The revolutionary airship
理想的な流線型で建造された革命的な飛行船の登場
LZ120 "Bodensee" ( builder : Luftschiffbau Zeppelin GmbH ) in Aug. 1919
これは とても残念な事なのですが…
日本では 革命的な飛行船の LZ120 "Bodensee" (ボーデンゼー) について
詳しく解説された文献が ありません。
こんな環境ですから 「ボーデンゼー号」
( Boden See : ボーデン湖 / 別名 Lake Constance : コンスタンス湖) と 命名された飛行船は
日本では 極めて マイナーな認知度です。
この「ボーデンゼー号」が 建造されたのは 驚くべき事に 第一次大戦で ドイツが 降伏した直後、
軍用飛行船の建造のために 大量に仕入れていた資材から ドイツの戦後復興の先駆けとして
人員や物資の輸送に貢献すべく 極めて 短期間で 完成させているのです。
(太平洋戦争 もしくは 大東亜戦争で 無残に 敗戦して、物資も人材も
尽く失った 日本の戦後とは 大違いですね)
さて、この「ボーデンゼー号」は それでは 一体何がそんなに 革命的だったのかと言うと…、
それまでの 大型化した軍用飛行船の容姿からすれば 極めて珍妙で 寸足らずの姿でありながら
最高時速 130 km に 到達する快速を 突如として 達成したからなのです。
ツェッペリン社 ( Luftschiffbau Zeppelin GmbH ) では 既に 第一次大戦中の 模型による風洞実験で
理想的な流線型が 実情の軍用飛行船よりも もっと ずんぐりした形になると 解っていましたが、
軍用飛行船に 求められる 大きな搭載能力 (=爆弾の搭載量や長大な航続距離) の 実現には
格納庫の寸法に 最大値で合わせた設計しか 許されなかったのです。
(中/短距離の 国内線旅客輸送用飛行船ならば 小型で済み、格納庫の寸法に 最小値で合わせた
設計が できる)
これは 格納庫の幅や高さを 大きくするには 建物自体を 立て直すしか 方法が ありませんが、
増築で 格納庫の 長さを増す事は 比較的容易に出来るため、
どうしても 理想よりも長細い飛行船しか 建造出来ない ジレンマを 抱えていたのです。
LZ120 "Bodensee"
[ 20,000 m3 ] 133 km/h
[ Gas cell : 12 / Bulkhead : 11 ]
The difference between a sister ship , etc.
姉妹船との相違など
LZ120 "Bodensee" ( D-I )
|
LZ120 「ボーデンゼー号」 ( D-T )
|
LZ121 "Nordstern" ( D-II )
|
LZ121 「ノルトシュテルン号」 ( D-U )
|
文献によると… 「ボーデンゼー号」を 実際に運用してみたら、
乗客は 常に「満員御礼」状態で 輸送能力の不足を感じたので、
姉妹船「ノルトシュテルン号」では 全長を伸ばして 搭載能力を増強させたとある。
また 速力の根源、エンジン出力に関しても 「ボーデンゼー号」では 余裕があると解ったので、
最後尾の1番エンジン・ゴンドラのエンジンを 2基から1基へ減じています。
(それまで 最後尾の 1番エンジン・ゴンドラは 2基の エンジンで 一つの プロペラを 回す仕組みだった)
The Vertical Stabilizer
垂直安定板
LZ120 "Bodensee" ,
An excessively size of the Vertical Stabilizer
|
その他では 概観上でも解る通り、上部垂直安定板と方向舵が 小型化された。
「ボーデンゼー号」は 処女飛行での試験データがあり、
速力 104 km/h 方向舵最大舵角 20°で 旋回半径 472.5 m となっています。
これは 全長 120.8 m 程度の 小型硬式飛行船としては 不満足な値です。
(旋回半径は 船体全長に 近い数値程 「小回りが効く」 と 言われる)
上部垂直安定板の小型化は 旋回性能を向上させるための 基本設計の変更と思われます。
飛行船の機動時の挙動は
水上(水中)船舶のそれと ほぼ同じだとされています。
船尾にある方向舵で 舵取りすると、
先ず テール・スライドして 船体が 初期回頭角に至る事で その後の旋回が継続する。
これは 乗用車が 前輪で進路を 定めているのと異なり、
飛行船は 回頭(斜位)した船体へ当たる風圧で進路変更してます。
つまり、船尾にある方向舵は 船尾を横滑りさせる装置なのです。
上部垂直安定板を小型化すると 抵抗面積が減じて 船尾は横滑りし易くなるのです。
(下図参考、水上船舶の挙動図解)
水上船舶の場合の解説図↓、
左は 専門書の図で、右は
フリー百科事典『ウィキペディア (Wikipedia) 』日本語版の図
『ウィキペディア』日本語版の図は
青色で示された重心の軌跡が
あまりにも不自然に描かれている↑ので注意!
