transverse Rings

USS Macon , crashed  " RING 17.5 "

(余談ですが…、 0番リング17.5番リングに 仕切られる1区画だけ、 アクロン級は 主船体に 竜骨が 存在しないのが不思議だったんですけど…、
今回 この作図で 解ったのは トラス構造でできた リング部分の 三角形の上下が逆転してるから、この間を 繋ぐ事が できないんですね… 納得!)

(余談の続き、 Transverse Ring 0⇔17.5 間三角形の上下何故 逆転するのか?もう少し説明しておくと、
縦通材を 船尾の窄まりに合わせて 間引く 際に 船体横断面の多角形の角数が 2/3 に 減るから反転するのです
後の ヒンデンブルク級では この縦通材の間引き方が アクロン級とは 異なる方式を採用し、 竜骨を 全通させています)


さて…余談は終えて本題、
もしも 飛行中の風圧で 船体にダメージを受けたのならば、 構造的に 最も負担が掛かるのは 0番リングと 思われます。
何故なら 17.5番リングよりも 0番リング に 組み付けられている安定板スパンの方が長いから、
片持梁 (Cantilever カンチレバー) へ 働く 梃子 (てこ) の力は 0番リングの方が 大きくなるからです。

USS Shenandoah ( ZR-1 ) , Upper Vertical Stabilizer damage

飛行中の風圧で 船体にダメージを受けたのならば、 過去の実例でも 舵軸近辺の被害が より大きい。

そもそも、何で舵軸よりも前の部分を強化しているのか?… と言うと、
上の写真のように 舵軸が折れ曲がっても 舵軸よりも前の部分が健在ならば、
安定板全体が 風圧で千切れ飛ぶような被害に至る前に、 舵軸が折れ曲がる事で 警告を促せるからです。

逆に、舵軸側が無傷でも 安定板の前の部分が破損すると… 「メイコン号」のように 安定板全体が 風圧で千切れ飛びます。
このような 限界に 突然 達し、全体が 崩壊してしまう事故に至る設計や 誤った運用法は 極めて危険なのです。
(戦前/戦中の飛行船には無い思想なので、 たぶん… 飛行機で習得した経験則の導入だと 思うのですが…)

以上のような理由により、 「 0番リング損傷報告の文献記述が無い」 にも関わらず、
「山岳地帯越えの飛行で 17.5番リングが 損傷した」と 断定するのは 無理があると 思われます。 では 17.5番リング損傷は 何に由来する原因なのか?…。

 

USS Akron Class , turn over circle , because of  USS Los Angeles happening

「ロサンゼルス号」の 逆立ち事件で 米国は ハイ・マスト (High-mast) 繋留方式を 止め、
スタブ・マスト (Stub-mast) 繋留方式と言う 低い繋留塔だけを 使用する方向へ 移行した。
(上の写真で 赤く示した部分が 地上に敷かれた円形のレールで、 ここを 固定用台車が 移動する)

USS Los Angeles , the Engine-car No.1

before ~ after , happening in 25 Aug. 1927
固定用台車と 連結するため「ロサンゼルス号」船尾の 1番エンジン・ゴンドラへ 米国で 追加された補強 改造

 

USS Los Angeles , preventive measures of  happening in 25 Aug. 1927


写真では危なっかしい補強に見えるが、 元々 「ロサンゼルス号」は スポーク(spoke)構造で
外周リング(肋材)は 圧縮力を 専門に受け持ち、 内部の張線は 張力を 専門に受け持つ、その
分業構造に合致する 補強が追加されていて 不自然な力が 船体に及ぶ恐れが 少なかった。
(この構造では リング部分に曲げ剛性が無い随って 「メイコン号」で 発生した 「剛体部の破壊」は起き難い)
(また、「アクロン級」よりも 船体の太い部分で台車と固定していたので、 比較的に安定感がある固定方式にだった)


「ロサンゼルス号」の改造では 問題の起きなかった 台車固定方式であるが、根本から異なる
「アクロン級」の基本構造とは 相性が悪い事に 誰一人として 気付かなかったのだろうか?。

 

USS Akron Class , preventive measures of  USS Los Angeles happening

「ロサンゼルス号」の 逆立ち事件に 過剰反応してしまった 米国は 重い台車で 風の力に対抗した。
(上記、ロサンゼルス号の補強改造と比べて、 アクロン級では リブ(trussed or braced rib)構造で 肋材に 曲げ剛性を持たせる設計となっていた)
(ドイツで設計された LZ126 = ロサンゼルス号が 船体構造に あまり剛性が無いのに比べ、 米国は 剛性の高い構造を好んだようです)
(しかし、当時の材料では たぶん剛性を高めても 靱性が脆く、 材料の粘り強さに乏しいので 局所的な弾性限界に 達したと 私は 考えています)
(当時の材料 : 主に軽合金であり、 靱性に優れた カーボン [ Carbon-fiber ] や FRP [ Fiber Reinforced Plastic ] などの新素材は 未だ無かった)



写真は USS Akron ( ZRS-4 )

以上 17.5番リングが 唯一地上の固定用台車と 連結されていた部位なので、 このリングへ ダメージを 与え得る要因として 特に 台車方式が 怪しいのは 理解して頂けると思います。 しかし たぶん、理解に苦しむのは 実際に 千切れ飛んだのが 下部垂直安定板ではなく 上部垂直安定板である事だと思われます。

この理解には 剛体リングの応力特性を 知っておく必要があります。 (剛体って 丈夫な反面、想定外の力が加わると 厄介です)

 

USS Akron Class , the side wind stress , because of  the heavy weight trolley


下部 垂直安定板を 固定する台車の車輪が レール上を 滑らかに 転がっても、 浮き上がり防止のために 重く作られた台車は その質量が 加速抵抗になり、 船体構造へ働く ストレスとなります。
トラス構造の リング下部のみに補強が施されているため、 リング全体の強度に均一性が無くなり、リング下部の剛性だけが 高まった状態です。 この状態では 右ルートの剛体と 左ルートの剛体の 相互関係は 「ハ」の字型に 開いて並べた マッチ棒の 幾何学的な性質と 同じになります。

ここまでは 「ジワァ〜ッ」と 働く 応力の説明でしたが、
船体へ及ぼす影響には これまでとは別に 瞬間的で小刻みな力も 含まれます。

下部 垂直安定板を 固定する台車の車輪が レール上を 滑らかに 転がらない場合、 先の説明とは 逆方向の力が 小刻みに働き、複雑な応力が 船体構造を 傷めつけます。
(この逆方向の力は 打ち消しあって「0」になったりはせず、 時間差攻撃で 損傷の蓄積が進行します)

