USS Shenandoah ( ZR-1 )
(United States Ship) (word of Native American) (Zeppelin,Rigid,number-1)

USS 「シェナンドア号」 ( ZR-1 )

the United States build

米国で建造された軍用飛行船


USS Shenandoah ( ZR-1 ) , (First flight 4 Sept. 1923)

写真は 操縦ゴンドラの 6番エンジンが 廃止されていない 初期状態
(注意 / 1番エンジンは 船尾ゴンドラに 搭載されています… 後ろから1番、2番と数えます)

R 38 ( ZR-2 ) , (First flight 23 Jun. 1921)

写真の赤い囲み部分に 「ZR-2」 もしくは 「ZR-B」 と 記されていたのが読み取れる、
早合点して 「ZR-1」 と描いてしまった後で 「ZR-2」 と修正して 更に それを消した跡?
英国にて 未だ試験飛行中で 米国籍ではないので 一応 描いたけど 時期尚早だとして 消したのかな?
(因みにこの写真で 「ZR-2」 と 記されていたのが確認できる事から、 シェナンドアは 「ZR-I」ではなく 「ZR-1」 だと言える)

USS Shenandoah は 第一次大戦中の ドイツの軍用飛行船を 手本にして、戦後に 米国が 自国で完成させた 軍用飛行船です。 米海軍所属の軍用飛行船ですから 武装を有しており、爆弾架と機銃を装備していました。 また、世界初の ヘリウムガス (Helium gas) で浮揚した 硬式飛行船でもあります。 (初飛行は 1923年9月4日)

2番船として予定していた ZR-2 は 英国から R 38 を 購入する事にしていたのですが、 シェナンドアの完成前に 英国での試験飛行中に空中分解して墜落しました。

「シェナンドア号」 の 船名は 米国原住民 Native American (American Indian) の言葉に由来します
Shenandoah 】シェナンドア、「星の娘」と言う意味らしい。
米国は 国旗が星条旗なだけあって他に Constellation (コンステレーション/星座)とか 船名に星が関連するものを好む。

余談だが… 「シェナンドア号」 と言うのは 舌が縺れて 日本語で発音し辛いので 私は 普段 シェナンドア に 「号」 を付けずに呼ぶ事が多い、
この為 つい私の癖から 無意識に 表記上、一貫性を欠くのを 予め お詫びする。
( USS Shenandoah の項を記載後、暫くして読み直していて 一貫性の無さに気付いたが、 全修正が難しいので断念した)

Damage 16 Jan. 1924

1924年1月16日には マスト繋留中に 強風により、 船首を 引き千切って 吹き飛ばされる事故がありましたが、 シェナンドアは 船長を欠く 当直の乗員だけで この危機を 乗り切り、帰還しました。

USS Shenandoah (builder : Naval Aircraft)

写真は 操縦ゴンドラの 6番エンジンを 廃止した 最終状態 (発電機と厨房設備を 搭載した重量代償)
(注意 / 1番エンジンは 船尾ゴンドラに 搭載されています… 後ろから1番、2番と数えます)

設計にあたっては、1917年10月20日 仏国に不時着した ドイツ帝国の飛行船 L49 を 鹵獲して その詳細を 調査し、 参考にされていたと 文献では 伝えられています。

"U" Class Height-Climber , L48 type of  the same model as the L49 ( spoils )

LZ95 ( L 48 ) , LZ96 ( L49 ) , LZ97 ( L51 ) , LZ98 ( L52 ) . LZ99 ( L54 )

U Class Height-Climber , L48 type

この L49 は 成層圏近くまで 上昇できる 高高度飛行船 (Height-Climber) という 極度に 軽量化された 脆弱な構造であったため、それを 真似て建造した シェナンドアは 1925年9月2日、暴風雨の中を飛行中に 強度不足のため 空中分解して墜落したとされています。

USS Shenandoah ( ZR-1 )

兵装 、 7.62 mm (ミリ) 機銃×6 (装備箇所不明) 、 500 lb. (ポンド) 爆弾×8 (写真で2つの正方形開口部に各4発)

しかし、これを 一概に墜落と表現するのは 微妙に失礼であり、空中分解したのは 事実ですが… 少なくとも分離した船首部分は 手動弁を乗員が操作して 安全な場所に降下させており、 『空中分解したにも拘わらず 乗員の奮闘により 船体の一部は 軟着陸させて、 搭乗員 43人中 過半数の 29人が危機的な状況から生還した』と 表現し直すべきでしょう。
(単なる偶然による生存者ではなく、知力と努力による生還です)