飛行機の方向舵は
進路偏向など Yawing の修正に用い、
進路変更は Roll して昇降舵で行い
主翼の揚力で旋回する。
飛行船の場合は 飛行機と異なり 進路変更は 方向舵で行い、
向かい風に対し斜位した船体が受ける風圧で旋回します。
飛行船の船体が
飛行機の主翼に相当して、
旋回方向へ 迎角を与えると 遠心力に釣り合う 「揚力」 を 発生する関係ね。
つまり、そういう事なんで 基本原理は 同じなんだけど 構造差で手順が違う… 解りますか?
下手な解説で すみません。
「ノルトシュテルン号」は 上部垂直安定板を小型化して完成したものの…、
その後に 再び 上下の垂直安定板を少し拡張する改造が施されました。
これは 垂直安定板の面積を 減らし過ぎて、直進安定性が 不足したのだろうと思われます。
|
LZ121 "Nordstern"
[ 22,500 m3 ] 127 km/h
[ Gas cell : 13 / Bulkhead : 12 ]
The Horizontal Stabilizer
水平安定板
LZ120 "Bodensee" ,
An inclination of the Horizontal Stabilizer (AoA)
|
昔の飛行船の写真や図面などを 見ていて、
水平安定板が 傾いているように 感じる事があります。
その感覚は 錯覚ではなくて 事実なのです。
(近年 左向きで描かれていたりする、信憑性の無い イラスト類で 如何描かれているかは
この際 無視してください)
(図面の作図法で 側面図を 左向きで描くのは 近年の特徴なので、
当時の物ではないと念頭に置き 盲信しない方が良い)
The originator,
Schütte-Lanz S.L.I. (Phase:2)
水平安定板に 迎角を 施した創始者は 「シュッテ・ランツ」
Schütte-Lanz
Deformed "S.L.I."
地上から 仰ぎ見るように 撮影されたから パースペクティブ (perspective) で 水平安定板も
歪み 傾いているようにも見えるが、
その場合には 昇降舵の舵軸が 中心線より かなり上に位置するので 遠近歪みではない。
「それにしても、画像を前後圧縮すると… 船体ラインが 凸凹していて、
工作精度の悪い飛行船だなぁ〜」
Schütte-Lanz S.L.3. type , in Feb. 1915
船体の断面形状を理解すれば、水平安定板に 迎角を 施しているのが 判る写真
「ツェッペリン社」 L. Zeppelin GmbH
が 「水平安定板の迎角」を 採用したのは 陸軍飛行船
Z ]U から
"N" Class ( LZ26 Z XII ,
Experimental airship on cruciform tail assembly )
「十字型 尾具(尾鰭/尾羽)」 の 実験船 N 級/ 陸軍飛行船
Z ]U
(実験のため1隻のみ建造)
"O" Class ( LZ36 L 9 , "N" Class refine model )
N 級を 洗練させた 実戦実証船2隻の O 級 / 海軍飛行船
L 9 (陸軍も対抗心から1隻購入、LZ39)
"P" Class ( LZ40 L10 , "O" Class diameter expansion model )
O 級の 直径を 拡大して 搭載能力を高めた P 級/ 陸海軍採用飛行船
L10 型 (最初に納入されたのは 陸軍飛行船 LZ38)
"L10" type & LZ120 "Bodensee"
|
Horizontal Stabilizer , an inclination of 2º (degrees)
|
自動車の リア・スポイラーが ダウン・フォースを 生み出して、
後輪を 路面へ圧着させる仕組みの真逆が 昔の飛行船には 採用されていた 一時期が ありました。
(芽生えは 第一次大戦 前ですが…、
開戦後の 1915年に 本格導入され、戦後暫くして 廃れました)
しかし
LZ126 以降の新設計の飛行船には 水平安定板の迎角が 採用されていません。
これは エンジンの進歩により、プロペラを 逆回転させる「制動」が可能となり、
これによる制動時に 水平安定板の空力作用があると 過剰ノーズ・ダウンを 起こして
操縦が 難しくなるからだと 考えています。
(私は この件を解説した文献を見た事がありませんので 推理です)
文献上でも 「 LZ126 の エンジンは 飛行船としては初めて逆回転できるようになっていた」 とは
明記されているので…。
( Super Zeppelin の 米国版コピーでもある
USS Shenandoah ZR-1
が 「水平安定板の迎角」 を 採用して建造され完成した最後の飛行船です )