以上の説明で生ずる損傷箇所を 下の図に纏めると…、垂直/水平安定板基部が
飛行中の風圧を受けて傷んだように検査で誤診する可能性充分あります。

水平安定板の付け根付近の損傷は 剛体が湾曲している故に、
圧縮力や張力を伝達する際に 中間部へ 二次的な ダメージを 受ける為に起きます。
(丁度、水平安定板の位置と 一致してしまう 落とし穴 に 嵌って誤診したと 思われます)

尚、「アクロン号」でも 同様の ダメージを 受けていたと 思われますが、
「メイコン号」よりも 約2ヶ月短命だったので 症状が 表に出なかったのでしょう。

(あるいは 過去の 下部垂直安定板破損事故の際に 大掛かりな修理を 施したから
時限爆弾的な ダメージ・タイマーが リセットされたのかもしれない)

USS Shenandoah ( ZR-1 ) , the Stabilizer Framework

その後の ドイツのように 内部へ 十字型に骨組を通して 安定板を支える構造ではないのは、
「シェナンドア」建造経験の 踏襲みたいです。 (シェナンドアは 舵軸にだけ 十字骨組 入ってますけど…)

私は 当時の関係者や専門家が、 必ずしも真相の核心を 総て 文献類で 現代へ伝承しているとは 思っていません。
寧ろ、 関係者の責任を問われかねない問題秘密裏の内に 改良/改善が 行われていた と 推理しています。 ですから 大事故の後に 設計された システムを 詳しく分析すれば、 公にされていない 事故原因の真相が暴けると 考えています。

(但し、この論法が当て嵌まるのは 欧米人が 設計した場合のみ何故なら 東洋人/日本人の設計者は 哲学欠如で 問題を 究明せず 改善もしない)
(補足すると… 日本では 設計者よりも偉い立場の 愚かな既得権益者に 総ての決定を 左右される為問題を 究明せず 改善もしない事が 多いから)


随って、「メイコン号」事故の後に設計された 「ヒンデンブルク号」では 米国式の 重い台車方式が 採用されず
自在車輪を付けた程度へ 簡素化された歴史事実に 着目しています。 もしも、台車方式が 安全で有効なら ドイツでも 採用する筈だと思われるからです。 何故なら 飛行船自体は 重量的に 自在車輪を装備するより軽量化できるからです。

 

In case of  the LZ129 "Hindenburg" Class , do away with the side wind stress


ドイツの場合、米国とは異なる船体構造で 上下左右共に 対称に近い設計で 垂直/水平安定板には 船体内部を貫く心棒が通り、上下左右の安定板が 十字型の一体構造に なっています。

また、重い台車は 採用せずに 尾輪が 下部垂直安定板に 付けけられています。

米国は 重い台車浮き上がり防止を図ったが… 船体構造を傷めてしまっていた
しかし 船体を少し重めにバラスト調節して 昇降舵を下げておけば OK だったのです。

 

In case of  the LZ129 "Hindenburg" Class , the tail gear

上の写真には 地上に レールと 台車も写ってますが、
これは 狭い格納庫へ 大きな船体を 衝突させずに 誘導するための装置で、
風が強い場合には 風に逆らって使用する事は ありません。
(上の写真で 垂直安定板 右下に スリットが見えますが… 「アクロン号」事故の対策で 水抜き穴なのかもしれません…)

(下の写真は ヒンデンブルク級の 2番船 LZ130、前の車輪が 浮いています)


"Hindenburg" class , LZ130 "Graf Zeppelin" (II)

「飛行船の再発見」講談社 (飯沼和正著) では ( 間違いの有る、 逆立ち事件/誤認識解説引き続き ) P115に…

このような逆立ち事故もあり、マストの建設費も高くなる。 係留時でも、当直乗組員を減らせない。 荷物や乗員の出入が不便である──などの理由が重なって、 ハイマスト方式は間もなく放棄されてしまった。
係留マストの背の高さは、再び低くなった。 マストはゴンドラの下面が、地上からわずかに浮いている程度の高さになる。 しかしながら、全長が二○○メートルにもおよぶ大型硬式飛行船のことである。 ゴンドラの底部に、自在車輪をつけた程度では、地上での安定した移動がむつかしい。 そこで係留マストを中心として、船体の長さを半径とする円周上に、レールを敷く方式が開発された。 このレールに、台車をのせ、台車と、飛行船の船尾部とを固定させる。

と このように↑間違いが 記載されている…。 (飯沼和正:科学ジャーナリスト、 ブイヤント航空懇談会事務局長)

真実は 順序が異なる、 「メイコン号」では 円周レール上を移動する 重い台車へ飛行船を固定して ダメージを与えていた為に、 飛行船の構造破壊を飛行中に齎して 危険 なので 自在車輪を付けた程度に 簡素化 改良 したのです 。
「ヒンデンブルク号」が 自在車輪を採用したのは 硬式飛行船として 世界初の出来事だったのです。

(第一次大戦中の 1915年に 英国が SS軟式飛行船を 急造するため、 飛行機の胴体を流用して 飛行船の ゴンドラに使用しているので 車輪付きと言う意味では 軟式飛行船に 前例はあるが、 緩衝器付き自在車輪と限定するなら 「ヒンデンブルク号」が 飛行船全般でも世界初になります)

米国が行ったような 飛行船を 力技で制御しようとした行為が 如何に危険だったのか…
以下に記す次の説明で もう少し解って来ると思います。 (「同じ重量での 飛行船と 飛行機の比較」へ続く…)

 


The large-sized airships has become extinct in the U.S.
同じ重量での 飛行船と 飛行機の比較」で見えて来る、 大型飛行船 絶滅の理由

 

工事中
よく見掛けるのは LZ129 "Hindenburg" と BOEING  B747 旅客機との比較図ですが… 「わぁ… 飛行船って 大きいね」 と 見た者に感じさせる以外には 比較価値が無いです。 飛行船というのは 動力付き気球です。 その船体は 浮揚ガスを収めた 巨大な ハリボテ なので嵩張るのは当たり前です。 開発/運用コストと 規模で比較しなければ 実態が解りません。

[ Dead weight (Empty mass) ]
ZRS-4 Akron  ,    length 239.3 m , payload 73 t , weight 113 t
An-22 Antheus , length 57.80 m , payload 60 t , weight 114 t