The wreckage of  the USS Shenandoah (stern & bow , strenuous damage-control by crew)

比較的穏やかに落下した船尾部分と 軟着陸させた船首部分

このように… そうとは知らずに 空気の薄い高高度で運用する 脆弱な構造の飛行船を真似て建造してしまい、 空気の濃い低空で しかも暴風雨の中を飛行したのが 空中分解の原因とするのが 一般的な定説です。
しかし、私は 高高度飛行船 (Height-Climber) の特徴が 本当に 取り入れられてるならば、 多少は 遠因になっているのかも知れないだろうけれど、 それは シェナンドアが 空中分解した事故の 真相ではないと 考えています。

<2011-12/30 追記>

文献類に記されている 嵐の中で空中分解前の シェナンドアの 状況、 @上昇気流に捕まり急上昇⇒浮揚ガス放出A下降気流に捕まり急降下⇒水バラスト投棄、 この@とAを何度も繰り返す事により、 最後には成す術(すべ)が無くなって(孫引では)漂流状態と形容されていたりもするのだが…、 実は誤りである。先の@とAを何度も繰り返した後と最初の初期状態では大きく異なる事がある。 それは 最小限の浮揚ガスが気嚢に残された状態で 圧力高度が通常よりも高くなって 高度変化に強くなっているのである。 シェナンドアは 最後の切札「非常バラストの投棄」前に 空中分解した。

「飛行船の再発見」講談社 (飯沼和正著) P74 で シェナンドアの最後を イタリア号の最後の状況と混同して 誤って伝えているので注意。 (飯沼和正:科学ジャーナリスト、ブイヤント航空懇談会事務局長)
(シェナンドアの事故で重大なのは前段の気流により翻弄された事ではなく、空中分解した事で、 同書の指摘は的外れ)

<2012-1/1 追記>

イタリア号の最後は 自動弁の故障説もあり、浮力を失い 飛行高度が低下して、 操縦ゴンドラと 後部エンジン・ゴンドラが 氷山に 衝突して脱落。 その分の重量が減った船体は 上空へ舞い上がり、船体内の6名の乗員と共に 行方不明となり、 操縦ゴンドラに居て負傷した ノビレ他の乗員は 氷山に 取り残されて 後に 救助された。 同書では シェナンドアの最後を 浮力調整機能を完全に失い (現実には非常バラストが温存) 船尾が地面に激突して衝撃で船体を破損し (現実には空中分解)、船首が離れて上昇した と出鱈目 (見方が異なれば 些細な事柄かも知れないが 全体の信憑性を 疑われるので 勿体無い)


Height-Climber ... ?
 
そもそも 高高度飛行船 (ハイト・クライマー) って 何なんだ?

先ずは シェナンドアが 空中分解した事故の 真相について 考察する前に、 高高度飛行船 (Height-Climber) の 実態について 考えてみたい。 ベースとなった L30型は R級 (r) Super Zeppelin とも呼ばれ、 上昇限界は 高度 4,000 m と いわれています。 これを 軽量化した L42型 S級 は 最初の (s) Height-Climber となり 上昇限界は 高度 5,500 m に上がり、 更に L53型 V級 (v) で 高度 6,500 m 、終には L70型 X級 (x) で 高度 7,000 m に 達しました。 これは 極度に 軽量化された 脆弱な船体構造によって 成し遂げられたとされるが…、 その詳細が 解説されたものを 私は 今まで見た事が ないです。

従来の解説では 高高度飛行船 (Height-Climber) 「極度に軽量化された脆弱な構造の特殊な飛行船」 の 一言で 説明を済ませていたので、 私には その実態が具体的にさっぱり解らず 文献類に対して不満だったのです。

( R Class ~ X Class = Super Zeppelin , S Class ~ X Class = Height-Climber )

<2012-1/2 追記>

文献に記載されていた側面図ですが… 小さくて不鮮明だったので 詳細の確認には使えないと思っていました。 しかし、スキャナーで取り込んでみると エンジン位置の変遷が解り、謎解きが できたので、 下記データベースの 修正。

無いものは 仕方ないので 自分で調べて整理し、データベースを 作成しました。
(図の隔壁数と気嚢数の関係について… 戦後の新型飛行船とは異なり、戦時型の飛行船は 舵軸から後ろに気嚢がありません! 只の整流覆いです)

  the Deutsches Reich ( the German Empire era ) build

R Class Super Zeppelin , L30 type


船尾のゴンドラには エンジン 3基搭載、 船体後部両舷のアウトリガー (outrigger) と 合わせて 3つの プロペラを 回す、
速力/上昇能力/搭載量供に 画期的な進歩を遂げた飛行船 (同型船20隻の量産船)