(米国が ZR-2 として予定していた
R 38 は 「水平安定板の迎角」 を 採用していますが、
USS Shenandoah よりも 先に完成して墜落しています)
( LZ126 の 逆回転できるエンジンについて、
通常回転での運転を 一旦停止後に 逆回転で再起動させるらしいのですが 詳しい資料は ありません)
Horizontal Stabilizer of the LZ126,
an inclination of 0º (degrees)
余談ではあるが… 垂直安定板 (Vertical Stabilizer) /水平安定板 (Horizontal Stabilizer) であって、
垂直尾翼/水平尾翼ではない!…、垂直/水平尾翼を 英語にすると 垂直/水平 Stabilizer 、
そもそも 英語の 「 Tail Assembly 」を 日本語訳する時に
「尾翼」と言う新語を 造語したのが 誤りの元。
「尾翼は 翼じゃないですよねぇ〜」と 飛行機に詳しい人達も言っている。
強いて直訳的に造語するなら 「 Tail Assembly 」は 「尾具」である。
普通の飛行船に 「翼」は 付いていないのです。
(実現しなかった アイディア・スケッチとして
「翼」を 付けた飛行船の絵は 存在しますが…
尾具より 尾鰭の方が 解り易いかな?)
Tail Assembly も 空力で「何かしらの揚力」を 発生させる部位だから
「尾翼でも いいんじゃないの?」って 考え方もある。
確かに、空力が発生する部位なら全て「○○翼」と呼ぶのも 「ゆとり教育」的には 合理的だろう。
しかし、実際には 「尾翼」は Tail Assembly の 和訳であり、欧米人が Wing と Fin と Blade で
使い分けている以上、「尾翼」を Tail Wing と呼べば笑われる。
(「尾翼」を Tail Fin と 呼ぶなら笑われないけど…)
まぁ〜 一般人に定着した飛行機での使用は兎も角、
「飛行船で 尾翼と呼ぶのは
止めましょう」って提案です。
Extension
船体延長
LZ120 "Bodensee"
|
搭載量を僚船「ノルトシュテルン号」と 同じにするために
船体を切断して、船体延長改造中の「ボーデンゼー号」
|
工事中
LZ120 "Bodensee" , after extension
この写真が "Bodensee" と 断定できる識別点は
船体のマーキングが 船尾ゴンドラより後で 輪切り線になっている所
上部垂直安定板と方向舵は 小型化され、下部垂直安定板は 少し拡大されている
War reparations
戦争賠償
"Méditérranée" ( F-AOOM ) ,
ex LZ121
|
「メディテラネ号」 F-AOOM
|
"Esperia" ( I-SAAA ) ,
ex LZ120
|
「エスペリア号」 I-SAAA
|
工事中
The ideal streamline ... 1
抑(そもそも)、理想的な流線型とは 何なのか?… 1
(船体、全長と 直径の 比率)
先ずは 全長が ほぼ同じ位で 直径が 大きく異なる飛行船で 比較してみましょう。
例として LZ127 「ツェッペリン伯号」と 米海軍 軍用飛行船 「アクロン号」の要目を
以下に 掲げます。
Number |
Length |
Diameter |
Volume |
Gas cell |
Dead weight |
Payload |
Power plant |
Max. Speed |
Date |
LZ127 |
236.6 m |
30.5 m |
105,000 m3 |
17 cells |
59._ t |
60.0 t |
550 HP
x5 |
128 km/h |
1928. 9 |
ZRS-4 |
239.3 m |
40.5 m |
184,000 m3 |
12 cells |
113._ t |
73._ t |
560 HP
x8 |
128 km/h |
1931. 8 |
番号 |
全長 |
直径 |
容積 |
気嚢数 |
自重 |
搭載量 |
機関 |
速力 |
西暦 |
船体が 細い「ツェッペリン伯号」
は 550馬力エンジン 5基で 最高時速 128 km を 達成していますが、
船体が 太い「アクロン号」
は 最高時速 128 km を 実現するのに 560馬力エンジンを 8基も 必要としています。
この事実から 全長が 同じなら 船体が 太いと 空気抵抗が 大きいために、
より エンジン・パワーが 必要だと解ります。
(要するに 「太い=直径が大きい」 は 前面投影面積が広い と 同意義で、
だから 圧力抵抗が大きい と 言う事なのだが…)
以上、