自重 が ほぼ同じ ターボプロップ輸送機と 「アクロン号」の 大きさ/搭載量 比較
(旧ソ連/現ロシアが製造した ANTONOV An-22 Antheus は 1965年初飛行で 当時 世界最大の輸送機)


ANTONOV  An-22 Antheus (Cock) , the Union of  Soviet Socialist Republics (USSR)

最も明確な比較は 自重 が ほぼ同じ 飛行機と 比較する事であるが… 生憎 「アクロン級」と ほぼ同じ自重で よく知られた飛行機が 見付からず、 旧ソ連の アントノフ An-22 アンチス (コック) 輸送機という 超マニアックな選択に なってしまった。

 

強度の壁

この 自重 が ほぼ同じ、 飛行船と 飛行機との 比較から 端的に言える事、
同じ技術水準で 製作/建造する限り、 飛行船を 飛行機並の強度で 建造する事は 不可能なのです。」 … 何故ならば 限られた 同じ重量の資材で、 飛行船は 飛行機よりも 遥かに巨大な構造物を 構築しなれければ ならないから です。

仮に、未知の未来技術で 現在の飛行機並の強度の 飛行船が 出来たとしましょう。 でも その技術で 飛行機を製作したならば… 墜落しても壊れない飛行機が 出来るかもしれません、 堂々巡りです。 (墜落しても壊れない飛行機の 機内に乗ってる人間が 衝撃に耐えられるか どうかは 別として…笑)

これは 「 R 101 」の項で 説明している 「同じ技術水準で 開発した場合、 ディーゼル・エンジンは その仕組みから構造上どうしても ガソリン・エンジンよりも 重くなってしまいます。 この、圧縮率が高いので 補強すると重くなる性質は 避けられません。」と いう件と 重さと強度の因果関係の順番が 逆になっていますが 同じような理屈です。

(歴史上 黎明期の 飛行船と 飛行機に 強度差は あまり ありませんでした… 寧ろ 誕生間もない飛行機は 華奢で繊細な手工芸品の領域でした、
 この理由は 開発初期の非力で重い エンジン性能の影響で、 飛行機の場合 強度を かなり犠牲にしなければ 飛ぶ事すら できなかったからです)
(飛行船が 最も活躍した時代、飛行機は 木製羽布張りの 複葉機の時代ですから、 その自重は 多くを エンジンの重量で占められていました)
(しかし、エンジン性能が 一定水準以上に向上すると… 木製羽布張りの複葉機から 全金属製モノコック構造の単葉機へ…
 相対的な エンジン重量は 減り、 余裕を機体の構造重量へ振り向けられるようになる事で強度が増し、 飛行機は みるみる 丈夫な構造へ進化しました)

(金属製 硬式飛行船の場合、速度に関係無く空中に浮いていられるので、 自重に対して エンジン重量が占める割合は 元々多くありませんから、
 エンジン性能の向上は 主に速力へ振り向けられて、 構造重量へ補強材を割り振ろうにも 巨体故に隅々まで行き渡らず、 効果を得られませんでした)
(飛行船と 飛行機は その双方の 生い立ちと 要求仕様/成長の方向性の違いから、 後の明暗を分けたと思います、
 飛躍的に強度が 増していった飛行機と、 強度は 初期よりも少しずつ向上しているけれど、 際立った進歩の無いままに 只管 大型化した飛行船です)


飛行機が 木製羽布張りの 複葉機の時代、硬式飛行船は 既に 金属製骨組であり、 その時代の最高強度の切り札を 最初から使い切っていて、
次は カーボン Carbon-fiber や ケブラー Kevlar などの新素材登場まで 何十年かの構造材進歩の停滞を 誕生時から余儀なくされていたのです。


多くの文献類では語られていませんが、この時代 既に 飛行船は 強度の壁」で 苦闘していた と 私は 考えています。
( Anti-Sagging structures サギング対策型飛行船は 結果的に 次々と 構造破壊で失われ、 強度の壁を打ち破れずに 断念したのではないか?…  少なくとも 金属製骨組の大型硬式飛行船という方法論では この当時の技術で 打開策は 無いと 英国に続き 米国も判断したと 推理しています…)

(尤も この強度の壁は 進化した飛行機との相対的な比較で生じる 幻覚なのかもしれないのですが… つまり 運用法の問題で 力技を避ければ…
 要するにですね… 飛行船よりも 格段に丈夫になった 現代の飛行機だって、 飛ぶために軽量化が必要で 戦車のような強度を 要求できないって事、
 これと同じ発想が 飛行船と飛行機との比較でも認識できれば良いのですが、 同じ航空機同士なので混同して 分別するのが難しいのでしょうねぇ〜)


飛行船と飛行機の間には 飛行原理上の違いから生じる 重量制限差で、 強度的に埋める事のできない が あります。 (飛行機も 飛ぶ為の軽量化は 不可欠ですが、 極めて軽い 飛行船の立場から見ると ぬるい軽量化で、 飛行機は 極めて重い航空機なのです)
(極端な話、飛行機は 軽合金ではなく 重い鉄やステンレスで作っても、 強力なエンジンさえあれば 離陸速度や滑走距離の弊害こそあれ 飛行可能、  でも 飛行船は その原理上、空気に対する 浮揚ガス浮力で 飛ぶので 空気の比重を超える 重量増が許されません、根本から飛べなくなるからです)

この 強度の壁は 言い換えれば 重量の壁もしくは 比重の壁とも 浮力の壁とも言える 表裏一体の関係です。
飛行機の大型化に際して よく言われるのが…
「飛行機の重量が 寸法の 3乗で 増加するのに対して、 揚力は 翼面積に比例するから 2乗でしか増加しない」… だから 飛行機の場合には 大型化に 限界がある
しかし 「飛行船の重量が 寸法の 3乗で 増加するのに対し、 浮力も 気嚢体積に比例するから 3乗で増加する」… だから 飛行船の場合には 大型化に 限界がない
確かに その通りではあるのですが… 実は 飛行機の場合には 逃げ道があって、 速度に比例して 揚力も増えるので 大型化も 機体強度向上のための重量増も ある程度 可能だったわけです。 しかし 飛行船の場合、特に 船体強度向上のための重量増に関して その逃げ道が 存在しません。 何故なら 浮揚ガスとして 水素や ヘリウムを 上回る気体は 科学の原理上は 存在せず、 「飛行機の 速度と揚力の関係」のような 飛行船の浮力増加手段が無く、 空気の比重を超える重量増が 許されません。 (熱気球のように 浮揚ガスを 加熱する 浮力増加手段は存在しますが、 真空相当以上には 浮力を増やせない上限があります)
(真空相当の浮力 というのは あくまでも理論値であり、 実現は 困難な浮力の上限です、 どんなに気体を 熱しても この値以上の浮力は得られません)