S Class Height-Climber , L42 type


旧式の推進器を廃止し、 船尾のゴンドラは エンジン 2基で 1つの プロペラを 回す、
船体の隔壁を 1つ減らしているけれど、 一見したところ 外観からは判らないが 両舷エンジンの位置に 僅かな変化、
また、文献資料からの推理では 一部のの竜骨が 削除された 超軽量型飛行船 (同型船2隻の試作船)

T Class Height-Climber , L44 type


写真による検証が成されてませんが、 文献情報から推理すると S級と似た外観で 残りの竜骨も ほぼ削除されたと思われる、
超軽量型飛行船 (同型船2隻の試作船 / 両舷エンジンの位置は 1区画後方へ移動)

U Class Height-Climber , L48 type


S級/T級から 操縦ゴンドラと エンジン・ゴンドラの 小型軽量化、 両舷エンジン位置も変り、船尾も 微妙に短くなっている、
両舷エンジン位置が S級と同じに 戻された 超軽量型飛行船 (同型船5隻の量産船)

V Class Height-Climber , L53 type


U級船体の隔壁を4つ減らし 前後ゴンドラの位置を微妙に変更、概観上の特徴変化は 下部方向舵の防護突起が無い事、
超々軽量型 高高度爆撃専用飛行船 (同型船10隻の量産船)

W Class Height-Climber , L57 (LZ102) & L59 (LZ104)


V級船体の延長により 搭載能力の拡大 (速力は低下)、
超々軽量型 物資輸送用飛行船 (同型船全2隻の特殊船)

X Class Height-Climber , L70 type


V級の エンジン・ゴンドラを増やして 高出力化、
超々軽量型 強行偵察用飛行船 (爆撃任務の優先度低下 / 同型船多数建造途中で敗戦した新型船)

V & X Class after extension , tentatively call X' , L71 (LZ113) & L72 (LZ114)


文献情報では… V級と X級を延長改造したとされているが、 船尾ゴンドラの エンジンを 1基降ろして 全体のエンジン・バランスも修正、
超々軽量型飛行船 (軍事用としては存在意味を失う / 同型船6隻の改造船… ただし写真で存在が確認できるのは L71 と L72 の 2隻のみ)

  the United States build

USS Shenandoah ( ZR-1 )


比較検証する限り、 R級 Super Zeppelin の 船体へ1区画の隔室を 追加して、全長を 延長した 船体構造であり、
高高度飛行船 (Height-Climber) の 船体構造ではない!!

  ... build , R , S , T , U , V , W , X , X'&  #  *ZR-1  *ZR-2  *ZR-3   ( Click ! show up data )

【上の↑リンクを クリックすると 下の↓画像が 切り替わります】

function show up data

Class Length Diameter Volume Gas cell Dead weight Payload Power plant Max. Speed Date
R 198._ m 24.0 m 55,200 m3 19 cells 34._ t 32.5 t 240 HP x6 103 km/h 1916. 5
S 198._ m 24.0 m 55,500 m3 18 cells 29._ t 36.4 t 240 HP x5 103 km/h 1917. 2
T 198.? m 24.0 m 55,800 m3 18 cells 27._ t 38.0 t 240 HP x5 104 km/h 1917. 4
U 196.5 m 24.0 m 55,800 m3 18 cells 26._ t 39.0 t 240 HP x5 108 km/h 1917. 5
V 196.5 m 24.0 m 56,000 m3 14 cells 25._ t 40.0 t 240 HP x5 115 km/h 1917. 8
W 226.5 m 24.0 m 68,500 m3 16 cells 28._ t 52.1 t 240 HP x5 103 km/h 1917. 9
X 211.5 m 24.0 m 62,200 m3 15 cells 28.? t 43.5 t 240 HP x7 131 km/h 1918. 7
X' 226._ m 24.0 m 68,500 m3 16 cells 28.? t 51.0 t 245 HP x6 118 km/h 1918.10
ZR-1 207.3 m 24.0 m 60,840 m3 20 cells 37._ t 24.3 t 300 HP x6 110 km/h 1923. 9
型式 全長 直径 容積 気嚢数 自重 搭載量 機関 速力 西暦

