更新日：2003/2/15

南伊豆のマングローブ

伊豆半島の南端、静岡県南伊豆町湊に人為的に植栽された
メヒルギ群落があります。

南伊豆町になぜメヒルギを植裁したのか？南伊豆町
のマングローブは世界分布の北限なの？etc.を
Shigeyと一緒に調べてみましょう！

１	南伊豆のメヒルギについて	2002/5/25
２	南伊豆のメヒルギ観察記 （2002/5/3〜4）	2002/5/25
３	南伊豆のメヒルギ観察記 （2002/8/9〜10）	2002/8/18
４	南伊豆のメヒルギ観察記 （2003/2/8〜9）	2003/2/15

１．南伊豆のメヒルギについて

（１）場所

南伊豆のメヒルギ群落 2002/5/3

（２）南伊豆町になぜマングローブを植えたのか？

いくら温暖な伊豆半島の先端でもマングローブが自生
しているわけがありません。
なぜ植えようとしたのでしょう？

１９５０年（昭和２５年）頃に南伊豆の温暖な気候を生かした
産地産業開発と、荒廃地修景のために特異な植物景観造成をし、
伊豆地方の公園化を目指す考えが生まれ、当時の静岡県柑橘
試験場の田中輸一郎博士の提案で、静岡県有用植物園が
開設されました。

メヒルギの植裁は以上の考えの一環として、当時の有用植物園
の園長である竹下康夫氏と研究員である野口英明氏他によって、
実行されました。
これは単なる思いつきで行われたのではなく、以下を着目し、
調査を行い、条件に見合うか確認したうえでメヒルギの植裁
が実行されたとのことです。

植裁予定地に問題がないことを確認し、１９５８年(昭和３３年)２月
中旬にメヒルギの幼苗を、種子島から移入し植裁したが、全滅した。
再度、７月に奄美大島から移入したメヒルギの幼苗を植え、成功した。
当時、植えたメヒルギは１９７５年(昭和５０年)時点で約２ｍに生長
したと記録が残っています。

その後、自然繁殖（胎生種子が自然に根付き育つ。）も見られ、
人為的な植裁が成功したかに思われたが、
大きな転機を迎えることとなります・・・
青野川は時に氾濫し、住民を困らせていました。
そこで河川改修（護岸工事）が計画され、
メヒルギは伐採される運命となったのです。
しかし、世界北限の地で人為的な植裁が成功した
貴重なメヒルギを残そうという動きがあり、
最終的には「両立（河川改修とメヒルギの移植）できる
工事をやりましょう。」ということに決まり、
メヒルギは移植されることになりました。

１９９５年に１５０本、１９９８年に１８本が移植された
という記録が残っています。
しかし、移植というのは簡単なことではなく、
いろいろな工夫をしたのにも関わらず枯死するものが
多かったとのことです。
ある専門家曰く「保存部分だけをスポットで
残す方法はよく使われる手法であるが、
周辺環境をもっと残すことが必要。
周辺環境の維持が保存対象群落を
保存させるのに欠かせない条件だと
いうことが理解されていないように思う。」と。
正直、難しい問題ですね・・・

南伊豆のメヒルギ群落 2002/5/3

（３）南伊豆町のマングローブは世界分布北限か？

一般にメヒルギの北限として認められているのは、
鹿児島県喜入町の群落です。

でも鹿児島県喜入町は北緯３１度２０分で、
静岡県南伊豆町は北緯３４度３７分だから、
南伊豆町の方が約３度も北にあるの
だから、北限として認められてもいいはずとも
思いますよね？

鹿児島県喜入町のメヒルギも南伊豆町のように
人為的に植裁されています。
（メヒルギの自然分布北限は種子島）
但し、南伊豆町よりは歴史が古く、江戸時代に薩摩藩が珍しい
植物として持ち込み、植えたのが始まりと言われています。
１００年以上も自然繁殖を続けていることより、南伊豆町の
ものとは異なる点が上げられます。

残念ながら南伊豆町のメヒルギは一時期は
自然繁殖も見られたとのことですが、明らかな人為的な移植に
加え、前述の通り、再移植され、自然のものとはほど遠く、
人為的に繁殖させてやらないと群落を
維持できない状況になっているようです。

といっても、あの環境下で４ｍ級の木に育っているものが
あったり、毎年夏には花を咲かせ、胎生種子を実らせることから、
鹿児島県喜入町とは違った意味での北限として
貴重な存在であることは間違いないですね。

南伊豆のメヒルギ群落 2002/5/4

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