このように、 強度の壁が 現代へ伝承されていない歴史背景を考えると、 現代の専門家ですら知見の欠落が窺える…
大型の 硬式飛行船が 活躍していた当時の 関係者や 実態を知っていた 専門家達は 核心を語らずに この世を 去っていて、 今日 真相を理解している専門家は 皆無に等しい状況です。 この現状を 裏付ける 一例として、 近年 刊行されてる 飛行船 関連書籍で 今後の 飛行船 関連技術と言う名目で センター・ピボット方式 を 本気で論じてる馬鹿さ加減です。


 
繋留マスト方式 (上)センター・ピボット方式 (下)

繋留マスト方式は 船首の先端部と マストの頂点を 結合し、 マストを 旋回軸として 風向きに応じて 船体を 回転させる。 飛行船の繋留用地は 最小でも 船体の全長を半径とする円の面積が 必要となる。 この円の面積を 無駄と見なす認識が 総ての間違いの元となる。 これは 従来の解説が 風向きに応じて 船体を 回転させる事のみを説明して、 突風による 横風などを船体へ受けた場合に 風下側へ 船体が 押し流される事によって 風の力を受け流している事を説明していないのが 読者の知見を 確立させる妨げになっている と 思われます。 (解説者に その知見が 欠落しているので 期待するのも 無理か…)

Mooring Mast System (繋留マスト方式の原理)

That fended off  the sudden gusts of  wind , by the travel of  the centre of  gravity.
( The travel of the centre of gravity  =  shock absorber )

繰り返すと、繋留マスト方式の肝風向きに応じて 船体を 回転させる事ではなく、 風下側へ 船体が 押し流される事によって 風の力を受け流している事 であり、 風下側へ船体を 最小限で移動しながら方向転換 させている事です。
(この為 船体の挙動/変位は 総括して 風下側に限定されていて、 船体構造へ無理な力が あまり働かないのが このシステムの特徴なのです)

センター・ピボット方式は 風向計 anemoscope や 風見鶏 weathercock fantasy に その発想の原点を見出す事ができる 極自然な アイディアであり、 船体のほぼ中央部で 重心付近を 旋回軸とするため 飛行船の繋留用地も 船体のほぼ全長を直径とする円の面積に減ずるのが 特徴とされている。 しかし、この方式には 落とし穴があって 船体の前半部の船首部分は 風上へ向かって 力尽くで押し出される無理がある (この センター・ピボット方式は アイディアとしては アリ なので 念の為)

Idealize Center Pivot System (センター・ピボット方式の理想)

The bow force out to windward of  the Pivot.

しかも センター・ピボット方式 突風による 横風などを船体へ受けた場合に 船体を 圧し折る力が働くが、 重心点近くで地上に固定されていて 風下側へ 船体が 押し流される事による 風の力を受け流す効果は 全く期待できないために 船体構造が 破壊される可能性が 十分にある。 (少なくとも現代の飛行機並みの強度で飛行船の船体を建造できない限り、実現不可能)

Real Center Pivot System (センター・ピボット方式の現実)

The sudden gusts of  wind , break off  the hull.

過去の事例からも 硬式飛行船が 地上の障害物に 引っ掛かった状態で 横風を受ければ 簡単に 船体が折れ曲がってしまう事が 検証できる。 随って、センター・ピボット方式アイディアの一つとして 紹介するのは 構わないが、 その潜んだ問題点に 気付きもせずに 理 (ことわり) も書かず 有望視する専門家は馬鹿 である。 (理 : 理由、事情などを 説明すること)

LZ 8  "Deutschland"

The sudden gusts of  wind , break off  the hull.

センター・ピボット方式で 横風を受けると 船体が 圧し折れてしまうのは… 風下側へ風の力を受け流す効果の欠如…
重心点近くで地上に固定され重心の移動が起きない為なので、 地上の軸受けを 移動式にして 緩衝器 Shock-absorber の 役目を 兼ね備えさせれば 実現可能となる、但し 飛行船の繋留用地が船体のほぼ全長を直径とする円の面積に減ずる という 面積的利点は 消え失せます (センター・ピボット方式で そこまで機構に凝るなら 繋留マスト方式の方が 簡単簡潔なのです)

Advanced Center Pivot System (センター・ピボット方式の改良)

The travel of  the centre of  gravity  =  shock absorber

センター・ピボット方式と 同様に中央部分で 地上と繋ぐ、 流線型の繋留気球を 思い浮かべて欲しい。
流線型の繋留気球では 浮心直下から 繋留索が伸びていて 突然風向きが 変ったとしても 長い繋留索の遊びがあるから 風下側へ押し流される挙動があり、 その間に 方向転換しています。 だから 気球が 横風で 圧し折られる事も無いのです。 (逆に言えば、 流線型の繋留気球は 繋留索を伸ばさずに 地上へ固定している状態で 強い横風を受ければ、気球が 圧し折られるます)

このように センター・ピボット方式の問題点を 説明すると、
それなら 横風を受けても船体が圧し折れないように強化すれば… と 考える人も出て来るだろう。
すると、もう一度 再び、この説明の最初の一文を 繰り返す事になる。

自重が ほぼ等しい、 飛行船飛行機の 大きさ比較
[ Dead weight (Empty mass) ]
ZRS-4 Akron  ,    length 239.3 m , payload 73 t , weight 113 t
An-22 Antheus , length 57.80 m , payload 60 t , weight 114 t

この 自重 が ほぼ同じ、 飛行船と 飛行機との 比較から 端的に言える事、
同じ技術水準で 製作/建造する限り、 飛行船を 飛行機並の強度で 建造する事は 不可能なのです。」 … 何故ならば 限られた 同じ重量の資材で、 飛行船は 飛行機よりも 遥かに巨大な構造物を 構築しなれければ ならないから です。

 