ただ、 眺めているだけでは 数字の羅列に過ぎない 数値データですが… 簡単な所から 解読してみます。

U Class Height-Climber , L48 type

U級⇒V級の変化

V Class Height-Climber , L53 type

R級〜V級までは 全長が ほぼ同じなので ここから始めると比較し易いです。U級⇒V級の変化では 隔壁が 4つ減らされて、自重が 1トン減少、容積も 200立方メートル増えています。 下部方向舵の防護突起も無くなりましたが これを 人間1人分の重量 40〜50kg (女性?)と仮に見積もって、 自重減少分を 隔壁数の4で割ると 約240kg が 隔壁1つの重量と 試算できます。 同様に 200立方メートルも 4で割った 50立方メートルが 隔壁1つの体積、 直径が 24メートルなので 隔壁面積は πr2 の 452.16 平方メートル(概算)、随って 隔壁の厚みは 11センチメートルと 試算できる。
(隔壁の厚み : 厳密には ワイヤーで 網目のように 仕切られた 空間なので その厚みは 殆どありませんが、気嚢容積的な減量分の 平均厚換算です)

T Class Height-Climber , L44 type

T級⇒U級の変化

U Class Height-Climber , L48 type

次に T級⇒U級の変化では 容積の変動無しに 1トン減を 達成しているので、 T級と断定できる写真が 未だ見つかりませんが… たぶんここで 操縦ゴンドラと エンジン・ゴンドラの 小型軽量化が 成されたと 推測できます。 なお、S級⇒T級の比較で 容積 300立方メートルの増加と 2トンもの 不思議な減量は 一先ず置き。 最初期の R級⇒S級の変化では エンジン1基減で 後部船体両舷に突き出た旧式の推進器を 廃止、 隔壁も 1つ減らされて 5トンも 重量軽減されています… 問題は 容積 300立方メートルの増加で、 隔壁1つの体積を 先に 50立方メートルと 試算していますので 数字が合いません! 無くす事で容積の増加する何かが 考察保留したS級⇒T級の謎と同様、 S級,T級で段階的に削除されたと 思われます。

R Class Super Zeppelin , L30 type

R級⇒S級の変化

S Class Height-Climber , L42 type

この謎を解く 1つの鍵として… 次のような写真の ある事柄に 気付きました。 シュッテ・ランツの軍用飛行船の写真ですが ツェッペリンでも 時期的に類似する状況と思われます。

  inside structure of the Schütte-Lanz S.L.8. type (conventional keel)

戦時中のシュッテ・ランツ軍用飛行船 S.L.8.型の 内部写真、竜骨が 写っている

  inside structure of the Schütte-Lanz S.L.20. type (keel-less weak frame)

戦時中のシュッテ・ランツ軍用飛行船 SL20型の 内部写真、竜骨が 無い

そう!無くす事で容積の増加する何かとは 竜骨!… 高高度飛行船 (Height-Climber) とは 隔壁と竜骨を 段階的に省略削除して 驚異的な軽量化を 達成したリスキーな飛行船なのが 現実ではないか?という事です。 (操縦ゴンドラが 取り付く1区画だけは 1点吊りできない構造上の都合から考えて、竜骨が 残っていた可能性も 高いです) また、開発期間の短さを考えても、刹那的な想い付きで生まれた感じがします。 これに対して、USS シェナンドアは 建造中や改修中の写真から ちゃんと竜骨があるのが 判ります。

  inside structure of the Shenandoah ( ZR-1 )


建造中のUSS シェナンドアの 内部写真、△形の竜骨が 写っている

そして、改修中の写真から 隔壁の 省略もない事が 判ります。

Bulkhead intervals of the Shenandoah ( ZR-1 )

改修中のUSS シェナンドアの 写真、隔壁間隔が 判る

では、数値データ解読に 戻り… V級を 延長した W級では 自重が 3トン増加しています。 そして R級の自重 34トンに 3トン足すと USS シェナンドアの自重 37トンと 同じになります。 (シェナンドアの自重は 35トン説や 36トン説もありますが… 航空機関連技術が 日進月歩の この時代の 7年前に 開発された R級の自重 34トンよりも 重いのは 変わりません)

V Class Height-Climber , L53 type

V級⇒W級の変化

W Class Height-Climber , L57 & L59

それが 高高度飛行船 (Height-Climber) であるか否かを判断する1つの目安として… Super Zeppelin 型船体の場合には 自重 (Dead weight) よりも 搭載量 (Payload) が勝る軽量化を 定義すると良いでしょう。
(もしも 21世紀現代の最新技術で建造するなら、船体強度を保ったままでも 自重より搭載量が勝る軽量化が 容易に実現可能とは思いますが…)