太い船体よりも 船体は 細い方が 空気抵抗が 少ない事は
常識的な 一般論として 誰でも 理解できると 思います。
次に 直径が 同じで 全長が 異なる場合について 比較してみましょう。
例として LZ40 ( L10 ) と LZ59 ( L20 : L10 extension model) と LZ120 "Bodensee" の
要目比較です。
Number |
Length |
Diameter |
Volume |
Gas cell |
Dead weight |
Payload |
Power plant |
Max. Speed |
Date |
LZ40 (L10) |
163.5 m |
18.7 m |
31,900 m3 |
16 cells |
21._ t |
16.2 t |
210 HP
x4 |
96 km/h |
1915. 5 |
LZ59 (L20) |
178.5 m |
18.7 m |
35,800 m3 |
18 cells |
22._ t |
17.5 t |
240 HP
x4 |
95 km/h |
1915.11 |
LZ120 |
120.8 m |
18.7 m |
20,000 m3 |
12 cells |
14._ t |
9.6 t |
250 HP
x4 |
130 km/h |
1919. 8 |
番号 |
全長 |
直径 |
容積 |
気嚢数 |
自重 |
搭載量 |
機関 |
速力 |
西暦 |
L10型は 第一次大戦中に 開発され 建造された 軍用飛行船、
その船体を 延長して 搭載能力を 少し増加させたのが L20型です。
この L20型では エンジン出力も 若干増強させていますが 最高時速は 速くなっていません。
これは 船体の延長によって 同時に 船体の表面積も 増加しており、
空気との摩擦抵抗も増えたために 大きな エンジン・パワーが 必要に なってしまったのです。
つまり、直径が 同じならば 表面積が 少ないほど (=船体が 短いほど) 摩擦抵抗は 減少します。
随って、L10型や L20型より 表面積の少ない 小型の LZ120 では エンジン出力を 若干増強しただけで、
最高時速は 飛躍的に 速くなっています。
さて、このように 考えていくと
表面積が 少ないほど (=船体が 短いほど) 摩擦抵抗が 減少すると 言う事は
最初の条件、「太い船体よりも 船体は 細い方が 空気抵抗 (実は圧力抵抗) が 少ない」事と
一見矛盾するように 思えます。
では この疑問を 解消するため 更に 比較を 続けます。続いては 同じ エンジンでの 比較です。
LZ121 "Nordstern" (ノルトシュテルン) と N 1 "Norge" (ノルゲ) は
硬式飛行船と 半硬式飛行船と言う具合に 形式や 船体規模に
幾分かの違いが あるのですが エンジンは 同じ出力の マイバッハ発動機を 3基搭載しています。
Number |
Length |
Diameter |
Volume |
Gas cell |
Dead weight |
Payload |
Power plant |
Max. Speed |
Date |
LZ121 |
130._ m |
18.7 m |
22,500 m3 |
13 cells |
16._ t |
11.2 t |
260 HP x3 |
127 km/h |
1919. ? |
N 1 |
106._ m |
19.4 m |
18,500 m3 |
8 cells |
11._ t |
9.5 t |
260 HP x3 |
113 km/h |
1926. 5 |
番号 |
全長 |
直径 |
容積 |
気嚢数 |
自重 |
搭載量 |
機関 |
速力 |
西暦 |
この2隻の比較から 端的に言える事は エンジンが 同じでも 船体の出来如何によって
最高速度には 大きな差が 生じると 言う事です。
ここで「船体の出来」と 聊か厳しい言い方をするのは N 1 の 方が
小型で 軽量であるにも関わらず、
N 1 よりも大型で 総重量も上回る LZ121 の方が 同じ動力源で
より速い最高速度を 発揮しているからです。
N 1 の 形式、半硬式飛行船とは 別名 Keel-blimp と言い、軟式飛行船 (Blimp) へ
竜骨 (Keel) を 装着して 船体の剛性を 確保することにより、
内圧で 膨らむ事で 船体形状を保つ風船構造である軟式飛行船の弱点、
船体を 細長い流線型に 出来ない事を 克服しようと しているわけですが…
この 比較データから解るように 未だ スリムさに 欠けていたようです。
[ Gas cell : 8 / Bulkhead : 7 ]
これは 信憑性的に 怪しい図です↑… 注意!