さて…、
アントノフ An-22 では 比較対象が あまりに マニアック過ぎて、普通の人には ピンと来ないだろうと考え、 明確な比較とは 多少ピントボケけれど、 最大離陸重量 が 同程度の 一般的な ジェット機で比較。(下) これなら空港へ行けば 普通に実物を見られるし、旅行や出張や帰省などで利用し、 乗った経験者も少なくないでしょう。 先に 最大離陸重量 だと 多少ピントボケると申しましたが、 其は 主に「構造重量+エンジン重量」の自重積荷(payload)燃料が加算されるため、 個々の配分比率が 解らないままで比較する事になるからです。 しかし この 最大離陸重量には 根本的に原理の異なる 航空機同士を比較する際に その航空機の規模を示す基準として 都合が 良いのです。 (水上船舶の 満載排水量 比較に 相当)

[ Maximum take-off  weight ]
ZRS-4 Akron  ,  length 239.3 m , payload 73 t , weight 194 t
B767-381ERF , length 54.94 m , payload 55 t , weight 185 t


最大離陸重量 が 同程度の ジェット貨物機と 「アクロン号」の 大きさ/搭載量 比較
(「アクロン号」は 軍用飛行船なので 比較対象を 一般的な ジェット旅客機 B767-300ER ではなく、
B767 ジェット貨物機 と しました、 乗客定員が何人と比較するよりも 何トン積みが 解り易いかと…
機体の大きさや 外観の姿形は 客室窓以外 旅客機も貨物機も 大差ありません)
(↓写真は 中型旅客機 B767-300ER 旧塗装 JAL )


BOEING  B767-300ER

この 最大離陸重量による比較が 何を 意味するのか?…  それは 「アクロン級」の飛行船が 現代の中型ジェット機程度に相当する規模 だと言う事です。 勿論、1930年代の当時には 現代の中型機と同規模の飛行機は 存在せず、当時の認識では  現代の中型機は 想像を絶する「巨人機」です。 とは言え、機体規模自体は 当時の技術でも製作出来ないわけではなかったのですが、 それを飛ばす 軽量高出力の エンジンが ありませんでした。 だからこそ、 当時に この規模の航空機を欲するなら 飛行船と言う選択肢しか無かったとも言えます。 逆に言えば現代の中型機が普通になった今、 「アクロン級」の「巨体航空機」が 果たして必要なのか?…  その存在意義を問われれば 必要と即答できず、苦慮してしまうわけです。
(大型硬式飛行船の運用実績として、 容積 100,000 m3 級までは 成功例を 残せてますが、 容積 200,000 m3 級になると 尽く事故で失われています)

因みに「アクロン級」の後 完成した「ヒンデンブルク号」は 豪華客船として 知られています。 「ヒンデンブルク号」の大きさは「アクロン級」よりも 少し大きい準同規模と 考えてもいいでしょう。 中型機規模の 「ヒンデンブルク号」の 乗客定員は 50人(40人説もある)、 ボーイング 767-300ER の 乗客定員は 210〜239人、 現代の中型機でも 定員を 40〜50人まで 減らせば、 個室や食堂も設備可能で、 実際、日本の政府専用機や米国の大統領専用機 (Air Force One) を 想像すれば解るように 現代では 豪華設備だけで比較するなら、 それは 過去の飛行船の専売特許とは 言い切れない状況に なっています。
(現代に至っても飛行船の専売特許、 低空を ゆっくり飛び 展望を楽しみつつ、 エンジン音が 比較的静で、 シートベルトが要らないとか 等は 除く…) (シートベルト : 日本の場合は 『航空機にシートベルトの義務付け』 を しているので 飛行船にも シートベルトが付きますが、世界的に日本は例外!)

 

費用の壁

何故に、「存在意義を問われれば 必要と即答できず、苦慮してしまう」のか?…  それは それまでの 大型硬式飛行船の 在り方が 常に その時代の 飛行機では 到達できなかった航続距離」や 「搭載量」を 追い求めて来ただけ だからだろう。

(近年、専門誌や雑誌などで 報道されては立ち消える、 大型飛行船の計画が 全長 300m〜600m級で、 嘗ての「アクロン級」や「ヒンデンブルク級」を 遥かに凌ぐ規模ばかりである事実からも、 この思想が未だ継続中なのが窺えるが、 飛行機には 小型〜大型まで需要と用途があるのに対して 不自然) (因みに 全長 300m〜600m級の 大型飛行船計画は たぶん莫大な開発費を 必要とするだろうけど、 表題の 「費用の壁」 の主旨は そこではない…)

さて、「開発/運用コスト」についてですが…、具体的な資料の手持ちは 全くありません。 仮にあったとしても 「アクロン級」開発当時と現代では 1世紀近くの隔たりがあり、 時代も物価も異なりますから 単純な比較は 困難です。 とは言え、現代の飛行機の基準で 今現在 「アクロン級」と 同等の 大型硬式飛行船を 建造する場合の 「丼勘定」は 可能でしょう。

先ず、エンジン… これは 飛行機メーカーも 飛行船メーカーも エンジン・メーカーから購入して搭載するので 開発条件は 同じです。 但し 重量規模が 同等の航空機として比較すると、 飛行機は 飛行船よりも 圧倒的に高出力なエンジンを 必要としますから 飛行機の方が 割高 と なります。

次に、構造材… 航空機用軽合金で 建造するのか? カーボンのような新素材で 建造するのか?、 選択の余地は 残されるものの、 重量規模が 同等の航空機なら 飛行機と飛行船は 自重も近似し、ほぼ同額と 予想できます。
(仮に、船舶と航空機の比較だと 鋼材 100t と 軽合金 100t では 価格差が 有り過ぎなので、 このようには ならない)

そして、建造費… 近年の飛行機が セミ・モノコック構造 Semi-Monocoque Structure なのに対し、 過去の硬式飛行船は 骨組膜構造 Frame Membrane Structure 、 現代の軟式飛行船なら 空気膜構造 Pneumatic Membrane Structure 、 供に 建築では 天幕/テント Tent に 属し、規模の割りには 安価に作る事が可能なのが特徴ですが、 問題は 地上に設置するテントではなくて 空を飛ぶ巨大な航空機として建造するので その分 割高となり、 結局 安いのか?高いのか? 微妙
(地上へ設置する テントなら 比較図程のサイズ差があっても、 中型機より安く建設できるだろうけど… 航空機だからなぁ) (モノコック構造/張殻構造 Monocoque Structure : 建築では シェル構造 [ Shell 貝殻 ] に 近い感じで、 外板に 強度を 分担させた 構造様式です)