但し、 Super Zeppelin 型ではない、 戦後の直径拡大型では 自重より搭載量が勝るからといって 高高度飛行船 (Height-Climber) とは 断定できません。 スケール効果で 浮力効率が 向上するのが 理由なのですが…。
(飛行船を 容器と見立てた場合、 寸法の3乗で 浮力の元になる体積は増えるのに、 それを包む構造材の表面積は 2乗でしか 増えないからです)

この、自重より搭載量が勝る数値データから 「R38は Height-Climber型の船体構造」と 単純に決め付けると、 同じく自重より搭載量が勝る数値データから 「LZ126も Height-Climber型の船体構造」となり、 LZ126が USS ロサンゼルスとなった後に 重大な事故も無く 長寿だった事実と 矛盾するのです。 しかし、自重より搭載量が格段に少ないデータから考えると 「ZR-1は Height-Climber型の船体構造ではない」とは 言えるでしょう。

たぶん、高高度飛行船 (Height-Climber) を 定義する要素は…
『自重より搭載量が勝る軽量化』『竜骨が極度に省略された軽量化』の2つを満たす事になると思われます。
(シュッテ・ランツの写真で内部骨格の確認ができましたが、同時期のツェッペリンで 内部骨格の確認ができる写真が発掘されるまで断言できませんが)

The "Dirigible Dixmude"

ex LZ114 , War reparations to the French Republic
( Cuers-Pierrefeu airship hangar in the suburbs of  Toulon )

The concoct "Dirigible Dixmude"

R Class Super Zeppelin , L30 type frame work

ツーロン (Toulon) 軍港近郊 クール・ピエールフー (Cuers-Pierrefeu) 格納庫を 根城とした ディズミュード (Dixmude) の写真だとする骨組みに 竜骨が 写っていますが、 この写真が 果たして Height-Climber の オリジナルな状態なのか?… この写真は 隔室スパンが R級と同じなので 写真の信憑性を 疑っています。 もしも、この写真の 隔室スパン通りだと ディズミュードの 気嚢数が 文献データと 一致しなくなるのです。これ 間違い無く捏造ですね。

R Class Super Zeppelin , L30 type frame work

[ Main Transverse Ring ]+[ Sub Transverse Ring ]+[ Main Transverse Ring ] & [ Main ]+[ Sub ]+[ Sub ]+[ Main ]

The truth "Dirigible Dixmude" , frame work

Number Length Diameter Volume Gas cell Dead weight Payload Power plant Max. Speed Date
S.L.8. 174._ m 20.1 m 38,780 m3 18 cells 26._ t 19.8 t 240 HP x4 95 km/h 1916. 3
S.L.20. 198.3 m 22.9 m 56,300 m3 19 cells 28._ t 35.5 t 240 HP x5 102 km/h 1917. 9
R 38 212.7 m 26.1 m 77,000 m3 14 cells 33._ t 46._ t 350 HP x6 114 km/h 1921. 6
ZR-1 207.3 m 24.0 m 60,840 m3 20 cells 37._ t 24.3 t 300 HP x6 110 km/h 1923. 9
LZ126 200.0 m 27.6 m 73,680 m3 14 cells 35._ t 45.8 t 400 HP x5 126 km/h 1924. 8
番号 全長 直径 容積 気嚢数 自重 搭載量 機関 速力 西暦

このように検証してゆくと USS シェナンドアが 空気の薄い高高度で運用する 脆弱な構造の飛行船を真似て建造した というのは 嘘だという事が 解ります。
USS シェナンドアは R級 (r)Super Zeppelin (Gas cell : 19) の船体へ 隔室1つを 追加 (Gas cell : 20) した船体構造で、操縦ゴンドラのみ Height-Climber の小型軽量化されたものを  真似て 作られていた… というのが 真実でしょう。


 

では、シェナンドアは R38 のように 重量バランスの悪い 設計ミスの飛行船だったのでしょうか?… 私が 調べた限りでは バランス上の問題を 記述した文献は 見当たりませんし、試しに船体区画を確認しながら検証してみても バランス上の不自然さは 発見できませんでした。

重量バランスが 悪い為、 いつ船体が折れて 空中分解しても 不思議ではなかった R38 とは異なり、シェナンドアは 重量バランス的には 折れる筈がない飛行船だったのです。

  R 38 ( ZR-2 ) , the center concentrated weight of the engines

a human error, the spacing the layout of  the Engine-Cars, concentrated weight balance

Buckling of  the upper Longitudinals by the "pressure"




辞書通り、Sagging を 垂れる、Hogging を 上反る、 と訳すと 話が 支離滅裂になる日本語の問題点

それでは、シェナンドアが 空中分解した事故の 真相について 考察してみます。
文献から 空中分解にまで至る過程は…

USS Shenandoah ( ZR-1 ) , the sequence of events


USS シェナンドアは 暴風雨の中を飛行中…


突然、操縦ゴンドラが 脱落!