首尾線が 一直線上にありませんから 知識の浅い絵師のイラストです
(内部構造図解も怪しく、
写真で確認できる 船体表面の僅かな縊れ位置と 図解の隔壁位置が 一致していない、
真相は調査中です)
これまでの比較を纏めると…、
「太い船体よりも 船体は 細い方が 空気抵抗 (実は圧力抵抗) が 少ない」と言う
常識的な 一般論は あるものの、
「船体は 短い方が 表面積が 少なくなり 摩擦抵抗が 減る」と言う側面もあり、
長過ぎず 短過ぎず 丁度良い頃合の 船体比率が 存在するらしい事が これらの比較から窺えます。
そして 如何やら これが 理想的な流線型と 考えられます。
最後に もう一つの比較をして 締め括りたいと 思います。
それは 文献類で よく語られる、似たような体積(=船体規模)の 新旧 旅客用飛行船の 性能比べ、
LZ17 "Sachsen" (ザクセン) と LZ121 "Nordstern" (ノルトシュテルン) との 比較です。
Number |
Length |
Diameter |
Volume |
Gas cell |
Dead weight |
Payload |
Power plant |
Max. Speed |
Date |
LZ17 |
157.9 m |
14.9 m |
22,470 m3 |
18 cells |
14._ t |
9.4 t |
165 HP
x3 |
76 km/h |
1913. 5 |
LZ121 |
130._ m |
18.7 m |
22,500 m3 |
13 cells |
16._ t |
11.2 t |
260 HP
x3 |
127 km/h |
1919. ? |
番号 |
全長 |
直径 |
容積 |
気嚢数 |
自重 |
搭載量 |
機関 |
速力 |
西暦 |
文献類では この2隻の要目比較から 洗練された理想的な流線型により 強い向かい風にも
立ち向かえる 実用的な速力が 得られたと 解説されています。
しかしながら、搭載しているエンジン出力が 極端に 異なるため、
この2隻の要目比較からだけでは どちらが 本当に 抵抗の少ない流線型なのか?
直接には 比較できないはず(条件を揃える換算が必要)なのです。
勿論、現実には 新型である LZ121 の 方が
より研究し尽くされていて 洗練された流線型で 建造されたであろう事は
間違いないのでありますが…。
この2隻の要目比較からだけで 確実に 言える事は… 船体の 長短比率は 大きく異なるものの、
ほぼ同規模の 大きさの 新旧 飛行船の 比較では
「エンジン・パワーの 強力な方が 速い」と 言う事だけです。
(但し、空力換算係数の算出方法が判れば、この要目でも 空気抵抗の比較は可能なはずですが…)
The ideal streamline ... 2
抑(そもそも)、理想的な流線型とは 何なのか?… 2
(船体、輪郭線/シルエット・ラインの 性質)
The tapered blending elliptical streamline
L30型 "Super Zeppelin" の流れを汲む特徴、テーパード・ブレンディング楕円流線型
境界層の領域内で、層流は 摩擦抵抗が少ないが 剥離し易い、
乱流は 摩擦抵抗が多いが 剥離し難い、
だから通常は 乱流混じりで 翼型は 設計されるらしいが…
この 「乱流」 って言う 専門用語を使うと
「一般的な感覚の波打つような気流の乱れ」 と
混同してしまい、
流体の剪断応力 (=流体の摩擦抵抗) とか知らない普通の人 (私も含む) は
理解不能になるんだよね〜!