最後に 設備費… これは 建造用 エア・ドックとして 準備するにしても、 保管用 格納庫として 配備するにしても 飛行船の方が 飛行機よりも 圧倒的に 巨大な建造物を要求して、 飛行船は飛行機の数倍は高額な設備投資を必要 と します。 それでもまだ、建造用 エア・ドックなら 其処から 飛行船を 量産すれば 採算も取れるだろう。 しかし、建造した飛行船の数だけ 保管用 格納庫が 必要です。 航空機なので 船舶のように 雨曝しの 屋外繋留では 暴風に 耐えられないのが 弱点
(工場設備として考えた場合、 大型硬式飛行船 1隻を収容する建造物があれば、 中型機なら 数機を並べて量産できる) (格納設備として考えた場合、 大型硬式飛行船 1隻を収容する建造物があれば、 中型機なら 数機を並べて保管できる)

これら トータル・コストを 勘定すると… 最後の設備費が 大きく影響して、 飛行船は 飛行機よりも 割高な航空機と認識するのが 妥当と思われます。 この事柄は 飛行船の全盛期においてさえも、 飛行船メーカーの世界的な数が 世界各地に無数にあった飛行機メーカーの数と比べて あまりにも 参入数の少なさから、 飛行船建造の敷居の高さが 検証できます

ところで、文献類では 語られてない事柄ですが… そもそも何故 英国は 「ハイマスト方式」 を 開発したのか?…
「飛行船の再発見」講談社 (飯沼和正著) では…
『このような逆立ち事故もあり、マストの建設費も高くなる。 係留時でも、当直乗組員を減らせない。 荷物や乗員の出入が不便である──などの理由が重なって、 ハイマスト方式は間もなく放棄されてしまった。』
…と このように 建設費は割高で 使い勝手も不便」と ハイマスト方式の 真意も分析できずに 切り捨て ています。
(まぁ〜「使い勝手」については 兎も角、 建設費が割高」なんて比較分析は 自称 科学ジャーナリスト として ど〜よ?…)

しかし 私が思うに… 英国は 飛行船1隻を保有するには 格納庫も見合った数が必要という 費用の壁を 打開する為 、格納庫に替わる 安価で安全な屋外繋留方法を 模索したのではないか?…。 歴史的に見ると それ以前の ドイツ式地上繋留方法では 強風に煽られて 幾多の飛行船が 失われています。 だからこそ ドイツは 格納庫に拘り、国内各地に多数の 飛行船の格納庫を 整備しました。 これは 途方も無い コストです。 英国式の結果は R 33 G-FAAG と USS Shenandoah の 繋留塔から千切れ飛ぶ事故を 起こし、この 格納庫に替わる 安価な案強度の壁に 立ちはだかれた訳です。
(水上船舶のように 雨曝しの 屋外繋留でも 暴風に 耐えられるかを テスト中に USS Shenandoah は 事故を 起こしました)
( H.M.A. R 33 G-FAAG の事故の場合は 私の資料不足で 断言できませんが、同様に 暴風耐久テスト中だった感じです)

H.M.A. R 33 ( later G-FAAG ) , temporary High-mast (trial product)

初期 試作段階の 仮設型 ハイ・マスト

USS Shenandoah ( ZR-1 ) , permanently High-mast (practical use)

塔内に エレベーターを 装備した 常設実用型 ハイ・マスト


暴風により繋留塔から千切れ飛ぶ事故で受けた損傷

(但し、これらの事故で ハイマスト方式が 直ちに 廃止されなかったのは 気象条件の限度を定めれば 対処可能と 判断されたからではないか?…) (まさか 悪天候でもないのに 風向きが 突然 180度 逆転すると 飛行船が繋留塔で逆立ちする とは 米国では予想だにしていなかった感じですが…) (もっとも、米国での逆立ち事件が 1927年、英国では 1930年の R 101 G-FAAW 墜落事故まで ハイマスト方式が 健在なので 飯沼氏の説は …) (文献類では 語られていませんが、アクロン級は船首に 繋留塔 乗込口を有し ハイマスト方式にも対応した設計ですから 因果関係は複雑だと思う)



(これは 私の仮説なんですが… 米国 既存のハイマストが 強度不足で アクロン級に 対応していなかったから 対応 繋留塔を建設せずに撤廃した) (因みに、エンパイア‐ステート‐ビル Empire State Building / 102階、高さ 381m、1931年完成の 屋上が 飛行船用の繋留塔なのは 有名な話です)

繰り返すと、ハイマスト方式」は 格納庫に替わる 安価な恒久施設として 開発されたのであり、一時的に地上へ繋留する「スタブマスト方式」などとは 用途を異にするので マストの建設費も高くなる』 なんて認識自体が 間違いと思われる。
(スタブマスト方式臨時の着陸地への仮設格納庫への 移動用が 本来の目的で、格納庫に替わるモノではない)
(勿論、格納庫は 飛行船を 整備したり 修理する場所でもあるが、ここで言う 格納庫の替わりとは 保管に限定した意味)

USS Los Angeles ( ZR-3 ) , temporary Stub-mast

臨時の着陸地への 仮設型 スタブ・マスト

LZ127  "Graf  Zeppelin" , Lakehurst airship hangar & self-propelled Stub-mast

格納庫への 移動用 自走型 スタブ・マスト

では 何故、「ハイマスト方式」だったのか?… 過去の事例から 地上繋留中に 暴風に遭うと、 飛行船は 上下に 船体が 暴れて 地上へ 衝突するから 壊れてしまう。 随って、地上と 安全な距離を保つため 繋留塔を 高く設定したのだと 考えられる。 これらの事柄からも 大型硬式飛行船は 飛行機よりも 割高な航空機 と して 経費に苦しんでいたと 推測できます。

(船舶に例えると、スタブマスト方式は 接岸繋留ハイマスト方式は 嵐に備えて離岸する 浮標繋留沖合い投錨かな) (要は 格納庫の数よりも 多数の飛行船を 保有するための 全天候型 屋外保管施設を 目論んでいたのではないか?…) (船舶に例えると、格納庫は 船渠/ドック dock に相当し 建造や整備や修理の時だけ使い、 普段は繋留塔上で露天保有したかったんじゃないかな?) (つまり、ハイマスト方式が 廃れたのは マストの建設費が高いなんて バカな理由じゃない、 格納庫の替わりとして 全天候型に なれなかったから)

(米国が 繋留マストの方式を スタブマスト方式 1本に 絞った際、 浮き上がり防止に 重い台車方式を 採用したのも 船体が 浮き上がった後に 地上へ衝突するのを 恐れたからではないだろうか?… という推理も 此れまでの流れから導き出せる) (随って 従来の解説で ハイマスト方式の 浮き上がりだけ問題視していたのは 分析不足にも程があると言わざるを得ない)