操縦ゴンドラの重量が 無くなった船首部分は 浮力過剰となり…


Sagging
で 船首部分が 折れて、やがて空中分解!


The wreckage of  the USS Shenandoah (stern & bow)

重量バランス的には 折れる筈がない飛行船が 操縦ゴンドラの 突然の落下により 一瞬にして R38 のように 重量バランスの悪い飛行船に 変身してしまった… という事です。
暴風雨の中を飛行中…、大気の動乱により 船体へ 大きな風圧(外力)が 加わって折れた… という訳ではなさそうです。

全長 約200メートルの船体を 大気の動乱により圧し折るためには 約100メートルの間隔で 相対的な風向きが 逆転している必要があります。 確かに 地上では 地形や建造物の影響(ビル風など)で 局所的な風圧逆転も存在しますが、 飛行船の飛ぶ上空では 竜巻にでも突入しない限り、そんな自然現象は ありません水上船舶が波浪により圧し折られるのと同じ状況を 飛行船へ当て嵌めて想像するのは そもそも間違いの元なのです。


(注意すべき点 / 最終時は 操縦ゴンドラの6番エンジンを廃止して プロペラも無くなっていますが、 無線機用発電機と厨房設備を搭載した 重量代償なので、 操縦ゴンドラが 軽くなった訳ではありません、 この 発電機とは 動力エンジン付き Generator ですから Power plant という意味では 同じです)

  the Control-Car not fall off from the hull ! by the Deutsch

操縦ゴンドラが壊れても 脱落していないドイツの L20

それにしても… 空中分解に至る Sagging の引き金となった 操縦ゴンドラの 脱落は 不可思議です。
戦時中、撃墜され壊れても、操縦ゴンドラが 脱落していない事例さえもあるのに… 何故、シェナンドアの 操縦ゴンドラは 突然落下したのか?…

  the Control-Car of  the USS Shenandoah

シェナンドアの 操縦ゴンドラ

  the Control-Car by the Deutsch

ドイツ高高度飛行船の 操縦ゴンドラ

シェナンドアの操縦ゴンドラと オリジナルとを 写真で比較すると… 真っ先に、吊り下げ支柱の 太さの違いに 気付きます。 見た目では シェナンドアの方が 太くて頑丈そうですが… これが 謎解きの鍵です。

飛行船とは 別ジャンルになりますが、建築や橋梁や鉄道関係の 技術解説書で 時々見掛ける ある事柄、従来は 柔構造で弱々しく見えたものを 丈夫にしようと 剛構造に変えたら、 逆に 脆くなり壊れたという話です。シェナンドアの場合も これではないでしょうか?…。 (ドイツ高高度飛行船の支柱は 細くて弱く見えても… 外力を受けると 撓る事で 力を逃がすが、 シェナンドアの支柱は 太くて丈夫なため… 外力を受けると 撓らずに 壊れてしまったのでは?…)

補足、操縦ゴンドラの 6番エンジンを 廃止して 発電機と 換装した事で 認識が下がり、吊り下げジョイント (joint) の 点検が 疎かになった可能性もあります。 あるいは 発電機との換装作業の際に 吊り下げジョイントを 傷める不手際が あったのかもしれません。 (注意 / 1番エンジンは 船尾ゴンドラに 搭載されています… 後ろから1番、2番と数えます)

<2011-11/22 追記>

操縦ゴンドラの支柱が 「ヘタに剛構造だった事が災いした」 とする説は そのままに、 新たな 私の考えを 追記します。

私の家(我家)は 2階建なのですが 天候の荒れた 雨風の強い日には 結構 2階が揺れます。
そんな時、風の唸り(音)を聞きながら 2階の揺れを感じていたら ふと ある事に気付きました。
暴風って 弱くなったり 強くなったりと 結構 脈動しているんですね

つまり、操縦ゴンドラが落ちたのは この脈動で 前後に揺さぶられて 壊れたのではないか?… という推理です。

It was a dangerous flight.

(参考にしたドイツ製より 支柱を太く丈夫にしても、 ゴンドラの船体直付けではないので この構造は 絶対に揺れます)

ところで 新造時、シェナンドアの操縦ゴンドラには 6番エンジンが装備されていて、 暴風雨の中を飛行するには 当然、6番エンジンも動かして、最大出力に近い状態にしたと思われます。 このような状態では 推進力に 操縦ゴンドラが後押しされて 前後に揺れ難くなると思われます。

It was a safety flight.