厳密には ↑こんな感じらしいのですが…
以下の説明では その辺のところを 省略して我流で行っています、ご容赦ください
@
|
最も単純な楕円流線型では
船首部分に 押し広げられた気流が 惰性で外側まで広がり続けて、
船体の最大幅部分よりも前の位置で 既に表面圧力分布は 低下しており、
その低圧部に引き寄せられる形で 気流が内側へ湾曲するが、
その先の 船体後部は 絞り込まれて窄まっているために これに沿うように気流が流れる。
(高速域で起きる現象)
|
A
|
直線的で平行な船体部分と単純な楕円流線型を繋いだだけの場合、
最大幅部分よりも前の位置から始まる低圧部に引き寄せられる形で 気流が内側へ湾曲するため、
直線的で平行な船体部分へ気流が吹き付ける形となり、この部分の気流が乱れる原因となる。
(但し、速力が 一定水準より遅ければ
この方式でも あまり影響しないで 済むようです)
|
|
B
|
テーパード・ブレンディング楕円流線型の場合は、
船首部分に 押し広げられた気流が 惰性で外側まで広がり続けないように、
楕円体部分の裾へ テーパーを追加して 気流を真っ直ぐ後方へ誘導する事により、
直線的で平行な船体中央部分とも 良く馴染む気流を 船首部分で生成するのが特徴である。
(随って 楕円部分は船体幅より小振りとなる)
|
C
|
船首部分が 気流を真っ直ぐ後方へ誘導するという事は、言い換えれば、
直線的で平行な船体中央部分を 全く有しない
船体の短い飛行船でも最大幅部分で気流が密着してるので 船体後半部の気流が
より安定する事を意味する。
(実はコレ、第二次大戦中に出現する、
中央部に最大厚が来る「層流翼」とも 前半重視が ちょっと似てるんだよね)
(運用速度が更に速い設定では、
より小さい楕円体を前方に配置する事になり
涙滴形よりも紡錘形に近付きます、
たぶん この考え方で作られるとするなら…)
|
楕円体の裾に追加された テーパー部分は 気流安定化のための 固定フラップと見立てる事もできる。
( LZ126 は 直線的で平行な船体中央部分を 全く有しない テーパード・ブレンディング楕円流線型です)
Luftschiff
LZ126
( spindle-shape + taper
+ elliptical streamline )
|
Deformed "LZ126" tapered blending elliptical streamline
|
( R 101 と R-100 の 2隻も この補正式楕円流線型を 素直に導入していれば、
船体の延長改造も簡単だったはずなのだが… )
Deformed "R 101" & "R-100" simplicity elliptical streamline
単純楕円流線型では 安易に隔室の挿入が できない
テーパード・ブレンディング(補正式)楕円流線型では
簡単に直線的で平行な隔室の挿入が できる
LZ104 (L59) ↑ 隔室追加で 搭載能力を 向上させた 物資輸送用飛行船 (アフリカ船) の 事例
↑ L10型 速力 96 km/h
↑ L30型 速力 103 km/h
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以下 約10行は 余談です、
私が この 「テーパード・ブレンディング楕円流線型」
(補正式楕円流線型) の 存在に気付いた経緯の話です。
H.M.A. R 33
( elliptic + taper + cylindrical parallel + spindle-shaped streamline )
R 33 Class の資料は 日本では資料の少ない L30型を勉強するのに とても都合が良いのですが…
それは 多分 飛行機屋さんが描いたであろう、フォルム的特徴を持つ R 33 Class の 側面図が…
デッド・コピー元である L30型の写真と比べて あまりにも似てない 理由を 間違い探ししていたら
偶然 「テーパード・ブレンディング楕円流線型」 の存在に 気が付いたと言う事だったのです。
もしも、最初に見た側面図の フォルムが コレ↑くらい良かったら
間違い探しなんてしなかったでしょうね。
ついでに解説しておくと…
この↑駄目ダメ側面図、先端の小さな球体が押し分けて作り出す気流を
後続のテーパー部分で補正しながら胴体直線部へ導く手法、
現代の ジェット旅客機などの ラインですよね。
(だから 「多分 飛行機屋さんが描いたであろう、
フォルム的特徴」 と 前置きしましたが…、
ロス級原子力潜水艦も こんな ラインでしたね)
Comparison between the three ,
"unreliable R 33 drawing" &
"DC-10" &
"L30 drawing".