USS Los Angeles ( ZR-3 ) , Stub-mast (left) & High-mast (right)

マストの建設費も高くなる ?… この 自走式 スタブ・マストと 固定式 ハイ・マストの 比較で考えると
結構いい勝負で 建設費は どちらが安いか高いかなんて 即答できない と 思われるんだけどねぇ…。

variable height , self-propelled  Stub-mast

この写真の 自走式 スタブ・マスト
高さも伸縮式で 船体の直径が 異なる飛行船にも対応する 凝った機構 が 付いています

余談ですが…
「ロサンゼルス号」って 西海岸の都市名なのに 根城は 東海岸 ニュージャージー州の 「レイクハースト」ってのが 昔から不思議で…
「メイコン号」も 東海岸 ジョージア州の都市名なのに 根城は 西海岸の カリフォルニア州だしなぁ…
「アクロン号」は 東海岸側内陸部 オハイオ州の都市名で 根城も 東海岸…、 う〜ん 米国って こういう事には 無頓着なのかな?
日本に例えると… 他所の鎮守府 (管区) に 因んだ艦名 (船名) を 命名するような法則性だもんなぁ〜

以上、格納庫と繋留塔という設備面から 飛行船は 飛行機よりも 割高な航空機であると 説明してきたわけですが…。

ところが 困ってしまうのは… 講談社「飛行船の再発見」の著者、 飯沼和正氏が 雑誌記事などで…、
『LTA航空機 (飛行船や気球の事) は HTA航空機 (飛行機や回転翼機の事) よりも開発費が安くなる』 と 宣伝/吹聴しているので 頭が痛くなります。 この説の 具体的な根拠が 文中に示されていないので 飯沼和正氏の真意は掴めませんが、 仮に船体の大きさが 中型機と同じ 小型の軟式飛行船と 中型機を 比較した場合、 格納庫は 同規模なので 設備費に 大差は 出ないが、 構造的には 膜構造に 属し、 規模の割りに 安価に作る事が可能なのが 特徴なので 建造費は 格安 と なるだろう。 しかし 重量規模で比較した場合、小型の軟式飛行船は 小型機の能力しかなく、 こんな比較に 現実的な意味は無い(もしかして… 企業を 唆す為に 「開発費が安い」 と言っているのか?… 企業は 巨額の開発費が 掛かっても 儲かる事には 意欲的 だけどねぇ〜)

重量で同規模と言える 大型硬式飛行船と 中型機の比較では 建造費の経済性は 甲乙付け難く、設備費では 明らかに大型硬式飛行船の方が 割高 と なるのであるから、 飯沼和正氏の説は 人々を 困惑させる 厄介な発言でしかない。
(仮に LTA航空機の開発費が安いのが事実だとしても、 飛行機の保存数と比べて、維持費が高額だから 飛行船は 1隻も 現代まで保存されていない)
(飛行機も 滑走路などの空港設備は 高額 だけれど… 多数の機体で供用できるから、利用率が高まれば 経済効率も良くなって 割安 にもなるしなぁ)

過去の大型硬式飛行船の在り方は 常に その時代の 飛行機では 到達できなかった航続距離」や 「搭載量」を 追い求めて来た だけ で あった。 この論法による限り、 飛行船の 設備費や維持費のコスト高は 容認されたのだろう。 確かに、この論法では 飛行機で実現できない (≒∞の開発費) と 比較しているから 「LTA航空機の開発費が安い」と 同義です。
(しかし、 この論法は 不健全に思えてなりません… 恐竜の 巨大化進化の如く 絶滅へ向かった 方向性だと 感じていますが… 巧く説明できません)

たぶん、重量比較において 飛行船と飛行機が 両立/対立する範囲では 常に 飛行船の方が 割高に なると思われます。 でも この割高を承知した上で 、それでも 飛行船を選択するだけの必然性が 見出せるか?… そこが 争点だと考えます。 (過去の大型硬式飛行船の在り方は ここの部分煮詰めが甘く、巨大化にのみ頼って来たのが 結局 放棄されて廃れた原因ではないでしょうか?…)

また、米国のように 浮揚ガスに 安全な ヘリウムを 選択した場合には ヘリウムコスト高 も 勘定する必要があります。 (この 高価な ヘリウム・ガスの 節約方法 を 誤ると 「ヒンデンブルク号」爆発事故の 二の舞です)

将来的に見て、飛行機よりも 飛行船が 経済的に有利となる状況は エネルギー消費規制的な法律が施行されない限り、 有り得ない事 だと 私は考えています。 (燃費を運賃に上乗せして利益回収できない法的規制でもないと、 設備費の差額は埋められない)

今後、「低エネルギー消費社会到来」へ向けた取り組みが如何なるのか解らないが…、 税制的にも設備費において特に 飛行船は 飛行機よりも割高だから 飛行機との生存競争に敗退し衰退した、 この事実を理解しないと 話は先へ進まない。
(税制的にも 農業用地と工業用地みたいな 課税格差がないと、 飛行機用より遥かに巨大な飛行船の格納庫なんて 民間で保有できないと思われる)

 


 

ZRS-4 & GZ20

An-22 Antheus , B767-381ERF  (←クリックすると画像切替します)

(SHP: Shaft Horse-Power / ターボ・プロップ軸馬力 , THP: Thrust Horse-Power / ターボ・ファン推力馬力)
\ Length Dead Weight take-off Weight Payload Power-plant sum Max.Speed
ZRS-4 Akron 239.3_ m 113._ t 194._ t 73._ t 560  HP x8 4,480  HP 128 km/h
ZRS-5 Macon 239.3_ m 113._ t 194._ t 73._ t 570  HP x8 4,560  HP 130 km/h
An-22 Antheus 57.80 m 114._ t 230.? t 60._ t 15,000SHP x4 60,000SHP 685 km/h
B767-381ERF 54.94 m 92.? t 185._ t 55._ t 89,900THP x2 179,800THP 870 km/h
GZ20 GY.blimp 58.5_ m 3.7 t 6._ t 1.3 t 210  HP x2 420  HP 85 km/h
- 全長 自重 離陸重量 搭載量 エンジン出力 合計出力 速力

Goodyear  blimp , GZ20 type

それにしても…
現代の飛行機の エンジン出力の 桁違いの凄さには 思わず笑ってしまいます。 但し、現代の中型旅客機は 数千馬力程度では 離陸すらできないし、時速百キロ・メートル以下で 飛ぶ事も できませんから、これは これで 出力や速力に 大差があっても 用途を見出す事は 可能な筈です。 (航続距離や滞空時間と言った要素も比較したかったのですが… 資料が 揃いませんでした)