(厳密には推進力の付加で ゴンドラの固有振動の係数が変化して、 暴風の脈動に共鳴しなくなるからだと思うけど…
ゴンドラの船体直付けだと 何故 揺れないか?… ゴンドラの固有振動数が高周波になるため脈動に共鳴しないから)

The Control-Car of  the USS Shenandoah

このように考えると、シェナンドアの操縦ゴンドラから 6番エンジンを降ろしたのは 果たして 適切な改造だったのか?… 検証する必要があるかもしれません。 (エンジン降ろすなら、ゴンドラを船体直付けに改造すれば 良かったのかも?…)
(いや、そもそも、ヘリウムで飛ばすなら… エンジン・ゴンドラを 船体から離す セパレート型にする必要は無いのだが…)
(米国が 次の アクロン号で 何を改革してきたか?… を よく見れば、 この原理にも 当時の専門家は 気付いていたはず)

兎に角、突然の 操縦ゴンドラ脱落という アクシデント (accident) が あったとはいえ、 従来の 船体下部だけを 竜骨で補強した構造が Sagging に 弱い欠点を 持つ事が 問題であると、シェナンドアの空中分解事故は 関係者に 知らしめてしまった訳です。 事故原因の真相が あまりに 重大であったために、真相を隠して 偽りの解説が 報じられ、 空気の薄い高高度で運用する 脆弱な構造の飛行船を真似て建造したのが 原因 とされたのでは ないでしょうか?…。 (先に墜落した R38 が 事故原因を Height-Climber のせいにしたので 相乗りしたとも 考えられますし、 大衆向けに 解り易い説明手法として 創作された偽りの解説がされたのかもしれません、 しかも 操縦ゴンドラは 小型軽量化された U級 Height-Climber の形状なので 大抵の人は 騙されてしまいます)

これらを 証明するかの如く、シェナンドアの空中分解事故以後は 従来の 船体下部だけを 竜骨で補強した硬式飛行船が 1隻も 建造されていません!…。 (現場関係者や真の専門家達には 当時から 真相が 解っていた証拠だと 思われます)

  the first state of  the USS Shenandoah , ZR-1

写真は 操縦ゴンドラの 6番エンジンを 廃止する前、初期状態の シェナンドア
船首に "ZR-1" と マーキング (marking) されているか いないかが、プロペラの有無を示す識別点

  the last state of  the USS Shenandoah ( ZR-1 )

写真は 操縦ゴンドラの 6番エンジンを 廃止した 最終状態の シェナンドア
飛行船が艦隊に随伴する任務を補佐する為、 給油艦を改造した支援母艦が整備されて それに繋留された姿


Epilogue , 1

The pre-Shenandoah-crash airship , & the exception

シェナンドア空中分解事故以前に完成していた飛行船と例外

  use of the U.S.Navy

USS Los Angeles ( ZR-3 )

写真は 支援母艦 パトカ (USS Patoka AO-9) に 繋留中の USS ロサンゼルス
(元給油艦 パトカの 繋留マストは シェナンドア時代より延長されて 高くなっている)

  the Weimar Deutsch build , in the United States reparations for the Deutsches Reich

LZ126 , later USS Los Angeles , in 1924 Aug.

(the last build on conventional keel of  Rigid-airships)


船体下部だけに 竜骨が通る 従来型 最後の硬式飛行船

the Italy build , with the exception of  Keel-blimp

N 1 "Norge" ~ IJN , Airship No.6 ~ N 4 "Italia" ~ IJN , Airship No.8 etc.

船体下部に 竜骨を備えた半硬式飛行船 (Keel-blimp) は その後も建造し続けていたようです


Epilogue , 2

The post-Shenandoah-crash airships , Anti-Sagging structures

シェナンドア空中分解事故以後に建造された Sagging 対策型飛行船

case by the Weimar Deutsch , in 1928 Sep. (conventional keel & inner keel)

LZ127 "Graf Zeppelin" , at the Weight-cost of  Payload

浮揚ガス気嚢の下に 気体燃料用気嚢を 装備した ツェッペリン伯号、
船体内部を縦通する 新たな骨組みは 自動弁の 点検にも 利用される。
(自動弁点検のためだけなら、 下の竜骨から 垂直に トンネルを 立てた方が 重量節約になる)

case by the United Kingdom , in 1929 Oct. (Keel-less tempered frame & Sub-Longitudinals)