R 33 ?
|
MCDONNELL DOUGLAS DC-10
|
L30
|
|
Epilogue , the next Generation
The super-ellipse 2½ shaped streamline
次世代の流線型に採用された幾何学曲線、
「超楕円」
The pre-super-ellipse 2½ shape ,
the tapered blending elliptical streamline airships
LZ120 "Bodensee"
Deformed LZ120 "Bodensee"
[ the circle (red) +
taper ] =
the tapered blending elliptical streamline
Super-Deformed LZ120 "Bodensee"
Comparison between the circle (magenta) &
the [ ellipse +
taper ] streamline
テーパード・ブレンディング(補正式)楕円流線型を 更に前後圧縮して、
「テーパー+楕円」の合成図形と
真円(マゼンタ色)を 比較。
幾何学的には
「円」と 「楕円」の 関係は 「正方形」と 「長方形」の 関係に 等しい。
|
テーパード・ブレンディング(補正式)楕円流線型を
更に前後圧縮して真円(マゼンタ色)と比較すると、
次の世代の予兆を 垣間見られます。
「テーパー+楕円」 という合成図形の近似形が
次に挙げる 幾何学曲線ひとつだけで示せるのです。
The super-ellipse 2½ shape
この 幾何学曲線は
スーパー楕円と 称されているもので、
楕円の数式で2ヶ所ある 2乗している部分の2 (指数と言う)を
別の数値に 置き換えると描かれる図形なのです。
(楕円の数式で 係数 a=b の場合は 真円になります)
(スーパー楕円は 指数代入値により 何種類もの図形が 描けますが、
主に 指数 2½ 、
円形と四角形の中間形が 重宝されるようです)
The post-tapered-blending-ellipse ,
the super-ellipse 2½ shaped streamline airships
注意:スーパー楕円は 「テーパー+楕円」合成図形の近似形であって、
スーパー楕円が 採用された船型に もはや楕円ラインは 存在しません。
おまけ
A giveaway (an addition , something extra)
現代の飛行機の世界では 「粘性のない完全流体」から計算した理論で 翼型の原型が作られたりしている。
しかし、ここで扱っている飛行船の世界は 複葉機の時代であり、様相が現代とは異なるようです。
仮に レイノルズ数で考えると、
全長 100m 速力 100km/h の飛行船と 翼弦長 10m 速度 1,000km/h の翼型で
相似性が 成り立つはずなのだが…。(音速が 約 1,200km/h だから
速度 1,000km/h って 音速に近いじゃん!おぃおぃ 本当か?)
(但し、飛行船の場合は 動的揚力を 重視しないので、
上面と下面で膨らみの差が無い翼型との比較が 適当だろうと思う)
U : 速度 、 L : 長さ 、 ν : 動粘性係数
レイノルズ数で考えると、
飛行船の縮小模型による風洞テストは 音速を超えそうな条件で 試験する必要があるのだが…
当時 そんな条件で 風洞試験していたのだろうか?… 謎だ。
(写真の模型サイズだと、相似性を確保するには 音速以上が必要だぞ)
LZ120 "Bodensee" , Wind Tunnel Test
当然、小型模型を使おうとして、風洞の流速が音速を超えたら圧縮性の影響で相似性が保てなくなる。
そうなると…
風洞内の空気を 別のガスに置き換えて
「動粘性係数」を 変えないと 飛行船の小型模型は 使えない理屈だよなぁ〜!。
普通の空気で試験するなら 最低で 20メートル級の大型模型が 必要だけど…
そんな風洞って 現実に有るのかな?…。
(学生時代に航空力学を受講した知人が
「例えば 風洞内を 10気圧にするとかすれば 動粘性係数を変えられる」と教えてくれました…
成る程ね〜!)
考証 research (C)SA-ss 2011-9/2
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