 

信頼の壁

工事中

工事中

強度の壁」 「費用の壁」 「信頼の壁 、三重苦の 突破口

工事中

 


Epilogue , the next Generation , the small-sized airships ( in the U.S. )

 

Blimp


工事中

 

US Blimps (L type)



Goodyear  blimp , GZ20 type

↑船体上面の線状の窪みは カテナリー・カーテン (懸垂膜) による凹み↑


新塗装で 印象の変った 現代の Goodyear  blimp , GZ20 type  N10A

The functions of  the Ballonet  (バロネットの機能)


外気圧の高い低空では バロネットを膨らめて内部の圧力を高める事で 船体形状を維持し、
外気圧の低い上空では バロネットから空気を放出して 内部の過大な圧力を逃がす



推進器 プロペラ後流を エア・スクープで 掬い取り、バロネットへ 空気圧を 送る事で 船体を膨らめる


前後のバロネットを 互い違いに萎めたり膨らめたりする事で 浮心を移動させて、 船体の傾斜を調節する

「飛行船の再発見」講談社 (飯沼和正著) では P89に…

すでに述べたように、 軟式飛行船は、船体形状を、一定に保つために、ガス袋(船体)は加圧してやることになっている。 しかし、ガス袋を加圧したにしても、船体をあまり大型化することはむつかしい。
一般に、軟式飛行船のガス袋は船首部と船尾部とが垂れ下がり中央部が持ち上がる、 ゆがんだ状態になりがちだ。 このゆがんだ状態をホッギング (Hogging) 状態といって、 こうなると、ガス袋の上面は、過度に引っ張られ、あべこべにガス袋の下面は過度に圧縮される。 だから、ガス袋がある一定の大きさ以上になると、船体がくびれたような形状にゆがんでしまう。 これでは安定した飛行がむつかしい。 空気の抵抗も大きいから、エンジンをいたずらに強力にせねばならない。 このような、ホッギング状態を避けようとするところから、 現代の軟式飛行船では、短くて、ずんぐりした船型が採られるようになった。 昔の硬式飛行船のように、葉巻型のスマートな、細長い船型はとりにくいのである。

と このように 間違いが 記載されている…。 (飯沼和正:科学ジャーナリスト、 ブイヤント航空懇談会事務局長)

軟式飛行船は 所謂(いわゆる) 風船構造 (正式には 「ニューマチック・ストラクチャー Pneumatic Structure : 空気膜構造」という)
船体を細長く作ると 折れ曲がり易いのが 一般的な定説で、それ自体は 正しいのですが、 この著者の場合は 折れ曲がる方向が 上下逆の誤認識を しています。 たぶん この著者… 浮心の一点に 持ち上げる力が 及ぶような認識なのでしょう。

実際には それこそ気体分子の ひとつひとつが浮力を産みだしています(注1)。 その浮力の集合体の中心として、 便宜上 浮心という一点が 想定されているわけです。 ですから 船体を 前後の2区画に分けて、 船首部の浮心船尾部の浮心 と いうように 浮体分割や 浮心の複数化も 思考可能です(注2)。
(注1. 気体分子の浮力 : 厳密には 気体なので 分子運動で生み出された空間が 浮力を発生させています)
(注2. 実際問題、船体が 大きく折れ曲がると 中央で縊れが生じ、 浮力も前後に 2分割されている状態です)


仮に 何らかの原因で ホギング (Hogging) 状態に至ったとしましょう…
カテナリー・カーテン (Catenary Curtain : 懸垂膜) の 吊り索中央部へ 張力が 掛かり、前後は 弛んだ状態です。
この状態では 前後の浮力により、船首部と 船尾部が 持ち上がるので ホギング (Hogging) 状態は 自動解消します
(随って、 「軟式飛行船のガス袋が ホッギング (Hogging) 状態になりがちだ」 という この著者の解説は 大間違いです)



次に 何らかの原因で サギング (Sagging) 状態に至ったとしましょう…
カテナリー・カーテン (Catenary Curtain : 懸垂膜) の 吊り索前後へ 張力が 掛かり、中央部は 弛んだ状態です。
この状態では 中央部に 縊れによる体積減少が 起きていて、 中央部の 部分的な浮力が 減少する一方で、
前後の浮力により、船首部と 船尾部が 益々持ち上がるので、 サギング (Sagging) 状態は 悪化の一途を辿ります
(随って、「軟式飛行船のガス袋は 一旦 サギング (Sagging) 状態に陥ると 飛行中の復元が難しいので 船体を細長く作れない」 が正解 )

因みに、軟式飛行船の 「ガス袋 = エンベロープ (Envelope) 」内の 前後に備えた バロネット (Ballonet) は
トリム (Trim) 調整に 使用される以外にも 船体前後の 部分的な浮力を減じて
サギング (Sagging) 状態に 成り難くする効果も有する事が 何故か文献類に 記載されていません。
(初期の軟式飛行船は バロネットが 中央に 1つだけだったので、 浮力が 前後へ 分離するため サギング状態に 陥り易かったようです)

以上のように説明しても、
浮揚ガスによる浮力が 船体へ及ぼす力というのは 感覚的に 理解し辛いと 思います。

そこで 一つ 「水モデル試験」という思考実験、
これは 気球を 設計する場合に用いられる 昔からある模型実験方法で、
気嚢へ浮揚ガスの代わりに 水を注入して 上下を逆転させた状態で吊るす と、
気嚢の各部へ掛かる負荷 が 1/30スケール縮小模型で 確認できるそうです。
(この場合、 上下 逆なので 注入した水に働く重力浮揚ガスの浮力に 相当します)


この 「上下逆さまに設置した軟式飛行船のガス袋へ 水が注入されている」 と 想像すると
「浮揚ガスによる 浮力が船体へ及ぼす力」 も 感覚的に 理解出来るんじゃないかと思います…。
(雰囲気的には 水枕とか 手で抱えた状態を 想像すると、もう少し 解り易いかな?)


このように 「上下逆に設置した軟式飛行船の 柔らかいガス袋へ 水が注入されている」 と 考えると…
たぶん サギング状態に陥り易い 弱点がある とは 賢明な人なら誰でも推測できるでしょう、 しかし
重力に逆らう ホギング状態に成り易いなんて事は現実に有り得ない と 感覚的にも解るはずです。

 

考証 research (C)SA-ss 2012


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