H.M.A. R 101 G-FAAW , at the Weight-cost of  Payload

Transverse arrange at un-equal intervals
不等間隔フレームが 採用されている理由として、 各気嚢の体積を 揃えるためと 従来解説されてきたが
船体中央へ リング・フレームを 集中させて、 骨組みの間隔を 短くする事により 挫屈防止を図るのが
この飛行船の設計における 本来の主眼と 思われます。

なお、連絡通路を形成する四角い空間が 船体下部を 縦通しますが、 竜骨と呼べるほどの補強はされていません、
竜骨の替わりに 15本の 従来より太い主縦通材と 間を補完する極細の副縦通材で 全周満遍なく強度を保つ構造のようです。

case by the United Kingdom , in 1929 Dec. (Keel-less tempered frame & Axis-Beam)

H.M.A. R-100 G-FAAV , at the Weight-cost of  total number on Longitudinals & Payload

船体下部を 縦通する連絡通路は 橋梁構造になっていて、船体構造からは 分離しています。
船体下部だけを 竜骨で補強する アンバランスを 解消するため、 船体全体を 均質に丈夫な骨組みで 構成したようです。

しかし 八方美人とはゆかず、 丈夫な骨組みは重くなるので 従来よりも骨組みの本数が減らされて 角張った船体形状になっています。
また、船体中心線上に設置された新たな骨組みは 圧縮力を 一手に負担するには 細過ぎて剛性不足を感じるので、
隔壁横圧支えや、飛行中に加わる力とは異なる マスト繋留時特有の張力を 分担していると 思われます。

case by the United States , in 1931 Aug. (triple keels & truss transverse rings)

USS Akron ( ZRS-4 ) , at the Weight-cost of  Cruciform-tail-frame & Payload

母船の飛行中に 離発着できる 複葉機を 4〜5機搭載する USS アクロン号 (姉妹船 メイコン号)
竜骨が 背中にあたる船体上部に1本と 脇腹にあたる船体下部両側に2本の 合計3本縦通する。

case by the Nazis Deutsch , in 1936 Mar. (conventional keel & inner keel)

LZ129 "Hindenburg" , at the Weight-cost of  Payload

液体燃料の ディーゼル・エンジンで 気体燃料を 使用する訳ではないが
LZ127 ツェッペリン伯号と同様、船体内部に 縦通する骨組みを有する ヒンデンブルク号。

Number Length Diameter Volume Gas cell Dead weight Payload Power plant Max. Speed Date
LZ126 200.0 m 27.6 m 73,680 m3 14 cells 35._ t 45.8 t 400 HP x5 126 km/h 1924. 8
LZ127 236.6 m 30.5 m 105,000 m3 17 cells 59._ t 60.0 t 550 HP x5 128 km/h 1928. 9
R 101 224.0 m 40.5 m 141,600 m3 16 cells 113._ t 35._ t 500 HP x5 100 km/h 1929.10
R-100 224.0 m 40.5 m 146,000 m3 15 cells 107.2 t 51._ t 670 HP x6 131 km/h 1929.12
R-100 219.3 m 40.5 m 146,000 m3 15 cells 106.? t 52.? t 670 HP x6 130 km/h 1930. 7
R 101 236.8 m 40.5 m 156,000 m3 17 cells 118._ t 49._ t 500 HP x5 (114)km/h 1930. 9
ZRS-4 239.3 m 40.5 m 184,000 m3 12 cells 113._ t 73._ t 560 HP x8 128 km/h 1931. 8
LZ129 245.1 m 41.2 m 200,000 m3 16 cells 119._ t 96._ t 1,200 HP x4 137 km/h 1936. 3
番号 全長 直径 容積 気嚢数 自重 搭載量 機関 速力 西暦

補足、LZ127 "Graf Zeppelin" の 容積に対する自重と搭載量の数値は 文献通り掲載しましたが、 水素の浮力は 1立方メートル当たり 1.1 kg なので 容積 105,000 m3 では 115.5 t となり、 自重と搭載量の合計値が これを上回るので 不自然です… 数値間違いなのか?算出基準が異なるのか?
もしくは… たぶん、空気と同じ比重の気体燃料なので搭載スペースの範囲内なら、 算出浮力以上でも 積み込めるからなのでしょう。

データ一覧表を 見て解るように、新型の (the post-Shenandoah-crash airships) ポスト・シェナンドア空中分解型飛行船は 軒並みに 自重に対する搭載量が 低下しています。 特に 英国が選んだ方法の 全周満遍なく強度を保つ構造では 自重に対する搭載量が 半分以下です。 随って、ドイツや米国では 強化する箇所を 更に限定して 集中補強したようです。

考証 research (C)SA-ss 2010-5/21


Airships spec table »